「女だらけの戦艦大和」・新しい仲間!?1

 今日も「女だらけの大和」は、呉沖に停泊中である――

 

日野原軍医長が休暇を兼ねてトレーラー海軍診療所の看護婦・キリノと昨日東京に行ったばかりで、その留守中を『武蔵』の村上軍医長が補ってくれることとなった。

「『武蔵』のほうは大丈夫なんですか?」

と心配げに問う野村副長に村上軍医長は笑って「はい、『武蔵』の方は海軍診療所長の横井大佐が見てくれますから大丈夫です。横井大佐は優秀な方ですから私も安心していられます」と言った。村上軍医長としても内地に来てとんぼ返りではさすがに体がつらい、ここで十日ほど滞在できれば体も休まるというものであろう。

副長はそれを聴くとほっとしたような笑みを浮かべて

「それはよかったです。今『大和(ここ)』には虫垂炎の術後の患者が一人いますから、その患者も村上軍医長がいらして下されば安心ですからね。どうぞ、日野原軍医長のお帰りまでよろしくお願いいたします」

と言った。村上軍医長は「こちらこそよろしく願います。――そういえば、野村中佐は御結婚がお近いと伺いました。おめでとうございます」と言って微笑んだ。

副長は頬を真っ赤に染めて「は、いや、あのいいえ…実はそうなんです。ハハハ…」と恥ずかしいのかしどろもどろになっている。村上軍医長は興味しんしんで身を乗り出して

「よかったらそのお相手との馴れ初めなんかを教えて下さいませんかねえ~、いいですねえ、私は人さまのおめでた話が大好きなんですよ~。だっていいじゃないですか、幸せな気分になれますもんねえ~」

と言って話を聞きたがった。野村副長は「それなら…ちょっとだけ」ともったいつけて山中大佐との馴れ初めを話し始めた。うんうん、それで~?と村上軍医長はなかなかの聴き上手でどんどん話を引き出して行く――。

 

さて上の人間がそんなことをしている時、上陸組の松本兵曹長は岩井少尉との待ち合わせ場所に急いでいた。中通りの「ながとや」という食堂がいつもの待ち合わせ場所。兵曹長は軍帽の廂をちょっと持ち上げ

てから「ながとや」の入り口の戸をあけた。中をそっと見れば、奥の座敷に岩井少尉はいて松本兵曹長を見ると笑みを浮かべて手招いた。兵曹長は「岩井少尉、お待たせしてしもうて」と言って中に入った。

店の主人が「いらっしゃいませ!」と声をかけるのへ軽く会釈して、兵曹長は座敷に上がった。

店の主人がお絞りとお茶を持ってきたので岩井少尉はいつも頼む料理をいくつか注文し「兵曹長、他には?」と聞いた。兵曹長は「それで十分であります」と笑って答え、岩井少尉は主人に「では、願います」とほほ笑みかけた。

主人が下がると岩井少尉は

「松本さんは聞いたかいのう?なんでも野村副長はご結婚じゃそうな」

と言って兵曹長は「はあ、うちも小耳にはさみました。ええお話で…えかったですねえ」と言って茶を飲むと笑顔になった。岩井少尉は「ほうじゃ。ええお話じゃ。しかもそこに行きつく前に副長はお見合いでえらい怖い目ぇにおうたそうじゃ」と話をつづけた。「ほう、怖い目ぇですか」という兵曹長に少尉はうなずいて

「ほうじゃ。怖い目ぇじゃ。なんでもお見合い相手に乱暴されかけたんじゃと…気の毒じゃわあ。ほいでも運がええことにそこに助けが来たそうじゃ」

「助け、ですか?」

「ほうじゃ。ほら、前に『大和(うち)』に来たじゃろ?背ぇの高い男性技術佐官が。あん人じゃ、あん人がその見合い相手の暴行から救ったんじゃと。その技術佐官がな、くだらん見合い相手を叩きのめして副長を救ったんじゃ、ほりゃあもうそげえなことになったらうちでもその人を好いてしまうわ。でな」

「で、なんですか?」

「その佐官と副長は実は…幼馴染だったんじゃと。こまい頃その技術佐官が隣に住んどってじゃと。ほいで技術佐官のうちは遠くにこしてしもうたんじゃが佐官はずうっと副長の事を好いとってじゃいうんよ。で、今回運命の再会じゃ」

岩井少尉は意外な情報通なところを見せた。松本兵曹長はほう、ほうと感心しながら聞いていた、話の内容にもだが今まで人のことに関心を持たなかった、否持てなかった岩井少尉がこうした事にも興味を持ち始めたというのが何か嬉しかったのだ。そこに店の主人が料理を次々運んできた。岩井少尉は「おお…ありがとうございます」といいながら受け取って座卓の上に並べた。なかなか手際がよい並べ方で兵曹長は感心した。あっという間に注文の品がそろい、岩井少尉と松本兵曹長は「箸とらば…」と感謝の言葉を言ってから「いただきます!」と箸をとって食べ始めた。

二人はしこたま食い、そして膨らんだ腹を撫でながら町を歩いた。突然、少尉が松本兵曹長を振り返って

「松本さんはどうするね?今夜は朝日町へ行くんかね?」

と尋ねたが兵曹長は首を横に振ると「行きません。うちは今夜は…少尉と一緒に居たいですけえ」といい、岩井少尉は頬を赤らめて「…そうね。ほいじゃあ、うちの下宿にいこうかいの」と言って歩を早めた。少尉が恥ずかしがっていながらも内心とてもうれしいのを兵曹長は感じ取っていた。(可愛いお人じゃ。そげえなところがうちの大好きなところじゃ)と兵曹長は思ってその顔には笑みが浮かんでいる。

 

その夜は岩井少尉の下宿で一夜を過ごすため、二人は連れ立って歩いた。

すっかり日は暮れおちて吹く風はやや冷たい。もう少しで下宿に到着という時岩井少尉がはっとして立ち止まった。松本兵曹長が「どうしました、少尉?」と尋ねると岩井少尉はしいっ、と右手の人さし指を唇にあてて周囲をそっと見回した。兵曹長は(またあの男が?まさか)と思い全身に闘志がみなぎった。

が、岩井少尉は「松本さん、こっちじゃ」というなり一本の街路樹に向かって走り出した。兵曹長は(不審な人間じゃなさそうじゃが、ほんなら一体なんじゃろう)といささか気味が悪い。

樹の周りを回って調べていた少尉が「あっ」と声を上げ松本兵曹長が「どうしました!!」と叫んでそちらへ駆け寄った。岩井少尉は木の根元を指して

「見てみい。誰がこげえな残酷なことをしよるんじゃ…おおかわいそうに、今ほどいてやるけえな」

と言ってしゃがみこんだ。松本兵曹長が闇を透かして見れば太い木の根元に小さな――それは其れは小さな仔猫が――縛り付けられていた。そしてか細い声で鳴いていたがその声は本当にか細く切れ切れのものだった。

「少尉は、この猫の声をお聞きになったんですね」

兵曹長がいうと岩井少尉は「ほうじゃ。小さい声が助けを呼んどってじゃけえ、見捨ててはおけんもん」といいながら仔猫を縛る縄を解いた。岩井少尉は「ほら松本兵曹長。可愛い仔猫じゃ…一体どこの誰がこげえなことをしたんじゃろう!うちは許せんで!」と立ち上がると仔猫を兵曹長の方に掲げた。

松本兵曹長も生き物が好きなので少尉の手から仔猫を受け取るとその顔を覗き込んだ。そして「暗うてよう見えん」とぼやきながら仔猫を通りの明かりの指す方へ向けた。

「岩井少尉、この子猫は三毛でありますな」

「ほう、三毛猫ね。――しかしどうしたもんじゃろうか、ここに置いてゆくわけにもゆくまい?」

二人は困ってしばしの間黙りこんだ。が岩井少尉が思いきって

「松本さん、連れてゆこう。こうして出会ったのも何かの縁じゃ。こげえにこまい猫、置いて行ったら死んでしまう、そげえな非道なことうちはよう出来ん。下宿に連れて行ってなんぞ食わしたら元気も出よう。ほいで明日、艦に連れ帰ろう。副長に必死でお願いしたら仔猫の一匹くらい飼うんを許して下さるかもしらんで?」

と言って松本兵曹長も「ほうですね、それに『大和』には犬もおれば変な鳥もおりますけえ、こげえにこまい仔猫の一匹くらい追加してもどうもありますまい」と言い、事は決した。

岩井少尉は仔猫を手拭いに大事に包んで抱いた。そして松本兵曹長と楽しげに言葉を交わしながら下宿へと歩いて行ったのだった――

     (次回に続きます)

 

               ・・・・・・・・・・・・・

久しぶりの「岩井・松本」組です。

以前より明るくなった岩井少尉に好感を更に持った松本兵曹長ですが、二人仔猫を拾いました。さてどうなることでしょうか、副長は仔猫を艦で飼うことを許してくれるでしょうか?次回を乞うご期待!!

 

三毛猫ちゃんの可愛い映像を見つけました!!


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オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
その後お風邪はいかがですか?案じております。

さあ、ニューフェースの登場です^^。
またこれを連れて帰れば女どもが大騒ぎは必定…どんなことになりますやら(-_-;)。
でも仔猫って本当に可愛いですよね、子犬もそうですが小さくてまるっこいものは愛しいです^^。そんなかわいいものを虐待する連中がいること自体信じられませんよね!

なかなか咳が抜けませんが腰の痛みはよくなってきました!ありがとうございます、オスカーさんもお大事にお過ごしくださいませね^^。

こんにちは。
ニューフェイスですね!←なんかこの言葉も古いなぁ(; ̄ー ̄A 名前とか誰がつけるかでひと悶着ありそうな気がしますが、小さくてかわいいモノは癒されますし……大きくなったらみんなモフモフしたくてたまらないっ!となるでしょう。しかし虐待するヤツは許せませんね!
体調はいかがですか? 今朝は冷え込みましたね。あたたかくしてお過ごし下さいませ。

柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさんこんばんは!
こちらこそいつもありがとうございます^^。
日野原軍医長が留守の間にもいろいろ事件?が起こっております!
さて三毛猫。オスはたいへん希少だそうですね。しかも船に乗せると縁起がいいと!!
さあこの三毛猫ちゃん一体どちらでしょう??お楽しみに^^。

今日の東京はたいへん寒かったです。多くの人が厚手の上着を着ていてダウンジャケットをきてる方も散見出来ました。なのに明日は20度を越えるんだとか…(-_-;)、気温に振り回される数日になりそうです。
体調に気をつけて過ごします!

雨が上がるとワンちゃんの散歩がしやすくてうれしいですね❤

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
ありがとうございます^^。
どうしても女の話は噂が多くてしかも人をおとしめるような内容も少なくないんですね(-_-;)、そんなちっぽけな女ではなくもっとおおらかな女でありたい。その私の思いが『大和』の彼女たちを動かしています。
そしてそしてにい様お待ちかねの❤シーンも再開ですよ~~、今回は松本×岩井です^^。お楽しみに^^。

岩井少尉は自分が今までひどい目にあってきた分他人にも動物にも優しい。悲しいまでの優しさがあります。松本兵曹長はそのへんも含めて岩井少尉が大好きなのです。
そして三毛猫。『大和』に加わります。新しい『大和』にどうぞご期待下さいませ。

「箸とらば あめつち御代の御恵み 君と親との 御恩味わえ」
戦前戦中、ご飯を頂く前にとなえた言葉と聞いております。

おかげさまで腰も少し良くなってきました!お母様のめまいはいかがでしょうか、お大事になさってくださいね^^。

見張り員さん   こんにちは♪

いつもありがとうございます♪
日野原軍医長がキリノさんと東京に行って留守でも
武蔵の村上軍医長が補ってくれて武蔵の方は野村
副長に海軍診療所の横井大佐が診てくれて大丈夫
と言われて安心ですね。
上陸組の松本兵層長は岩井少尉との待ち合わせの
場所に急いでながとやの食堂がいつもの待ち合わせ
場所で食事をして岩井少尉の下宿に急ぐときに猫の
鳴き声がして仔猫が縛られていて明るいところで見る
と三毛猫と分かり大和に連れて行くことを決められて
その三毛ちゃんが男の仔だったら船に乗る方は守ら
れると言われて女の子しかいなくて男の仔は中々い
なくてどちらが楽しみです。

見張り員さん東京は今日は12月中旬の気温とTVで言って
いましたのでかなり寒く体調には気をつけてくださいね。
こちらもやっと雨が上がりました。

見張り員さん、おはようございます。
お加減は如何ですか。腰は体の要です。くれぐれも良い治療をなさって下さい。

今朝はゆっくりと「大和」を拝読しました。
ふたりの会話に井戸端会議のようなしみったれさもなくて、なんて言えばいいのかなぁ。噂話の粋を越えた身内を思いやる心が見えました。今夜は下宿で何かが起ればまた楽しいのですが。(最近、あちらの艶っぽい場面が間遠くなっていますねぇ。早くお元気になって頂くことを切に望んでおりますよ)

人に寛容で優しいから三毛猫にまで心を砕いて。ふっとした仕草にその人の優しさ、寂しさ、これまでの人生が垣間見えることがあります。その時のこちらの動揺にも驚くことが。三毛猫が加わってまたあらたな大和の仲間が増えるようで何よりです。
「箸とらば」、いただきますに代わる感謝の言葉なのでしょうか。知りませんでした。
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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