2017-09

「女だらけの戦艦大和」・それを人は恋わずらいという8<解決編> - 2014.07.06 Sun

 料亭の玄関に殺到してきたものは――

 

 

そのことが起きる一時間ほど前、女だらけの『大和』防空指揮所では発光信号を受信していた。それを受信した信号兵嬢、

「た、た、大変だあっ、一大事だッ」

と叫んで第一艦橋にいる信号長のもとへそして、信号長は梨賀艦長のもとへとすっ飛んで行ったのだった。梨賀艦長は第一艦橋にあって森上参謀長とともに「本日の野村副長の見合い」について話をしていたところだった。軽く憂鬱そうな艦長に、森上参謀長は

「まあ梨賀の気持ちはよくわかるよ。野村中佐は梨賀にとってよき片腕でありそして何より素晴らしい想い人だからね。でももし結婚したとしてもこれからもよき片腕であることには違いないよ。ただ…今迄みたいに愛してやることはできないだろうがね。――それでもいいじゃないか、あの子が消えてなくなるわけじゃない」

と言って励ました。

その参謀長に梨賀艦長は

「そうだね森上さん。私はあんたみたいな良いクラスメートを持って幸せだわ」

と言ってほほ笑んだその時、信号兵嬢が息せき切って血相変えて足取り乱して駆け込んできたのだった。信号長嬢は

「艦長―!」

と叫んで梨賀艦長と参謀長の前に来ると敬礼の手をあげるのももどかしそうに、それでも敬礼した。艦長が「どうしましたね?」と尋ねたのへ信号長嬢は、ごくりと唾を飲んでから

「緊急の信号です。野村中佐が暴漢に襲われたとのことです。詳細は不明、急ぎ対処されたしとのこと!」

と怒鳴った。彼女の唇がわなわなとふるえている。

梨賀艦長が「なんだと!副長が暴漢に!?」と叫んで、森上参謀長は「梨賀!急ぎ衛兵隊を組織だ。藤村少尉を指揮官に、陸戦装備で緊急上陸させて中佐を救う!」と怒鳴って梨賀艦長は「その全権を森上大佐に一任する!」と命令、森上大佐は伝声管に向かい「衛兵隊を組織する、当該将兵は陸戦装備の上前甲板に集合!」と叫ぶと走り去った。

そして五分ほどで<副長直属>の藤村少尉ほか二十名ほどの衛兵隊が前甲板に集合、森上大佐から緊急信号があった旨を聞かされその内容に一同激しく動揺した。

だが一刻の猶予もならない、これも陸戦装備に身を固めた森上大佐を先頭に野村中佐を救うべくカッターを漕ぎ出だして行ったのだった。

そのあと、各科長・掌長たちは今後の事態の推移を見てどう行動するべきか、緊急会議をもった。

 

そして。

彼女たち<大和衛兵隊>は上陸すると通報者の水兵嬢に聞き出して野村中佐の居所を確定し鬼神のごとき勢いで走り出して行ったのだった。

陸戦装備に身を固めた一隊は、野村中佐が<監禁され暴行を受けている料亭>を取り囲み玄関に踏み込んだ。森上大佐と藤村少尉が最初に踏み込み、その後ろに銃を構えた<陸戦部隊>嬢二十名ほどが控えている。

何事かと出てきた女将と仲居頭が、異様な光景にキャーッと悲鳴を上げた。

森上大佐が玄関から靴のままで上がり軍刀を構え

「野村中佐を監禁暴行している輩はどこだ、出せ!」

と怒鳴り、女将は突然のことに言葉も出ずへたり込む。仲居頭が震える指先で廊下の奥を指し、藤村少尉が

「向こうだ!いくぞっ!!」

と叫んで一同は「うおおお!」と叫ぶと藤村少尉に続いて廊下を走り出して行った。そのあとを森上参謀長が走る。

 

「なんでしょうね、あの物音。いやあねえ、物騒な」

そう、野村中佐の母親が言ったその時、その部屋のふすまが蹴破られ「野村中佐!」という怒号が飛び込んできた。

「ひゃああ!」

と中佐の母親がその場にふせ、父親は腰を抜かし、中佐はおもわず山中大佐にしがみついた。

四人の前に立ちふさがるようにして叫んだ「中佐お助けに」まいりました、という藤村少尉の言葉が尻つぼみに小さくなりやがて陸戦姿の一同は自分たちが大きな間違いをしでかしたのだ、ということに気が付いた。野村中佐は監禁も暴行も受けていないではないか、のんびりとした空気がその場には残っている。

そこに「どうした!野村中佐は無事か?」と森上大佐が軍刀を構えて入ってきて野村中佐たち四人はさらに驚愕の面持ちでその姿を見つめている。

<監禁暴行>されているはずの野村中佐は、両親と思しき年配の男女と、もう一人海軍の制服を着た男性にしがみついて恐怖の面持ちでいる。しかもその恐怖、こちらに向けられているみたい・・・。

「いったい…どういうことだ?」

森上大佐はわけがわからないといった表情で四人を見つめて呟いた。するとやっとこさ驚きを収めた野村中佐が

「どういうことだはこちらのセリフです。そちらこそいったいどうなさったのですか?土足で室内に踏み込んだりして…料亭にご迷惑ですよ」

と一同をいさめた。そして自身の腹心の部下たちを見つめて

「まあ、なんて大げさな装備を。どういうことだ藤村少尉、説明しなさい」

と静かに言った。

そこで藤村少尉は銃を置くとこれまでのいきさつを説明した。話すうちに誰か―ー頭に血が上って冷静さを欠いた誰か―ーが話を勝手に大きくしてしまったのだということに気が付いたのだがもう手遅れ。

「副長、大変申し訳ございませんでした!このように皆様にご迷惑をおかけしてしまって」

と少尉はうなだれた。

その少尉の肩を優しくたたいた野村中佐は

「私をそこまで心配してくれてありがとう。確かにその話は半分は当たっていましたよ。でもあとの半分は外れ。これからは冷静に物事を分析する力も要求されるぞ。わかったらその泥のついた廊下を皆で掃除しなければね」

と言って部下たちは靴を脱ぎ、女将に雑巾を借りて廊下をふき始めた。

野村中佐も

「私のことがきっかけでこうなったのだから私も」

と廊下を拭いて藤村少尉はあわてた、が「あなたたちの上に立つものがやらないでどうしますか。これが指揮官先頭の精神です」と言って、その言動が山中大佐をいたく感激させた。

<陸戦部隊>でやってきた松本兵曹長もそれを聞きつけ

「うちらの副長は偉いお人じゃ。ご自分が大変な目ぇにおうてもああしてご自分の責任として後始末を果たされ取る。上に立つものの、鑑じゃ」

とその大きな体を震わせんばかりに感激している。

やがて掃除が済んで、野村中佐たちは『大和』からの陸戦部隊に守られて帰宅の途に就いた。

道々、中佐の腹心の部下たちは山中大佐をそっと見ては、(あの人はいったいどういう関係のお人だろうか)と内心そわそわしている。

「お見合いの人かもしれんな。なんだかんだ言うて我々海軍の人間を理解してくれるんは同じ海軍の男性しかおらん」

一人の准士官嬢がそういうと皆「ほうじゃわ。やっぱしうちも結婚するんなら海軍に籍を置く男性がええ」と大賛成したのだった。

 

山中大佐は

「あなたの艦長にご説明をしに伺わねばなりませんから」

と『大和』へ向かうこととなり、中佐の両親とは上陸場で別れることになった。別れ際山中大佐は

「いつまでこちらにはいらっしゃいますか?できたら早めに結婚式の話をしたいのです」

といい、中佐の両親と二日後に会う約束を取り付けた。その顔は幸せに輝いて、野村中佐は近い未来の夫の顔を眩しげに見上げた。

 

「大和」を訪問した山中大佐は、梨賀艦長たちの歓迎を受けた。

艦長は、艦長室に山中大佐を招いて紅茶や菓子でもてなしさまざま話をした、そして山中大佐の「私はこの名誉ある艦の艤装にすこし、かかわったのですよ」という話を披露して艦長、副長たちを感激させたのだった。

そのあと山中大佐は副長に艦内を案内されていっそう感激の度を深めたのだった。山中大佐は一通り見て回った後、しばらくの間前甲板に出て海を見つめ、満足げな表情でひとりうなずいている。その横顔をじっと見つめていた野村中佐に向き直ると

「野村中佐…いや、つぐちゃん。私と一緒になってくれますね?」

と尋ねた。野村副長はちらりと周囲を見回して、誰もいないのを確かめた。この時、艦上の配置員は二人が上がって来た時から気を利かして艦内や、アーマーの中へ引っ込んでいる。

副長は小さく「はい」と返事をしてうつむくとその頬を桜色に染めた。がしかし、突然顔を上げると

「山中大佐、しかし私は――家庭をきちんときりまわして行く自信がないのです」

と言って悲しげにうつむいた。

山中大佐は彼女の瞳を覗き込んで

「なぜ?なぜそんなことを?ほかに海軍の女性と結婚している我々の仲間は大勢います、そしてそのどれもたいへんうまくやっていますよ。艦隊勤務のたいへんさやつらさは、我々だってよくわかります。私はあなたの勤務の心身の疲れを私自身で取ってあげたいんです。そして私自身もあなたに心も体も慰めて欲しい!お互いがお互いの身や心をいたわりあうのが私は結婚だと思っていますよ?

家庭を切りまわして行くのに自信がないのは、最初はだれも同じだと思います。私はそんなことにはいちいちこだわりません。私は――わたしはあなたとこの先の長い人生を一緒に歩きたいんです!私の長年のこの願いを、どうかかなえてはくれませんか?

それとも私がつぐちゃんよりずっと年上だから不安なのですか?」

と一気に語り、最後は中佐の両肩を力強く両手でつかんだ。

すると野村中佐は

「そんな、そんなことはありません。私だって山中大佐が好きです――」

と言って軍帽の廂の下のまぶたを閉じた。涙が流れた。

だったら、と山中大佐が優しく中佐の肩を撫でて言った。

「だったら結婚しましょう。私はつぐちゃんがこの世で一番大好きだ」

それを聞いた瞬間、野村中佐は滂沱として涙を流し

「はい。私も、しんにいさんが大好き――」

といい、山中新矢海軍技術大佐は<つぐちゃん>をその胸にしっかり抱きしめたのだった。大佐は、しっかり中佐を抱きしめながら

「大事にします…私の一生かけて」

と誓った。抱きしめられながら野村中佐は彼の胸の中でうなずき、

「私も、私の一生かけてあなたにお仕えします」

と返事をしたのだった。山中大佐の腕に一層、力がこもった――

 

山中大佐の「恋わずらい」もこれで完治の様である。

 

 

その様子をこっそり防空指揮所から覗き見していた麻生分隊士と見張兵曹は

「ああ…ええねえ。なんて美しい風景なんじゃろうか。副長、幸せになってほしいねえ」

と感涙にむせんだのだった。

 

そして山中大佐の報告を聞いた益川中佐は「よかったねえ山中大佐!私もうれしいです、さっそく結婚許可を申し出ないと!」と喜んでくれたのだった。

山中大佐、長かった独身生活もあとわずかの様だ――

 

             ・・・・・・・・・・・・・・・

 

少し間が開いてしまいましたが、こんな結果になりました。めでたしです。結婚式はいつごろになりましょうか、早いところ一緒にさせてあげたいものだと思っております!

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● COMMENT ●

matsuyamaさんへ

matsuyamaさんこんばんは!
これもまたハッピーエンドでした^^、やはりこうでないと安心できませんよね。
この二人も言ってみれば職場結婚、互いの立場が分かればこそ長続きすると思います!

梨賀艦長がちょっと気の毒ですが、副長がいなくなるわけではないので頑張ってもらいましょう。この先の「女だらけの大和」が見ものですね^^。

すざまじい台風ですね、各地で被害が出ています。今年は嫌な想像ですが大型台風が多いような予感がします、当たらないことを祈るばかりです。

良かった良かった。ハッピーエンドですね。
ちょっと違うけど、職場結婚はお互い仕事を理解しあっていますよね。多分お二人は長く結婚生活を続けてくれるでしょう。
それにしても梨賀艦長の心中は穏やかではないでしょう。片腕をもぎ取られるような思いでしょうからね。一つの失恋かな。
まっ、梨賀艦長も大人だからおくびにも出さないでしょうけどね。

超大型の台風が発生したようですね。これからは台風のシーズンです。お互いに気をつけてまいりましょう。

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
ありゃ!!最近FC2ブログは不都合が多いのかしら??
申し訳ありません!
再度トライしてみて下さいませ!

おおきな台風が来ていますね、特別警報が出たとかでちょっと嫌な気がしています。オスカーさんもどうぞお健やかにお過ごし下さいね^^。
いつもありがとう^^。

にゃんこ先生へ

にゃんこ先生こんばんは!
恋わずらい・・・せつなくてつらいものですよね。
愛されたいのに愛されないとか、愛されたくない人に愛されるとか、ままならないのが愛なのでしょうか。
でもきっといつか愛はすべてを救ってくれるでしょう。

病名・・・あるかもしれませんね!

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
「必ず最後に愛は勝つ!」って歌がありましたが最後に残るのはやはり――愛だと思いますね。愛こそすべて。野村さん、変な見合い相手を駆逐してほっとしました。
彼女たち「女だらけの大和」「女だらけの海軍」の皆は立派であることを心がけていますので皆人格者です^^、しかしあの号泣議員やらなんやら、とんでもないのばっかりですね(-_-;)。
日本にたまったゴミを一掃せねば日本は早晩ダメになりますね。

出口の見えないトンネルに入り込んだような今回の父の病気。
正直へとへとなのですが・・・頑張ります。

柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさんこんばんは!
大騒動の見合いでした^^。でもめでたしめでたしで終わって良かったですね。
さあこれから山中大佐と野村中佐は結婚へ向けて忙しくなります。
二人の挙式をお楽しみに^^

大きな台風が接近していて怖いですね。何事もなく去ってくれますように!ケイさんも御身大切になさってくださいね^^。

こんばんは。どういうワケだか本文を読もうとすると「エラーが発生しました。レスポンスが不正です。(WJ40254E)」というメッセージが出てしまい、読めません( ´△`) でも皆さまの感想を読んで、喜ばしい終わり方だったのだと思い安心しました。またアクセスチャレンジしてみます。
台風も近づいてくるようですしむし暑いですね。どうぞお身体に気をつけて!

こんにちはw

私は、ずっと恋わずらい( ̄□ ̄;)!!!

愛する人に愛されたい・・何なんでしょうね?
苦しかったり、悲しかったりするのに、本当に病名があるのかも(* ̄∇ ̄)ノ

ハッピーエンドにしてくれましたね。よかった。よかった。
みんなに見守られていることが分かるからこそ、あの見合い相手の狼藉には心底恐怖だったでしょうね。
でも愛はきっと勝つのですね。
人の上に立つ人は骨の髄まで立派でなければいけないはず。ところが最近の日本のバカな地方議員のザマのなさ。号泣議員にセクハラヤジ、小遣い稼ぎに未成年とHしてる動画を流したり。クズ以下のゴミですね。あの号泣議員もとっとと辞めさせればいいのに。吐きそうになります。

ご実家と東京の行き来、大変でしょうがきっといつか報われますよ。今だからできる親孝行を努めて下さいね。

見張り員さん    こんにちは♪

いつもありがとうございます♪
大和から料亭に野村中佐を助けに森上大佐と藤村少尉が最初に踏み込んで
その後ろに銃を構えた陸戦部隊嬢二十名ほどが一緒に行き控えて女将さん
など腰をぬかすほど驚きご両親もビックリされたでしょうね。
山中大佐も大和に一緒に行かれて梨賀艦長に歓迎を受けられて野村中佐の
結婚も決まり中佐の両親と二日後に会う約束を取り付けられてよかったですね。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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