「女だらけの戦艦大和」・女々しくて…つらい!

 いよいよ明日、野村改め山中次子中佐の休暇が明ける――

 

夫の山中技術大佐の休暇も明けることとなってふたりはしばし別れて暮らすこととなる。その日を前に朝から次ちゃんは家の中の整理整頓に忙しい。そして「大佐、これはここに。あれはあそこにあります。一応この紙に書いておきましたから」と言って自分の留守中にも困らないように細やかな配慮をしている。さすが大戦艦の副長だけあってやることにそつがない。

そして大きなものの洗濯もして、すっかり干しておく。今日はいい天気、午後までに乾くだろう。

忙しく仕事をする次ちゃんの姿をほほえましく見つめつつ手伝いつつも山中大佐の心中は寂しさでいっぱいだった。

(こう言う心を女々しいというのだろうか…否違う!夫が妻を思うどこが女々しいのか。女々しくなんかない)

そうおもいつつも大好きで愛しい次ちゃんに悲しい顔は見せたくないと無理に笑顔を見せる山中大佐である。

次ちゃんも心中穏やかではない。

(こんなことを思ったら…大戦艦の副長らしくない、いえ、帝国海軍軍人らしくない女々しい奴だと思われてしまうかもしれない。でもやはり寂しい)

ともすれば涙が出てしまいそうだがそれを笑顔で押さえる次ちゃんである。

ふたりはお互いの心中を思いやりながら自分の心を見せないよう、必死で笑顔を絶やさないように努める。がしかし、陽が西の空に傾き周囲の暮色が満ちて来るともういけない、ふたりはだんだんうつむいて会話さえ途切れがちになってきた。明日の朝にはふたりはそれぞれの場所に別れなければいけない。大佐は海軍工廠技研へ、中佐は『大和』へ。

そして次ちゃん中佐は週末、土曜の夜には自宅へ帰ることが認められたとはいえ今週・来週はそうもいかない。たまった仕事を処理しなければいけないから上陸する時間はないだろうし今までを任せていた黒多砲術長との引き継ぎもしっかりせねばならない。

大佐もそれはよくわかってはいたが、三週間の間毎日一緒にいた次ちゃんが急にいなくなってしまうことが耐えられないほど寂しい。

(駄目ね、私。女々しすぎる)

(駄目な奴だな俺は。女々しいな)

互いに自分を女々しいと思いつつ時間だけが過ぎる。その晩は次ちゃんが心尽くしの手料理を大佐に作って大佐は喜んだ。甘煮(肉じゃが)、ハム寿司、さつま汁、こんにゃくの油炒り…それに大佐の上司の江崎少将の妻が差し入れてくれた刺身が食卓を華やかなものにしてくれた。

大佐は「おいしい、おいしい」とハム寿司をおかわりしさつま汁もおかわりしてくれた。そして「これは明日の私の弁当にしたい」とハム寿司と甘煮を少しとっておいた。

次ちゃんは「お弁当なら明日の朝、作りますから」と言ったのだが大佐は

「ぎりぎりまで私は…次ちゃんを抱いていたいんです。ですから明日はこれを持って行きます」

と言いきり、中佐はなんだか恥ずかしいような嬉しいようなそれでいて哀しいような不思議な気持ちになって、頬を赤らめるとうつむいた。

食事が終わると「私も手伝う」と大佐は次ちゃんと台所に立って片付けを始めた。大佐は

「次ちゃんが留守の間、何をどうすればいいのか何がどこにあるのかで困らないようにしとかないといけないですからね」

と言って微笑んだ。次ちゃんは「…大佐」と小さく言うとその瞳にいっぱい涙を盛り上げてしまった。それでも次ちゃんは気丈に片づけを終え、台所の床を拭き始めた。そして

「大佐、もうお風呂が沸いております。どうぞお先にお使いください」

と声をかけた。大佐はちょっとの間考えたが「じゃあ、先に。すまないね」と言って湯殿に入って行った。その姿を見てから次ちゃんはまた、台所の床を雑巾でこする。

 

大佐が風呂からあがり「次ちゃんもおはいり。疲れるからもうそのへんでやめて、お風呂におはいり」と声をかけた。次ちゃんはちょうどきりもいいところなので「はい。ではいただいてまいります」と言うと雑巾を片づけ台所の電燈を消すと湯殿へ。

大佐は居間に座って電燈の消えた台所をじっと見つめた。この三週間かいがいしく立ち働く次ちゃんを見て来た、てきぱきと仕事をこなし無駄な動きも無く舞を舞うようだと彼は思った。料理も上手で大佐は感激した。

(この人を選んで間違いはなかった。私は幸せだ)

しかし胸の中に吹き上げる寂しさはどうしたら収まるのだ?大佐は苦しげな表情になってふうっと息を吐いた。そうやってしばしぼんやりとしていると、次ちゃんが風呂から出てきた。

居間に悄然と座っている大佐にハッと胸をつかれたような表情になった次ちゃんであったが気を取り直し夫の隣にそっと座ると声を励まして

「大佐…御身体が冷えてしまいます。お布団に入りましょう」

と言った。大佐は我にかえって「そうだね、明日からまた頑張って仕事をしないとね。じゃあ、二階に行こう」と言って次ちゃんと一階の戸締りを確認すると二階へと階段を上がる。

寝室のドアを開け、二人が入りドアが閉まると大佐は次ちゃんをいきなり抱きしめた。

急に抱きしめられて次ちゃんは苦しかった、「大佐…」と声を上げると大佐は次ちゃんを横抱きにして寝台の上に荒っぽく置いた。

そして自分は次ちゃんの上に重なって長い口づけをした。次ちゃんの両手が自分の背中にそっと回ったのを感じた大佐は唇を離し、熱いその手で次ちゃんの寝巻のひもを解いた。彼女の白い胸がちら、と見えたらもう大佐はたまらなくなって夢中で次ちゃんから寝巻をはぎ取った。

夢中で彼女の体を抱きしめ、乳房をつかみその先を口に含み――気がつけば次ちゃんは痛みに耐える表情でいる。大佐は次ちゃんの胸から唇をそっと離した、そして見ればかすかにふるえる次ちゃんの乳首は薄く血がにじんでいる。

ハッとした大佐であったがそれが却って彼の欲情に火をつけた。次ちゃん、と彼は叫ぶと次ちゃんの両足を大きく開かせてその間に自分をあてがい、次ちゃんの入り口を探し当てると一気に突入した。

アアッ、と次ちゃんが小さく叫ぶと大佐の気持ちは一気に沸騰し、めちゃくちゃに彼女を突きまくり始めた。そして大佐の動きで弾む乳房をぎゅうっとつかむと「次ちゃん、次ちゃん」と叫ぶ。

次ちゃんはあまりの激しさにあえぐだけ。

大佐ははあはあと荒い息をついて彼女を突き上げながら

「次ちゃん…早く、早く私の子供を産んで欲しい…そして私といつまでも一緒にいて欲しい…」

と次ちゃんの耳元で囁いた。次ちゃんは「はい。――はい。私も早く…」と答えて次の瞬間激しいうねりにさらわれる。そうして二人は長い時間を過ごしたのだった。

 

翌朝早くふたりは目をさまし、大佐は「もう一度。暫く…できませんから』と申し訳なさそうに言うと次ちゃんの中に入っていった。

そのどこかうら寂しげな行為のあとふたりは一種軍装を着て、布団をきちんと直した。そして

「では。行こうか中佐」

と大佐は言ってふたりは玄関へと向かった。次ちゃんはそこでちょっと振り返った。三週間前のあの結婚式と披露の宴。ふたりではじめて過ごした楽しい日々。

(終わってしまいましたね)

心の中を木枯らしが吹き抜けるようなそんな感じがして次ちゃんの涙腺は緩んだ。が、彼女は帝国海軍の軍人である。女々しいところなど見せたくない。次の瞬間毅然として彼女は顔を上げると夫の大佐に微笑みかけて

「楽しかったですね。でも次の上陸の時はもっと楽しくなることをいたしましょうね」

と言って山中大佐もほほ笑んでうなずいたのだった。山中大佐も心寂しい気がしていたが(次ちゃんは寂しい気持ちを一所懸命押さえているじゃないか。男の私が寂しがってどうする!また会える、すぐに会える。その気になれば呼び出してだって逢えるじゃないか!気持ちを切り替えるんだ、女々しい心を捨てろ)と自分を励ました。

そして二人は、玄関に鍵をかけて坂道を下って行ったのだった。

 

梨賀艦長の命で『大和』から中佐を迎えに来ている内火艇が上陸桟橋に横付けされている。上陸桟橋まで送ってくれた山中大佐は、

「元気でね。次の上陸の時を待っていますよ。何かあったら連絡をくださいね…」

と言って妻の両手をしっかり握った。次ちゃんも夫の手を握り返し「はい!あなたも、どうぞお元気で。困ったことがあったらすぐに知らせてくださいね」と答えた。

そして次ちゃんは「では、行きます!ごきげんよう」と言うと決然、内火艇に乗り込んだ。エンジンがかかり、内火艇はしずしずと海面を走り始める。

内火艇が桟橋から数メートル離れて速度を増し始めた時、中佐はくるりと振り返って軍帽を取るとそれを振り、夫にしばしの別れを告げた。

そして夫も軍帽を取ってそれを振って妻の思いに応えたのだった。

 

――「なんかねえ、泣けてきてしまいましたよ。あんなに清純で毅然としたご夫婦、見たことがないです。さすが副長、私は今まで以上に副長にあこがれてしまいました」

そう言ったのは内火艇を漕艇していた中尉の弁。それを聞いた皆は「そうでしょう、そうじゃろう。副長ほど素敵な人は帝国海軍ひろしといえどちょっと居らんもん。それがうちらの艦の副長とは嬉しい限りじゃわあ」と言って副長を誇りに思ったのだった。

 

<山中次子>副長は久しぶりの大和の甲板に立って大きく息を吸い込んだ。先ほどまで自分の胸を占拠していた女々しい思いはどこかに吹き飛んでいた。代わりに今は、次に夫に会える日への期待で膨らんでいたのだった。

つらい思いは『大和』に足を踏み入れたことで別のものに昇華されたのだった。

 

「副長、<山中副長>!お帰りなさい」

たくさんの将兵たちの声が、副長を包んで彼女は「ただ今戻りました!」と言うと満面の笑みでその声の主たちに力いっぱいの敬礼をしたのだった。

梨賀艦長を始め多くの幹部、将兵たちが副長を取り囲んだ――

 

               ・・・・・・・・・・・・・・

副長と山中大佐、別れがつらかったです。女々しいのではないかとつらい思いもしましたが何とかお互い乗り越えたようです。

だいじょうぶ、また会えます!

 

女々しくて…というとやはりこの歌でしょうか。ゴールデンボンバー「女々しくて」を陸上自衛隊音楽隊が演奏しています。雄々しいぞ!


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Secre

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
愛が深いゆえに、絆が固いがゆえにこんな言葉になってしまったのでしょうね。三週間の休暇でこの二人はしっかり心を結び付けました。
この先きっとこの二人にはよいことが待っているでしょう!
そして〈大和〉には素敵な仲間がいます。さみしい心を支えてくれることでしょう。

私の好きな春が早く来ないかと心待ちにしております^^。
春のやさしさが大好きです。人の心も一年中春のようにやさしかったらいいのにといつも思います。なのにそれを裏切るような酷い事件ばかりが報道をにぎわせて悲しくなります。
昭和なら90年なんですよね…その年がこんな始まりでつらい思いです。

日本人からまず、精神の浄化をはじめないと!

No title

>(終わってしまいましたね)
終ったのではないのに。とてもつらい言葉に胸がジンジンしています。これは決して別れではない。別々は束の間のことだと思いたいくらいに素敵なふたりです。きっと佳きことがあるだろうと信じています。
でも大和に還っても、こんなにも素晴らしい仲間たちがいてくれてほんの少しばかりホッとしています。

春はまだまだ遠いですが、見張り員さんの大和にはそこここに春の優しさが漂っていますね。
殺伐としている昭和90年になる今年。見張り員さんが書く大和の人たちのように精神が高潔な人たちがひとりでも多くいてほしいと願ってやみません。

はづちさんへ

はづちさん今晩は!
副長、「大和」に復帰です。しかし新婚さんですから離れて暮らすのはたまらないものがあるのでしょうね・・頑張れふたり。

そうです、あの棗大尉今こそ出番なんですがねえ(;´・ω・)。
その棗大尉、意外な過去がありまして次回、そのお話になります。なぜ彼女があんなおせっかいになったのか?こうご期待であります!

おじゃまします

こんにちは

とうとう、副長が大和に戻る日が来ましたね。
新婚さんですから、しばらく会えないのは寂しいでしょうねえ。
あのお節介な棗大尉は、むしろこういう場合にこそ、
良いアドバイスをしてあげれば、みんなからも喜ばれるでしょうに。
その寂しさを、ご自分の力で見事に乗り越えるとは、
さすがですね、副長は。
これからの活躍に期待したいです。
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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