2017-09

「女だらけの戦艦大和」・全海軍よ熱くなれ! - 2015.02.15 Sun

 ――松岡修子海軍中尉がいつぞや作った「毎日修子」なる日めくり式教育語録(本人いわく)は艦長に没収されてその多くは休暇中の副長室に放りこまれていた――

 

藤村少尉は、あす山中副長が帰艦するという日に(副長のお部屋を掃除しておこう)と思いたち、掃除道具一式を持つと副長室へ入った。

普段から綺麗にして整理整頓をしている副長の部屋だけあって埃を払えばよいくらいの状態――と思った藤村少尉であったが(なんだ、あれは)と部屋の片隅に積まれたものに目を止めた。(なんだろう、副長が休暇に入られる前にはあんなものはなかったが?)と思いながらそれに寄って行った少尉は

「わああ、まったくこんなもんここに置きやがってえ!」

と思いがけない大声で叫んでいた。

そう、そこに高く積まれたものは梨賀艦長が没収し松岡中尉に「処分せよ」と命じておいたあの<毎日修子>ではないか。

「な、な、なんだってこんなものをよりによって副長のお部屋に!ウウウ…」

藤村少尉は怒り心頭に発して副長室を飛び出した。途中で繁木航海長に出会ったので、これこれこうだと話をしたところ航海長はたいへん怒って

「松岡中尉、松岡中尉はどこか!副長室に来い」

と松岡中尉を呼び出した。はたして松岡中尉はマツコ、トメキチにニャマトをひきつれてやってきた。例のラケットを担いで

「ハイハイおよびでしょうか?松岡中尉只今参上」

とやってきた。その松岡中尉をたいへん怖い目でにらんで繁木航海長は副長室のドアを大きく開いて

「入れ!」

と命じ、中尉が入ると例の日めくりの山をビッと指差して「あれはなんだ!艦長から処分せよと命じられていたではないか、それを事もあろうに副長のお部屋に投げ込むとはどういう料簡だ!?明日副長がお戻りになられる、早く片付けろ!捨てろ!」と大声で怒鳴った。

マツコが「やあねえマツオカったら。どうしてこの人、いうこときかないのかしらねえ?いくらなんでも副長さんのお部屋に入れるなんてね」と辟易したように翼を広げた。トメキチも

「ほんとね。艦長さんから処分しなさいって言われてたはずなのにね」

とため息つくしニャマトさえ「ギャ、ギャ、ギャマド!!」と怒っているようだ。この三人は動物ながら副長に心酔しているのでさすがにこの松岡中尉の行為には憤慨している。

「ハイハイわかりました。では私松岡中尉、この大事な私の教育語録をおかたづけしますからね~ハイハイ」

松岡中尉はひとを小馬鹿にしたような言い方で繁木航海長と藤村少尉をむかっとさせてから日めくりを抱えると部屋を出て行った。ラケットはマツコに咥えさせて。

藤村少尉が

「あれだけの量を一度に持って行くなんて、すごい腕力の人ですね」

と言ったのへ繁木航海長は「そうね…でも私もうしばらくあの人とかかわりたくないな。疲れて仕方がないから」と言った。藤村少尉は私もそう思います、と言って部屋の掃除をつづけることにした。

 

そして副長が復帰し、一週間が過ぎたころ。

『海軍きゃんきゃん』編集局から梨賀艦長あてに大きな封筒が送られてきた。

艦長は副長と参謀長と一緒に第一艦橋にいたが艦長従兵のオトメチャンから「艦長、艦長あてに小包であります」とそれを渡され「なんだろう、これは」と言いながら海図台の上でそれを開封した。副長も、森上参謀長も興味をそそられて覗き込んだ。

すると中から上質紙に印刷され綺麗に製本された「毎日修子」が出てきたではないか。表紙には赤い字で書かれた<見本>の文字が。

「いったいどういうことだこれは」

梨賀艦長が思わず叫ぶと、副長が封筒の中から別の封筒を見つけ艦長に手渡した。艦長がその封筒から中身を引き出すとそれは『海軍きゃんきゃん』編集局局長からの手紙で時候のあいさつの後

>このたびは貴艦の松岡海軍中尉から素晴らしい企画を頂戴し、このたびその見本が出来上がりましたのでご確認ください。発売は今月○○日になりますのでよろしくお願いいたします…

と書いてある。

梨賀艦長と森上参謀長は「全く!あいつはいつの間にこんな勝手なことを」と文句を垂れて、副長に「副長、松岡中尉を呼んで話を聞こう」と言って山中副長は松岡中尉を艦橋に呼び付けた。

ややして艦橋に入ってきた松岡中尉は海図台の上にある「毎日修子」の出来見本を見るなり喜びの声を上げた。そしてそれをグワッとつかむなり思い切り上に掲げて

「皆さん見て下さい~~!これこそ私の魂の集大成です!――海きゃんもよく解ってくれてこれを出版して全海軍将兵に私の思いを伝えようとしてくれたんですねえ…私は嬉しい」

というと今度は見本を抱きしめて嬉し泣きし始めた。

艦長、参謀長に副長はその展開についてゆけずぽかんとしていたが艦長は気を取り直してその「毎日修子」を海軍きゃんきゃん編集局に持ち込んだいきさつを聞きだすこととした。

それによれば――

 

――私松岡修子海軍中尉は、こんなに熱い言葉をこの『大和』諸君にだけ伝えるのはもったいない!宝の持ち腐れだと思ったんですよ。ですからね、副長のお部屋においといた在庫を海軍きゃんきゃん編集局に送ってみましたよ。『あなたたたちも熱くなってこの松岡についてこい!この私の言葉を全海軍に広めたくはないか?あきらめてんじゃないのか、あきらめんなよ!』ってささやかな言葉をつけてですね。そしたらあなた!さすが海きゃん編集局、すぐに打てば響くがごとく返事が来ましてね。なんとあなた、山本いそ聯合艦隊司令長官が「毎日修子」を気に入ってくださってぜひ、きちんとした形で出したい出そう!とおっしゃって下さったんだそうです。さすが聯合艦隊司令長官ともなるとよく解っておいでですよ、そこらへんの戦艦の頭の固い艦長とは全然違いますねえ~。ですからこのお話はどんどん進んでいますでしょ、もう後戻りできません。聯合艦隊司令長官の『出版せよ』とのご命令ですから。

というわけですよ梨賀艦長、よろしくお願いしますね!

 

梨賀艦長は、松岡中尉の<そこらへんの戦艦の頭の固い艦長>という言葉にたいへんむっとしながらも

「山本長官の御命令なら…いたしかたない」

と言って黙ってしまった。参謀長も「山本長官、いったい何を血迷われたんだ」と苦り切った表情でつぶやいた。

ただ、山中副長は「ちょっと見せてちょうだい」と松岡中尉からそれを受け取って一枚一枚、丁寧に読んでいる。梨賀艦長と森上参謀長はその様子に目を止めた。

副長は三十一枚を読み終えると見本を松岡に返してから

「艦長。私はいいと思いますが。確かにちょっとわけのわからない言葉も散見出来ましたがそれもよく読みこめば味のある深い言葉かも知れませんね。まあ、全海軍の将兵対象に販売するならば結果は彼女たちが出すのですからここは静観していましょうよ、ね、艦長」

と言って微笑んだ。梨賀艦長と森上参謀長はその副長の穏やかな言葉に毒気を抜かれて「ああ…そうだね野村、じゃなかった山中さん」と言って怒りの矛を収めた。

松岡中尉は山中副長の両手をガシッと握って「さすが、副長です!副長はご結婚されていよいよ人間がまるくおなりになりましたね!そして何よりこの私の熱い言葉を解って下さろうとして松岡大感激ですよ。ありがとうございます、きちんとした品物が来たら私松岡は山中副長に一冊謹呈いたしますから楽しみに待っていて下さいませネーッ!」というなり「ではごきげんよう」と敬礼してあっという間に艦橋を出て行ってしまった。

梨賀艦長と森上参謀長は副長を見つめた。副長は穏やかに春のような微笑みで松岡中尉の出て行ったあとを見て、やがて艦内帽をかぶり直し、三種軍装のネクタイに軽く手を当てたところでふと、二人の視線に顔を上げた。

参謀長は

「副長。あなた変わったね、前ならもっとあれこれ怒ってみたりしていたじゃないか。どういう心境の変化だね?」

と尋ねた。すると山中副長はふふっと笑うと

「単に力だけじゃ相手は納得しない場合がありますよ。戦闘ではないんですからね、戦闘ならフルパワーで圧倒した方が当然勝ちですけどこれは敵相手じゃない。仲間ですからね、それももうものの解った中尉ですからね…こちらが理詰めで押せ押せなら相手は話ができないでしょう?こちらがちょっと引いて相手の話を聞いてやれば相手の真意が解るってものですよ。――なんて生意気言ってごめんなさい」

と言った。

梨賀艦長と森上参謀長はぽかんとして副長の顔を見つめていたが次の瞬間

「素晴らしい副長!」「お前変わったなあ野村じゃなかった山中―!」

と大声で叫んだから副長はびっくりして一歩片足を引いた。その副長に駆け寄ると艦長と参謀長はかわるがわる副長を抱きしめ、

「いいよ副長、いいよ山中さん!素敵だよやっぱり結婚って偉大だね~。あのパッキンだったお前をこんなに柔軟にするなんて、すばらしい」

と叫び、副長は少し複雑な表情にはなったが。

 

ともあれ、「毎日修子」はそのあとすぐに『海軍きゃんきゃん』編集局から出版され各艦艇・航空隊基地・潜水艦基地・陸戦部隊等々で大評判となりその発行部数は六十万部に迫る勢いだという。その原因の一つに「毎日修子」を見て大感激した将兵嬢が「これはぜひ故郷の実家に」とか「出身の学校に贈りたい」と言って大量買いしたのも一因である。

そして気になる印税であるが松岡中尉は「売り上げは兵学校などの各学校、海兵団に寄付だ!熱くなれよ未来の海軍さんたち!」と言って、山本いそ聯合艦隊司令長官は大感激して松岡に感状を贈ったとか…。

 

そして今日も女だらけの『大和』艦内では「今日は十五日!さあめくれ、今日の言葉は<願います。いつも願います>だ!熱くなれよ」と松岡中尉が叫んで艦内の日めくりがめくられている――

           ・・・・・・・・・・・・・・

 

松岡中尉のあの日めくり騒動覚えてらっしゃいますか?あの日めくりがなんと山本長官のお墨付きを頂いて出版されたのです。熱い女将兵が北に南に増えることでしょう。

 

本物の松岡修造さんの「まいにち修造」、六十万部を売り上げているそうですね、熱くなってますねさすがです。うちもそれに貢献いたしましたよ、修造さま!

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● COMMENT ●

matsuyamaさんへ

matsuyamaさんこんばんは!
日めくり最近はあまり見なくなりましたが何か郷愁を感じますね。日々格言が書いてあると心豊かになれます。
松岡中尉の日めくりは一か月分。ですから毎月同じものを見るわけですが新鮮…です(これは本物の「まいにち、修造」と同じです)。
松岡中尉はあまりお金に執着しないので当たり前のように寄付をしました。海軍の後輩ができるほうがお金をもらうよりうれしい彼女です。

日めくりカレンダー、あれはいいですね。
今年は何年振りかで手に入れ、毎日めくってますが、A4大くらいなのでいろいろ情報が書き込まれています。
有名人の格言とかもあるんですけど、365日分書き込むとなると大変ですよね。
松岡中尉1人で練った格言なんでしょうかね。それだけの知識と体験をもとにしてるんでしょうから、見上げたもんですよね。
印税も施設に寄付とは素晴らしい。松岡中尉は人間性豊かで奥深い方なんですね。山中副長も懐が深くなりましたね。

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
熱い松岡中尉、寒い日本の空気を熱くしてくれておりますww!
彼女ほど言動一致の人間もいないなあという感じですが、いずれにしても熱くなるというのはいいことだと思います…(^_^;)。
松岡という人と付き合うとまさに人生勉強になりそうですよね^^。

明日は雪だとか!?どうぞ温かくしてお過ごしくださいませね^^。

こんにちは。寒い日にアツいお話をありがとうございます! 日本人って自分の情熱を外部に見せるということがなかなかない気がするので、言葉と行動で示すマツオカ様はさすがです。ちょっとずつ…というより導火線なみにみんなの心をアツくしてしまいますね(笑) 彼女との付き合い方はいろんなタイプの人たちと付き合う基本になりそう……自分の忍耐力や柔軟さを鍛えることが出来る文字通り「生きた教材」って感じです(≧∇≦)

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
本家本元の松岡さん本当に忙しそうですね^^。錦古里じゃなかった錦織圭君の大活躍、師匠として嬉しいことでしょう。

「女だらけの大和」の松岡さんも熱くなっていますね、印税を寄付しちゃいましたから!彼女の中には後輩への愛――兵学校でも海兵団でも――が満ちています。結構いいやつです^^。

まろにい様のおほめのお言葉嬉しく思っております^^。
心がほっとするようなそんな物語を書いてゆきたいと思っています!

柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさんこんばんは!
「まいにち修造」はけっこう買った方が多いですね!元気が出るといいますか、モノの見方を変えることで気分が楽になるという発見があります。

そして松岡中尉、じぶんのひめくりが海きゃんから出版されしかもその印税を寄付しちゃうんですから太っ腹な人です。これこそ軍人の鑑でしょうね^^。

昨日はものすごい風でしたが今日は比較的穏やかでした。明日は雨とか…(-_-;)。寒くなりそうです、ケイさんもどうぞ御身大切にお過ごしくださいませね。

こんばんは。
こちらの修造さんは愛弟子の大活躍でただ今は引く手あまたのお忙しさんのようですね。
彼の熱血さが評判を評判を呼んで大変な人気であるとか。こちらの修造さんも頑張っているんですね。
大和のマツオカさんも結構コソコソとしながらも急所をおさえている(笑) でも印税を私せずにさすがに偉いものです。いくらハメを外そうとも根底に流れる心意気、愛でしょうか。

見張り員さんの努力の物語。大和全部、歴史すべてが素敵ですよ。気分爽快にさせて頂きました!!

見張り員さん    こんばんは♪

いつもありがとうございます♪
修造さんのまいにち修造はブロ友さんも買って毎日見ている
方達もいて元気がもらえると言っていました。
見張り員さんも凄いアイデアですね。
松岡中尉はいろいろ問題がありますが次は何をしてくれるか
気になって楽しみです。
山中副長も大和に戻られていて松岡中尉のことも無事許されて
よかったですね。
気になる印税であるが松岡中尉は売り上げは兵学校などの各学校・
海兵団に寄付されて熱くなれよ未来の海軍さんたちと言って山本いそ
聯合艦隊司令長官は大感激して松岡中尉に感状を贈られて片付きま
したね。
見張り員さん寒さもまだ厳しいですから体調管理にお気をつけください。
モミジちゃんも元気にしていますか?


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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