2017-09

「女だらけの戦艦大和」・衝撃のノーズアート2 - 2014.05.01 Thu

 翌朝、捜索隊に選ばれた搭乗員たちは二等輸送艦に乗って不審物体のある小島へと向かったのだった――

 

二等輸送艦の前甲板には、クレーンが乗せられている。二等輸送艦で入れるところまでサンゴ礁に入ってその不審物体を釣り上げ輸送艦に収容し基地に持ち返ろうという算段である。

「まあ、もっともそれができるならの話だがね」

とは雉山大尉の弁である。皆黙ってうなずいている。士官嬢・下士官嬢たちは防暑服に飛行帽のいでたちにそれぞれお気にりのマフラーを巻いている。格好いいのだがその中でも風間中尉は普段より押し黙ってしかも顔色は真っ青。冷や汗が額に浮かんでいる。加山兵曹長が

「風間中尉、御気分でも悪いのでは?」

と尋ねると風間中尉は黙ってうなずいて艦の縁に手をかけるなり「をえええええ!!」と戻し始めてしまった。根古瀬兵曹長や大橋一飛曹たちが「風間中尉大丈夫ですか?」と駆け寄ってその背中をさすってやった。やがて風間中尉は落ち着いたようで小声で「ありがとう、もう平気」と言って、それでもまだ青い顔で微笑んだ。

竹中大尉は

「船酔いか・・・飛行機に乗ってるのに艦に酔うなんて不思議だねえ」

とつぶやくと雉山大尉が

「うん、きっと揺れ方が違うんだね。ほら他にも青い顔のがいるよ」

と言ってこっそり笑った。搭乗員たちは二等輸送艦の甲板上で風に吹かれているが段々その顔色が青ざめて来るのがわかる。竹中大尉は苦笑して

「皆あと少しだから頑張れよ!」

と声をかける。それに「はーい、頑張ります~」とやや力の抜けた声で答える搭乗員たちである。しかし一人また一人と船べりに手をかけて「をええええ!」とやり始める。

 

そんなこんなでやっと例の不審物体のある島の近くまでやってきた。雉山大尉は皆にランチに移乗するよう言って皆はランチに乗り移る。

そしてやっと、あの島へと近づいて行った。雉山大尉は風間中尉を見返って

「風間中尉、あのへんだったねえ」

と確認すると風間中尉はしっかりうなずいて行く手を指差し

「見えてきました」

と言った。おお、と皆が風間中尉の指差す先を見るとサンゴ礁に囲まれた島の縁の部分に何やら――まるで顔を突っ込んだような形になっているのが見えた。ランチの漕艇員は座礁に気をつけながらその物体の至近までランチを寄せた。

竹中大尉が身を乗り出してそれを検分した。雉山大尉は「これは・・・」といい竹中大尉の顔を見る、すると竹中大尉も「おう」といい雉山大尉を見つめた。

そして皆を振り向くと

「皆、これは敵の戦闘機の様だね。なんでこんなものがここにあるのかよくわからないが、これを基地に持って帰って調べようじゃないか。大体こんなものをここに置いたままではよくないからな」

といい皆は「敵の戦闘機が!」「いったい何でここに?」「そんな話は聞いたことがないが」と口々に言いながら、やがて二等輸送艦がやってきてクレーンで戦闘機を持ちあげ輸送艦の甲板に収容した。

二等輸送艦の艇長も乗組員もこの妙な戦闘機に首をひねるばかり、二等輸送艦の菅野艇長は

「この辺では戦闘などなかったはずだし、大体こんなものが落ちてくればトレーラー基地通信隊が何か受信するはずだもの。何かこれには裏があるのかもしれない、気をつけて調べないと」

と雉山大尉と竹中大尉とともに戦闘機を囲みながら話した。

皆が見つめる敵戦闘機は、傷つき風防部分がへこんでしまっている。これに乗っていたアメリカ兵嬢はどうしたのだろうか。

下士官兵嬢たちは複雑な思いでそれをじっと見つめている。

 

二等輸送艦は小姑島にある小さな整備場へと向かった。ここにこの戦闘機を持って行き分解、検分しようというものである。

二等輸送艦からの連絡で整備場では、技官や作業員嬢たちが待ち構えている。クレーンでつり下ろされた戦闘機に皆――技官も、一緒に来た搭乗員たちも――改めて息をのむ思いで見つめる。

戦闘機を大きな台車に乗せて皆で解体場へと運ぶ。

その戦闘機を見あげた小曾根上飛曹が

「なんだこれ、ここになんか変なものが書いてあるよ」

と片手をあげて機首部分と思しきあたりを指差した。「どれ?」と加山兵曹が首を伸ばしてそこを見ようとした時台車が止まった。小曾根上飛曹は

「こっち側が海にはまり込んでたから気がつかなかったんだね、見てこれなにかなあ」

と言ってそこを指さすその先には金髪の男性が上半身裸、しかも下半身はブリーフ(なのだが帝国海軍嬢はその名前を知らない)姿で微笑んでいる絵が描いてある。

「ひゃああ、アメリカの男だ!ねえ、アメリカの男ってこんな恰好してるのかしらねえ?裸で、下に穿いてるのは水着みたいだが・・・しかし品がないねえ」

加納一飛曹がいい、大橋兵曹もうなずいた。風間中尉は直視できずうつ向いて頬を染めている。

そこに数名の作業員嬢が来ると戦闘機の胴体を焼き切り始めた。火花が激しく散って戦闘機の胴体に食い込んでゆく。皆はこの作業の様子を見守る、と!

「だ、誰か中にいる!」

一人の作業員嬢が叫んだ、皆が「ええっ!」「敵兵か?」と急いで駆け寄り焼き切られた部分を見た。中に誰かが横たわっているではないか。

「いかん、早く引っ張り出さんと。まずは生死を確認だ」

工廠の士官が叫び、中の人を傷つけないよう電動カッターで胴体の鉄板が切り開かれた。

「おお!これは!」

皆の口から一斉に驚きの声が漏れた。戦闘機の中、すっかり空洞になったそこに一人の人がぐったりとしている、竹中大尉が「おい、しっかりしなさい!しっかりしなさい」と怒鳴ってその人を引きずりだした。

引きずり出された人は、男性であった。

搭乗員嬢たちは「男の人がなんでこんなところに?」といぶかったがさらに驚くことにはこの男性、「日本人だよ」。

一体何事か測りかねる搭乗員嬢たちは黙ってその男性をみおろしているだけだった。

その日のうちにトレーラー水島の海軍診療所から一人の医師と看護婦が到着、男性の診療を始めた。小姑島航空基地の医務室に寝かされている男性をひと眼見た看護婦は不意に眉根を寄せた。この看護婦は現地の女の子であったが何かを思いだそうとしているような表情をしながら医師の言うとおりに点滴の用意をして、そして男性の顔を見つめる。

その表情に気がついた村岡ハナ軍医大尉はいきなり大きな声で

「どうしたでえ、キリノちゃん。なにをそんなに見てるだ?」

と言った。あみだくじで今夜男性の付添当番を引き当ててしまった風間中尉が、村岡軍医大尉の顔を見つめた。キリノと呼ばれた看護婦は村岡大尉を見て

「村岡軍医サン・・・わたしコノヒトちょっとヒッカカルネ。でも・・・ワタシガ思ってるヒトトちがうかもシレナイシ・・・」

と口ごもった。村岡大尉は「ほうけ・・・」とつぶやくと傍らの風間中尉に

「あんたが今日この男の付添け?まあ大したこたぁねえとは思うけんどなんかあったら俺はとなりの部屋にいるからすぐに呼べし?」

といい「キリノちゃん、すまんけんど今夜はここに泊るだよ」とキリノに言い置いて部屋を出て行った。水島の診療所へ連絡をするのだろう。

キリノは村岡大尉に敬礼してから患者男性の脈を取った。男性は意識を失ったままである。キリノは脈拍数を記録紙に書きこむと、男性の顔を食い入るように見つめている。

風間中尉はそんなキリノに

「私は風間中尉といいます、はじめまして。あなたはトレーラーの人ですね?」

と話しかけた。キリノは難しい表情から一転、人懐こい笑顔を浮かべると

「ハイ。私トレーラーの生まれデス。海軍診療所で看護婦シテイマス」

と言って自分の経歴を話しだした。風間中尉はそれを興味深く聞いてさらに尋ねたりうなずいたりした。風間中尉は

「そうか。あの『大和』と『武蔵』の軍医長がたに見出されたのならあなたは逸材だということだね。大したものではないか、頑張りなさい」

と励ました。キリノは白衣の膝の上に置いていた両手を胸の前で組んで喜びを表した。そして

「ニッポンの兵隊さん。ミンナ親切ね。ワタシと私のオトウサン救ってクレマシタ。恩返ししなきゃイケマセン私」

と言って微笑んだ。風間中尉は

「良い看護婦になることが、そしてトレーラーの為に尽くすことが一番の恩返しだよ」

と言って優しく微笑み返した。うふふ、と嬉しげに微笑むキリノのナースキャップの『錨』のマークがまぶしい風間中尉である。

二人微笑みあっていたが突然キリノが椅子から立ち上がるとベッドに寝ている男性を見て言った。

「カザマ中尉さん、ワタシ思い出しました!コノヒト――!」

キリノの放った言葉に衝撃を受ける風間中尉であった――

    (次回に続きます)

 

            ・・・・・・・・・・・・・

何と不審物体は敵戦闘機。しかも中に男性がいた!

キリノのこと覚えていますか?彼女看護婦として立派にやっているようですが、一体キリノ、何を思い出した??

 

次回の更新は五月六日以降になります。

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● COMMENT ●

柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさんこんにちは!
お返事大変遅くなりごめんなさい、GWで実家に行っておりました!

実際・・・飛行機乗りは船酔いするのでしょうか?わかりませんが話を面白くするためこんな設定にしてみました。
そして・・・キリノちゃんはあの男性に心当たりがあるのか!――緊迫の次回をお楽しみに^^。

見張り員さん   こんばんは♪
いつもありがとうございます♪
風間中尉たちは飛行機は大丈夫でも
船には弱く船酔いしたんですね。
キリノさんは飛行機の中の男性が誰か
思い出されたみたいで気になりますね。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
久しぶりの出演、キリノちゃんです。
彼女はたいへん賢くて海軍診療所のエースたりえる人物です!彼女の今後は期待大ですよ~^^。

さて、謎の敵飛行機と不審人物。
この先どうなるのでしょう小姑島基地は!
なにやらまた大変なことが起きそうなそうでないようなにおいがいたします。
どうぞ連休明けをお楽しみに^^!

すっとこさんへ

すっとこさんこんばんは!
ノーズアートとは?飛行機の機首部分に描かれたキャラクターなどの絵を言います。よくアメちゃんの戦闘機などには有名なアニメキャラや裸の女性の絵が描かれていたりします。あれが通称・ノーズアートです^^。

そして。飛行機の中で昏倒していた謎の男性は一体誰でしょう??謎が謎を呼ぶ小姑島航空基地です!
詳細は連休明けです、お楽しみに。

私は仕事をしながらこんなことばっかり考えています、けっこうふまじめ人間です。ですので会社つとめは絶対不向きだと自覚しています。いえ・・自営業も絶対向いてませ~~んwww!

おぉ!!! GW特別出演のキリノちゃん。久しぶりですね。
彼女の聡明さは日本女性の素の姿にように感じるのですが。
さて突然現れた金髪モッコリブリーフ米兵やその他もろもろの男たちは一体これからどうなるのでしょうか。
見張り員さんのめくるめくアイデアの展開が楽しみです。

の?の?の?ノーズアート?
鼻の美術?・・・・・いったいなんでっしゃろ。

もしか飛行機の鼻の部分に描くアート?

ブリーフいっちょの謎の男とは?

しかし見張り員さんの頭の中の引き出しの数の多さといったら!
いつも感心してしまいます。凄すぎる想像力!

次は連休明け、とのこと。
ゆっくりなさって下さいね・・・とは言ってもきっとゆっくりは
なさらないのでしょう。ミステリー・ノーズ!!


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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