Category家族 2/5

いとし子よ 横須賀編 1

横須賀の三浦家では、桃恵が臨月を迎えていた――   先日もそんな桃恵を心配して医務科で上司だった秋川兵曹長が訪ねてきてくれた。秋川兵曹長は勧められてあがった座敷の隅に座ると 「春山…じゃなかった三浦さん、もう臨月だろう?兆候はまだかな?もし何かあったらすぐに連絡しなさい」 と言ってくれた。その秋川に座卓の前を勧めると桃恵は大きなおなかを撫でながら 「ありがとうございます秋川兵曹長。二人目ですから...

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幸せの空の先

「オトメチャンオトメチャン、えらいこっちゃで」と小泉兵曹が第一艦橋で当直を終えたばかりの桜本兵曹のもとへ駆け寄ってきたのは月もきれいなある晩のことーー   「なんね。どうしたんじゃね、そんとに慌てて」と桜本オトメチャンは言って、双眼鏡のレンズを布でそっと拭いてからその場を離れた。交代の酒井水兵長に「異常なし」と言って水兵長は「交代します」と言って双眼鏡についた。主羅針儀のそばに、佐奈田航海長が...

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明日を見て生きる

三年前まで『武蔵』医務科勤務だった三浦桃恵は二人目を身ごもって八カ月目の体も重そうに横須賀の街を歩いているーー   桃恵は長女の継代の手を引き、兄の家を訪うため自宅を出た。朝、横須賀海軍工廠に出かける夫の智一大尉に「今日の午前中、兄の家に行ってまいります。夕方までには必ずもどります」と言い、智一大尉は「お兄さんとお姉さんにくれぐれもよろしく。今度ぜひうちでみんなで飲みましょうと伝えてくださいね...

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南瞑のはてに

〈昭和十九年十一月 増田恵一海軍少尉 二十三歳〉 伊号潜水艦に乗り組み、光基地を出撃して約二週間。グアム島至近まで来た。…そして我々はやっと会敵の機会を得た。私はしかし、伊号潜水艦の乗組員ではない。私は伊号潜水艦に積まれた〈回天〉の搭乗員である。私のほかに三名、いずれも下士官である。彼らと私は多くの回天搭乗員たちとともに厳しい訓練を受け一人前の搭乗員としてついにこの日を得たのである。 そしてその時...

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「行ってまいります!」

 その日、彼女は皆に見送られて海兵団入団の時を迎えていた――   鈴原凛は、幼い時から奉公していた広島の料亭から呉の海兵団に応募し合格、いよいよ入団の時を迎えていた。その日は料亭は休みにして、旦那と女将そして大勢の使用人たちが祝賀の膳を囲んだ。凛は女将さんが若いころ来ていたという銘仙の着物を貰って、それを身に着けている。 旦那は祝いの杯を持ち 「凛。今までよう働いてくれた、ありがとう、礼を言...

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About this site
女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?
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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)