2017-09

「女だらけの戦艦大和」・新しい仲間!?3 - 2014.10.27 Mon

 副長から三毛猫飼育の許可をもらった岩井少尉と松本兵曹長は喜び勇んで仔猫を抱いて医務科へ急ぐ――

 

医務室で居合わせた衛生兵嬢に畑軍医大尉の所在を尋ねた二人は「どうぞこちらへ」と診察室へいざなわれた。待つ間もなく畑軍医大尉が現れ「どうしたね、こんなに早く。私を御指名とはまた珍しいことだねえ?」と聴診器を首にかけながらやってきた。その後ろにハシビロコウのマツコと仔犬のトメキチがついて来ている。

岩井少尉と松本兵曹長は顔を見合わせてうなずくと岩井少尉が

「実はこの猫を拾って来たんです…いやあの、副長には飼育の許可をいただいたんですがノミや病気がないか畑大尉に診ていただくようにということでお持ちいたしました」

と申告して手拭いに包んだ子猫を差し出した。大尉が少尉の手の中の手拭いを開くとともに、マツコとトメキチも駆け寄ってきて「ちょっとトメキチ見てよう!仔猫よ」「本当だ、マツコサン可愛いわね」と大騒ぎ。その二人を優しくどかして「じゃあ、さっそく診察だ。ここに置いて」と診察台の上に子猫を置くよう指示した。

岩井少尉が仔猫を台の上に置き、少尉と兵曹長は少し離れて診察を見守った。畑軍医大尉は仔猫を持ちあげてみたり毛並みを逆にたどってみたり聴診器を当ててみたりした後、二人を見返ると「お二人さん」と話しかけた。

岩井・松本は少し緊張して「はい」と返事した。畑軍医大尉は仔猫を岩井少尉に返しながら

「ノミもついてないし特にこれと言って病気もないね。樹に縛られていたんだって?少しそのあたりが傷になってはいるけどこれが塗り薬で治るよ。ただちょっと小さいね、この子猫生まれてひと月かひと月半くらいだろう?そのわりには小さすぎる…そのせいで捨てられたのかもしれないね。いずれにしてもひどい話だね」

と言った。それを聴いたマツコとトメキチは憤慨して「これだから人間は!こんな小さな子を捨てるなんて」と怒り心頭。すると子猫は、岩井少尉の腕からそっと頭を上げてマツコたちを見た。

松本兵曹長が「あ、そうじゃ」と言って「畑大尉、肝心なことをうちは忘れとりました。この猫はオスですか、それともメスですかのう?」と尋ねた。畑大尉は聴診器を丸めて白衣のポケットに突っ込みながら

「君たちえらい拾いものをしたね、これって大変貴重なオスの三毛ちゃんだよ。オスなのに捨てられるなんてねえ…しかし我々には幸先がいいよ。この先『大和』は良いこと満載だよ」

と笑って「じゃあね」というと診察室の奥の部屋へと入っていった。その後ろ姿に頭を下げた岩井少尉と松本兵曹長は顔を見合わせて笑うと

「うちらにはオスでもメスでもどっちでもええことじゃ。仔猫が元気で大きくなるならそれが一番ええ」

と言ってとりあえず岩井少尉が猫を預かることになった。機関科の松本兵曹長の配置や仕事では仔猫に負担が大きいと判断したからである。松本兵曹長は仔猫をそっと指で触れながら

「これもきっとすぐに大きなってこの変な鳥やトメキチと遊ぶようになるんでしょうなあ、たのしみですのう」

と言った。その瞳には慈愛が満ちている。それに見とれたマツコとトメキチだがマツコは「変な鳥、はご挨拶ね。アタシはマ・ツ・コ!」と言って兵曹長のお尻を翼の先でちょっとつついた。松本兵曹長は

「ハッシーもトメキチも、このこまい猫をよろしくな。いじめたらいけんで」

と笑いかけて、そこで皆は散開したのだった。

 

岩井少尉が預かったと言っても少尉とて暇ではない、仕事がたくさん待っている。そこで、岩井少尉が白羽の矢を立てたのがマツコとトメキチ。この二人に少尉が忙しい時には代わって見ていてもらおうというわけである。

岩井少尉は自分のあとをついてきたマツコとトメキチに「うちはあなた方を立派な動物の人格者じゃ思うて頼みます。うちが仕事中はこの子を見ていてもらえんかのう?まだこの子はこまいけえ、動き回ることはできん。じゃけえこの子が目え覚めとるときはうちの部屋で遊ばして欲しいんじゃ。あなた方も自由に遊びたいじゃろうがどうかここは堪えてつかあさい。どうか、どうか頼みます」と頼み込んだのだった。

こう頼まれていやと言うわけのないふたり、いや二匹。そうでなくとも仔猫に興味しんしんのマツコとトメキチは頼まれなくても世話係を買って出るつもりだったので渡りに船。

マツコは岩井少尉に飛びついて「大丈夫、大丈夫だから早くアタシに貸して。早く早く!」とせっつく。トメキチでさえ少尉の腰のあたりまで飛びついて「早く御顔を見せて、早く早く」と大騒ぎ。

その二人を軽く押さえて岩井少尉は「じゃあ私の部屋に行こうね」と歩き出す。その後ろをマツコとトメキチが「はーやくぅ、はーやくぅ」と歌いながらついてゆく。途中出会う水兵嬢や下士官嬢たちは

「ありゃ!今度は岩井少尉が動物たちの大将じゃ。ハシビロ達は調子がええもんなあ」

と言って敬礼で見送る。その兵隊嬢たちにマツコは「なに言ってんのよう、アタシにはアタシのマツオカがいるでしょ!大体岩井さんはマツモトのものなんだから手出しなんかできないわよ」と毒づく。意外とそっちの嗅覚も鋭いマツコである。トメキチが聞きつけて「岩井少尉さんがどうしたの?」と聞くとマツコはあわてて「…なんでもないわよッ。黙って歩きなさい」とそっぽを向く。

少尉の部屋まで後少しと言うところで一行は梨賀艦長に出くわした。艦長はもう、野村副長から仔猫の話を聴いていたので気になって見に来たのだった。岩井少尉は艦長にいきさつをもう一度話し、「そう言ったわけでこのハシビロとトメキチに世話を任そうと頼みました」と言った。

梨賀艦長はうなずいて「そうだね、動物は動物同士が良いだろう。ハッシーにトメキチ、よろしく頼むね。居場所はそうだな、少尉の部屋も良いが普段は昼戦艦橋にしようか。大勢いるし――で、この猫の性別だが」と言うと岩井少尉は嬉しげに微笑みながら「オスであります。船にとって縁起の良い三毛のオスであります」と報告。

梨賀艦長はことのほか喜び、「それはよかった。岩井少尉大手柄だ」とほめた。岩井少尉は「私の、ではなく松本兵曹長がおらなんだら連れては帰ってこられませんでしたけえ、うちの手がらと言わんでつかあさい」と言った。艦長は部下を思いやるその心意気に感動し「そうか。ふたりの手がらだね。よく小さな命を救ってくれましたね」とねぎらった。

そして一行は昼戦艦橋に行き、そこの一角に大きなかごを探し出して来て置くとその中に子猫とトメキチ、そしてマツコが入って落ち着いた。

 

「ねえ、マツコサン。可愛いねえ」

「ほんとね。小さいものってどうしてこうも可愛いのかしら」

トメキチとマツコは仔猫を覗き込んでは言葉を交わす。するとそれまでかすかに震えてうずくまっていた仔猫が顔をしっかりあげてふたりを見つめた。マツコは「あら、この子こっちを見てるわよ!」と興奮気味で言った。トメキチが「しいっ、マツコサン大きな声出しちゃだめ。びっくりしちゃうでしょ」と注意した。あわててくちばしを両方の翼で覆うマツコ。

子猫はふたりを見上げると「ニャ、ニャ、ニャ」と鳴いた。まだ幼いから言葉が出ないようだ。マツコは優しく「どうしたの?何も怖くないのよ」と話しかける。トメキチが子猫の背中を優しくなめる。マツコは「アンタ名前はないの?なにか名前ないの?」とさらに尋ねる。しかし子猫は「にゃ、にゃ、にゃ」と言うだけ。

マツコは「まあ仕方がないわね。こんなにちっちゃいんだからお話は無理よね」とあきらめたようだ。しかしそれでも

「いいこと?アンタが今いるここは<大和>、や・ま・と、よ!覚えておきなさい?や・ま・と!」

と教えてやった。子猫はじっとマツコの言うことを聴いていたがその可愛い御口をあけると

「にゃ・にゃ…ニャマト!」

と言ったのだった。マツコとトメキチは腰が抜けるほど驚き喜んで「聞いた!?この子しゃべったわよ!!」と大騒ぎを始めた。するとその騒ぎを聞きつけて熱い女・松岡修子海軍中尉が「どうしたんだね?鳥くん犬くん…ってなんだこれは猫がいるじゃないか!熱くなってるなあ!」とかごを覗き込んで叫んだ――

     (次回に続きます)

             ・・・・・・・・・・・・・・・・

三毛猫ちゃんオスでした。しかも月齢より小さくてそれが原因で捨てられたような事を畑軍医大尉はおっしゃいました。

でも大勢の仲間がいる『大和』ですくすく育て!

そしてマツコの言葉に反応した子猫ちゃん…と思ったら出てこなくっていい松岡中尉がまた出てきました。どうなりますやら。次回にご期待下さい。

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● COMMENT ●

柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさんこんばんは!
小さすぎるが故に捨てられた子猫ちゃんも『大和』の皆のおかげでうまく育ちそうです^^。そしてここにはマツコとトメキチという動物業界の大きな味方が居りますので安心ですね。
しかし…乱入?してきた松岡中尉の出方が気になります。何もなければいいのですがないわけない!のが松岡です(・・;)。

そちらはずいぶん冷えたのですね!東京は昨晩強風が吹いて寒く、今日も強くはないもののずっと風がありつめたかったですよ。
日向ぼっこ、いいな^^。ケイチャンたちとお昼寝したいものです♪

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
「ニャマト」!でマツコたちのそして、オスカーさんの心をわし掴みにした子猫ちゃん~~❤
けっこう猫も戦場にいたんですね、でもこのまだ名前もないネコちゃんが戦場に出てゆくなんて思っただけでだめよ~、ダメダメとなっちゃいますw。

そしてこの猫ちゃんを取り巻く周囲はどうなってゆくのでしょうか、その第一号が松岡中尉のようですね、彼女がそしてマツコ達がどうかかわってゆくのか??お楽しみに^^。

おお、人間同士の『子猫ちゃんイチャイチャ』もお楽しみに、ウフフッ!

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
さあ満を持して登場のこの子猫ちゃん、『大和』に福をもたらしてくれることを期待しますね❤!そうですあの、あのマツコがすっかり気を許したのですから何もないわけがない、と言うわけで今後の展開にごきたいくださいませ!
岩井少尉も以前の引っ込み思案から脱却してキャラがちょっと変化しつつあります。上手いことマツコトメキチをおだてています^^。そしてあの松岡中尉はなにをしでかすのやら、気になりますね(-_-;)。

昨夜の風が今朝まで強かったこの町、夜になってもそこそこの強さで冷たい北風が吹きつけています。
乾燥していますからほんと、つまらん菌をとりこまぬようしたいものです。騒ぎとなったエボラの疑いも今のところ陰性のようですが気は抜けませんね。てかどうしてこう最近変な病気が大流行するのやら。やはり気候の変化に比例しているのでしょうか、気味悪いですね(-_-;)。

いつもお心遣いをありがとうございます。無理せず自分のペースで仕事や生活を送りたいと思います。自分の体は自分にしか解りませんものね。
にい様もお健やかに。

見張り員さん    こんにちは♪
いつもありがとうございます♪
仔猫ちゃんを畑軍医大尉に診てもらい小さい意外は
悪いところがなくオスの仔猫ちゃんで良かったです。
仕事中はマツコ・トメキチに面倒を見てもらうようにお願い
して安心ですね。
仔猫ちゃん言葉をマツコに教えてもらい少し話してこれから
楽しみですね。
松岡中尉が入ってきて仔猫ちゃんを見てこれからどうなるか
心配ですね。

こちらは今朝は冷え込んで寒く朝の散歩はマフラーに手袋して
行きました。
お天気はいいですが風があり風が冷たく日陰は寒いです。
ケイちゃん・姉妹ちゃんは今は日向ぼっこして暖かそうです。

おはようございます。
>ニャマト
可愛すぎます! 戦場で活躍した猫の話ってたくさんあるようですが、まだまだそんな危険な事態に遭遇してほしくないですわ。イヤ、船内ですでにマツオカ様ストームが吹き荒れそうな……ものすごい猫好きでマツコが嫉妬して愛の嵐が吹き荒れたら……( ̄O ̄; これからの展開が楽しみでありますが、人間同士の「カワイイ仔猫ちゃん、イチャイチャ( 〃▽〃)」場面もまた期待したいおやぢであります(≧∇≦)

福を呼びそうな招き猫になるかもしれませんね。
現にあの気難しかったマツコさんが時間を置かずにもうすでにメロメロなのですから。
大和の人たちって人(動物たちも)を使うのが上手ですね。人心掌握しているからこそでしょうか。
さっそく仔猫の扶育係にマツコさんとトメキチのゴールデンコンビに任せるのですから。
毎度のいきなり登場の松岡中尉ドノったらまた何かをやらかしそうですね。

関東も今夜は強い風が吹いていると教えて下さった見張り員さん。どうかつまらぬ菌など取り込みませんように。
体調も不完全でしょうがどうか御身を大切にすること。それだけに励んで下さい。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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