2017-09

「女だらけの戦艦大和」・姫たちの鱶退治1 - 2015.01.27 Tue

 西太平洋のある海域で連合国軍と帝国海軍との小さな戦いがあった――

 

戦闘そのものは当然のように日本海軍の勝利で終わった。オーストラリアから出撃して来た連合国軍の戦艦・巡洋艦そして駆逐艦などの戦隊を、空母「鶴龍」「白鵬」からの艦攻・艦爆隊が叩き潰したのだ。この小さな物語はその「白鵬」艦攻飛行隊のとあるペアのお話である…

 

「白鵬」所属の天山艦攻隊は一機の損失も無く意気揚々と編隊を組んで帰投中である。戦捷気分は飛行隊すべてに充満、大隊長の神山大尉は操縦の姉川上等飛行兵曹に

「浮かれるのもいいかげんにしないと、着艦に失敗するぞ」

と言って笑った。夜明け前に終わったこの作戦であるから母艦に着くころは朝飯のころかもしれない。姉川上飛曹はそう思ってウフフと声に出して笑う、すると電信の黛一等飛行兵曹も同じ思いなのかウフフと笑いながら僚機を見つめている。

 

母艦まであと二十分の位置に来て、神山大尉は一機の天山の様子がおかしいのに気がついた。どうやらエンジン不調のようで神山大尉は

「なんということだ!あと少しのところまで来て…踏ん張れないか?」

とその天山の方へ自分の機を寄せさせて手信号を送った。この天山は小隊長機のペアが乗り込んでいて操縦の鬼河一飛曹・偵察の蛇原飛行兵曹長そして電信の龍神(たつかみ)一等飛行兵曹はその名前もさることながら戦闘時の働きは美しき軍神(いくさがみ)そのもので敵からも一目置かれて

「ニホンノJILL(ジル。アメリカなど連合国軍側の天山のコードネーム)を見たらスグニゲロ!アノ中にはデビルが一機、マジッテルヨ!」

と恐れられている。そのJILLの襲撃を受けた今回の連合国軍艦隊はたとえようもなく悲劇だったが。

ともあれ、そのペア――搭乗員仲間からは「天山の三姫」とあだ名されているが――のうちの一人は機体の不調にもろに不快感をあらわにした。

操縦の鬼河一飛曹は

「バッカヤロー!こんな海のど真ん中でエンジン不調になる馬鹿が居るか!貴様それでも天山か」

と姫に似合わぬ怒声を出して怒るし電信の龍神一飛曹は

「こんなところにおっこちておぼれ死んだら帝国海軍飛行隊の名折れだ!しっかりしろ鬼河兵曹、貴様の操縦にかかってるんだぞ、天山のせいにするな貴様」

とこれまた姫には似つかわしくない汚い言葉で叫ぶ。

偵察の蛇原飛曹長は「うるっさいなあ」と顔をしかめつつも

「ま、あきらめないで頑張りましょう。母艦まではあとどのくらい?」

とこれは姫らしいおっとりした物言いで言って鬼河一飛曹は「はい…あと十五分ほどです」と答えた。その時、機体がゴトッと鳴って大きく揺れた。鬼河兵曹が

「エンジン止まります!」

と叫んで、三人は僚機を見返ると一斉に敬礼し<別れ>を告げる。僚機たちは口々に「あきらめないで」「あきらめんな」「踏ん張れ」と叫んだし、大隊長も「待ってろ、母艦に連絡だ」と叫んで「白鵬」へ救難要請の無電を送る。上空を飛んでいた零戦隊の一機が舞い降りてきて<助けが来ますから頑張れ>と手信号を送った。その零戦の搭乗員嬢に敬礼したペアではあったが。

 

<三姫>の天山はその高度をだんだん下げて行った。

 

<三姫>の乗った天山はその腹を海面にこすって不時着水した。ザザーン、と波しぶきが立って数瞬の間風防が海水をかぶる。

衝撃に辛くも耐えたペアの三人は衝撃の波が収まるとそっと顔を上げた。まず蛇原飛曹長が

「大丈夫?怪我はないか」

と二人に問うた。蛇原飛曹長は着水の際、頭を風防にぶつけたのか脳天が痛む。そっと手をやってみたが大きなけがはないようだ。ほっとしていると龍神兵曹が

「私は平気であります。蛇原飛曹長、鬼河兵曹は大丈夫ですか?」

と聞いてきたので蛇原飛曹長は「脳天直撃だが大丈夫だ。――鬼河兵曹、あなたはどうです?」と言った。鬼河兵曹は先ほどから黙っている。

もしや、と飛曹長は風防を開けてみると鬼河兵曹は無傷で座席に座っているが何やら細かく震えているようだ。

「どうした、鬼河兵曹」

飛曹長の問いに鬼河兵曹は顔を上げるとえへへっ、と笑い

「すみません…私小便がしたくって。さっきの衝撃で漏れたかと思いました」

と言って飛曹長も龍神兵曹も笑った。飛曹長は機体の様子を見ると

「これならすぐに沈みそうもないな。ともあれ、大事なものを持って万が一に備えよう」

と言ってさまざまをつめた用具袋を持つと座席の上に立ちあがり周囲を睥睨した。鬼河兵曹が「降りますか?」と聞いて飛曹長は軽くうなずいた。

はたして三人は翼の上に降り立った。

「折れやせんかな…」

「平気だろう、だがあまり先端に行くな」

「をれより私は小便がしたいです」

口々に言いながら三人はそっと翼の上にしゃがんだ。小便がしたいとさっきからうるさい鬼河兵曹はそうだ、と口の中で言うと後ろを向くなりパラシュートの帯をはずし始めた。そして救命胴衣も外して翼の上に置いた。

何をしとるんだ、と言った顔で彼女を見返った蛇原飛曹長は「うわ!ここでするのか…」と悲鳴のような声を上げた。鬼河兵曹は

「はい、します。もう我慢なりませんからね…どうでもいいですが見ないでくださいね。いくら女同士といえども私は見られたかないですから」

と言いつつ飛行服の軍袴を脱ぐなり翼の根元に寄るとしゃがみこんだ。派手な音がして鬼河兵曹は思いっきり放尿中。

「いやだなあ。まったくよりにも寄って愛機の上でやらかすとは」

龍神兵曹は顔をしかめたがこればかりは仕方がない。蛇原飛曹長は

「まあ、このまま助けが来なかったりして死ぬとしたら小便腹にためたまんまで死ぬんはたまらないからね。まあ、出来るうちに思いっきりやれよ」

と言って自分も飛行服をもそもそとはぐり始める。それをいた龍神兵曹も――

 

結局三人とも大海原で大放尿をかまし、ご満悦である。姫の名が泣くというものだが「生理現象だ。仕方がないだろう?」とうそぶく三姫。きちんと飛行服を着直したところで龍神兵曹は

「腹が減りましたね。そうだ、弁当がちょっと残っていたなあ~」

というと飛行服の軍袴のポケットをガサガサやりだした。そして中から「あった!いなりずし~。ラムネ~、ほいアンパン!」と出るわ出るわ…次々出して皆大喜び。蛇原飛曹長は

「これなら助けが来るまで持つぞ。有り難いありがたい。それにしても貴様のポケットちょっとすげえな」

と言って感心しきり。そして蛇原飛曹長の用具袋から海苔巻きが手つかずのままで発見され鬼河兵曹のパラシュート袋の中からはドロップスの缶が出てくる。

三人はそれを、機内に戻って食べ始めた。鬼河兵曹いわく、「いくら海の水が洗い流したと言っても、小便こいた後の場所で食うのはちょっと嫌ですからね」。

三人は食った。

「腹いっぱい食べてしまいましょう。生きるにしても死ぬにしても食っとけば何とかなる」

蛇原飛曹長はそう言って巻きずしを食った。

鬼河兵曹がラムネのふたを開けぐびぐびっと飲んだ、そのあと。

「おい!見ろよあれ!鱶じゃねえか」

突然彼女はそう言って、空のラムネ瓶で前方を指した。

「おおっ!」

蛇原飛曹長と龍神兵曹が座席から半身を乗り出してそちらを見た――

    (次回に続きます)

 

             ・・・・・・・・・・・・・・・

 

「天山」搭乗員のお話です。

鱶に襲われてしまうんでしょうかこのペア。気になりますね…

 

私は小学生のころこの写真を見てたいへんな衝撃を受けました。そしてこの艦攻が大好きになりました。周囲に対空砲火を受けつつも雷撃に向かう「天山艦攻」です。
DSCN1587.jpg

関連記事

● COMMENT ●

鍵コメさんへ

鍵コメさんこんばんは!
そう言えばむかーしうちの近所に住んでた農家のお婆さんがタチションしてるの見ましたっけ(-_-;)。でも構造上うまくないと思うんですがねえ(・・;)。

日本の軍用機はどれも美しいですよね!私は天山、97艦攻が特に好きですが彗星もいいですね。遊就館に行くと必ず拝見します。
私も最長6時間くらいいたことがありますよw。

はづちさんへ

はづちさんこんばんは!
いきなりの姫たちの放尿シーン…失礼いたしましたっ!
でも我慢に我慢を重ねたようですので御容赦を^^。男性搭乗員なら、瓶を代用できるのですがこういう時女の子は困りますねw。

鱶、鮫…同じなのかしら?でも怖いです。昔一度だけハワイに行ったことがあるんですが(注・真珠湾攻撃に行ったのではないです)そこの水族館だったかに「サメの腹からこんなものが出ました」的なものが展示してあって、なんとびりびりになったTシャツやら壊れた腕時計などが展示されていて…恐怖に震えました。
でも、海が好きッ!!

さあ三姫はこの後どうする!ご期待を❤

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

おじゃまします

こんにちは

<三姫>、いきなりの放尿ですか。(笑)
およそ『姫』らしくありませんけれども、
社交界の場じゃあるまいし、
そんなことも言ってられませんよね。

などと思っていたら、鱶のご登場。
現在の私たちの日常生活では、
鱶に襲われる危険性は低いので忘れがちですが、
今でも海には危険がいっぱいなんですよね。
さて、<三姫>は、この後いったいどうするのでしょうか。
楽しみにしております。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
姫御前達がまあなんと…w。男性のツレションよりはまだいいでしょうか^^。
そしてさあ大変鱶の登場です…彼女たち食われてしまうのでしょうか。鱶なんて考えただけでも私は怖くってたまりません…ウウウ!

今回空母の名前は随分苦しみました。あれこれ書いては消し書いては消し。最終的に決まったのは大相撲千秋楽を見ていて「これだ!これしかない!」とw。
ここ二三年、相撲が好きになってきております、以前からも好きでしたが特に。亡き父が相撲好きだったのでその血があるのでしょうかw。
ともあれ次回をお楽しみに。

昨日は春のようだったのに今日は真冬!ついてゆけません。先週末から胃の痛みに悩まされています。病院に行ったら風邪から来る胃腸炎だとか(-_-;)…にい様もどうぞ御身大切にお過ごしくださいませね。

No title

おはようございます。
男の連れションはよく見る光景ですが姫たちのとはまた。きっときれいだったろうななどと妄想しています。
そんな放出のニオイに誘われて鱶の出現ですか。プカプカと浮いている天山が心もとなくなってきました。いろいろ飲み食いしている場合じゃないですね(笑)

しばし大和から離れて、今回新登場の姫たちと話題の白鵬。先々が楽しみです。

東京は寒いのではないでしょうか。インフルエンザの対策をして過ごして下さいね。


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://haitiyoshi.blog73.fc2.com/tb.php/933-fd966296
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

「女だらけの戦艦大和」・姫たちの鱶退治2<解決編> «  | BLOG TOP |  » 「女だらけの戦艦大和」・契りし人はあなただけ2<解決編>

プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

最新記事

最新コメント

フリーエリア

無料アクセス解析
無料アクセス解析
現在の閲覧者数:
Web小説 ブログランキングへ
小説家志望 ブログランキングへ ブログランキングならblogram
夢占い 夢ココロ占い (キーワードをスペース区切りで入力してください。)

カテゴリ

未分類 (21)
大和 (486)
武蔵 (66)
大和と武蔵 (41)
海軍航空隊 (28)
麻生分隊士 (3)
オトメチャン (39)
連合艦隊・帝国海軍 (155)
ふたり (69)
駆逐艦 (10)
ハワイ (8)
帝国陸海軍 (23)
私の日常 (110)
家族 (22)
潜水艦 (3)
海軍きゃんきゃん (24)
トメキチとマツコ (2)
ものがたり (8)
妄想 (5)
北辺艦隊 (1)
想い (14)
ショートストーリー (4)
アラカルト (0)
エトセトラ (5)
海軍工廠の人々 (5)
戦友 (10)

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

FC2ブログランキング

FC2 Blog Ranking

FC2Blog Ranking

最新トラックバック

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

RSSリンクの表示

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード