2017-09

「女だらけの戦艦大和」・それを人は恋わずらいという6 - 2014.06.24 Tue

 野村中佐と、見合い相手の経御国三(へお こくぞう)氏は場所を変えて歓談することとなった――

 

しかし、野村中佐の心はどんよりしている。正直彼は中佐の趣味ではない。しかも先ほど軍帽を手にとって舐めそうなくらい見つめられたし自分自身も舐めるように見つめられて気味が悪い。少し離れて歩く。ぼうっとして歩いたせいか、人気のない道へ入り込んでいたのも気が付かなかった。

すると経御氏はいきなり中佐の片手をつかんだではないか。

ハッとして中佐は手を引こうとした。が、彼はしっかりとものすごい力で中佐の手をつかんで離さない。中佐は軽く手を振って経御氏の手を放そうとした、すると経御氏はさらにグイッと彼女の手を握り締めるなり

「そんなに恥ずかしいか?カマトトぶってんじゃねえよ、貴様ら女海軍は早くっから男を知ってるって言うじゃないか。お前もそうなんだろう?とっくのとうに、男の二、三人いや、二桁くらいは乗せたんだろう?」

ととても品のない、聞き捨てならないことを吐き捨てるように言った。中佐の顔に怒りの朱が注がれ、彼女は経御氏の手を力いっぱい振り払った。

「なんてことを!我々は陛下の軍隊だ、それを愚弄するか貴様!」

絶叫した。大きな道に面した道を通りかかった水兵の数名が遠巻きにしてこちらを見つめているのがわかった。中佐はその水兵たちに料亭と、出来れば艦へ通報してもらおうとそちらに走りかけた、とたんに

「来いよ、お前を調べてやる。まあ結婚してからでもいいがどんな具合だか見ておかないとな」

と手をグイッとねじられ引きずられた。「いや!やめて」と叫んだ中佐であったが道の奥へと続く雑木林へ引きずり込まれていく。

 

中佐は無造作に乾いた土の上に投げ出された。中佐の目は経御を睨みつけている。その唇がわなわな震えると

「あなたと言う人がわからない・・・」

と言った。すると経御の先ほどまでの恐ろしいくらいの居丈高な態度が豹変したではないか。投げ出されたままの中佐の横に膝をつくと最初のような気弱な態度で

「ごめんなさい。私はあなたを試したかったんです。あなたを愚弄してしまったことをお詫びします・・・私は気の弱い性格でしかもこんな変な名前の為か、今まで何人とも見合いをしましたがすべてダメでした。名前は変えようがないし、なによりこの性格では女性は気に入ってくれないと悟ったんです。ですから今回は作戦を変えることにして、強い男を演じてあなたがどんなふうに私を見るか試すことにしました。私はあなたのような勇ましい女性が大好きです。海軍も大好きです。――でも結果はあなたを傷つけてしまいました。ごめんなさい。許して下さい!」

というなり号泣し始めた。中佐はきょとんとして経御の泣く姿を見つめている。しばらく泣いた後経御は「野村さん、私とわたしと結婚して下さい―ッ!」

と叫ぶなり中佐を抱きつき、その場に押し倒したではないか。野村中佐は「いや、やめてーッ」と叫んだが・・・誰も来るはずがない・・・。

 

野村中佐が貞操の危機に見舞われていたころ、山中大佐は上陸桟橋目指して歩いていた。マントが風に翻る。

(あの人に会ったら私はアガってしまうかもしれない。だが今日はそんなじゃ駄目だ、今日こそ私は富士山にならねば。一世一代の大一番だ。頑張ろう)

そう自分を鼓舞しながら。

そうして歩くうち水兵嬢の一団とすれ違った。と、何やらひそひそ話し合っていた水兵嬢の中の一人が山中大佐に駆け寄ってきて敬礼すると

「失礼を承知でお話しいたしますが」

と言って先ほど見かけた普通ではない光景を大佐に話した。そのうちの一人の水兵嬢が野村中佐の顔を知っていて、山中大佐にその旨を継げると大佐は、「その二人はどの辺に行ったかね?」と聞いて、水兵嬢の示した方へと走り出した。走り出す前に「君たち、『大和』の兵隊ではないのか?なくてもいい、『大和』に、それから衛兵所の人間に知らせなさい、緊急事態だ」と指示をして。

山中大佐は愛しい中佐を救うため走る、走る走る――!

 

「いや・・・やめて!」

野村中佐は経御に組み敷かれ暴れている。軍装のホックが外されその下の襦袢のボタンもちぎれて肌着が見えている。経御は息を荒げて中佐にのしかかり「野村さん、私と結婚して」を繰り返す。いや、いやだと中佐は逃げようとすればするほど着ているものが脱がされていく。

経御は「私は、あなたの写真を見たときからあなたを気に入っていました。結婚したいんです、お願いです。お願い結婚して?あなたが大好き――嫌と言っても、既成事実を作ってしまえばこっちのものです」と哀れっぽいようでとんでもないことを言いながら、さすがに力は男だけあって強く、中佐を地面に押し付けてついでに自分も押しつけてくる。中佐は(いやだ、こんなところでこんな男に<初めて>を奪われるなんて。私は、私はあの人が好き・・・!)と思いつつ必死で叫んだ。

「大佐、山中大佐―」

 

山中大佐は水兵嬢たちが二人のあらそう姿を見たという道へ走り込んでいた。(野村中佐、どうかご無事で!)と祈りながら走る。雑木林の中の道に走り込んだ。

すると自分を呼ぶ必死な声を彼の耳は聞いた。大佐は「そっちか!今行くぞ」と怒鳴ると声がした方角に、樹や草をたたき折らんばかりの勢いで走っていく。しかしなかなか姿が見えない、いらだち始めた大佐のすぐ後ろから「助けてー、山中大佐!」という野村中佐の叫びが聞こえ、大佐は「そこか!」と叫ぶと声のしたところへとその身を投げるようにして飛び込んだ――

 

その同じころ、『大和』のトップではマツコが落ち着きを失くしていた。トメキチが「どうしたの、マツコサン?」と不審げに問いかけた。マツコは「言ったでしょ、野村に何かが起きるって。その何かが起きてるような感じがするのよアタシ」と言って大きな翼をバサバサとさせた。

トメキチが緊迫した表情で「じゃあ、助けに行かないとだめじゃないの?マツコサン」と言ったがマツコは突如黙り込んで翼をたたんだ。トメキチは「どうしてマツコサン!?いつもお世話になってる副長さんに何か起きたんでしょう!?」と少しなじるように叫んだ。

が、マツコは「ちょっと待って?待ちなさいよ」と言うとしばらくの間じっとして目を閉じていた、トメキチがいら立つほどに。やがてその金色の瞳を開くと

「大丈夫よ、野村には強力な助っ人が来てるはず。アタシ達が行くよりずっといい結果になりそうね」

と言って翼を大きなくちばしで撫でつけた。

山中大佐は、野村中佐の悲鳴のしたところに飛び込んでいた。するととんでもない光景が展開されているはないか。

一人の男が半裸状態になって息を荒げて野村中佐にのしかかっている。あられもない姿にされた中佐は気を失ってしまったのだろうかぐったりしている。男は、山中大佐が飛び込んできたのもわからないのか「結婚して下さい、結婚してえ?」と言いながら中佐の肌着の中に手を入れた。

大佐の頭にかっと血が上った。

「おい、貴様何してるんだ!」

と怒鳴ると男の首根っこをつかんで思い切り投げた。ギャアー、と男は叫んでみっともない格好で二㍍ほど先の地面にたたきつけられた。腰でも打ったのか動けない男のそばに寄っていった大佐は「貴様は一体誰だ、どうして野村中佐とここにいる?」と問い詰めた。気弱な男は、山中大佐の恐ろしい剣幕に恐れをなして自分は中佐と見合いをしていてその後ここに連れ込んで襲ったということを白状した。

「馬鹿ものが!恥を知れ」

山中大佐はそう怒鳴ると男の両手を男の衣服で縛って置いた。そして立ち上がると倒れている中佐の元へと駆け寄った。

ぐたりと気を失ったままの中佐、あられもない姿の彼女に大佐は自分のマントを取るとそれで包んだ。そして必死で

「野村さん、野村中佐しっかりしなさい」

と呼びかけ続けた。しかしなかなか中佐は目を覚まさない――

 

その頃、見合いの会場では「ちょっと遅いですねえ。話が盛り上がってるのかもしれないがちょっと見て来ましょう」と紹介者の男性が外に出て行った。両家の親たちは(きっとうまくいっているのだ)と内心嬉しがりながら歓談中。

しかしその少し後、紹介者の男性が血相変えて駆けこんできて様相は一変する。「へ、経御さんが中佐に狼藉を働いた!!」と叫んだ紹介者の声に経御の両親は卒倒せんばかりに驚き、「まさかあの子が、あんな気の弱い子が!」と泣きだした。中佐の両親は「まさか!うちの娘が経御さんに乱暴をしたのでは?」とおろおろした。

しかし詳細は山中大佐が野村中佐を抱きかかえ、その後ろにすっかりしなだれた男性を従えて料亭に戻ってきたことですべて判明した。

野村中佐の両親は怒り心頭に発するし、経御の両親は息子の頭を畳に抑えつけ自分たちも平身低頭して謝るし紹介者は立場を失くしてそうそうに逃げてしまった。

こうして野村中佐の見合いはひどい結果で終わったのだった。

――そして。

     (次回に続きます)

 

              ・・・・・・・・・・・・・・・・・

どうもうまくいかない気がしておりましたがとんでもない男でした経御国三。

そしてこの後、どうなるのでしょう山中大佐と野村中佐。いい方に向かいますように!

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● COMMENT ●

matsuyamaさんへ

matsuyamaさんこんばんは!
実は何気に「へをこくぞー」という語が頭によぎり、これを名前にできないかなあと思い悩み苦しみながら作り上げました!

気の弱さも程度問題で、それが裏目に出てこういう態度に出た時が問題ですね。人に迷惑をかけるような「自分の世界」は御法度ですね。
今世間を騒がすストーカーや通り魔殺人はこういう手合いかもしれないですよね。なんだか安心して町もあるけないような感じになって嫌な時代になりました・・・(-_-;)。

ハハハ、ユニークなお名前つけられましたね。
経てして気の弱い人間ほど思い余ってしまうと、大胆な行動をとるもんですよね。
その手段が悪かった。強引にねじ伏せれば相手は従順になってくれるとでも思ってたんでしょうか。自分の世界に入り込んでしまったようですね。
今の世の中こういう人間が多いし、怖いですね。通り魔殺人の類は皆、こんな自分だけの世界に没頭している人間が多いのかもしれないです。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
「あいつは気が弱いから平気だぜえ」なって言っていじめてあとでえらい報復されたという話も聞きますからなめてかかんない方がいいのかもしれませんね(-_-;)。
それにしても副長の貞操が守られてほっとしますね、女は貞操を守ってなんぼですから(なんていうと今の時代叱られるかしら?)。

「女だらけの大和」、心までしっかりつながっています!一人の危機は皆の危機、みんなの喜びはみんなの幸せ^^。
それがこの「女だらけの大和」です❤

おはようございます。
気の弱い人間ほど何をしでかすか分からない。とんでもない男と縁組をさせられかけたのですね。
しかし大和のみんなの、人を思う気持ちが第六感となって急を告げ急を救うのですから素晴らしい。みんなが愛しく感じます。
それにしても大切な貞操が守られて良かった。

オスカーさんへ

オスカーさんこんにちは!
この野村の両親の言い草、私も書いていて「ひでえなあ~~」と笑っちゃいました。確かにひどいですね^^、でも中佐、貞操の危機を免れて良かった・・・「初めて」のまま嫁に行け!と言えますね、ホッ。

マツコ、なんだかベクトルが変わってきました。初めのころの憎まれキャラからだんだん
神格化の方向へ!「伝説から神話へ」って百恵ちゃんかい!w

この先のマツコ他「女だらけの帝国海軍」の活躍をお楽しみに^^!

柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさんこんにちは!

こちらこそありがとうございます^^。
野村中佐危機一髪でしたが間に会って良かった~ですね。
そして山中大佐と彼女はこの先どうなってくきますか、目が離せなくなりますよ^^!
またよろしくお願いいたします^^。

いなばさんへ

いなばさんこんにちは!
お久しぶりです^^コメントありがとうございます!

頭の中で山中大佐が「サンプラザ中野」さんになってませんかww?出来たらあの「山中教授」に変更してください~~www!

おお。マッケンロー!懐かしいですね^^。
ちなみに私は全然テニスができませ~~ん(-_-;)!!!

こんにちは。
>「まさか!うちの娘が経御さんに乱暴をしたのでは?」
ご両親さま…ヾ(・・;)それは娘さんが気の毒すぎますわ(((^^;) なんだかんだ言っても基礎体力が女性と男性では違うでしょうし、まさか!まさか!?でしたでしょうし……本当に間に合ってよかったです!!
マツコは怪鳥なだけではなく神獣の域に達しているかも……キラーン(☆∀☆)
続きがとっても楽しみです!!

見張り員さん    こんにちは♪

いつもありがとうございます♪
野村中佐はとんでもない経御から危ないところを山中大佐
に助けられてよかったです。
野村中佐と山中大佐は相思相愛ですからこれから結婚に
向かわれるといいですね。

こんばんは。お久しぶりです。山中大佐のシーンを想像してたら、あの曲が…。「走る~走る~山中大佐~♪」(ランナーの替え歌)
松岡中尉のこと「ラケット中尉」はナイスでした。(笑) ライバルは、マッケンロー?!←(古い!)


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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