2017-10

「女だらけの戦艦大和」・ライバル出現1 - 2014.09.07 Sun

 「女だらけの戦艦大和」第十三分隊(航海科)分隊長である松岡修子海軍中尉は学生時代からテニスを大の得意として来ている――

 

そして今では飛来する敵機をもラケット(・・・・)()撃墜できる女海軍士官として全海軍にその名が轟いている(はず)であり、本人も「熱くなってるだろう私は!いいかあきらめんなよ、あきらめたらそこまでだ!あきらめないでやれ、やるんだよ、なんでもうあきらめてんだよ!」と相手があきらめてもいないうちからあきらめてると決めてかかってこう叫ぶのだった。

そんな松岡海軍中尉を敬愛するもの多数、その中でもひときわ敬愛の度が高いのがハシビロコウのハッシー・デ・ラ・マツコと仔犬のトメキチである。この二人は最初のころは「なにあいつ。ただのうるさい網しゃもじ(ラケットのことのようだ)女じゃないの、相手にできないわ」と馬鹿にしていたのだがつきあううちにこの松岡という人間が意外に自分たちのレベルと近い、与しやすい人間であることを嗅ぎつけ以来、たいへん仲良くしているのである。

では、肝心の人間であるほかの海軍嬢たちは彼女をどう思っているのだろうか。

航海科の分隊士、麻生海軍少尉は「松岡分隊長ねえ。最初はえらい威勢のええやかましいお人じゃ思うておったよ?やかましいだけのお人じゃ思うてのけ者にしよったんも事実じゃが、あるころからすうっとうちらの心の中に入ってきたんじゃわあ。結構ええ所のあるお人なが。うん」というし、見張トメ海軍二等兵曹も

「ほうですねえ、松岡分隊長はうちを<特年兵>特年兵いうてからこうて、可笑しなおひとではありますがここ一番ではえらい力を発揮してみんなを助けてくれて…ええお人ですよ」

という。他分隊の下士官兵嬢たちにも押し並べて評判の良い松岡中尉であるが彼女たちはもしかしたら羊羹やその他の菓子で買収されている可能性も無きにしも非ず、というわけで買収される可能性のない大尉以上の士官・佐官に尋ねるとまず副長の野村次子中佐は

「松岡中尉?そうだねえ、まあ結構使えるんじゃなくって?最初は変なのが来ちゃったなあって内心ひやひやものだったけどこのところ随分『大和』にも慣れて…ってか海軍自体に慣れたのかなんなのか知らないけどかなり役に立つようにはなってるんじゃあない?でも彼女のあの十八番とやらの下品な歌を時と場所もわきまえないで歌ったり、尻の穴を云々ってデカイ声で言うのだけはやめてほしいわね。全海軍期待の『大和』に傷がつきますからね」

というし、肝心の艦長である梨賀幸子大佐は

「松岡中尉か。テニスの王女様と呼ばれていたって随分自慢して自分のほかにはテニスの上手いものはいないって言う感じだよね。でもさあ、うちにだって福島主計大尉ってテニスの名手がいるし、そうだ森上大佐だってあれでも結構テニス上手いって言ってるからね。天狗になってちゃいけないと思うんだけどね…」

とつれない言い方。

森上大佐がそばで聞いていて

「おいっ!<森上大佐だってあれでも>テニスが上手いって言ってるって言い方やめろっ!私だって中学時代テニスのお姫様と呼ばれてたんだぞッ!私は客観的にに言ってるんだからなっ」

と怒鳴る。あわててその場を立ち去る梨賀艦長のあとを「おい梨賀っ。謝れ訂正しろこの野郎」と追いかける森上大佐。それをあきれたような微笑みとため息で見送る野村副長。

そこへ当の松岡中尉が入ってきて

「どうしました副長?なにかここで誰かが熱くなっていたようですが?」

と尋ねる。副長はいやいやなんでもないよと片手を横に振る。すると松岡中尉は手にしたラケットをブンと振って

「そうですか私の聞きちがいだったんですね。誰かが熱く何かを語っていると思ったんですが…。まあいいでしょう。副長もあきらめないで熱くなって下さいよ!ではまた、ごきげんよう」

とかってに話すと去って行ってしまった。副長はその後ろ姿を見送りながら「はいはい、私も熱くなっておりますよ。熱くならざるを得ないことがあるんでね」と意味深長な含み笑いをした。

 

さてそんなふうに松岡中尉が熱く、尻の穴をきっちり締めながら暮らしていたある日。

『海軍きやんきゃん』をめくっていた小泉兵曹が

「ありゃ!」

と大声を上げたのでその場の皆はちょっとびっくりして小泉兵曹の方を見た。見張兵曹と石川水兵長が「どうしたんね」「どうされましたね」と寄っていくと小泉兵曹は「海軍きゃんきゃん」を差し出して

「ここじゃ、この若い少尉候補生。えらいテニスが上手(うま)あて評判なんじゃと。もしかしたら世界にも通用する人材かも、いうて書いてあるで」

という。どれどれとオトメチャンがそれを手にとって読み始める。石川水兵長も覗き込んで写真を見る。そして

「はあえらい溌剌としたかっこええおひとですねえ。こげえにかっこええお人が『大和』に乗ってくれたらもっと士気が上がるんと違いますか?樽美酒少尉と二人でええ線いく思いますがのう」

というに及んで他の兵員嬢たちも「どれどれ、どがいな人じゃ」と見に来る。そして「おお。これはなかなかの面構えじゃねえ!」と感嘆の声を上げた。写真の少尉候補生はどこかの艦上でラケットを胸に抱えて微笑んでいるがその微笑の奥には決意のようなものがみなぎっているのを感じる。

いつの間にやって来たのか、麻生分隊士がオトメチャンの隣で『海きゃん』を見ていて

「ふむ、少尉候補生言うと最近兵学校を出たんじゃね。何処の艦に配属になっとるんかねえ?見るからにきちっとした人じゃわ。こげえな人を航海科(うち)も欲しいものじゃ」

と感心したように言った。普段あまり人をほめない麻生分隊士、人をほめたのは見張兵曹に次いで四、五人目くらいだと小泉兵曹は思った。見張兵曹が麻生分隊士を見上げつつ

「麻生分隊士の人を見る眼えは確かじゃけえ、このかたはきっと出来るお人じゃ思いますねえ。ハンモックナンバーいうんも先頭の方なんと違いますかね?同じテニスをするいうても松岡分隊長とはちいと違うような気ぃがしますねえ、ウフフ!」

と皆が内心思っていたことをはっきり口にした。その場にいた皆が一斉に吹き出した。石場兵曹が

「オトメチャンも言うようになったのう!ほんまじゃな、松岡分隊長もそこそこのお人じゃが真剣味が足りん。この若い少尉候補生の爪の垢をちいともろうて飲んだらええんじゃわ」

といい一同大爆笑となったのだった。

 

そんなころ。

松岡分隊長は前甲板にマツコとトメキチを伴って「敵機撃墜訓練」の真っ最中であった。マツコとトメキチに敵の機銃弾に見立てた小石(マツコとトメキチに町中で拾ってこさせたもの)を投げさせ、それをラケットで撃つ。

マツコが「ねえマツオカ。こんな固いもの撃ってたらアンタのその大事なラケット、ぶっこわれるんじゃないの?いい加減にしなさいよ」と声をかける。トメキチも「そうよマツオカサン。壊れちゃったら直すの大変でしょ?別なもの撃てばいいのに」と進言。

が、松岡分隊長は笑顔で

「ご心配をありがとう諸君。だが私のこの熱いラケットは故障知らずなんだよ。――え?形あるものはいつかは壊れるって?あきらめてるなもう!いいか、あきらめたらそこで終わりなんだ。壊れないものだってあるかもしれないじゃないか、それはもう君たちの目の前にあるだろう?」

と言ってマツコとトメキチは「目の前に?」と問い返す。松岡分隊長は満面の笑みで

「そう。君たちの目の前に――てことはそうだ!このラケットだ!君たちは今、宇宙の奇跡を目にしてるんだ、熱くなれよ!」

と最後は天にラケットを突き上げて叫んだ。

マツコがその金色の瞳に失望の色を浮かべ「…馬鹿臭い」とつぶやき、トメキチは自分の尻尾の毛並みを整えるのに没頭し始め松岡分隊長の言葉を聞いてはいない。

しかし松岡分隊長は至極ご機嫌で

「この松岡の右に出るものはいるか?いないだろう!そうだいないんですよ、これだけ熱くなって何事にも必死な私の右に出るものがいたら私はそいつをぶったおしますよ!誰かいるか、いるなら名乗り出よ、そしてかかってこーい!」

と叫びまくっている。

 

その天井知らずの自信家の松岡分隊長に――やがて衝撃の知らせがもたらされることとなるのであるがまだこの時点では何も知らない松岡修子海軍中尉であった――

  (次回に続きます)

 

                ・・・・・・・・・・・・・・・

 

松岡中尉はあいも変わらずですが、『海きゃん』に載っていたという少尉候補生の存在が気になるところ。この先松岡中尉とかかわってくるのでしょうか、こうご期待!

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● COMMENT ●

柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさんこんばんは!
いつもありがとうございます^^。

おお、ケイさんもこの物語と実際の「マツオカ」さんがだぶってきましたか!本物です!(って何の本物なんだかw)。

錦織選手、優勝こそ逃したものの素晴らしかったですね^^、世界で二番目、なんですから大したものです、テニスの全くできない私には準優勝だって神ですよ!
表彰式での言葉もよかったですね、感激ものでした!まだ若いのですから次があります、頑張ってほしいですね!

そして「女だらけの~」の少尉候補生っていったいどんな人なんでしょうか、ご期待下さい。

水分朝夕が涼しくなりました。秋の虫も多くなって少しさみしい感じがします。でも昼間はまだ熱いですね(^_^;)。
お互い健康には気をつけて素敵な秋を迎えましょうね^^。

見張り員さん    こんばんは♪

いつもありがとうございます♪
元気な松岡中尉と松岡修造さんがダブってきました。
錦織選手は残念でしたが準優勝も日本人初で凄いことですね。
テニスが上手な若い少尉候補生の存在が気になりますね。

朝・晩は涼しくなり秋の気配で昼間はまだ暑く気温差があります
ので風邪などひかれませんように気をつけてください。

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
いよいよ錦織くん決勝だー、熱くなれよーッと声援を送りたいですね。ここまで来たら優勝だ、あきらめんなよ!とわが松岡中尉も言っておりますw。

そして。
ライバル?の出現に松岡中尉はどう出るのでしょうか、彼女の事だからまたろくでもないことが起きるような気がしますね、大人げない女の代表格ですから(-_-;)…

ご期待下さいませ^^。

こんばんは。
錦織くん、決勝ですね! こちらのお話でも大活躍してくれると期待しています。テニスの女王さまは松岡さまですが、テニスの王女さまの出現にどういう反応をするか、ワクワクします((o(^∇^)o))

はづちさんへ

はづちさんこんばんは!
錦織くん大活躍で日本人として嬉しいですね、このうえは優勝してほしいものです。修造さんではないけれど、
「あきらめんなよ、熱くなれよ!」ですね^^。

さあ翻って「女だらけの大和」の松岡さんに何やら不穏な空気が…ただでさえ熱い彼女のことですからまたひと騒動起きるのではないでしょうか、こうご期待です!!

鍵コメさんへ

すべて了解いたしました。くれぐれも御身大切にお過ごしくださいませね。

おじゃまします

こんにちは

なんだか、男子テニス界がえらいことになっていますね。
修造さんのホームページが、アクセス過多でダウンしたとか。
みんな、彼の熱いコメントが見たいんですね。

さて。
松岡修子中尉のほうにも、
なにやら衝撃的な事態が起きようとしていますね。
こういう熱いキャラは大好きですので、
今後の展開がすごく楽しみです。
松岡中尉、もっと熱くなれ!ヽ(*´∀`)ノ


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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