「女だらけの戦艦大和」・狙われた松岡1

新婚の「繁木」航海長が休暇を終えて『大和』に戻ってきた――

 

その日の朝、内火艇に乗って帰ってきたのは誰あろう新婚ぴかぴかの片山改め繁木航海長。甲板上には出迎えの梨賀艦長、野村副長、森上参謀長に花山掌航海長それに松岡中尉そして樽美酒少尉が居並んで出迎える。

やがて内火艇が『大和』に接舷し繁木航海長が軽やかな身のこなしで舷梯を上がってきた。舷門で衛兵に敬礼を受け返礼した航海長はその向こうに艦長以下がずらっと並んでいるのを見て心底驚いた。

でも驚きを鎮めると彼女たちの前に立ち

「片・・・じゃなかった繁木大尉休暇を終えただ今帰艦いたしましたっ!」

というと敬礼した。居並ぶ皆も敬礼し、梨賀艦長・副長・参謀長がその手を下すと航海長も降ろしそのあと掌航海長以下が降ろす。

そのとたん緊張の糸がほぐれ、皆は一様にほほ笑みを浮かべた。そして梨賀艦長は

「お帰り、航海長。待っていましたよ」

と声をかけた。繁木航海長の顔にも微笑みが浮かんだが、その微笑みは何か今までの航海長のそれとは違って華やかな感じを受けるのは彼女が

「嫁さんになったからだなあ」

と参謀長などは思っている。副長も(航海長前よりうんときれいになって・・・いいなあ。私も結婚したとしたらあんな風にきれいになるんだろうか)とひそかに思う。

そして皆は航海長を真ん中にぞろぞろと艦内へと戻ってゆく。梨賀艦長が「じゃあみんな、今夜巡検のあと私の部屋に集まってね」と言って皆「わかりました、では今夜」と言ってそれぞれ分かれる。

梨賀艦長は繁木航海長と花山掌航海長そして松岡中尉樽美酒少尉とともに昼戦艦橋へまず上がった。その場にいた当直員たちが

「わあ、航海長のお帰りじゃ!お待ちしとりました航海長」

と歓迎して航海長は嬉しそうに笑って「皆長いこと勝手してごめんね。また今日から一緒に頑張りましょう」とあいさつ。そのあと航海長は防空指揮所に上がりその場にいた麻生分隊士や見張兵曹、小泉兵曹や石場兵曹に拍手をもらった。

見張兵曹は航海長をまぶしげに見つめて「ええねえ航海長。幸せそのもの、言うお顔しとってじゃ。ええねえ」とうらやましそうに言った。松岡中尉が気がついたように

「そういえば航海長、航海長の結婚写真を見せて下さると麻生さんにお約束なさったそうですね・・・いつ見せて下さいますか」

と言って、航海長は「ああ、そうでした!」と手を打つと「では今夜、夕食後の自由時間にみんなの居住区に行こうかな、その時見せてあげましょう」と言ってくれた。

皆大喜びで「絶対ですよ航海長」「皆にその時はちゃんと集まるよう言うとかんとな!」と口々に言った。その皆を嬉しそうに見回した繁木航海長は

「ではわたしはこれでね。またあとで」

というと樽美酒少尉と一緒に下へ降りて行った。松岡中尉はその場に残って

「いいですねえ繁木航海長。何やらいい匂いがしましたね~、あれこそが花嫁さんの匂いというものでしょう。熱くなってますね航海長!――それに引き換えなんだここの連中は!?くっせえなあ、あんたらは!少しは繁木航海長を見習いなさい!――というわけで今夜皆さん航海長の○秘写真が見られますから集まって下さいね・・・今日からみんな富士山だーッ!」

とまくし立てるとラケットを担いであっという間に去っていってしまった。

その場に残った麻生分隊士以下はポカ―ンとしていたが次の瞬間分隊士は

「なんじゃあん人は!うちらを『くせえ』いうたな!そげえに臭い臭い言うなら毎日風呂に入らせろ言うんじゃ!全くあん人は・・・」

と怒り始めた。石場兵曹など、暗黒の一重まぶたも重々しく、半分白目をむきつつ自分の服の匂いを嗅いでいる。そして隣に立つ小泉兵曹の臭いまで嗅いで、小泉兵曹は

「うわ!石場兵曹なにしよんね・・・じゃない、何しよるんですか!――うちも臭いですかのう?」

と最初びっくりして最後はおそるおそると言った態で訪ねた。石場兵曹は暗黒の一重まぶたも重く小泉兵曹を見つめると

「臭いですよあなた。でもあなたまだ男とあそんどらんけえあの匂いはせんね。汗のにおいしかせんよ、ってことはそれは勤務に一所懸命いうことじゃけえええんじゃないの?はい」

よくわからないことを言って小泉兵曹を面食らわせる。次いで石場兵曹は見張兵曹の臭いを嗅ぎに行き

「ああ・・・オトメチャンはええにおいじゃわあ。<処女(をとめ)>の匂いがします。もう小泉さんなんぞにはせん匂いじゃわ。ええにおい・・・うふ~~ん」

とうっとりしてその重い一重まぶたを閉じる。と、それをいやな目つきで見ていた麻生分隊士が

「石場兵曹貴様何言うとるんじゃ。オトメチャンがええ匂いなんはうちがオトメチャンをよう、石鹸で洗うとるからじゃ。ほいでなあ石場兵曹、そげえにオトメチャンに寄ったらいけんで!うちのものじゃけえ」

とくぎを刺す。後ろからその様子を見ていた石川水兵長がぷーッと吹き出している。石場兵曹はまぶたをゆっくりあげると「ほうですか・・・どがいにして洗うとるんかそれをいつかお教え願います分隊士」というと「ではうちは下へ行きます。またあとで」と下へと姿を消す。

小泉兵曹は

「いやじゃわあ、石場兵曹。うちを臭いいうて。――そげえにうち、臭うかのう」

と自分の腕やわきの部分をにおっている。見張兵曹は「臭わんで。じゃけえ気にせんでええよ。まったく松岡中尉も余計なこといいんさるけえ、石場兵曹はすぐ感化されるでね」と笑う。

麻生分隊士だけが「オトメチャンも臭いと言われた」ことに一人腹を立てている・・・

 

その頃、艦長の部屋でお茶を喫していた繁木航海長に野村副長、そして森上参謀長。あとから日野原軍医長が参加している。軍医長は(あの日、夜のことを教えてあげられなくて平気だっただろうか)と心配しながら航海長に会いに来たが、華やかな印象になった航海長に(うまく行ったと思っていいんでしょうね)とほっとした。

五人はあれこれ話をし、中でも一番皆が興奮したのが野田兵曹の蝙蝠をめぐる一件でそれには繁木航海長は

「蝙蝠を艦内で飼う下士官!これは『海きゃん』にスクープしたら良かったですねえ。きっとあのメンバーが喜んですっ飛んできましたよ」

と笑った。「で?彼女のチェストはそのあとどうなりました?」と興味しんしん。副長が「副砲の兵たちが懸命にきれいにしたけどこれがねえ・・・なかなか臭いが取れないので今は<開かずのチェスト>になってますよ」とため息をつく。

日野原軍医長が「何かいい消臭剤があれば放りこんでしばらく放置したらいいと思うのですがねえ」と言って皆考え込む。

ふと、繁木航海長が「あ、そうだ!」と声を上げたので梨賀艦長が

「何かいい案でも?いいものをしってるの?」

と尋ねると繁木航海長は「いいえ、別の話なんですが」と前置いて

「松岡中尉なんですが、彼女は上陸をしましたか」

と尋ねた。その言い方が何か緊迫感を感じさせる。その雰囲気を悟って副長が「いや・・・あの人はほとんど上陸というものをしないんだけどなにか?」と少し緊張した面持ちで応える。参謀長が

「上陸をしたらまずいのかね?何か松岡がしでかしたとか?」

というと航海長は

「あの・・・私は夫から聞いたのですが、その、夫もあまりよくはわからないんだがと言っておりましたが、松岡中尉を狙っている一団がいるんだそうです」

と衝撃的な一言を発した。梨賀艦長は「松岡中尉が狙われている!?」と声をあげ、副長に「お静かに・・・」とそっとたしなめられた。繁木航海長は

「夫が申しますには、多分、海軍工廠の中にできた組織らしいんですが松岡中尉を拘束すべく走り回っているらしいと。『大和』が外地にいるときはじっとしているんだそうですが今回内地に帰還したと知った時たら活動が派手になっていると。その一団がどういう意図で彼女を追うのかまったくわからないと夫は言っておりました。何か、知りたいことがあるのではないか、松岡中尉が重大な情報を握っているのかもしれないと申しておりました。ですから松岡中尉には上陸を控えるようにしたいのですが。もしも、その一団とやらが悪意を持って中尉を追うならそれは未然に防がないといけません」

と言った。皆、一様に衝撃を受けて黙りこくっている。あまりに信じがたいことではあるが

「松岡のことだからたまの上陸で何か馬鹿な事をしでかしたんだろう、工廠の人に迷惑かけるような。だから追われるのだ。それにしてももし、万一のことがあるといけない。松岡は申し出があっても上陸差し止めだ」

となった。

梨賀艦長は「もしも工廠の人に怪我などあってはいけない」と言って軍医長までうなずいた。この場の誰も<松岡中尉になにかあってはいけない>と思ってはいない。なぜなら松岡中尉には、敵の機銃弾をも跳ね返す無敵のラケットがあるからで、これを頭に受けたりしたら気絶を免れないというもので、花山掌航海長などもう何度もその憂き目に遭っている。

(松岡の奴、前に上陸した時あれを振り回して工廠の技師か誰かに迷惑をかけたんだろう、それをうらまれてかもしれん。そうだとしたら『大和』の名折れである。その人を探し出して謝罪しないといけない)

艦長以下、いささか苦々しい思いをしていた――

 

            ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

新婚ほやほやの航海長が帰艦そうそうもたらしたマル秘情報・・・しかもちょっとまずい展開になりそうな?

さあどうなる松岡中尉!?次回をお楽しみに^^。

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明智半平太さんへ

明智半平太さんおはようございます。
ええ!?珈琲を??やけどしませんでしたか?

石破茂さんをモデルにしたキャラなので・・・あの方の瞼は見事な「暗黒の一重まぶた」ですね。時折見せる白眼がとても怖いです・・・(-_-;)。

内容と関係無くて申し訳ないのですが

”暗黒の一重まぶた”というフレーズにコーヒー噴きました。

柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさんこんばんは!
さあ…!松岡中尉どうしておわれるのでしょうか、そして捕まってしまうのでしょうか??
次回をご期待ください。

今日はこちら、午後4時過ぎくらいでしたか「雹」が少し降りました。トタンの屋根にばらばらと大きい音を立てて、モミジ怖がっていましたよ!

matsuyama  さんへ

matsuyamaさんこんばんは!
まずい展開・・・というと大げさですが何か起きそうです。
臭い、もなにかのキーワードになるかもしれませんしそうでないかもという大変無責任な今回の記事です(-_-;)・・・

加齢臭とはいいますが、ご本人が気になさるより周囲は気にならないのではないでしょうか?気になる向きには最近良い体臭消し(なんて言っていいのかしら??)がありますのでおためしを!
でも気になさらなくてよいと思いますよ^^!

見張り員さん     こんばんは♪

いつもありがとうございます♪
繁木航海長が大和に帰ってきてから松岡中尉を探して海軍工廠の中にできた組織が
松岡中尉を拘束するために走り回っているとは何かをやったんでしょうね。
想像ができませんが気になります。

ちょっとまずい展開になりそう???
まずい展開って何でしょう。
「くっせえなあ、あんたらは!少しは繁木航海長を見習いなさい!」松岡中尉のこの言葉が気になるんですけど。臭いが大問題になるのでしょうかね。

加齢臭を撒き散らかしている我々年配者には臭いの問題、くさびを打ち込まれるように辛いです(アセ)。桜の花で加齢臭を消臭してもらわないと(笑)。

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
松岡中尉一体どうしたのでしょうか???
追われるようなことをしでかしたのでしょうか・・・そしてマツコやトメキチはどうするのか!!
緊迫の次回をお楽しみに^^であります!

色々考えてニヤニヤが止まりません^^~~~!

れい姉さんへ

れい姉さんこんばんは!
そうですよね~~!花も恥じらう乙女ごに「臭い」は絶対禁句、NGワードです!!でも女も30超えると少々のことでは動揺しなくなるのがすごいですよねw。女って強いねww!

金爆の彼は「たるびっしゅ」さんですね、うちの「樽美酒」さんは「たるびしゅ」です――てそう変わらんやんけ!!
こないだ金爆を見たのはいつだったっけなあ~~~???

こんばんは。松岡さまにナニが!? マツコもきっと気になっているに違いない(笑) またハチャメチャな楽しい展開を期待しております!!

こんにちは(=゜ω゜)ノ

年頃の女子に「臭い」は絶対言っちゃダメなワードですwww。ま、三十路を越えると、臭いと言われたところで10倍にしてお返しするだけの面の皮ができあがってるんですけどね( ´ー`)y-~~ww。

ところで、樽美酒さんは、読み方、「ダルビッシュ」で良かったでしょうか…?w そういえば、最近ゴールデンボンバーを、観る機会が徐々に減って来てる気がするのは、ワタクシだけでしょうかねぇ…ww。
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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