2017-10

「女だらけの戦艦大和」・真冬の紫苑2 - 2014.03.02 Sun

その日は艦に帰る前に岩井特務少尉は「ぜひに」と松本兵曹長を自分の行きつけの料理屋に誘った――

 

「好きなものを頼んだらええよ、ここの勘定はうちが持つ。持たせてほしいんじゃ」

座敷に上がった岩井少尉はそう言って松本兵曹長に品書きを渡して言った。続いて座敷に上がった松本兵曹長は恐縮して

「ほいでも少尉、そげえなわけには」

と言ったが岩井特務少尉の意思は固く、首を横に振って「いや。今日はうちに花を持たせてくれんね。うちは松本兵曹長にはずっと迷惑をかけっぱなしじゃった。その上今回はもっとひどい迷惑ごとに巻き込んでしもうて。せめてものうちの償いじゃ。うちの心受け取ってはくれんか?」と、兵曹長を正面から見つめて言った。

その言葉に兵曹長は「わかりました。ほいじゃあ、今夜は腹いっぱい戴こう思いますけえ、岩井少尉、眼え回さんといてつかあさいね」と言って笑った。

岩井少尉も愉快そうに笑って仲居を呼ぶと兵曹長とともにあれこれと料理を注文した――

 

そして二日ののち。

いよいよ野住との「決戦」の日である。夕方からの上陸員の中に緊張した表情の岩井特務少尉と、松本兵曹長がいる。二人は上陸桟橋に上がりたくさんの上陸員をかき分けながら先を急いだ。冬の日はあっという間に落ちてまだ〇四〇〇だというのにあたりは暮色に包まれてきた。二人はうなずき合うと『紫苑荘』に向かった。『紫苑荘』は、松本兵曹長が昔から使っているまるで実家のような旅館である。

海軍嬢たちでにぎわう街を二人は抜けて、まちはずれにあるその旅館の前にやってきた。岩井少尉は緊張して旅館の建物を見上げた――

 

その頃、野住光男は出かける支度をしながら妙なたかぶりを覚えていた。

(しんさんがたとえ俺とやり直さんと言っても力ずくでしてしまえば元の鞘に戻るじゃろう。おなごなんぞそういうもんじゃとしんさんの母親も言うとった、あれこれ言う前にやってしまえと。今夜は何年ぶりでしんさんと――出来るんじゃろうか。ああ、今日はえらい時間のたつんが遅いのう)

野住はいやらしい笑いを浮かべてしばし思い出に浸った。

・・・岩井しんを嫁に迎えたあの日あの晩のこと。岩井しんは弱冠十六歳の幼妻だった。白無垢の初々しいしん、披露の宴を終えて二人は風呂を使った後、敷地内の新居となる離れに引き取った。そこで俺の手でしんの帯は解かれることになったがしんは何せ初めてで恐怖に支配されていた。先を急ぎたい俺は息を荒げてしんの寝間着のひもを解き、荒っぽく寝間着をはぎ取った。しんは体を丸めるようにして「やめてつかあさい!」と叫んだ。俺はかっとして「なに抜かすか、旦那のすることに文句言うなんぞとんでもない奴じゃ!」というなりしんの頬を殴っていた。しんは小さくキャッ、と叫ぶとべそをかきはじめた。そのしんを抱きしめ俺はしんの体を開きそしてしんの体に無理やり入って行った。苦しげにうめくしんを見下ろして俺は満足だった。俺は何度もしんを・・・

野住はそこまで思い出してはっと我に返った。自分自身が興奮の極みに達しているのが嫌でもわかる。野住はいやらしい笑いのまま自分自身をそっと撫でてやった。そして

「もうちいとの辛抱じゃ。また・・・ええ思いが出来るで」

とひとりごち、支度を続ける。

 

松本兵曹長は岩井少尉とともに『紫苑荘』の玄関の戸を開いて入った。中から兵曹長と顔なじみの女将が出てきて

「ようおいでんくださいました。――お部屋は松本さんがいつもお使いのあの離れに用意してありますけえ。ほいでお連れの方がいらしたときはお言伝のようにしとったらええでしょうか」

と兵曹長に尋ねた。兵曹長はうなずいて「その通りに願います」といい、岩井少尉を先に上がらせて自分はそのあとに続いた。女将が二人を離れに案内する。

母屋を出て、いくつかの飛び石を踏みながら離れに行く。この離れは昔、松本兵曹長が我が家のようにしていたところだから懐かしかった。

女将は離れの入り口の扉を開けて「さあ、どうぞ」と二人をいざなった。岩井少尉は女将に会釈すると中に入り、松本兵曹長は「ではお願いいたします。例の人が来ましたら手はずの通りに」と言って女将に礼をし女将もしっかり松本兵曹長を見つめて礼を返した。そして「今熱いお茶をお持ちしましょう」というと母屋へ取って返した。

松本兵曹長は中に入ると部屋の中を見回している岩井少尉に

「いよいよですね。ここの女将はうちと昵懇ですけえ安心しとってつかあさい。ほいで例の男が来たらですね・・・」

と<その時>の話を始めた――

 

そしてすっかり夜の帳が降りた。

『紫苑荘』を訪れた一人の男性客が一人。彼こそ野住光男である。野住は玄関で案内を乞うた、女将はごく普通に彼を迎え、野住は

「岩井いう海軍士官がこちらに来ている思うんですが・・・来とられますかのう」

と尋ね、女将は「はい、少々お待ちを」というと離れに走って行った。離れの入り口から「松本さん、例のお方がいらっしゃいましたよ」と声をかけ、松本兵曹長は「わかりました。ではこちらに来させてつかあさい」と言った。女将は外で深くうなずくと母屋へ取って返す。

そしてさりげなく微笑んで

「では、この先にはなれがありますけえそちらへどうぞ」

と離れへ案内した。野住は「あの家ですね。では失礼」と言って足取りも軽く離れへと歩いてゆく。女将はその後ろ姿を見つめつつ(松本さん、岩井少尉・・・うまくゆきますように)と祈る思いでいた。野住の姿が離れの建物に中に入ったのを見届けて女将も母屋へ入った。

 

野住は離れの入り口の扉をそっと開けた。

(離れとはまた、ええ場所を選んだもんじゃのう。離れなら思いっきりやれる言うもんじゃ。あいつも考えとってじゃな。なんだかんだ言うてあいつも俺とよりを戻したいんじゃないか)

そう思いながら離れの中に入る野住。入口には一足の靴がそろえてあり(これはしんさんのじゃな)と男は思った。そして一枚目のふすまをそっと開けた。そこには座卓があり酒肴が用意してある。

(ほう、気がきくじゃないか)

と野住は思いその前に胡坐をかき早速銚子を手に取った。そして盃に酒を注ぎこんだ。何気なく部屋を見回すと部屋の隅に海軍士官の一種軍装がきちんと畳んで置いてあるのが目に入った。野住はことんと音を立てて盃を座卓の上に置くと畳まれた一種軍装のそばににじり寄って行った。

服の上には軍帽が置かれ、それをそっとどかすとその下には少尉の襟章の付いた上着。それを持ちあげれば下には白シャツと胸当て。そしてさらにその下には軍袴。そのバンド通しには錨のマーク付きのバンドが。そして軍袴の間には岩井少尉の下帯が小さく丁寧に畳まれて挟みこまれていた。

それを目にした野住はにやりと笑って

(こりゃあしんさん、裸じゃな。もしかして)

と別のふすまを見つめた。そのふすまの向こうにこそ、きっと岩井しんは居て俺の訪れを待っているのだ。そう野住は思った。

「おい、しんさん。そこに居るんじゃろう?やっぱり俺とやり直す気になったか?そうでなくてもええわ、今日はしんさんの答えがどうでも俺はしんさんと一晩を共にするつもりで来たんじゃ。しんさんも俺に身を任すつもりなんじゃろ?今夜からまた俺たちの新生活が始まる思うてええんな?」

そういうと野住はもう一度座卓の前に引き返すと盃を取り上げて酒をすすった。そして不意に、この旅館の名前『紫苑荘』というのを思い出した。(しおん・・・紫苑ならうちの畑の隅に生えとったなあ)

野住は、しんが嫁に来て初めての秋の夕暮れ近くに、紫苑の群れるそばに立ちつくしていた光景を思い出していた。紫の花のそばに呆然と立っていたしんは、美しかった。

しかし――野住はその時彼女が何を思って紫苑のそばに立ちつくしているかまでは気がつかない、気が回らないのであった。あの時しんは、婚家でのひどい仕打ちに生きる気力さえ失いかけてその場に呆然と立っていたのだった。

野住は

「しんさんよ、俺はしんさんをあきらめとりゃせんで。今日しんさんが俺と会う気になったいうんは俺とやり直す気になったと俺はとったで。じゃけえ離縁はなしじゃ。今夜俺としんさんが結ばれたら俺は明日、復縁の為の届けを役所に出しに行くけえの。ええな」

としまったふすまへ向かって声をかけた。ふすまの奥はしんと静まっているがひとのいる気配がする。野住はにやりと笑いながら盃を口に運び酒をすすった。そして盃を置き、刺身に箸を伸ばして

「しんさんは海軍さんじゃけえ、航海中は家に居らんのが寂しいが帰ってきたら俺が精いっぱい可愛がってやるけえ楽しみにしとれや、フフフ・・・」

と笑った。そして箸を置くと「さてと!」と気合を入れるような声をあげて立ちあがった。ふすまの向こうで布団がこすれるような音がした。しんさんも待ちきれんのか、俺もじゃといいながら野住は来ていたものを脱ぎ始めた。そして彼は素裸になって「さあ行くでしんさん!俺はもう我慢できん」というとふすまを開けた。

暗い部屋の中に布団が敷かれてそこに「岩井しん」が向こうを向いて横たわっている。

野住はその傍らに膝をつくと「しんさん。さあ、俺を受け入れてくれるか」と言ってしんの肩に手をかけ、こちらに引き寄せた。

と――。

    (次回に続きます)

 

               ・・・・・・・・・・・・・・

いよいよ岩井しん特務少尉も年貢の納め時なのでしょうか?岩井少尉、いやな元夫と体を結びまた、よりを戻さねばならないのでしょうか?

緊迫の次回をお待ち下さい!

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● COMMENT ●

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
私の悪いくせ、「じらし」でございます(^^ゞ。さあこの糞男をどう成敗するのでしょう、楽しみですねえ^^。
人を人とも思わないやつは地獄に落ちるべきです。特にこういう奴は。


早いですね、もう三月。いつもご心配をいただいてうれしい限りです。ちょっとめまいの気がありますが服薬をしていますので大したことなくすんでいます。
お互い子供の新しい「場面」への転換の時を迎えましたね。本当にいろいろありました…にいさまは特にお大変だったことでしょう。お疲れさまでした。
お互いこれからきっと良いことたくさんありますよ♡ 
にいさまも御身大切にお過ごしくださいね^^。

おぉ、行きつ戻りつの展開に早く成敗をと願う自分がいます。
こんな下衆なオトコはとっとと再起不能にすればよいのです。
次が……、結末が……、哀れなこのオトコの姿を早く見たいものです。

3月になりましたね。体調は如何ですか。
娘さんの晴れ姿も間もなくではないでしょうか。思い起こせばいろいろあったこの数年でしたね。
お互いによく頑張りました。これからもっと良いことがありますように。


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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