「女だらけの戦艦大和」・光れパワーストーン!1

 南方の空気いっぱいに包まれたラボウル海軍航空基地では今日も女だらけの海軍航空隊が勇ましく訓練をしている――

 

基地の零戦隊二番隊分隊士・渡部陽子少尉はいつも、搭乗前には大事そうに懐から何やら出しては撫でている。渡部小隊の二番機搭乗員・斉藤祐樹子兵曹はそっと少尉に寄っていって

「あ、渡部少尉。これがあれなんですね」

と言って微笑んだ。うなずいて見せた渡部少尉は大事そうに手のひらに包んだ物をそっと斉藤兵曹の前に出して手のひらを開いた。

その中には綺麗な済んだ青色に光る小石が乗っている。これこそ、渡部少尉の命の次に大事な<パワーストーン>である。渡部少尉は斉藤兵曹を前に思い出話を始めた。

 

――少尉は学生時代、インドを一人で旅した時かの地の深山に迷いこみ、死にかけていたその時偶然通りかかった修験者に助けられ、数カ月一緒に暮らした。言葉も最初はちんぷんかんぷんではあったがやがて意思の疎通ができるようになり、修験者からたいへんに気に入られるにいたった。そして「あなたには立派な仙人になる風格がある」とさえ言われたという。

そして少尉が日本に帰国する際には修験者――その名を<ワイダ・スウハ>氏――はたいへん悲しんだが少尉の「また絶対ここに来ますから待っていて下さい」との言葉に元気を取り戻し、

「名残惜しいがあなたにも親兄弟が待っていることだと思うから引き留めることはしない。いつかまた来てほしい。そして私を忘れないでくれ、今回の記念にあなたにこれを上げよう」

と言って直径5㌢ほどの綺麗な青色の透き通った石をくれた。渡部少尉が「美しい!こんな素晴らしいものをいただいてよいのですか?」と問うと、ワイダ・スウハ氏は彼女をしばらくの間見つめた後でこう言ったのだった――

「ヨウコ。あなたはそう遠くない未来に戦さをしに行くことになるだろう。そしてヨウコはあの空を<空飛ぶ機械>を駆って行く勇敢な戦士になることだろう。いいかヨウコ、軍隊に入ったらこの石を肌身離さず持つがよい。きっとこの石はヨウコが危機に陥った時助けてくれるはずだ。いいね?」

そう言ってワイダ・スウハ氏は渡部少尉の手に石を握らせ涙ながらに少尉を送り出してくれたのだった…。

 

「なんとそんなことがおありだったとは。渡部少尉のこれまでって言うのはけっこうドラマティックですねえ」

そう斉藤兵曹は言って少尉の掌の中で青く光る石を見つめた。そして「で?少尉はこの石に助けられたことがおありなんですか」と尋ねてみた。すると渡部少尉は大笑いして

「ないよ、考えてもみなさいって。これはただの石だよ?ちょっと見たらきれいだからもしかしたらそんなこともあるかもって思うだろうが、普通の石なんだからそんなことありっこないって」

と笑った。斉藤兵曹も笑いながら

「そうですよね。それ以前に渡部少尉が危機に陥るなんてこと自体ありえませんものね」

といい、二人は兵舎の方へと歩き出していったのだった。今日は渡部少尉の小隊はここから数マイルの空域で訓練飛行をする予定になっている。その準備もあるので「早めに厠に行っておくか」などと笑いながら。

 

さて訓練時間となり渡部少尉は僚機の斉藤一飛曹、田中将子上飛曹を率いて滑走路から飛び立った。本日のラボウル周辺は雲量4、南の風3㍍、風力は2ないし3であり飛行には最適の条件。零戦三機は基地の上空で編隊を組むと西へと機首を向けた。

渡部少尉と僚機の周囲には敵機の気配すらなくあるのはどこまでも青い空と青い海だけ。時折雲の中に入るが薄い雲なのであっという間に後方へ押し流されまた青い空が広がる。

二〇分ほど飛んだあと三機は模擬空中戦を行い渡部少尉は敵役にまわり斉藤一飛曹機と田中上飛曹機に追われる。

が、渡部少尉は彼らの一瞬の間隙を突き、まず斉藤一飛曹の機の真後ろにぴったりついて模擬弾を発射。模擬弾は斉藤機の風防にカンカン…と音を立てて当たり斉藤一飛曹は

「あ、やられた。これが実戦だったら私は死んでるかも。渡部少尉、さすがだなあ。どこに回りこまれたのかわからなかったよ」

とぼやいた。それを見ていた田中上飛曹は「チャンス!いただきだ。渡部少尉討ちとったりー」と叫んで渡部少尉の機の後ろに食らいついた。模擬弾を撃とうとした次の瞬間、渡部機が消えた。

「えっ!どこに行ったんだ?」

と泡を食う田中上飛曹、ハッと上を見上げればいつの間にそんなに上昇していたのか、渡部少尉機が太陽の中から湧きだしてしてくるのがわかった。

「ま、まずい。やられる!!

田中上飛曹は取り舵に反転してやり過ごそうとした。渡部少尉の機はその横をすさまじい勢いで急降下して行き田中上飛曹は(やり過ごしたか。逃げよう)と思って体勢を立て直した。

その時右の翼の下の方に渡部少尉の機が見え、それは模擬弾を発射しながらこちらに突進してくるではないか。

田中上飛曹は「うっ、うわあああ!」と叫んで一気に加速し逃げを打ったのだった――

 

そして、それから数十分後に渡部少尉機から信号弾が発射され訓練の終了と相成った。渡部少尉機の左右に斉藤、田中の両機が集まり渡部少尉は手信号で<お疲れ、張り切りすぎたかな?基地へ帰ろう>とやって僚機の二人は笑って手を振る。

そして三機は来た時と同じように編隊を組んで基地へと向かって飛んでゆく――

 

異変が起きたのはそれから二〇分もたたないうちだった。渡部機のエンジンの調子がどうもおかしくなってきた。

渡部少尉は「これはまずいな、どこか不時着を考えないといけませんねえ」とひとりごち僚機の田中、斉藤両兵曹に<エンジンの調子がおかしい、トテモ基地までは持たないので不時着地を探す>と通信をした後、基地にその旨を打電。そして(はて、しかしどこに不時着したものか?海上にするしかないか)と下を検分した。風防を開いてちょっとだけ首を伸ばして下を見る。

右に斉藤兵曹が心配そうな顔で寄りそうように飛んで、さらに左には田中兵曹が必死の面持ちでこれも寄りそうように飛行中である。

渡部少尉はいつものように落ち着いたゆっくりした口調で

「大丈夫大丈夫。こういう時こそ落ち着いてかからないといけませんよ」

と言った、その時。

ボン!とエンジンから大きな音がしてそれとともに真っ黒な煙が噴き出した。わっ、と斉藤兵曹・田中兵曹がそれぞれの畿内から叫んだ。

次の瞬間――渡部少尉の機はコントロールを失って失速して落ちていったのだった――

     (次回に続きます)

 

                ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

渡部少尉、どうなるのでしょうか?修験者からもらった石が役に立つなんて到底思えませんし、このままどこかに墜落して死んでしまうのでしょうか?

緊迫の次回をご期待下さい!

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Secre

matsuyamaさんへ

matsuyamaさんこんばんは!
♪銀翼連ねて南の前線~
という歌の情景を思い浮かべています。零戦などの操縦に関しては正直よくわからないのですが聞いた話などのイメージを繋いて書いています。
このテンプレートも素敵でしょう、気に入っています。イメージにぴったりなんですよ^^。

さあ、どうした渡部少尉!?
一体何が起きたのでしょうか、はたして無事基地に帰れるのか渡部少尉。
次回をご期待下さいませ!

KAZUさんへ

kazuさんこんばんは!コメントありがとうございます^^。

ラバウル、パプアニューギニアにあるのでたいへん熱そうです(-_-;)・・・確か日本名で「花吹山」とか言う大きな火山があるんですよ。それが噴火した時は火山灰で整備兵は大変だったとか。

本当にあの大戦で南方で戦った人たちの精神力と体力には驚嘆します。今の我々が熱中症だの何だのと言っているのが恥ずかしいような…。
でも最近の暑さはちょっと常軌を逸していますからね~、困ったものです。

kazuさんもこれから暑さに向かいますから御身大切にお過ごしくださいね^^。

南洋の空で編隊を組んで舞う航空隊、その訓練が手に取るようにわかります。
それもこのブログの背景となっている大海原がイメージを奮い立たせてくれているのかもしれません。海軍航空隊を語るに相応しい写真ですね。
さてさて渡部少尉機、どうしたんでしょうね。渡部少尉ほどの上級者が操縦ミスを犯すとも思えないし、整備不良だったのでしょうか。
無事不時着をしてほしいと願ってますが、ここでパワーストーンの効果がどのように発揮されるか、期待したいところですね。

ラバウルは、内地に負けないくらい暑いのでしょうね。湿度も
高そうですしね。エアコンもない時代に先人達はよくがんばりましたね。
こちらも毎日暑い?(そちらに比べるとそうでもないのですが、私達には
猛暑ですね(笑)です。体調にはきをつけてくださいね。
今後のお話もがんばってくださいね^^
いつも感謝いたします!

柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさんおはようございます!
石の厄除けをお持ちですか、私は特に厄除けではないですが水晶(安いものですw)のブレスレッドを持ってはいます。

そしてそして機になる渡部少尉、このまま海に墜落なんてことは――ないと思いますが気になりますね、次回をお楽しみに^^!

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんおはようございます。
なんだかインドの山奥の仙人だとか修験者って憧れに似た感覚があります!
渡部少尉が無事に帰還できるよう祈りたいです。

よくパワーストーンとかって売っていますね。ほんとか!と、心弱き時は欲しくなるのが人情ですよね。しかしあまり高額な金をふっ掛けられると――使いたくも無くなりますね(-_-;)。

にい様、インドの修験者を訪ねに行きましょうーー!!

オスカーさんへ

オスカーさんおはようございます!
渡部少尉、一体どうなっちゃうのでしょうか。ハラハラしますねえ(-_-;)・・・
そういえばインドネシアだったか「聞いろう肌の人が空から降りてきて我々を白人から解放してくれる」という伝説があってそれがあの戦争の時展開された、黄色い人=日本人だった!という話を読んで感激しましたね^^。
渡部少尉、神になれるでしょうか?

お子様、セブ島へですか!フィリッピンの様々に思いを馳せてきていただきたいです。くれぐれもお気をつけて行ってらっしゃいませ。

今日も暑くなりそうですね、お健やかにお過ごしくださいませ^^。

見張り員さん    こんばんは♪

いつもありがとうございます♪
渡辺少尉・斉藤兵曾・田中上飛3人は零戦三機で訓練
で渡辺少尉の零戦が突然にボンとエンジンから大きな
音がして真っ黒な煙が噴き出した渡部少尉の機はコントロール
を失って失速して落ちていきましたら修験者ワイダ・スウハ氏から
頂いた青く光る石を身につけていますから何事もなく無事に機から
脱出できると思います。
私も石などの厄除けですとか病気回復などのブレスレット持っていて
今迄不思議と守られてきました。

今回は空を飛ぶ仙人のような修験者や零戦でのアクシデントなど空の話でしたね。パワーストーンのお陰できっと無事だと分かっていながらもドキドキです。
やはりただの美しい石だと思わないことでしょうか。それともその絶大なパワーを知っているからこそ敢えて・・・。
僕も無茶苦茶落ち込んでいる時に知人の紹介でパワーストーンのブレスレットを作りましたが30000円も取られました。腹立ち紛れに一度も使っていません。やっぱりそれなりの人が作ったものでないとパワーなど込められていませんよね。

こんばんは。
石の力は意志の力で良い方向に進みますように祈っています~少数民族のところでお世話になり、青い石を持って空からやってきたのは神さまに違いない!崇めねば!な展開が希望です。アナタのためにダイワハウスに特注します!とか(笑)

来週下の子がセブ島に行きます。ゲリラ戦の激しかったフィリピン、少しは歴史も学んでの旅行だといいのですが…。

また続きを楽しみにしています。お身体大切に!
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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