2017-10

「女だらけの戦艦大和」・真冬の紫苑3<解決編> - 2014.03.04 Tue

野住は素裸になって、布団に横たわる「岩井しん」の肩に手をかけこちらに引き寄せた―――

 

と、こちらに半身を寝返らせた岩井しんの瞳がうるんでいるのを男は見た。(こいつ、俺とやれる嬉しさにもう・・)と野住は思った。が、なにか違和感を感じて薄暗がりの中に横たわるしんをじっと見つめた。今までの夫婦生活の間でもしんが性行為の際にこのように瞳を潤ませたことがあっただろうか?

そして(布団の様子が変じゃなあ)と思った野住は、そっとしんの肩から下を覆う掛け布団をめくってみた。

すると!

すっかり裸の岩井しんの下半身に顔をうずめている大きな身体の人物がいるではないか。しんはその人物のすることに反応して瞳を潤ませていたのだ。野住は肝をつぶした。野住でさえ結婚生活中こんなことをしたことがない。初めてみる光景である。

「あ、あ、あんたいったい誰じゃ。俺のしんに何しとってか」

とようよう声を上げた。驚きのあまり声がしゃがれた。迫力もなにもあったものではない。しかしその大きな人物は、しんの下半身に顔をうずめたままである。しかも―ーしんはその行為にたいへん反応し、喘ぎ声まで上げ始めたのだ。

「しんさん・・・あんた、こげないやらしいことをされて感じとるんか?俺との時はちいとも声も出さんかったのに、なんでこげえな――」

野住は絶句してその場に腰を落とした。

すると、大きな人物がしんの股間から顔をあげるとすさまじい形相で野住を睨みつけた。「やかましいのう」と不機嫌な唸り声をあげて、野住は恐怖にかられ逃げようとした。腰を上げかけたが相手の行動の方が一瞬早かった。しんの身体からものすごい勢いで離れたその大きな人は、裸の野住を組み敷いた。野住は「ひいっ!」と叫んでまるで生娘のように身体を守ろうとした。

大きな人――松本兵曹長だが――は、その野住の体を大きく開かせた。ものすごい馬鹿力である。野住は恐怖の表情のまま自分を組み敷く相手を見つめていたが「あ・・・あんたは」と小さく言った。松本兵曹長は

「思い出したか。ほうじゃ、俺はいつかの正月この町であんたに会うたな。あん時もあんたは俺のしんをいじめとったのう。聞けばあんたとしんはむかし夫婦じゃったらしいがそん時からずいぶんとしんをいじめてくれたらしいなあ。――今日はあんたにそのお返ししよう思うてな。ささやかなお返しじゃが、まあ受け取ってくれんさいや」

というとニタリと笑った。その不気味な笑いに野住の恐怖は沸点に達した、そして震える声で

「お願いです、命だけは助けてつかあさい・・・なんでも言うこと聞きますけえ、あなたがしろ言うことはします。するな言うことはしませんけえどうか、命だけはお助け下さい!」

と懇願した。松本兵曹長は重々しく

「ほうか、さんざしんをいじめくさってしんから生きる希望さえ取ろうとしたあんたでも自分の命は惜しいか。勝手な奴じゃ、俺はそういう男は大っきらいじゃ。男の風上にもおけん奴、今夜は貴様の目ぇ覚ましてやるけえ覚悟しとけよ!」

というなり、野住を引き起こしその両手足を浴衣のひもでくくった。海軍軍人らしい手さばきのよさであっという間に野住はみっともない格好にされた。両手は後ろに回してくくられ、両脚は胡坐をかくようにして広げて足首でくくられた。もう、野住は泣きそうな顔でいる。

松本兵曹長はその野住をフンと一瞥し、今度は布団に横たわったままの岩井少尉に寄って行った。そして岩井少尉の長い髪を撫でて

「しん。この男にお返しをしてやらんといけんね、今までいろいろ<世話>になったんじゃけえのう。きちんと返さんとなあ。俺らのええ所をしっかり見てもろうてお帰り願おうじゃないか、のう」

というと、いきなり口づけをした。激しい口づけ、しんは松本兵曹長の大きな背中に両手を回してその両足を開いて兵曹長の身体をその間に迎え入れている。野住が、もう信じられないものでも見るような眼をして見つめていると兵曹長は今度は唇を話すとしんの胸を激しく揉みながら彼女の耳元に

「ええか・・・しん。こうしたらええじゃろか?もっとこうしてやろうかのう」

と囁いて、岩井少尉は髪を乱して「ああ、ええわあ。・・・リキ、もっとしてや」と叫ぶ。その様子に野住は心底驚いた。

「しんさんが・・・しんさんがあがいなことを言うとる。俺との時はなあも言わんで嫌そうじゃったんに・・・どうしたんじゃ、しんさん」

呆然としてそんなことをつぶやく野住、その彼自身はすっかり萎えてしまっている。しかしそんなことにはお構いなしに兵曹長はさらに岩井少尉を攻め続ける。松本兵曹長は額に汗を光らせて

「どうじゃ、ええか?」

と岩井少尉に尋ねる。岩井少尉は子犬が甘えるような声をもらしながら「うん・・・ええわあ・・・ええわ」と応える。松本兵曹長は激しく動きながら

「しん。・・・あの男とはどがいじゃったね」

と聞いた。岩井少尉は喘ぎながら

「ようなかったわ。あん人は自分勝手にうちを扱こうて自分が済んだら勝手に眠ってしもうた。・・・リキみとうにこげえに優しゅう、こげえに一所懸命にしてくれたらえかったのに。ああ、リキええわあ」

と言って、野住は「そ、そんな。男の俺よりこんな女の方がええなんか、しんさんどうにかしとってじゃ。しんさん目え覚ましてくれえ」と泣き声を上げる。情けないみっともない格好で身悶えた。

岩井少尉は、兵曹長の激しい攻めに「もういけん、うちはもう駄目じゃ・・・リキ、うちはもういけん」と叫び声を上げた。が、兵曹長は岩井少尉の胸の先を軽く噛むと

「まだまだじゃ、しん。夜は長いんじゃけえの。それにまだこの人に万分の一もお返ししとらんじゃないか。今夜一晩かけんとお返し出来るもんじゃないで?さあ、しん・・・」

と言って岩井少尉を引き起こした。

野住はかたずをのんで見守っていたが次の瞬間、はっ!と息をのんだ。野住の目の前に敷かれた布団の上では、松本兵曹長が自分の乳首を岩井少尉のそれにこすりつけ、二人は快感にあえいでいたのだった。岩井少尉は、もうくずおれそうな風情で長い髪を乱しつつ息を荒げている。

「しんさん・・・」と野住はもう声がすっかりかすれている。自分との結婚生活では一度も快感を表情に表さなかったしんが、今あの大きな女と――そう、女と――激しい行為をして快感に身をよじっている。

「しんさんあんた・・・男より女の方が・・・」

そういうと、野住はその場に昏倒してしまった。

 

どのくらいたったのだろうか、野住が目を覚ますと両手足を縛っていたひもは解かれ、布団に寝かされていた。ハッとして身を起こすと、その頭の方に一種軍装に身を固めた岩井少尉と松本兵曹長が正座している。

野住は裸のままであったが布団の上にきちんと座った。その彼に岩井少尉は静かに語りだす、

「私はあなたとは決して復縁しません。それはもう前にも言いましたなあ。ほいでもあなたは私を追いかけて苦しめた・・・私はあなたとの結婚生活で苦しんで、やっと離縁して自分の生活ができた思うたらあなたに追われて・・・その思いをあなたわかりますかのう?どがいにうちがつらかったか。私とあなたはしょせん水と油じゃ。決して交わることはない。あなたがどれほど私と復縁しとうてもそれだけは無理じゃ。あなたは私の母親と一緒になって私を元に戻そうとしたでしょうが、だれが来ようが私はもうあなたのもとへは戻らん。絶対じゃ。

――それにうちには」

とそこで少尉は一旦言葉を切った。野住はかすかに身を乗り出すようにして少尉の次の言葉を待っている。

岩井少尉はそんな元・夫を無表情な瞳で見つめると

「この人の方がええ。私はこの人とずうっと一緒に居ると決めたんじゃ」

と言って、松本兵曹長に向かってほほ笑んだ。野住の、かすかに乗り出した体から力が抜け布団の上にうち伏すと彼は、嗚咽を漏らし始めた。

岩井少尉は

「じゃけえ、あなたはあなたで新しい人を見つけてつかあさい。もう私を忘れて。私は日本を守るため軍務に励みます。私の居場所、生きる場所は海軍です。あなたのもとではありません。

さようなら」

というと立ち上がった。腰の短剣のひとところが、電灯の明かりにきらりと光った。次いで、松本兵曹長も立ち上がった。その二人を泣きながら見送る野住に、昨日までの猛々しい勢いは最早無かった。

二人は並んで立つと、「では、ごきげんよう」と野住に敬礼してくるりと踵を返すと部屋のふすまを兵曹長が開けた。少尉が先に部屋を出て行く。この時の岩井少尉は野住が見とれるほど颯爽としていた。

ふすまがそっと閉まり、野住は流れる涙もそのままにまだ布団の上にいる。彼の脳裏によみがえる十六歳のしん、紫苑の花影で憂いに満ちた表情で立っていたしんは今や、自分自身で生きる道を切り開く力を持った輝くひとりの『女』となって自分の手の届かないところに飛翔していたのだった。

俺は一体しんのなにを見て来たのだろう?改めて野住は考えたが答えは出せなかった。

一つだけ答えが見いだせたのは――自分が救い難い<阿呆>だということだけであった。その<阿呆>がかけがえのないはずの人と決別させてしまったのだから。

 

岩井少尉と松本兵曹長は『紫苑荘』を出て上陸場へと向かって歩いていた。

東の空が明け初めて「ああ、新しい一日が始まるのう」と少尉は感嘆の声を上げた。その少尉に兵曹長は

「あの・・・岩井少尉」と声をかけた。少尉が兵曹長を振り向くと、松本兵曹長は恥ずかしげにうつむきながら

「昨晩はあがいなことをしてしもうて・・・いくら作戦のうちとは言うても少尉には大変申し訳ないことをしてしまいました。少尉はうちを軽蔑してますよね?うちがあがいなことをする女じゃ思うたら、もう付き合いとうはないでしょう」

と言った。岩井少尉は、兵曹長に正面から向き合った。緊張の面持ちの兵曹長の両肩に、岩井少尉はパーンと音を立てて自分の両手を置いた。そして思いっきり、とびっきりの笑顔を見せると

「なーに言うとってかねえ、リキさん!うちは嬉しかったで?うちゃあ、兵曹長に本気で惚れた。あがいに本気でうちに・・・してくれたなんてのう。それともリキさんは本気じゃなかったんかね?」

と言った。兵曹長も満面の笑顔を浮かべると

「本気も本気であります!うちは昨晩、岩井少尉に本気でさせてもらいました。そしてうちは、岩井少尉に本気で惚れました!」

と言っていきなり少尉を抱きしめた。兵曹長の大きな胸に抱きしめられながら岩井少尉は

「ほんまにありがとう、松本兵曹長。これであん人としっかり縁を切れた。あなたが居らんかったら出来んかったことじゃ。――松本兵曹長、これからもずっとうちと一緒にいてくれんか?」

といい、兵曹長は「もちろんであります。一生おそばに居ります」というとさらに力を込めて岩井少尉の身体を抱きしめた。

 

生まれたての朝の風が、二人を優しくくるんで吹きすぎて行った。

 

         ・・・・・・・・・・・・・・

『紫苑』の花ことばは

「遠方にある人を思う」「君のことを忘れない」

なのだそうです。これは野住の心なのでしょう。きっとこの先誰と彼が再婚しようとも紫苑を見るたび岩井少尉を思い出すのでしょう。でもその思いは心の奥深くに秘めておいてほしい・・・。

 

紫苑の花(画像お借りしました)。紫苑の花

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● COMMENT ●

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
おお~、宝塚が出てくるとこあたりがさすがオスカーさんですね。
「わが名はオスカル」、この歌詞はまさにこの二人のためのような歌詞ですね~、最高だあ!
「愛こそすべて」「愛だろ、愛!」
愛は素晴らしいです!!

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
こういうあほな男ほど困ったものはないです・・・これでほんとに目が覚めたらいいですね。
それにしても何とか切り抜けられホッとしましたね^^、そしてしんと兵曹長の愛が確実なものとなりました。

紫苑の花。
これからはこの花を見て岩井しんは何を思うのでしょうか・・・。

すっとこさんへ

すっとこさんこんばんは!
岩井少尉これで溜飲が下がったでしょう。そして松本兵曹長との愛も確かめましたし・・ね❤
ホントはもっとこてんぱにしてやろうかいなとも思ったんですがあまりに品がないのでやめました(-_-;)・・・

紫苑。
意外な花ことばでしたが、花ことばって結構「おお!まさかの!」ってのが多いですね。今度いろんな花ことばを見てみますね、ネタになるかもしれないしww。

ローガン渡久地さんへ

ローガン渡久地さんこんばんは!
ちょっと野住にはやさしかったかなw!?
当初考えていた筋ではもっと品がなかったので考え直してこうなりました^^。
それでもしんとリキは幸せにしてやりたくてこうしました。
嬉しいとおっしゃっていただきこちらもうれしいです。
またよろしくお願いします^^。

こんばんは。紫苑というと宝塚のトップスターだった紫苑ゆうさんを思い出すワタクシです(笑)そしてこの物語を読んで思い出したのが、宝塚ベルばら・オスカル編の主題歌『我が名はオスカル』であります。
♪いつもいつでも私の傍に 寄り添うようにあなたがいたのだ
固く結ばれた手を離さずに行く
愛を受け止めたこの胸に
怖れはない…
もうピッタリではありませんか~やはり「愛だろ、愛!」ですね。よかったです(^.^)

耽美と甘美の世界。それを見つめるアホな男。
見張り員さん、上手!!
上手く切り抜けたというか収まりましたね。
松本兵曹長への大きな感謝はこれからずっと二人が一緒ということですね。
よかった、よかった。これでひとりの女性が救われました。

紫苑の美しさがすべてのリセットのしるしのように感じています。

ひゃっほーーーーーい!

やった!
やりましたぞ、岩井少尉!
野住のような野獣には、これでもまだ足りんくらいだわい。

松本兵曹長もええ仕事をしましたのう。

ああ 渡る朝風も 紫苑の花も 美しいわぁ。
*紫苑の花言葉、そうだったのか・・・。

紫苑

見張り員 さん、夜分に失礼します。

最後の最後で、野住の印象が清楚な紫苑で上書きされました(笑)
「見張り員さん野住に優しいなー」
とも思ったけど、しんさんとリキさんが幸せになった事が素直に嬉しい読者その1でした^^


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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