2017-10

「女だらけの戦艦大和」・姫たちの鱶退治2<解決編> - 2015.01.29 Thu

 「あれ、鱶じゃねえか」との鬼河兵曹の叫びに座席から身を乗り出した蛇原飛曹長と龍神兵曹は――

 

「キャーッ、怖ーい」

――とは言わないのであった。言わないどころか三姫は喜び勇んでその場で飛行服を脱いだ。その下は防暑服。そしてもう一度しっかり飛行帽をかぶると蛇原飛曹長は

「行くよ!覚悟はいいなっ」

と叫ぶなり機外に出た。ふたりの兵曹もそれに続き翼の上に立って鱶を睥睨する。

 

そもそも、以前に『大和』の熱い女・松岡中尉が自分を襲おうとした鱶連中を完膚なきまでにやっつけたことがありそれ以来この辺の鱶は<帝国海軍の女将兵>を怖がるようになって鱶仲間の間でも「絶対に帝国海軍には手を出すな。幼いものにもよく伝えろ、特に年若いものは興味本位から近付きたがるが良く言い聞かせてそんなことさせるんじゃない、命にかかわる!」と常に注意喚起が促されている。

そして今日、<天山の三姫>に接近した鱶はまだ若い個体でいわば血気盛んな御年頃。親や仲間たちが止めるのも聞かないで「ちょっとそのへん泳いでくるぜえ。――へ?テーコクカイグン?なんだそりゃ。大丈夫大丈夫俺はそんな変なもの食わないから」とうそぶいて一人群れを離れて冒険しに来たのだ。

そして前方に浮かんでいる天山を発見、興味しんしんで近寄って来たのだがこの鱶にとっての最大の不幸のうちの一つが、彼はまだ「帝国海軍」の軍人や艦艇・飛行機を見たことがないということとそして…

 

「鱶だあ、やったぜ本物だ。これを仕留めて帰れば艦のみんなが喜ぶよ!艦長にふかヒレ酒を飲ませてさし上げられる。命に代えてもとっ捕まえよう!」

蛇原飛曹長が檄を飛ばすと鬼河・龍神の両兵曹も「オオーッ!」と両腕を天に突き上げて雄たけびを上げる。

そう、彼女たちは姫は姫でも「軍姫(いくさひめ)」、勇ましいことが大好きな女三人であった。この三人と遭遇してしまった年若い鱶に今、不幸が訪れようとしていた。

 

まず「蛇姫」が機内から持ってきた長いロープを手に「おりゃっ!」と海に飛び込んだ。そのあとを大きなスパナを持った「鬼姫」が、さらに小型の金づちを持った「龍姫」が海に飛び込む。

鱶は「おお、うまっそう~」と大口を開けて三姫に突進して行った。無論鱶は三姫を食う気はなかったがちょっとからかってやろうという気になったのだ。(これが例のテーコクカイグンなんだな。ちょっと遊んでやろうかな)と。

 

その時。

鱶はドスン、と背中に衝撃を感じた後自分の首に何かが巻き付いたのを覚えた。「?」と見れば「蛇姫」がニタニタ笑って鱶の背中にまたがり首にロープを巻きつけている。怒った鱶は蛇姫を「くってやる!」と暴れた。

と今度は「暴れんない!おとなしくせんかこの鱶野郎」と大声が響いてその顔に激しい衝撃が。鱶は自分の顎がぶっ飛んだのではないかと思うくらいの衝撃にあわててそちらを見れば――怒り心頭に発した鬼姫がスパナで鱶の横っ面を思い切りひっぱたいたのだ。

その間にも背中の蛇姫は鱶の首に巻きつけたロープをぐいぐいと締めあげる。息が苦しい…鱶は(しまった、とんでもないものを遊びの相手にしてしまった)とたいへん後悔した、がもう、あとのまつり。

さらに龍姫が嬉しそうに笑いながら

「知ってる?鱶の弱点、ここなんだよねえ~」

というと――手にした金づちで鱶の鼻先を思いっきり渾身の力を込めてぶん殴ったのだった。

 

鱶は可哀想に白目をむいて昏倒している。三姫たちは万歳三唱、「鱶を退治したぞ―」と大喜び。

蛇原飛曹長はその鱶をロープごと引っ張って天山に縛りつけた。そして「なんだあ、鱶なんて言うからもっと恐ろしくってたいへんなものかと思ってたら意外とだらしないなあ」と不満げに言う。

鬼河兵曹もそれを手伝いながら「そうですよね、なんだかがっかり。もっと緊迫した状況になるかと思ってたらこの程度なんですねえ」というし龍神兵曹も「もうちょっと踏ん張ってくれなきゃあ我々としても張り合いがないじゃないですかねえ。助けが来るまでまだまだありそうだから楽しめるかなと思って、私もこの片腕食われるくらいの覚悟だったのに…弱すぎますよ」とこぼした。

鱶が弱すぎるのではなくって自分たちが異常に強すぎることに気がつかない「天山の三姫」である。

 

やがて――。

息子の帰りがあまりに遅い事に心配した鱶の母親は群れの仲間に呼び掛けて探しに出た。道々母鱶は「まさか帝国海軍の人にちょっかい掛けたりしてないでしょうねえ」と心配そう、父親鱶は「大丈夫だとは思うんだが、あいつはけっこうお調子者だからなあ」と言って周囲を見回す。

どのくらい泳いだだろうか…不意に仲間の鱶の一匹が

「あれ!あれを見て、あそこに飛行機が浮かんでいるが」

と叫ぶ。ハッとした親鱶たちはそちらを見た。と――

「キャー、息子が、むすこがあ!」

と母鱶が叫んだ。鱶たちが見るとあろうことかわが息子鱶が飛行機に縛りつけられて気を失っているではないか。

母鱶は卒倒せんばかりに驚いて息子の名を呼びながらそちらへ全速力で泳いでゆく。

「危ない!あの連中は何をするかわからないから飛び出すんじゃない!」

父鱶も叫びながら妻のあとを追い、群れの鱶たちも続いた…

 

その群れを鬼河兵曹が見つけた。

「おお、また来たぞ。やるかあ!」

そう言って三姫はまたも戦闘態勢を整える。ロープを、スパナを、金づちを構えて不気味な笑いをして待ち構える三姫を見て、鱶たちは恐怖に震えた。

母鱶は「…あの子、生きてるのかしら」と言って心配げに息子を見る。すっかり気を失って飛行機に縛りつけられた鱶息子は波のうねりにその身を任せている。

「おい、やるか貴様ら!」

蛇姫が怒鳴った。鱶たちは身を震わして「や、やりません!とんでもない…私達は息子を探しに来たんです。息子が一人で泳いで行ってしまったから、そしたらここに縛られているのを見つけました。どうか息子を返して下さい」と懇願した。

鬼姫は「ああ言ってますけど、どうします?」と蛇姫に尋ねた。龍姫が鱶と蛇姫を交互に見つめる。

蛇原飛曹長は翼の上にしゃがむと鱶たちを見た。鱶たちは今にも泣きそうな顔で蛇原飛曹長を見る。飛曹長は

「貴様らはこの鱶の親か」

と言って鱶はうなずいた。飛曹長は「子を思う心は人も鱶も同じだな」と言うと

「若い連中やこれから生まれる子供たちによく言い聞かせなさい。帝国海軍に間違ってもちょっかい掛けるんじゃない、とな」

と言って若い鱶を縛っていた縄を解いてやった。その頃には若い鱶は息を吹き返し「ごめんなさい」と謝り龍神兵曹は

「こちらも熱くなりすぎた、悪かったね。鼻先は痛くはないか」

とこれも謝る。若い鱶は「大丈夫です」と言って笑い、父親の鱶は飛行機を見て

「これはお困りでしょう。どうです、我々であなた方を飛行機ごと引っ張って行きましょう」

と申し出た。これには三姫は大喜び、鱶をそれぞれロープでつないで彼らは天山を引っ張ってくれた。

そのくらい行ったところでか、前方に駆逐艦が見え駆逐艦の見張り員は「鱶が!鱶が天山を引いてきた!」と腰を抜かさんばかりに驚いた。

この駆逐艦は空母「白龍」からの信号を受け至近の基地から捜索に出たものであった。天山の三姫は駆逐艦に移乗するとき

「ありがとう、あんなにひどいことをしたのにここまでしてくれて。もう二度としない、許してくれるかな」

と鱶に尋ねた。鱶たちは「息子を助けてくれたんですもの、許しますとも」と言って駆逐艦の周囲を一周して去って行った。

その後ろ姿を見送りながら蛇原飛曹長は

「とんだ鱶退治だったね。でもまあ、解り合えてよかった。まあこれもその下地を作ってくれた松岡中尉のおかげなんだね」

と言って笑った。

彼女たちの行く手には母艦・白鵬が両手を広げて待っている。三姫は土産話を抱えて帰艦することだろう。そして鱶たちの間に<帝国海軍の姿を見たらなりふり構わずすぐに逃げること>という命令が下ったのは言うまでもない――

 

              ・・・・・・・・・・・・・・・・

怖い姫御前でした。

皆さまは決して真似をなさいませんように――って誰がするかでございますね。しかし鱶の類は顔面を殴られると弱くなるらしいですね。でも試したくないです…やはり怖いから。

次回はオトメチャンのお話です。お楽しみに。

関連記事

● COMMENT ●

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
今CMでも金太郎や浦島太郎、桃太郎が出てきて日本の昔話が注目されるといいなあと思いますね^^、この物語もちょっと、そんな昔話テイストを入れ込みました。

この姫君たち、ちょっと勇ましくって怖いですが心の奥は優しい大和撫子です。そして物事に臨機応変柔軟的に対応できる人材でもあります。

名古屋の毒姫にはもう言う言葉もありません。あれはくるっているとしか思えません。いつから日本はこんな国になってしまったのでしょう、情けないとともに将来がたいへん不安です。

今日の東京は日差し暖かでしたが北風の強い一日でした。残り雪が寒さを誘います。
いつもご心配をありがとうございます、用心しながら日々過ごしておりまする!
にい様もお健やかに^^!

ウダモさんへ

ウダモさんこんばんは!
ほんとに昨日の雪には閉口でした…仕事しても客は来ないし、大事な残り少ないw人生の一日を思いっきり無駄にした気分でした(-_-;)。

鎌倉は雨でしたか!
それでも寒かったでしょう…お風邪など召しませんようにね^^。

お互い元気で書きまくりましょうね❤


柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさんこんばんは!
すごい名前の三人でしたがやることもすごかった(-_-;)!
駆逐艦の見張りは、鱶に引かれて来る飛行機にさぞ驚いたことでしょうw。そして松岡中尉の影響の強さはもう、女だらけの海軍随一ですね^^。

昨日は雪でたいへん寒かったです(・・;)。うちのあたりは3センチくらいの積雪でした。今日もまだ裏庭には残雪がありますよ!
昨日はそれでも早いうちに雨になりそのあとやんだので散歩はOKでした。
本当に寒いですね、柴犬ケイさんもどうぞ御身大切にお過ごしくださいね^^。

No title

桃太郎と浦島太郎と……、日本昔話がミックスされたような面白い話でした!!
蛇姫、鬼姫、龍姫。少々勇ましすぎますが心根が優しいですね。今どきこんな柔軟性のある人間が居るだろうかと思いました。柔よく剛を制すの言葉通り。心の優しい彼女たちであればいざとなれば日本を護り抜いてくれるでしょう。
そういえば名古屋に狂った毒姫が現れましたね。これこそ病める日本の象徴かもしれません。あ~~、いやだいやだ。

東京の寒さは落ち着きましたか。大和姫におかれましては気圧の関係で体調のバランスをこわしませんように。

おはようございます♪

都心は昨日、雪だったそですけど、大丈夫でしたか?
こちら鎌倉は一日中雨で、とても寒かったです。

引き続き、お身体大切に、楽しく執筆活動して下さいねb

ちと、遅れたぶんを取り戻してきまっス!w

No title

見張り員さん    こんばんは♪

いつもありがとうございます♪
鬼河兵曹が鱶を見つけた叫びに座席から
身を乗り出した蛇原飛曹長と龍神兵曹さん
達は名前からして頼もしいですね。
鱶を退治に海に入って捕まえて凄いですね。
助けにきた鱶の両親に駆逐艦まで引いてもらい
空母白龍から
見張り員さんは鱶が天山を引いてきたと腰を抜
かさんばかりに驚くでしょうね。
駆逐艦は空母「白龍」からの信号を受け至近の
基地から捜索に出て天山の三姫は駆逐艦に
移乗するときに鱶と別れて3姫は松岡中尉の
おかげで無事助かったんですね。

そちらは今日は雪でしたがモミジちゃんの散歩
は大丈夫でしたでしょうか。
こちらは雪は降らないで朝から雨で本降りでした。
寒さも厳しくなりましたから風邪などひかれません
ようにお気をつけください。

はづちさんへ

はづちさんこんばんは!
チョと拍子抜けの感の否めない話になってしまいました(-_-;)。
この三姫はしとやかな姫御前ではなく怖い姫でした…私も鱶のいる海には絶対、百万円積まれても入りたくないです。絶対大丈夫という檻に入れと言われても嫌ですね、キッパリ。


松岡中尉の影響力、全海軍から生物界にまで及んでいます。いったいどこまですごい女なのでしょう…これも怖い。

おじゃまします

こんにちは

なんと!?
こうも簡単に鱶をやっつけるとは!
しかも、鱶の恩返しですか!
こんなことをやってのけられるのは、三姫だからでしょうけれども、
鱶のいる海に飛び込むとは、私にはとても真似できないですね。

それにしても、このようなところにまで、
松岡中尉の影響が及んでいるとは・・・。


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://haitiyoshi.blog73.fc2.com/tb.php/934-9d6e3fc5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

「女だらけの戦艦大和」・賢いぞ!オトメチャン «  | BLOG TOP |  » 「女だらけの戦艦大和」・姫たちの鱶退治1

プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

最新記事

最新コメント

フリーエリア

無料アクセス解析
無料アクセス解析
現在の閲覧者数:
Web小説 ブログランキングへ
小説家志望 ブログランキングへ ブログランキングならblogram
夢占い 夢ココロ占い (キーワードをスペース区切りで入力してください。)

カテゴリ

未分類 (21)
大和 (486)
武蔵 (66)
大和と武蔵 (41)
海軍航空隊 (28)
麻生分隊士 (3)
オトメチャン (39)
連合艦隊・帝国海軍 (155)
ふたり (69)
駆逐艦 (10)
ハワイ (8)
帝国陸海軍 (23)
私の日常 (112)
家族 (22)
潜水艦 (3)
海軍きゃんきゃん (24)
トメキチとマツコ (2)
ものがたり (8)
妄想 (5)
北辺艦隊 (1)
想い (14)
ショートストーリー (4)
アラカルト (0)
エトセトラ (5)
海軍工廠の人々 (5)
戦友 (10)

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

FC2ブログランキング

FC2 Blog Ranking

FC2Blog Ranking

最新トラックバック

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

RSSリンクの表示

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード