2017-10

「女だらけの戦艦大和」・衝撃のノーズアート4<解決編> - 2014.05.11 Sun

 窓の外に見える整備兵嬢たちの姿を、微笑みで見たキリノはそっと窓から離れた――

 

と、彼女の背後には狂気にも似た笑みを満面に浮かべた男が立っていていきなりそいつがキリノを抱きしめたのだった。

「キャーー―ー!」

キリノは今までの半生のうちでも出したことがないくらいの叫び声をあげた。絹を裂くようなキリノの叫びは、病棟の廊下を流れ外に流れそして、搭乗員嬢たちが食事を取っている食堂まで流れて行った。

「あの声は・・・キリノじゃんけ!」

と村岡軍医大尉が立ち上がると風間中尉も立ち上がった。それを合図にほかの搭乗員嬢たちも箸や匙を置いて「なにがあった!?」と食堂から廊下へと出た。と、病棟から血相を変えてキリノが走ってくるのが見えた。

村岡大尉は「おーい、キリノ!なにかあっただケ!?」と叫んで、キリノは村岡大尉を見るなり泣きながら「ムラオカ大尉サーン!」とこちらへ走ってきた。首に掛けた聴診器が大きく揺れているそのままでキリノは村岡大尉の胸に飛び込んできた。

「どうしたでえ、キリノ?なにがあったで?」

と問う村岡大尉と心配げに覗き込む風間中尉を交互に見てキリノは

「あの男の人、イツノマニカベッドカラ起きてワタシニ抱きついてキマシタ!・・・コワカッタ・・・私がオオゴエヲあげるとニゲテイキマシタ・・・タシカあのひと<エガ>・・・」

と言って白衣のポケットからハンカチを出すと涙を拭いた。風間中尉がそっとその背中を撫でて

「平気け?なにもされなんだけ?」

と案じるとキリノは涙の浮かんだ瞳のままで微笑んで「平気デス。・・・風間中尉サン、ありがと」と言った。

すると、格納庫の方向から何やら大声が聞こえてきて搭乗員嬢たちは一斉にそちらへ走ってゆく。村岡大尉が

「格納庫で何か騒いでるな。あの男かもしれんよ、行ってみざあ」

と二人を急がせた。

三人が格納庫の方へと走り出した時には、基地司令も副官もみな大声の方へと走って集まりだしていた。滑走路に続く地面に土ぼこりが舞いあがっている。

一人の搭乗員嬢が基地司令に

「司令!整備倉庫に不審者が入り込んでいます」

と叫んでいるのが聞こえた。基地司令と副官が、整備倉庫へと走ってゆく。

零戦を整備中の整備兵嬢たちまでも(何事か?)と言ったふうで騒ぎの方を見つめている。そうするうち、搭乗員嬢たちが整備倉庫からワーッと蜘蛛の子を散らすように飛び出してくるのが見えた。

「なんでえありゃあ」

と、村岡大尉と風間中尉が同時に同じ言葉をつぶやいた。キリノは風間中尉の防暑服の背中をつかんでいる、そのキリノに村岡大尉は

「おまんを抱きしめたっちゅうは、あの患者け?間違いねえな?」

と確かめた。キリノは村岡大尉を見つめてしっかりうなずいた。大尉は「あの男、昏睡してたとばっか思ってたが、狸寝入りでもこいてたか。整備倉庫なんかにへえりこんで、大事なもんでもおやしちまったらよわっちもう。なんとかしねえば」とブツブツいいながら歩いてゆく。

 

さて、整備倉庫の中では患者の男が怒りまくっている。その場にいて休憩を取っていた整備兵嬢たちはいきなりの闖入者に度肝を抜かれて立ち尽くすだけ。

かの男は自分が<乗っていた>飛行機が分解・解体されているのを目の当たりにして激怒した。病衣のままの男は

「がっぺむかつく!誰だ俺の大事な寝床をこんなにバラバラにしやがって!出て来い、出て来いこの野郎―」

と怒鳴って暴れまくっている。その様子に一人の整備兵曹嬢が

「あなたはこの敵の飛行機の中で死にかけていたのだ。それを助けたのに野郎呼ばわりは心外だ!」

と文句を言った。すると男はずかずかとその兵曹の前まで来るといきなりその胸を両手で思いっきりおして兵曹をあおむけにぶったおしてしまった。他の整備兵曹嬢や兵隊嬢が「早瀬兵曹、大丈夫でありますか!」「早瀬兵曹!」と駆け寄ろうとしたその時、男は病衣を唐突に脱ぎ棄てた。

お約束のようにその下は<素っ裸>で「ギャーーー!」と恐慌に陥る兵たちを尻目に男性は思いっきりいやらしい目つきで倒れたままの兵曹をみるとやおら、躍りかかって兵曹の上に重なった。兵曹の服のボタンがちぎれ飛び、軍袴のバンドが外される。

「ばかーっ!」

と早瀬兵曹はめちゃくちゃに暴れてしつこい男性をはね飛ばした。男性ははね飛ばされた後、なぜかその場に顔と肩と手をついて見事な三点倒立を披露した後倉庫を走り出て行った。

早瀬兵曹は防暑服の胸をはだけ、半ズボンのバンドを外された姿のままで「追え、捕まえろ~!」と叫び、兵曹は一等整備兵嬢に助け起こされながら走り出す。

やがて男性は、フリチンで走り出した。整備兵嬢たちが「キャーー!」と叫んで目を覆う。

その整備兵嬢たちに男は立ち止っては自分を見せつけながら男性はさらに走り、――格納庫から引き出された零戦を見つけたのだった。

すると男は傍らにあったある物を手に下げると一散に零戦めがけて走り出した。

 

それを村岡大尉は「おお、見ろし!あの野郎零戦に何かするんじゃないけ?」と言って指差した。風間中尉はしばし目を細めて整備中の零戦を見つめていたが突然ハッと息をのむと

「・・・ちょっと待てし!あれ・・・おらっとの愛機じゃねえけ!うわあああ!」

と叫ぶなり走り出した。そのあとをあわてて追う村岡軍医大尉とキリノ。その頃には基地司令以下大勢の将兵嬢たちがその場に集まり男を取り囲んで騒いでいる。が、いかんせん男が素っ裸なので手が出せないというのが実情である。

基地司令が「貴様一体どういうつもりで騒ぎを起こすのだ?返答せい、返答次第では許さぬぞ」と怒鳴って手にした軍刀を握った。皆が見守る中、男は一人一人を指差しながら

「貴様ら!俺の安住の地をめちゃくちゃにしやがって、しかも最後の砦まで壊しやがって!がっぺむかつく!」

と怒鳴った。そして突然ぴょんぴょんと跳ね跳びながら体を極端に左右に振った。皆、「うわあ、よく目が回らんねえ」と変な関心のし方をしている。そして再び、三点倒立を披露した後

「貴様らの飛行機に、俺は記念を残してやる」

というなり持ってきたバケツを両手に持ち頭の上でひっくり返した。中に満たされていた黄色のペンキが男性の頭からザパッとかかった。彼の全身が真っ黄色に染まった。思わぬ展開に息をのむ総員・・・駆けて来た村岡軍医大尉と風間中尉そしてキリノもその場に立ち止まって息をのんだ。

「一体・・・なにょするつもりずら」

村岡大尉がつぶやいたその次の瞬間!

男は、まっ黄色の身体をありえないくらいジャンプさせて<風間中尉の>愛機の機首部分にその身体を正面から打ちつけたのだ。一同あっと叫んだがもう既に遅かった。

男が地面に着地したそのあと、風間中尉の愛機の零戦機首には男の姿がまるで魚拓のようにくっついていたのだった。しかも嫌なことに恥ずかしいことにあの部分もしっかり・・・。

「てえ!やあだよう!!」

風間中尉が我を忘れて叫んだ。皆が一斉に風間中尉を振り向いたが中尉はもう、怒り心頭に発しておりわが愛機の前へ飛び出して行くと愛機の機種を見つめた。可哀想に歴戦の愛機の機首には男のシンボルもくっきりとペンキがひっついている。

風間中尉は怒りで血走った目を男に向けると

「なえ(なぜ)、おまんはこんなつまらんことをするだあ!この零戦は、俺の愛機であり陛下から賜った大事なもんだ、それを貴様は・・・なんちゅうこんをしてくれただあ!」

と怒鳴った。握ったこぶしが細かく震えている。村岡大尉が

「風間中尉、そんな男まくっちめえ(やっつけろ)!」

と怒鳴り・・・深くうなずいた風間中尉は半分ほど身を後ろに返したがその次の瞬間、中尉から驚くべき威力の鉄拳が繰りだされ、男は今度こそその場に撃チンされたのだった。

 

風間中尉の愛機には、衝撃のノーズアートが描かれてしまった。

がっくりと地面に両手をついて嗚咽する風間中尉に、基地司令も副官も掛ける言葉がない。みな、押し黙って風間中尉を取り囲むだけ。キリノもあまりの衝撃に声をかけかねて中尉の後ろに立ちつくしている。キリノの首から下げた聴診器が揺れ、彼女の心の中を映しているかのように見えた。

その傍らで機体によじ登るようにしてペンキを調べていた整備長が

「風間中尉、平気ですよ。このペンキはすぐに落とせます。安心してください」

と言ってくれたので風間中尉は涙にぬれた顔をやっと上げた。キリノが「ヨカタですね」とそっと微笑む。村岡大尉が「気持ちはよくわかる、が、もうほんねん泣いちょし。こんだけの<タマ>がついたらこの先絶対敵のタマなん当たらんよ。へえ泣きやめ」と言って彼女の肩をそっと叩いた。風間中尉は右手の甲で涙をぬぐいながらやっと立ち上がった。

その場の皆が風間中尉をいたわるように「そうだそうだ。なんでもいい方に考えようよ」と口々に言った。風間中尉は皆に

「お騒がせしてすまんこんをしました。勘弁してくりょ」

と言ってからハッとした顔になると自分の口に手を当てた。今の今まで風間中尉は皆の前でお国言葉を使ったことがなかったのだ。しかし皆は至極当たり前に彼女の言葉を聞いて微笑んでいる。

村岡軍医大尉が、「風間中尉、中尉は今まで皆と話さなんだだね。訛りなん、あっても良いじゃん。俺はずっと前からこうして話してるけんど不都合なこともねえし、風間中尉も普通にしたらいいだよ。郷の言葉を使ってる中尉の方がみんな好きになるじゃねえかねえ」と言って皆を見回した。

雉山大尉も竹中大尉も根古瀬兵曹長も――皆整備兵嬢もうなずいて

「そうです!我々は風間中尉とお話がしたいんです」

と言ったので風間中尉の顔に嬉しげなほほ笑みが広がった。村岡軍医大尉とキリノが顔を見合わせて微笑みあった。

 

さてこの男、ラガシエ島の自称<エガチャン>だが取り調べによれば

――昨年だったか俺の島で貴様らが外国人の軍隊と戦争をしてからあとあの島には女ばかりの軍隊がいつも居るようになって俺の居場所がなくなってしまった。女だらけと言っても可愛げのないごつい奴ばっかで面白くもない。でこれは住まいを変えようと思って船を借りようとしたら見つかって海にたたきこまれてしまった。仕方がないので浅瀬に沈んでいた外国の飛行機を夜なべして改造して、バタ足で勧めるようにしてきたのだがあの島の浅瀬にはまってしまってどうにもこうにも身動きが取れなくなったんだ!だんだん気が遠くなって・・・気が付いたら貴様らの病院にいたんだ。しかも俺の大事な飛行機をバラバラにして・・・がっぺむかつく!

ということで、基地司令は<女だらけの軍隊は可愛げのないごつい奴ばっか>にむっとしながらも

「そりゃ悪かった。ラシガエ島は個人所有の島だと聞いていたがアンタの島だったとはね。まああの島は帝国の為に必要な島だから・・・あきらめなさい。あんた日本人か?なら帝国の為に役立った島に住んでいたこと誇りに思いなさい」

と諭したという。

その後、<エガチャン>なる男は基地司令の破格の計らいで小姑島の隣の名もない島をあてがわれそこで暮らしている。

 

そして今日も小姑島基地では風間中尉の元気な声が響いている。

「加山兵曹、便所にえべし(付き合え)!」

 

              ・・・・・・・・・・・・・・・・・

やはりというか・・・お騒がせの男はあの<エガチャン>でしたね。ここ一番に出てくる男!健在でした。

風間中尉やっと言葉の呪縛から解き放たれたようでなにより、皆と仲良くやってほしいですね。そして、キリノも看護婦としてますます活躍をしてほしいですね。

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● COMMENT ●

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
さんざん気を持たせて置いてのエガチャン登場でした(^_^;)。
ラシガエ島を追われた彼は新天地でまたきっと、騒動を起こすのでしょう・・・タメイキ。

お国ことば、かつての山形出身の友人は私には結構使ってくれましたね。心開いてくれていたのだと思っています。秋田弁、昔ならっていた書道の先生が角館の人で時折ポロっと秋田弁が出ていましたっけ^^。

錦織くん、大活躍ですよね~素晴らしい!
「女だらけの大和」にも出演させようかなあとこないだ思っていました。松岡中尉とどういう関係にしようか?あれこれ楽しく悩んでいます♪

エガチャンでしたか。
てっきり外人さんのパンツ一丁姿かと実はワクワクしておったのですが。
しかし相変わらずましらのようなエガチャンですね。

お国ことばが口をついてしまうというのは人にも場所にも慣れたということかもしれませんね。心が開いたというか。我が家の秋田人はいまだに秋田弁を喋りません。これはきっとコンプレックスかもと思っています。

松岡さんの教え子、錦織君が大活躍していますね。大和にも錦織君の登場などの構想は?? 松岡さんと凄いことになりそう(笑)


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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