2017-10

「女だらけの戦艦大和」・ただいま!お帰り!! - 2015.01.17 Sat

 野田改め、高田佳子海軍上等兵曹はいよいよ明日、『大和』に帰艦することになった――

 

養母となった高田瑞枝は喜びと寂しさの入りまじった表情ではあったが「よッちゃんが元気になってうちは嬉しい。よッちゃん、艦に帰ってもしっかりやりんさい」と励ました。高田兵曹は

「はい。うちはお母さんのお言いつけを守って帝国海軍軍人としてその名に恥じん働きをいたしますけえ、見守ってやってつかあさい」

と言って頭を下げた。

その夜はふたり水入らずで瑞枝と一緒に作った料理を食べて、しばしの別れを惜しんだ。そしてその晩、布団を二つ並べて敷いて眠ったのだが兵曹が「お母さん…」と伸ばしてきた手を瑞枝はしっかり握ってやった。兵曹は安心したように瑞枝の手を握り返し安らかな寝息をたてはじめた。

 

翌朝早くまだ暗いうちに、高田の家に生方中尉が迎えにやってきた。生方中尉は「高田さん朝っぱら早くから申し訳ありません…そしていろいろとお世話になりました。ありがとうございました。そして――これからもよろしくお願いいたします」というと瑞枝にしっかり敬礼をした。

瑞枝はその敬礼を、深く頭を下げて受けた。

高田兵曹も瑞枝に敬礼し「お母さん。私は今から艦に戻ります…また帰ってきますけえその時はどうぞよろしゅう願います」と言って笑った。

瑞枝も「風邪をひかんようにな。また帰ってくるんをまっとるけえね」と言って笑った。高田兵曹は嬉しそうに笑って生方中尉のあとをついて歩きだした。

その二人の後ろ姿に、瑞枝はもう一度深く頭を下げたのだった――

 

ふたりは上陸場目指して歩いた。

道々行きあった兵たちがそっと高田兵曹を見て通る。まだ薄暗いのでちょっと見ただけでは誰かわからない、一人の下士官嬢が「あれ、野田と違うか?」と囁き連れの下士官嬢が「違うで。野田はもっとぶくぶくしとってやないね。あん人はもっとすっきりしとってよ?ほいでも誰じゃろうねえ、見た事ない顔じゃわ」と言って首をかしげる。他分隊の下士官嬢だから余計わからなかったのかもしれない。

彼女らを乗せたランチは春の色濃い波を蹴立てて『大和』へ向かう。

『大和』に帰った生方中尉と高田兵曹は、目立たぬように出迎えた河崎高射長に連れられて艦長室に行った。そこでは梨賀艦長・森上参謀長・日野原軍医長が待ち構えていた。

皆は<高田兵曹>を見るなり「おお…」と歓声を上げていた。それほど彼女は変化を遂げていた。先ほどの下士官嬢が「野田はぶくぶくしとってじゃ」と言っていたように以前の野田兵曹はぶくぶくとだらしなく太っていた。が、今目の前にいる彼女は随分締まっている。精悍になったようだ。

梨賀艦長がうなずいて

「野田兵曹…もとい、高田兵曹、ごきげんよう。すっかり良くなったようだね。あなたの事は生方中尉から聞いた。たいへんな思いをしたようだが、それでもいい方に話が収まったことをお祝いします。これからは気持ちは新しく、今までのように軍務に励んで欲しい」

と言って兵曹は「はいっ!」と返事をした。森上参謀長は

「終わりよければすべてよし、というからね。もう済んだことは忘れて、頑張ろう」

と励まし、日野原軍医長は

「素晴らしい顔つきになったね。自信がみなぎっているよ、その調子その調子!」

とほほ笑んだ。河崎少佐も嬉しそうに高田兵曹を見つめている。河崎少佐は「あなたの事はもう皆に布告してある――野田、ではなく高田佳子兵曹になったとな」と言って高田兵曹の肩を優しく叩いた。「だから野田と呼ばれたら『私は高田です』というんだよ」

高田兵曹の頬が嬉しさと感激で桃色に染まった。

そしてふと我に返ったように皆を見回した高田兵曹は

「あの、野村副長はどうされたんですかのう」

と聞いた。生方中尉が「あ!しまった。あれこれあって言うのを忘れていた…野村副長はな、あの後お嫁入りされて『山中副長』となられたんだ。結婚休暇中だがもうそろそろ明けだ。貴様の事を誰より心配していらしたからきっとお喜びになられるよ」と教えてやった。

高田兵曹は「ほう、ご結婚なさったがですか。そりゃあえかった。お戻りになられたらうちは真っ先にお礼に伺わんといけんです」と言った。

そして生方中尉と高田兵曹は艦長室を辞し、高角砲分隊の居住区へと向かった。高田兵曹は

「なんだか胸がずくずくします」

と言って一種軍装の胸のあたりをげんこつでたたく。生方中尉が振り返って「そんなに緊張せんでもいいだろう。みんな貴様を待っているぞ。貴様が今日、帰艦することはもう既に皆知っているからな」と言ってやった。

高田兵曹は「ほうですか…」となんだか心配げな声になり、顔が曇った。生方中尉は立ち止まってその両肩に手を乗せると

「なにを心配して居る?なにも気に掛けることなどない、貴様の気がかりは私には解るつもりだ…休暇になる前のあの事だろう?」

と言った。はたして兵曹は深くうなずいて「ほうです。うちはしょうもない事をしでかしてしまいました。じゃけえみんな怒っとるんじゃないか思うと」と言葉を濁した。

「あほ」

と生方中尉は言ってその両方の肩に置いた手を兵曹の頬に当てて軽く叩いた。兵曹が中尉の顔を見ると中尉は笑って

「なにを気兼ねしてる?ここは貴様の家でもあるんだぞ。一緒にいる仲間は家族。家族が一人欠けても成り立たんのがわが『大和』という大きな家だ。もう誰も、過去の事になんぞこだわっていない。だから兵曹もこだわるんじゃないぞ、いいな!」

と言った。高田兵曹の顔に再び笑みが浮かび中尉に「さあ、急げ」とせきたてられて廊下を小走りに居住区へ――。

 

生方中尉は、兵員居住区の入り口で

「生方中尉だ、入るぞ」

と大声を出した。一人の兵曹が「どうぞ」といざない生方中尉は部屋に入った。高田兵曹は入口にとどまったまま。生方中尉は居住区の皆を見回すと

「高田兵曹だ…皆、今まで通り接してやって欲しい」

というと入口に立ったままの高田兵曹の手をつかんで部屋に引っ張り込んだ。一種軍装の高田兵曹は懐かしい居住区に久々に入った。懐かしさに浸る間もなく彼女は多くの仲間たちの視線を受け、瞬間びくりと身を震わせた。

しかし、北見分隊士の「高田兵曹!待っていたよ、お帰り」の言葉に顔をあげて皆を見回した。誰ひとり高田兵曹に怒っているものはいない。どころか皆微笑みで以て迎えてくれている。

副砲の安部分隊士までやってきて「高田兵曹お帰り。またよろしくな」と言ってその肩を優しく叩く。とうとう高田兵曹の眼から涙があふれ出した。

生方中尉は「泣く奴があるか」と言って彼女の背中をどやしたがその中尉の瞳も涙にぬれている。その場の皆は笑いながらもその瞳を濡らしたのだった。

 

さてそのあと朝食の後の午前の課業から皆は「新生」高田兵曹に驚かされることとなる。以前にもましててきぱき動く兵曹。無駄のない動き。

そして午後になってそれぞれの分隊で清掃を行うと皆は「あれがあの、だらしのうて居った兵曹と同じ人じゃろうか」と度肝を抜かれることになった。

高田兵曹は、まず自分が汚していったチェストをすっかりきれいにし、天井を這いまわる配管の上まで雑巾をかけて「こういうところもよう見んといけんよ。埃は健康に悪いんじゃけえね」と言って皆をうならせた。

それを見ていたハッシー・デ・ラ・マツコとトメキチは

「人って変われば変わるものね。もうあのどうしようもない<野田兵曹>はどこにもいないのね。高田兵曹、今後を期待しています」

と言って、三毛の仔猫ニャマトがマツコの背中の袋から顔を出して「ニャ、ニャ、ニャマート」と叫んだ。その三人を優しく抱きよせると高田兵曹は

「ただいま。ハシビロにトメキチ!それにおや?この猫ちゃんは新顔だね。うちは高田佳子海軍上等兵曹じゃ。よろしく願います」

と言ってあいさつした。マツコとトメキチ、そしてニャマトは高田兵曹にむしゃぶりつくと

「おかえり!もうどこにも行かないでよね」

と甘えたのだった。その四人を皆は温かく見つめている――

 

        ・・・・・・・・・・・・・・・・

高田兵曹久々の『大和』でした。どう迎えられるか心配な兵曹だったようですが同じ釜の飯を食う仲間同士。温かく迎えてくれました。そしてマツコ達にも歓迎されて高田兵曹良かったよかった!

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● COMMENT ●

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
高田兵曹として収まるべきところに収まりました^^。
今までは投げやりな生き方だった高田兵曹も生まれ変わって素敵な女性になることでしょう!

悪人は退治されてしかるべき。
新年にあたって希望を込めてこの物語を書きました。

佳子、佳き一年になりますようにと祈りを込めて…。

No title

人は収まる場所に自ずと収まる。
つくづくとそう感じました。
人として、女性として持って生まれた魅力を、
高田さんはこれからさらに発揮するのではないでしょうか。

新年早々、悪しき人を退治して、
善き人を生まれ変わらせてくれて気持ち良くてたまりません。
佳子さん。佳き子ですもんね。

柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさんこんばんは!

最初はみんなのお荷物だった野田兵曹も高田と改めてすっかり人間が変わりました。良い方に代わってみんなにも愛されそうです!
マツコ・トメキチはもちろん、ニャマトも高田兵曹と気が合いそうでなによりとなりました!
高田兵曹の今後にご期待下さい!

No title

見張り員さん    こんにちは♪

いつもありがとうございます♪
高田兵曹で大和に戻って心配していた
みんなも優しく迎えてもらえてよかった
ですね。
マツコとトメキチに会い初めて会うニャマト
にも高田兵曹は喜んでよかったです。

matsuyamaさんへ

matsuyamaさんこんばんは!
胸のつかえもストレスも取れたのでしょう、野田改め高田兵曹の本来の姿はきっとこのはつらつとした姿なのです。
みんなも彼女の復帰を嬉しく迎えてくれましたからもう大丈夫、高田兵曹は一層頑張ることでしょう。

この先の彼女を見ていてやってくださいませ^^。

No title

胸のつかえが取れたのか、ストレスが発散できたのか溌溂としているようですね。
一度つかえていたものが取れれば、人間すっきりとしますからね。これからの高田兵曹期待が持てそうです。
同僚に暖かく迎えられるのも復帰が早いでしょうね。

これからの高田奮戦記待ち望んでいます。

オスカーさんへ

オスカーさんこんにちは!
これでのどのつかえが下りたような爽快感がありますね!

「ただいま」ときたら「おかえり!」。この受け答えがあるからこその家庭であり集団だと思います。ささやかな喜びですが大事ですよね^^。

野田改め高田兵曹の今後に御期待下さいませ!

おはようございます。
よかった、よかった! 身も心もスッキリさわやかですね。ただいま!におかえり!と言ってくれる人がいる喜びをかみしめていることでしょう。今後の活躍がまた楽しみです。


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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