「女だらけの戦艦大和」・衝撃のノーズアート3

 キリノは突然、風間中尉に「ワタシ、思いダシマシタ!コノヒト―ー!」と叫んでいた――

 

風間中尉はその剣幕に驚いてその身をびくっとさせて

「れー!どうしてえキリノ?」

と言っていた。その言葉の抑揚が村岡軍医大尉にそっくりなのを興奮したキリノにはわからなかった。キリノはベッドに横たわってこん睡中の男性をそっと指差すと

「カザマ中尉さん。コノヒトたしか裸にナッテ変なことするヒトよ。なんて言ったかアノナマエ・・・え、え、・・・えーと」

と言って最後は眉間にしわを寄せて考え込んでいる。風間中尉は

「変なことをするだケェ?こいつは変態性ってことけ?」

と今までの口調とは全く違った口調で話し始める。彼女はキリノの驚きの声を聞いて少し動転しているようで普段の話し方が吹っ飛んでしまったようだ。しかしキリノはそれには全く動じないで

「ハイ。私もミタコトないけどヘンナ踊りする人。それからスグ、ダキツクから海軍さんにキラワレテルひとね。ホカニモいろいろヘンナことするらしいです」

と言ってその頬をぷーっと膨らませると両腕を組んで男性を軽くにらんだ。

風間中尉は

「ほうけ、おらあまだトレーラーに来てそれほど経っちゃいんからよくわからんが・・・ほういやあ前にトレーラーには異なやつがいるとはきいたが。こいつの(こん)ずらか?」

とひとりごちた。

二人のささやきが眠り続けている男性の上を流れて行った。

 

そんなころ格納庫では搭乗員や整備兵嬢たちが壊れた敵飛行機を囲んであれこれ話しあっている。皆の関心はあの「ノーズアート」。

雉山大尉が少し顔をしかめて

「全くこんな下品じゃないか。男の裸だぞ、しかも下はこんな西洋褌一丁でなんていくら男性でも慎みがないと思わんか?私はこんなもの、愛機に描きたくはないなあ」

と言った。根古瀬兵曹長は小曾根上飛曹に

「しかしなあ、なんでこんなものを書くんだろうねえ?よく撃墜数を機体に書く搭乗員は日本にもいるがねえ?何かのまじないかもしれないよね」

と真剣な表情でささやく。

「ああそういえば、」と上川整備兵曹が手拭いで額の汗を拭ってから言った、「私の従姉が内地の航空隊の整備兵なんですが彼女も撃墜された敵の戦闘機のこの辺に妙な絵が描いてあったと言ってましたよ。だからこれはきっと敵さんのまじないなんでしょう。それにしても、どうしてこんなものがあの島にあったんでしょうね?その方が私には不思議だし気持ち悪いですよ」。

上川兵曹の言葉をきっかけに、皆は敵の動静が気になりだした。大橋一飛曹が通信室に走ってゆきしばらくしてまた戻ってきて言うには

「敵に動きはないそうです。それに、トレーラー鍋島基地の哨戒機からの報告でも敵の艦船はおろか飛行機さえ見えないとのことです」

との報告で皆はいっそうおかしな気分に陥ったのだった。

やがてその日も昼になり、あの男性の付添をしていた風間中尉はキリノに

「カザマサン、お食事をシテきてクダサイナ。私ココデミテいますカラ」

と勧められ「じゃあ、ちょっくら行ってくるわ。すまないねえ、あとで交代するじゃん」と言ってキリノに微笑むと病室を出た。

出たところで村岡軍医大尉に出くわした。礼をする中尉に村岡大尉は

「おまん、山梨の出け?」

と唐突に訪ねた。風間中尉ははい、と言って村岡大尉を見つめた。すると大尉は笑って

「ほうけ、ほうじゃねえかと思ってたがやっぱなあ!おまんの言い方がなんかうちのほうの言い方に似てたからねえ。で、おまんはどこのもんでぇ?」

と尋ね、風間中尉は「○○です・・・」と応えた。すると村岡大尉は

「あれまあ、ほんじゃうちとそうげぇ遠くはねえな。おまんの名前は?」

という。風間中尉が姓名申告すると「てえ!風間さんちのお嬢もんけえ!」と大声を出して驚いた。村岡大尉は「風間さんてえばえらいお大尽(でえじん)のあのうちずら?ほお~、ほうかあ・・・風間さんちのお嬢もんがねえ・・・うちなん足元にも及ばんじゃん」と言って感激しているようだ。風間中尉は困って、

「まあ村岡大尉。ここじゃあなたの方が上ですから。生まれなん、関係ないですから黙っておいてください」

と言って村岡大尉もうなずいた。「ほうさな」と大尉は言って笑い「飯を食いにいかざあ」と歩きだした。

食堂にはもう皆集まって風間中尉の班では中尉の訪れを待っていた。雉山大尉が「村岡大尉は風間中尉のテーブルでいいでしょうか」というと軍医大尉は「おう、おらあここでいいよ」と言って風間中尉の横に座った。

本来なら士官と下士官兵は食堂も食事も別なのだがここ、小姑島基地では様々な事情からそれができないため宿舎以外は一緒なのである。そのため搭乗員や整備兵嬢たちとのきずなが堅く信頼関係構築に大きく貢献しているのである。

今日の献立は魚のフライに野菜サラダ、それにスープ。野菜は搭乗員嬢たちが畑で育てたものである。村岡大尉はそれを風間中尉から聞いて

「ほうけ。おらっとは小作の家で畑を耕すは得意だが・・おれは百姓はきれえ(嫌い)だったから海軍に入らっかと思ったさ。一所懸命勉強して海軍の医者にならっかと思ってさ。で、まあ何とかここまで来たけんども。俺の家族け?おれの妹は陸軍で弟は家を継いでるよ、親父もお袋も元気じゃねえかと思うんだけんどもしばらく帰っちゃいんからわからんさ。親父もおふくろもろくに字ぃ書けんからね」

と自分の簡単な経歴を話した。

風間中尉は静かにうなずいた。その二人を仲野一飛曹が興味しんしんで見つめている。(風間中尉が軍医大尉と話をしとる。珍しいのう)と彼女は思っている。そのくらい、風間中尉はあまり仲間と話さないのだがそれはとりもなおさず自分の言葉のなまりをひとに聞かれたくないという考えからである。彼女は兵学校の時上級生から訛りをからかわれたことがあり以来、口が重くなってしまったのである。しかし今、風間中尉は村岡大尉と接して(えらいなあ村岡大尉は。私もこの人を見習わないといけん)と思い始めていた。

懐かしいふるさとの言葉の訛りが、固くなった風間中尉の心を少しずつとろかし始めていたようである。風間中尉の脳裏に、故郷の風景が去来していた・・・

 

その同じ時、病室では。

キリノが男性患者に昼の検温と血圧測定を始めていた。男性の腋から体温計を取り出してメモリを読んだキリノは数値を記録紙に書きこんだ。そしてかすかにうなずくと今度は男性の腕に駆血帯を捲いて血圧計を操作した。

「125の・・・75。オチツイテルネ」

そうひとりごちたキリノは血圧計と体温計をワゴンの上にまとめて置くと軽く息を吐いてそっと窓辺へと寄って行った。さやさやと心地よい昼下がりの風が、窓から入ってカーテンを優しく揺らす。

外には日差しまぶしい基地の風景があり、今は食事時なのでひとの行きかいもあまりない。格納庫から一機の零戦が引き出されてきたのをキリノは見た。

どうやら整備をするらしい、数名の整備兵嬢が零戦を引き出してきて操縦席に上がったり機体の下に入ったりして何やらしている。

(アノヒトタチ、よくハタラクね。私もガンバラナイト!)

そう思って微笑むキリノであった。

と。

そのキリノを背後に近付く一つの影があった。

 

「キャーー―ー!」

キリノの絹を裂くような叫びが基地内にこだました――

    (次回に続きます)

 

             ・・・・・・・・・・・・・

久々の更新となりました!

村岡軍医大尉と風間中尉は同郷でした。が、出身の家柄の違いがあったようです。でもそんな事関係ない!家族を思う心や国を思う真心は同じですね。

しかしキリノに一体何が起こったのでしょう?緊迫の次回をお待ち下さい!

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Secre

柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさんこんばんは!
いつもありがとうございます^^
いろいろな人間模様が交錯する今回のお話です。
キリノの悲鳴は一体・・!

またよろしくお願いいたします^^

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
甲州弁、聞きなれた方にはちょっとおかしい部分もあったかなあと思いつつも、祖母への懐かしさから書いてみました。今でも私は実家に帰ると母とはこんな感じで話しています。
こぴっと、母も知らないと言ってました。
ふざっぽい、はよく使いますよ~。

>「てっ!えらいこんじゃん!」
私の祖母もなにかあると言ってましたよ。「てえ、こまったよう」とか。
ああ、なつかしい・・・

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
後ろに人が立っている・・・て意外と怖いものですよね。それがもしも変な人だったらと思うとぞっとします(-_-;)。
そしてこの男の正体は!!

「てえ!」はわりと大きな驚きの時出る言葉です。てえ、だけではあまり使いませんね。連発もあまりしないと思います。
祖母は「れえ!」とも言っていましたっけ。
柳原白蓮さん、大分県とも御縁があるんですか!今度調べてみますね^^。

昨日の天気の急変は全く困ったもんどう!って感じでしたw。うちよりちっと離れたところは落雷で停電をしたらしいです。
なんだかおかしな天気・・・いやな感じです。

見張り員さん   こんにちは♪

いつもありがとうございます♪
キリノさんは眠っている男の人を思いだして
も名前が出ないんですね。
村岡大尉と風間中尉は同じ山梨の出身だった
んですね。
風間中尉は訛りが気になってあまり話したがら
なかったんですね。
キリノさんの悲鳴が気になりますね。

こんにちは。うふふ、甲州弁、バッチリで読んでいます(笑) 「こぴっと」とかネットのまとめにありましたが、私は聞いたことがないです。洗濯物が湿っぽいのをふざっぽいと言っていましたが、山梨市の子は言わないと言っていましたから、地域にもよるんですよね。早川町(中巨摩)は方言の宝庫だと聞いたことがありますが……ウチの母はよく「てっ!えらいこんじゃん!」とよく言っていましたが、今後はそんな展開になるのかしらん~楽しみです!

背後から近づいてきた影。規格外のモッコモコのパンツ一丁の外人でしょうか。
純粋なキリノさんに身の危険でも?? 見張り員さんのこと、ここはどんな展開になることやら。何せ今回はいきなりパンツ姿の男の登場ですからこれからが楽しみです。

出ましたね!! ただいま大人気の「てえ!!」。じぇじぇじぇの次は花ちゃんの山梨弁が朝から心地よいですね。今週からしっかりと見始めました。蓮子さんは柳原白蓮がモデルのようですね。彼女は別府とも深い縁があるんですよ。

関東はヒョウが降ったり大変な荒れようの天気みたいですがお大事にお過ごし下さいね。

matsuyamaさんへ

matsuyamaさんこんばんは!
なんでか東北の方はご自分の訛りをたいへん気にされますね。私にも山形出身の友人がいましたが彼女は上京当初平気で山形弁を使い私はたいへん好感が持てました。
どこの方言でも聞き慣れないと「??」ですが聞いているうちにわかってきますね。でもその頃にはたいがい、東京なら東京の言葉に変化して行ってしまいますね。

山梨の方言は(その場所にもよりますが)大変荒い部分があります。ひとによっては「怒ってる?」というくらいです。
また、かつて徳川の天領になったりその前には織田などとの争いがあったせいか、「行こう」というのを「行かず」と言ったり、ちょっと暗号的な部分もあります。
「花子とアン」では<こぴっと>という言葉が出てきますが私の祖母(塩山市出身)からは聞いたことがありません。

東北のズーズー弁、人と話すのに気おくれしてましたね。就職して上京した時、極力訛りを抑えるようにしてました。東京の生活が長かったですから、自然に東北訛りも消えました。
「おら あすたがら すごとば すたぐねえ」
ズーズー弁ですが。分かりますか。これを漢字に置き換えると分かるかもしれませんね。
「俺 明日から 仕事は したくない」となるんですけど、話し言葉で直接聞くと分かりませんよね。ましてイントネーションが違うとチンプンカンプンです。
今では東北訛りで話す人も高齢者を除けば少なくなりました。

山梨の訛りってそんなに分かりにくいですかね。

鍵コメさんへ

鍵コメさんこんばんは!
これは本当に私にとって垂涎ものの本でした。古書でしか扱ってないので価格も高く半ばあきらめていました。でももう何年も我慢してそれなりにお金もためたのでこの辺で良いだろう、と思って買いました^^。
しかしこのように細密でち密な研究はやはり女性ならでは、かもしれませんね。

そして・・・w、あの男性の正体は・・・ですね^^。

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プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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