2017-10

「女だらけの戦艦大和」・棗大尉の思いやり2<解決編> - 2015.02.10 Tue

 棗大尉が<そのこと>についてオトメチャンに話しているのを、山中副長と繁木航海長は物陰でハラハラしながら聞いている――

 

繁木航海長は小声で自分の横にしゃがんでいる山中副長に

「大丈夫でしょうか…オトメチャンはああいう話にほとんど免疫がないから私は不安です」

といい山中副長も

「そうね繁木さん。もしも過激な話を始めたら我々はあの場に突入して棗さんの口をふさぎましょう」

と決心してふたりはさらに聞きいる。

棗大尉は

「いいこと?あなたはまだ何も知らないって聞いたけどそれじゃあだめよ、少しくらいは知らないと。年齢相応ってことがあるでしょう、それにあまりおぼこちゃんだとお仲間からものけ者にされますよ」

と言含める。オトメチャンはちょっと首をかしげて

「ほいでも…うちはようわからんがです。どうしてみんなあげえなことをしたがるんじゃろうって。ほいでどうしてうちにまでそういうことをせえって言うんじゃろうかと。うちはそげえなこと今はしとうないんです」

と言った。ややきついオトメチャンの物言いに棗大尉はオトメチャンの両手をグイッと握りしめると

「したくないならそれでも結構、でもそれはねえ、それが人間の生きる根源だからよ。あなたは解ろうとしてませんね?いいこと?あなたはその行為を嫌悪してるみたいだけどあなただって私だって、この世に生きる人間はみんなそのことがあって生まれてきたのよ!あなたが言いたいのは解ってる、そんなことするのはハスッパでスケベな人間がすることではしたない、そんなことは結婚してからでいい…そう思ってるんでしょうよ。

そりゃそうよ本当ならそれが一番でしょうよ、正しいことよ!でもねあなた。我々は明日をも知れない海軍軍人よ?肉体の喜びを知らずに死ねますか…そしてそういうことを知らないで結婚なんかした日にはあなた!」

と最後は叫びに似た声になった。離れた場所で聞いていた副長と航海長は身を固くしている。

オトメチャンは

「知らんと…結婚したらどげえなことになるんですか?」

と静かに尋ねた。その瞳は真剣な光をたたえて棗大尉を見据えている。さすがに副長と航海長は立ち上がって棗大尉とオトメチャンのいる場所へと歩いてゆく。

「あ、副長。航海長も…」

オトメチャンが気がついてさっと立ちあがり次いで棗大尉も立ち上がると二人は敬礼した。それに返礼した後副長は

「まあ、座りましょう…棗大尉、今日はオトメチャン相手になんのお話です?随分熱がこもっていたではないですか」

と言ってその場に座る、航海長もそれに倣い棗大尉、そしてオトメチャンが座った。

棗大尉はしばらく下を向いていたがやがて顔を副長に向けた、そして

「副長も航海長も、お二人の御結婚の際私はいろいろな書籍をお贈りいたしましたがお役にたちましたか?」

といいふたりはほんのり頬を赤らめて「ああ、ありがとう…役に立ちましたよ」と小さな声で恥ずかしげに言った。棗大尉は「それはよかった」と独り言のように言ってから「私がこう言う話を若い子にしたり、結婚する人たちにああいう本を贈るのには私の――つらい経験を味あわせたくないという思いがあるからです」と言うと彼女は自分の話をし始めた――

 

――私は十六の年に結婚をしました。まだ何にも知らない本当におぼこな娘でした。私にとって結婚とは旦那さんと一緒に暮らし、ご飯を作り洗濯をしそして家に中の様々を切りまわして行くことでしかなかったんです。だから私は結婚のその日まで花嫁修業を懸命にしたわ。ご飯をおいしく炊いて、おかずをたくさん種類多く作って、着物も仕立てるようにしてそれで私はお嫁に行ったの。

でも、祝言のその晩よ。私は驚いたわ、あんなことをするなんてね。何も知らない私に夫になったあの人は欲望の限りを尽くしたの。私はもう驚いて何も言えない何もできなかった…でもその時は夫も初めてだから仕方がないくらいに思っていたみたいです。でも、結婚生活が一年二年経つうちに夫は『物足りない』って言いだしたの。もっとこうして欲しいああして欲しいって言って、でも私は夫のその願いにはどうしても応えてやれなかった。そんなこと普通の家庭の主婦がすることじゃないって思っていたから。私は娼婦じゃないって気位があったのよ。そのうち夫は「つまらない女だな」って一言言って以来私に触ってこなくなったわ。ようするに飽きられたのよ。そうしてあの人はよそに女の人を作ってね、ある日離縁を言い渡されたわ。『もっと大人の女になって欲しかったよ』って言われたわ最後に…それがどういうことか解りますよね。夫婦生活においてもっと、積極的になれってことよ。

だから私はあなたたちにそんな思いをして欲しくないのよ、あんな悲劇的な離婚はして欲しくないのです。だから私は、だから私は…!――

 

そこまで言うと棗大尉は顔を膝の上に伏せるようにして泣き始めた。山中副長と繁木航海長は黙って棗大尉を見つめている。オトメチャンもそれまでの表情とは違った顔つきで棗大尉を見つめる。

ややあって山中副長がそっと棗大尉の背中に手をやって

「つらい過去があったのですね大尉。そういうことって、そうよね、人に相談するわけにもいかないし徐々に慣れて行くしかないのでしょうね。大尉はその時まだ若すぎたのですよ。私達はまあ、経験こそなかったもののいろいろ話を小耳に挟んだりしてはいましたからあなたよりはまだ良かったかもしれません。が、初めてでしたからね。戸惑うこともありました。正直あなたのくれた本に助けられましたよ、私も夫も。あなたのその経験を、これからの人たちにそっと伝えてやってくれたらいいと思いますよ。あれがあなたの我々に対する思いやりだったんですね」

といい、繁木航海長も

「そうですよ。ちょっとでも心構えがあるとないとではその場になって違うかもしれませんものね。得た知識をひけらかすんじゃなくて心の内に秘めておけば、夫婦としてやっていくうちに役に立つでしょうから。ありがとう棗大尉、あなたのその思いやりを大事にします」

と言った。オトメチャンも

「棗大尉、うちはちいと大人げなさ過ぎました。あげえに食ってかかるようなことをして許してつかあさい。そういうことって大事なことなんですよね、人が人として生きてゆく上で大事なことなんじゃとうちは今ようわかりました。棗大尉、教えてくださってありがとうございます」

と言って大尉の手を握った。

棗大尉は三人を見つめ「皆さん…」と言ってまた涙を流した。夜風が温かく吹いて四人を包んだ――

 

やがて棗大尉はすっかり泣きやんで「解ってくださってありがとう。アタシ嬉しいわ、これからも皆さんの役に立つ情報を発信していきますからね」と今までのような話し方に戻っている。

副長が「棗大尉、良い御縁があるといいですね」と言うと棗大尉はニイ~~っと口を思いっきり横に広げて笑うと

「あらあ、アタシ二度目の結婚生活を謳歌してますわよ!同じ轍を踏まないようあれこれご奉仕してますわよ…そうだ私が考え出して夫に大好評のあのテクニック、伝授して差し上げますわ!」

といい――山中副長と繁木航海長は「へっ!?」とあわてて立ち上がると「いや!今はいい、ワタシタチ忙しいんだった、これで失礼!」と叫んで走り出す。

そのあとを「かわいい~~、副長も航海長もぜひ教えてあげたいわ~」と喜んで追う棗大尉。

その場に残されたオトメチャンは、訳が解らんと言った顔で立っている――

 

             ・・・・・・・・・・・・・・・・

棗大尉の過去があらわになりました。実は彼女にもたいへんな結婚生活がありました、が!転んでもただでは起きない棗大尉はその失敗をばねに新しい結婚生活を謳歌していました!

オトメチャンだけが良く解らない立ち位置のようで気の毒ですがいずれ彼女にも解る日が来るでしょう。

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● COMMENT ●

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
本当に素晴らしいはづちさんのコメントに私もいろいろ想像しちゃいましたw!
>「夜戦、上等!」
そう言って襲いかかられたら男性としては本望なのでしょうか(^_^;)。

箱枕の中の春画。今のようにあふれる情報も無い時代の、娘を嫁に出す親たちのせめてものはなむけだったのでしょうね。でも子供ができないというのは女にとっては致命的だったのかなあとかいろいろ考えますね。不妊の原因が女性だけに押し付けられていた時代はさぞつらい思いをしたことでしょうね…

オスカーさんには嬉しいおほめの言葉をいただいて本当に光栄です。オスカーさんの読書量には全然かないませんし教えていただくことも多い私、これからもあれこれ書いてゆこうと思います!

はづちさんへ

はづちさんこんばんは!
お返事遅くなりごめんなさいね。

天衣無縫?な棗大尉にも哀しい過去が…時たまそういう「それ」だけが夫婦のつながりだと勘違いしてる人もいるみたいですがちょっと悲しい気がしますね。身体をしょっちゅう結ばないと愛情を感じられないというのもなにか変な話です。
でも!転んでもただじゃおきない棗さん、新しい生活をエンジョイしてるようですから哀しい経験も無駄じゃなかったというわけでw。

>夜も無敵のテクニック集団
思いきり笑っちゃいました、想像するとなんだかすごいぞ!!

こんにちは。
はづち様のコメント
>まさか大和は、夜も無敵のテクニック集団になってしまうのでしょうか。(笑)
に「夜戦、上等!」な乙女軍団を想像してしまいました(笑)
昔の箱枕には春画をしまいこんでいたとか嫁入り道具のひとつだったとか聞きますが……やはり子どもが出来ないのは…みたいなのもあったんでしょうね。しみじみ、いろんなことを考えました~エロさ(笑)の中にキラリ光る社会風刺や教養が見張り員さまの作品の魅力のひとつだと思います~また新しいお話を楽しみにしています。

おじゃまします

こんにちは

なるほど、そんなことがあったのですか・・・。
棗大尉の前夫も、酷い人ですねえ。
「それ」だけが結婚生活ではないでしょうに・・・。
まあでも、そういうことがあったから、
今の棗大尉は存分に楽しめているわけですし、
プラスマイナスゼロになったのでしょうか??

まさか大和は、夜も無敵のテクニック集団になってしまうのでしょうか。(笑)

matsuyamaさんへ

matsuyamaさんこんばんは!
サイトの不具合ではご迷惑をおかけしてしまってごめんなさい!

私などがまだ幼いころには世話焼きおじさんおばさんが町内を跋扈していたそうですが肝心の私の結婚適齢期には絶滅にひんしていたようで…(-_-;)。でもまだ私世代は「女はクリスマスケーキ(25までは引っ張りだこだがそれを越すと貰い手が少なくなる)」と言われてそれなりに結婚を真剣に考えていましたね。
最近は結婚や家族をめぐる考え方が随分違ってしまっていますね。婚前交渉(死語か!)は当然のようですし。
そのくせ夫婦になればセックスレス夫婦が多く…いったいどうなってるんだろうと思いますね、少子高齢化に拍車がかからないといいなあと思いますがこればかりは…ですね(-_-;)。
棗大尉の「新婚初夜の医学事典」も不要な時代となったようですw。

昔は隣近所、隣町に顔が広い世話焼きおじさん、おばさんがいまして、年頃の男女の写真を持って結婚適齢期の若い人たちを紹介してましたよね。いまはそんな世話焼きさんの姿を見ることも無くなりましたし、結婚式でさえ仲人無しの披露宴が増えているようです。
だからではないでしょうが、新婚初夜の手ほどきを教えてくれる人もおりませんね。もっとも初夜はもうすでにすましている若い人が多いでしょうからね。棗大尉の作られた「初夜の心得」なる本は若い二人には必要ないかもしれませんね。
夫婦生活を楽しんでいる若い夫婦ばかりかと思っっていたら、最近ではセックスレス夫婦が増えているんですってね。だから少子高齢化が増えてるんですね。

画像の変更で対処されたようですね。今回はコメント書けました。お手数おかけしました。

すっとこさんへ

すっとこさんこんばんは!
いやあご迷惑をおかけしました!
いつもご訪問ありがとうございます^^。

棗。
なんだか意味深な名前ですがw、きっとこの先も何かしら騒動?を起こすのでしょう、ご期待下さい^^!

その後雪はいかがでしょうか、くれぐれもお気をつけてお過ごしくださいませね。

やったーーーーーーー!
これだ拍手もコメントも送れます!
何故でしょうか、画面がダブっておって
「ダブってますけど」を伝える術もなかったのです。

棗・・・この名前が意味ありげですね。
蓋と本体がぴったり合わさらないといけない棗
ですからね・・・・キャッ!

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは
スケベな棗さんでしたが彼女なりの苦労がそうさせたわけでした。
夫婦生活って難しいものですね特に若い時は…もう私などもとんと御無沙汰、顔も見たくない相手ではそんな気も起きません(-_-;)。
まあしょうがないかw。

棗大尉、この後猛威をふるうのでしょうか…オトメチャンにその毒牙?が向かないよう祈りたいですね。

サイトの不具合があると伺っていますのでちょっと壁紙を変更しました。やはり春が待ち遠しいので桜です^^。

No title

そうか。そんな過去があった棗さんだったのですね。
やはり夫婦生活って男も女もある意味奉仕ですよね。イコール悦ばせるという思い。それが愛情へと昇華するのでしょう。ふむ。なかなな奥が深かったのですね。もう忘れましたが(笑) 
でも元嫁との仲がギクシャクした時にある人から言われました。「夫婦生活が十分じゃないの」と。15年も経つと、それはそれなりに以下省略も多くなっておりました。反省ですね。

これから棗大尉を軸にこの艦はどうのようになっていくのでしょう。特にオトメチャンが毒されなきゃいいがと案じています。

壁紙の桜。きれいですね。いや、これは梅??
いずれにしても春色が溢れててとても心地よいですよ。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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