「女だらけの戦艦大和・番外編」・突撃他艦(となり)の晩御飯!

 「こんばんは~。はいっ、私は帝国海軍期待の大型艦その名も『大和』の主計中尉、桂 ヨネでございます。なぜか皆にはヨネスケと呼ばれております。さて今回私は『大和』以外の艦艇がどんな飯を食ってるのかたいへん気になりましたので、さっそくですがアポなしの突撃取材を行いたいと思いまーす」

 

さあ大変。

『大和』主計中尉の桂 ヨネさんは烹炊所から大きな、それは大きな宮島(しゃもじのことです)を持ち出し、それに墨痕鮮やかに「突撃他艦(となり)の晩御飯!」と書きつけそれを担いでまずはとなりに停泊中の駆逐艦・無花果へ!

 

「はいこんばんは。お邪魔しますよ~!」

と大声をあげて乗り込んできた桂中尉に驚いた無花果の乗組員であったが「いやあ見て!突撃他艦の晩御飯、だって!」と盛り上がり始めた。そして大きな宮島を担いだ桂中尉を先頭に、艦内を練り歩きだした。と、桂中尉は

「おおーっなにあなたがたこんなところで食ってんのぉ!?

と叫ぶなり、一室に走り込んだ。そこではざっと一五名ほどの兵員嬢たちが車座になってケンパスを敷いた上で夕飯の最中。一人の一等兵曹嬢が「アッ、ヨネスケだあ」と叫んで皆大笑い、桂中尉は

「なんだなんだ、どうして貴様は私のあだ名を知ってんのよ!」

と言ってその兵曹嬢のそばに宮島を持ったまましゃがみこんで「あ、ちょっとこれうまそう!」というとその兵曹嬢のホーロー引きの皿を取り上げると中の煮物を食べてしまった。アアッ!と叫び声を上げる一等兵曹嬢には目もくれず桂中尉は煮物を食べて

「こりゃあうまい。筑前煮みたいだね。うまいうまい」

というと皿をその場に置いてほかの兵員たちを見回した。あわてて皿を自分の後ろに隠そうとする兵員嬢たち、しかし一人が遅れ、桂中尉に「おっ!卵焼き?すげえじゃん」と皿を取られた。

桂中尉、「いただきまーす」とその卵焼きと思しきものをひとくち口に入れたが微妙な顔つきになると

 

「…なかなかですね」

とだけ言って「じゃあ次行くぞ~」とその部屋を飛び出していく。桂中尉の「なかなかですね」は正直あまりおいしくないとか自身の口に合わない場合の常套句である。豪放磊落な性格の中尉ではあるが人を傷つけないように気をつけてはいるらしい。

そのあと桂中尉は艦長室になだれ込んだものの「なんだあ?艦長も皆と同じもの食ってんのぉ?つまんねえなあ」と怒りだし、駆逐艦・無花果を降りた。

 

神出鬼没の桂中尉、今度は

「あれに見えるのは潜水艦だ!よし、潜水艦の晩御飯行ってみよう」

と叫んで宮島を担ぎ直すと伊号八〇〇潜水艦の元へと走り出す。ちょうど、八〇〇潜の大きなハッチが開いていて乗り組み員たちが艦上に出ていたところだったので桂中尉は

「こんばんは!突撃他艦(となり)の晩御飯の桂 ヨネ中尉ですー!」

と怒鳴って潜水艦へ乗り込んでゆく。ここでも八〇〇潜の乗組員から「ヨネスケだっ!」と叫ばれ大笑いされる桂中尉。桂中尉は「笑ってんじゃないわよう。何がおかしいのさあ」と言って中へ入ろうとしたが宮島が引っ掛かる。それでも無理して宮島を中へと担ぎこむ中尉。

伊号八〇〇潜の下士官嬢が

「上に置いてきたらいいじゃないですか、艦内結構狭いですからたいへんですよ?」

と言ったのへ中尉は

「ダメだよう、これがなきゃみんな私が誰だかわかんないじゃん?ただの不法侵入者になっちゃうじゃん、やだよ軍法会議に掛けられるのは」

と言って宮島を担ぎあげる。天井部分の配管に大しゃもじが当たってはでな音を立てるが桂中尉は気にしない。

やがて中尉は、皆が食事を取る部屋にたどり着くと

「はいおじゃましまーす、突撃他艦の晩御飯の桂中尉ですよー」

と叫んで皆を驚かせる。中尉は遠慮なしにずかずか食堂に入りこむと「今日は何食ってんの?」と食卓を覗き込む。一人の少尉が「今日はこれです」と見せてくれたのは

缶詰の赤飯 缶詰の牛肉の大和煮 缶詰のサバの味噌煮

「なに缶詰ばっかじゃん。話には聞いてたけどさあ潜水艦ってほんとにこんなもんばっか食ってんだねえ!てかさあ、せっかく内地にいるんだからもっとまともなもの食ったらどう?」

桂中尉は余計な御世話を。すると騒ぎを聞きつけてやってきた橋本以子艦長が

「これはねえ、ちょっと古い缶詰なの。新しい缶詰を仕入れる前に古いものは食っちゃおうと思ったの。明日は生野菜やもっとまともなもの食うからさ、なんで明日来ないのさ~。うちがまるで手抜きしてるみたいでやだなあ。今日は特別、ってことちゃんと言っといてよ」

と弁解。その後ろにいた主計長もうなずいた。桂中尉はまだ開けてない缶詰の一つをそっとポケットに入れながら

「ハイハイ、解りました。ではまた、ごきげんよう」

と言って伊号八〇〇潜水艦を辞した。立派なギンバイ行為をしでかしている。

 

桂中尉は「もっとほかにないかなあ」と、歩きまわる。すると彼女の目に飛び込んできたのがかの「航空母艦・飛龍」である。飛龍には食べること大好きな提督・山口たも少将が座乗中なはず。とくればこんないい機会、「逃す手はないだろうが!」。

桂中尉の照準が「飛龍」に合った。

 

「飛龍」の舷側のラッタルを、でかい宮島肩に担いで大声でわめきながら登る桂 ヨネ中尉。その姿を見た舷門の下士官嬢が「ワアッ、ヨネスケ中尉だっ」と言って笑いだしその声に甲板士官嬢だの飛行甲板にいた整備兵嬢たちがわっと寄って来た。

口々に、「ヨネスケだあ」「ほんとに宮島もってきてる~」とか「本当に何の前触れも無しだあ」と叫びながら。桂中尉は

「もう晩飯すんじゃった?まだなら見せてちょうだいよ」

と言って、皆は「どうぞどうぞ、今から山口司令官が召し上がるところだから」と桂中尉を中に招じ入れる。桂中尉は

「へえ!山口司令官がこれから?いいところに来ちゃったねえ。司令官は大食いって言うからぜひ見せてもらわなきゃ。それでどんないいもの食ってるんだか見せてもらわなきゃあな!」

と言って歩いてゆく。

 

さて、司令官室では山口たも少将が今まさに夕食をとろうと箸を手に取りかけたところだった。突然ドアが開くと

「こんばんは~、突撃他艦の晩御飯の桂中尉で~す」

と知らない中尉が乱入して来た。少なからずびっくりした山口司令官ではあったがここでとりみだしては提督の名がすたる。心落ち着けていつもの温顔で「はいこんばんは、ごきげんよう」とあいさつ。桂ヨネスケ中尉は

「さあ今夜は司令官はなにを」

召し上がってるのでしょうかといいかけて言葉がはたと途切れた。桂中尉の目は、テーブル状にくぎつけになっている。白いテーブルクロスの上には――

大きな鯛の姿焼がドーンと丸ごと一匹。

飼い葉桶のような入れ物に満載の生野菜。

まな板くらいでっかい皿にびっしり乗った刺身。

洗面器くらいでっかいお椀になみなみのお吸い物。

が鎮座していた。そしてそのわりには小さな――まるで子どお茶碗のように小さな茶碗に軽く盛られたご飯。

桂中尉は「はあ~。しかしどれもおかずはたくさんありますねえ」と嘆息ついた。山口司令官は温顔をほころばせて

「炭水化物は少なめに、を心がけているんでね。以前ものすごく太ってたから注意はしてるんだよこれでも。でも年が年だから最近また太ってきちゃってねえ、困ったものよ」

と笑う。桂中尉ははあ、そうですかと言ってしげしげとそれらを見つめる。すると山口司令官が

「そうだ、せっかくだからヨネスケ中尉も一緒に食べていくといい。さあ座って」

と自分の前の椅子を勧め、従兵に何か囁くとしばしのあと司令官と同じものが中尉の前に並んだ。大きな宮島を傍らに置いて桂中尉は大喜びで司令官と同じものをいただいた。

「さすが、食通の司令官がいらっしゃる飛龍の飯は美味い!」

とお世辞を言う。本当は内心(『大和』の飯の方が美味いと思うんだけどなあ)なんて考えつつ。桂中尉は吸いものをすすってから

「司令官は『大和』にいらしたことおありですよね?『大和』の飯はいかがでしたか?我々一所懸命作っておりますが」

と尋ねた。

すると山口司令官、にっこり微笑んでから、

「味はすっごくいいよね!さすが大戦艦だけある。でもね、残念なことに盛りが少ないよ。うちは艦長から一等水兵に至るまでこうだからね」

というと――自分の前の大もりのおかずをそっと指したのだった。

桂中尉もはや言葉も無し。

 

こうして「突撃他艦の晩御飯」は終了。大きな宮島を担いで『大和』に戻ってきた桂中尉に福島大尉から「またー!桂さんどうして烹炊所のしゃもじ持ってっちゃうの?森脇さんが困ってたわよ、早く返してあげて~?」

と苦情が。

「うーん…しょうがないな、工作科に頼んで専用の宮島を作ってもらうか」

桂中尉は持ち出したしゃもじを烹炊所に戻しながら言ったのだった。そして翌朝、森脇班長が「誰だ―ッ、宮島のど真ん中に<突撃他艦の晩御飯>なんていたずら書きしよったんは!」と激怒することになるとは、今は思いもよらないヨネスケ中尉であった――

 

            ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

突然のように降ってきたお話です。

突撃となりの晩御飯、って結構好きです。にべもなく断られたりして。ヨネスケさんうちにだけは来ないでください、うちはほんと…粗食ですから!

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Secre

Baron De Bop さんへ

Baron De Bop さんこんばんは!

ようこそ!ありがとうございます^^。こんな話や真面目な話も書いています。
よろしかったらまたいたして下さいね♪

こんばんは。はじめまして。

まいった、おもしろいです。

鍵コメさんへ

はい、これを使えばなんでもOKです。ぜひ使ってみて下さいませ!

はづちさんへ

はづちさんこんばんは!
喜んでいただけで嬉しいです❤ 時折、こんな変なお話も混ぜます。こういう変な話の方が得意なんじゃないかって?
―――その通りです!ww

おっとおなかがすいちゃいましたか!それはいけません、我が家は金曜日は「カレーライス」ですぞw。最近はいわゆるカレールーを使いません。たいがいは「フレーク」というやつでカロリー低いのでこれをよく使います。そして時間がある時は小麦粉を炒ってカレー粉と合わせるのを作ります!
これが「我が家のカレー」って感じでいいんですよね~~♪

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
どうして彼をモチーフにしようと思いついたのか、自分でもよくわかりませんが不意に頭に浮かんだのが「ヨネスケ」「隣の晩御飯」でした。浮かべばもう、話を組みたてるだけですからそこから先は簡単でしたw。
そうそう、今話題の錦織くんがこの先「女だらけの~」に衝撃デビューします。もちろん女の子になって名前もちょっといじりますがw、お楽しみに~❤

おかげさまでだいぶ体も気分も落ち着き始めました。間もなく五十日・・・早いものだと一人空を見上げることが多くなりました。

にい様もご無理なきよう願いますよ!

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
ヨネスケさんのあの堂々ぶりはもうあそこまで行くと素晴らしいの一言でしたw。そしてほんと、他人様のお家だから笑いながら見られるんですよね~❤ わたしんちは絶対だめ!見せられるような晩御飯なんてないも―ん(^_^;)。

あ、その本私持ってますよ!その部分も読みましたが遺品入れと弁当箱じゃあ天と地ほどの差があるじゃあないかーー!ですよね(-_-;)。
しっかりせえや、といいたいですよね。

今日の暑さは一寸堪えましたね。涼しかったり、暑かったりして風も多いみたいですね(^_^;)。オスカーさんもくれぐれもお大事になさってくださいませね。

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おじゃまします

こんにちは

これは、いつもと違った番外編、
「…なかなかですね」
いやいやとんでもない、
めちゃくちゃ面白かったです。(笑)
ただ困ったことに、お腹が空いてきました。
見張り員さんのお家に突撃して、
ご相伴にあずからせていただこうかしら。(笑)

桂ヨネさん。そうでしたか。隣の晩御飯。
ちょっとだけの登場人物も見張り員さんの手にかかると輝きますね。
そのうち錦織さんも松岡さんともども衝撃的な登場を果たしたりして。

体調は如何ですか。あまり無理をなさいませんように。

こんにちは。よく見ていましたわ、ヨネスケさん! 気になる、知りたいを堂々とやってくれて(笑) 他人の家だからオモシロイんですよね~自分の家は絶対パス(;^_^A

食べ物と言いますと、本屋で立ち読みした海軍さんの本にお弁当箱の記事もあって……その中に海軍省の文字と錨マークが彫られた容れ物、本当は遺品入れなのに弁当箱と紹介している雑誌もあると……これって酷いですよね。ちゃんと調べてから本にしてほしいものです。

またむし暑くなりました。風邪をひく人も増えています。お気をつけて!
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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