2017-09

「女だらけの戦艦大和」・光れパワーストーン!2 - 2014.07.19 Sat

エンジンが妙な音を立てたそれから何分もたたないうちに、ボン!と大きな音を立ててエンジンは煙を吹きだした――

 

「渡部少尉―!」

と田中将子上飛曹は愛機の風防をばっと開けると大声で叫んでいた。斉藤一飛曹も同じく風防を開けると少尉の機に向かって片手をうんと伸ばした。少尉をこの手につかまらせて自分の機に引き込まんとしているのだろうか。

だが。

エンジンからの真っ黒な煙に包まれた渡部少尉の機はそのまま失速して落ちて行った。斉藤一飛曹と、田中上飛曹はもう夢中で「渡部少尉、渡部少尉ーッ!」と絶叫した。その二人の絶叫が大空に吸い込まれて消えてゆく…。

 

渡部少尉は真っ黒な煙が操縦席にまで入り込んできて、たいへんに咳きこんでいた。そうしながらも何とか機体を立て直そうと必死にスロットルレバーを引いてみたりフットバーを踏んでみたりしてみたが何の効果も無い。

渡部少尉はふうっと息を吐き出した。それはあきらめの吐息でもあった。彼女はすべてのレバーから手足を離すと「もう、いけませんね。私も年貢の納め時って奴でしょうか」とつぶやくと目を閉じた。エンジンからは真っ黒な煙が吐き続けられる。その煙を引いて、渡部少尉機は落ちてゆく。

 

それを必死で追う僚機の田中、斉藤の両兵曹は大泣きしながら

「渡部少尉、少尉!あきらめないでください、脱出できませんか!?」

と叫んでいる。二人ともこの温厚な少尉が大好きなのだ。どちらかというと荒っぽい気性の女の多い航空隊にあって渡部少尉はいつも言葉もゆっくりと優しくやたらと声を荒らげることがない。そのうえいつも部下の身上を案じてくれる。文句の全くない上官なのである。

斉藤兵曹は泣きながら

「渡部少尉、脱出して下さい―ッ!」

と絶叫した。落下傘を携行しているのだから使って欲しい、切実な願いを必死で降下してゆく少尉の機体にぶつけた。が少尉が脱出してくる気配がいっこうに無い。田中兵曹も操縦桿を握りしめて

「渡部少尉―!」

と泣く。なんでどうしてあんなに良い人がこんなアクシデントで死なねばならぬのか。この世には神も仏も無いんか、だとしたら私はもう金輪際家の仏壇も近所の寺もあの小さな社も拝んでやらない…田中兵曹は天を仰いで慟哭した。

                                          

渡部少尉は静かに目を閉じ、機体が落ちてゆくのを感じていた。

この調子だと間もなく――この機体は海にたたきつけられて私は死ぬだろう。この高度で角度なら助かるまい。長いようで短い人生だった、故郷で私の帰りを待つ老いた母には申し訳ないが、そう遠くない日に私の殉職の知らせが行くだろう。それを受け取った時の母の心中を思えば私もつらいものがあるがしかし、これはもうどうしようもない定めだと諦めて欲しい。

そう母への別れを想う少尉の脳裏に幼いころ遊んだ故郷の景色がよみがえった。そして幼馴染の顔も。

あの子たちどうしているだろうか、私の死の知らせをどんな感想を持って受け取るだろうか。泣くだろうか、それともよく頑張った、帝国海軍航空隊の名に恥じない最期だと誇ってくれるだろうか。

そして――どこかにいるはずの私の伴侶になるはずだった人。何の別れも言えないまま私は死んでゆきます。あなたと言う人に一目会いたかったな。

そしてもう一度インドに行きたかった。ワイダ・スウハさんに会って私の海軍生活の話をあれこれしたかったな。スウハさんごめんなさい、私はあなたとの再会の約束を果たせぬまま南海に散ってゆきます。

「さようなら、みなさん…」

渡部少尉がつぶやいたその時!!

 

渡部少尉機の行方を見守りつつ追っていた田中上飛曹と斉藤一飛曹は同時に

「ああああ!渡部少尉ーッ」

と絶叫した。

渡部少尉の乗った零戦は――。

  (次回に続きます)

 

             ・・・・・・・・・・・・・・・

渡部少尉は覚悟を決めたようです。

そして二人の飛行兵曹は何を目撃したのでしょうか、もしかして渡部少尉の最期でしょうか?

次回をご期待下さい!


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● COMMENT ●

柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさんこんばんは!
こういう状況の時・・一体どんなことが脳裏をよぎるのかなあと思いますね。よく故郷の景色や親兄弟の顔と言いますが渡部少尉はなんと修験者の顔(-_-;)。

さて二人の兵曹の驚きとは?

見張り員さん   こんにちは♪

いつもありがとうございます♪
渡辺少尉のゼロ戦が突然エンジンが煙を噴出して渡部少尉の機は
そのまま失速して落ちて行き海に落ちると覚悟を決めた時もう一度
インドに行きワイダ・スウハさんに会って私の海軍生活の話をあれこ
れしてスウハさんに私はあなたとの再会の約束を果たせぬまま南海
に散っていきますと言った時に田中上飛曹と斉藤一飛曹は同時に驚
いて何にビックリしたか知りたいですね。

はづちさんへ

はづちさんこんばんは!
渡部少尉、このまま墜落死か!?たいへん気になるところですね~(-_-;)。でも!きっと大丈夫です^^。

いやあ、今年と言う年がこれ程波乱に満ちた年になろうとは私は思いもよりませんでした。
でも、この物語は私の大事な息抜きですので書き続けますね、これからもよろしくです^^!

おじゃまします

こんにちは

え?あれ?
落ちるんですか?
渡部少尉はどうなるんでしょうか??
たいへん続きが気になるところですが、
見張り員さんも何かと大変でしょうし、
急かさず、焦らず、続きを楽しみにしております。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんにちは!
そう言われてみるとこういう切迫した命の危険を描いた話は初めてかもしれませんね!渡部少尉この危機を切りぬけられるか!
お楽しみに^^。

本当にいろいろあとからあとから問題が起こって辟易、心底疲れました。がそうも言ってはおれませんので何とか乗り切らねばと思っています。
いつも応援をありがとうございます!頑張ります^^。

おはようございます。
記憶違いでなければ見張り員さんのヤマトで、初めてこんなにも命が切羽詰まった描写はなかったかと。難しい展開をこれからどうのように決めて下さるか。楽しみです。

いろいろありましょうが心を確かにしてこの夏を乗り越えて下さい。
大分から応援していますよ。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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