「女だらけの戦艦大和」・夜戦!1<序夜>

羽根つき大会後の余韻に浸りながら夜の帳の降りた呉の町あかりを見ていた副長、その心の内は梨賀艦長が占めていたのだった――

 

が。

森上参謀長によって副長は強引に参謀長の部屋に引きずり込まれようとしていた。副長は

「痛い。やめて下さい森上大佐!ほんとうに・・・」

と泣きそうになりながら引きずられていく。一所懸命その場に踏ん張ろうとしているのに森上参謀長の馬鹿力はその場にとどまるさえ許さない。(参謀長、もしかして酔っている?)と副長は思った。かすかに参謀長から酒の香りがした。しかし彼女がここまで悪酔いしたことは今までなかったはず、よっぽど悪い酒でも飲んだのだろうか。

すると向こうから参謀長の従兵嬢がやってきた。敬礼して「明日の用意はできて居ります。他にご用はございますか?」という従兵嬢に参謀長は

「おう、俺はこれから夜戦(・・)だ。今夜はもう用事はないから明日呼ぶまで来なくていいぞ」

と言って、従兵嬢は「夜戦」の言葉に一瞬首をかしげたが副長を見て(ああ、野村副長と朝まで将棋か囲碁でもしんさるんじゃな。明日までゆっくりできるんならこりゃええわ、何度でもどうぞ)と思って「わかりました」と言って敬礼すると足取りも軽く自分の居住区へ戻って行ってしまった。副長は(ああなんて鈍い子なんだか!私のこの苦しげな顔がわからないのかしら!)

と腹を立て、かつ悲しくなった。参謀長は自室のドアを開けると副長を中に投げ込んだ。そして後ろ手にドアを閉め鍵をがちっとかけた。副長は投げ込まれた勢いで床に尻もちをついていた。その副長を見下ろして

「さあ、夜戦を始めようかねえ野村」

と言って副長の軍装の胸をつかんで引き起こし、服の胸を開こうとした。副長は「い・・・や!」と叫んで思い切り森上参謀長を押した。が、体格の良い森上参謀長にはかなわない、片手をねじられ「いたたたた・・・」とうめいた。その副長に軽くびんたをかまし

「梨賀がお前の何処にそんなに惚れたんだか、私も知りたいねえ是非に。というわけで今夜はお前の隅から隅まで検分だ、いいな」

そういうと参謀長は怖がり嫌がって逃げる副長を部屋中追いまわし――

 

そんなころ、東京では梨賀大佐がつめたい夜空を見上げている。海軍省へのあいさつ回りも終わり、今夜は海兵同期の家に数名が集まり一晩泊り明日は横須賀の自宅で二日ほど過ごして呉に帰る予定である。

友人の自宅のテラスで酔いを覚ましつつ梨賀艦長は(ツッチー、元気だろうか。私を忘れてないだろうか)などと子供じみた考えに支配されている。軍装の内側を探って手帳を出し、そっと広げればそこには家族の写真と「大和」幹部との集合写真と・・・そして副長が一人で写っている写真が挟んである。

集合写真は艦の主砲前で各科長たちと撮ったもので、艦長の右に森上参謀長そして左に副長。最前列の彼女らは自分の前にそれぞれ軍刀をつがえて生真面目な顔で写真に収まっている。梨賀大佐はもう一枚、副長が一人で写る写真を見つめた。写真の中の副長は第一艦橋の羅針儀の前に立ってほほ笑んでいる。トレーラー在泊中のものだから服装は防暑服。

梨賀大佐はその写真の副長の頬を指先でそっと撫でた。その手に副長の肌や髪の感触がよみがえった。

と、いきなり背後から

「おい梨賀あ、なにぼーっとしてる。・・・これなんだ?」

と声がかかり同期の兄部大佐や古村水雷司令、平出大佐などが取り捲いていた。古村大佐が、梨賀艦長の手から写真を三枚とも引き抜いてしまった。古村大佐は

「『大和』艦長の秘密を私が暴く!――おお、お子さんの写真じゃないか。みんな大きくなったなあ」

と家族写真を見て感心した。兄部大佐は集合写真を取って

「いいねえ、『大和』。私も乗りたいなあ、みて梨賀の奴かっこつけすぎ」

と笑う。平出大佐は野村副長の写真を取って

「・・・綺麗な子。だれ?梨賀の彼女なのかこの子」と言って梨賀大佐の顔を見つめた。平出大佐は興味しんしんで写真と梨賀の顔を交互に見ている。古村大佐と兄部大佐が「なに、平出さんは何言ってんのよう」と、彼女の持つ写真を覗き込んだ。

「ほう。綺麗だな・・・」という兄部大佐に古村大佐は

「ああ、副長の子でしょう。なんだずいぶんきれいになったねえ・・・て!もしかして梨賀この子を?」

と声をあげ、ほかの二人はニヤニヤしながら梨賀艦長の顔をさらに見つめる。梨賀大佐の頬が徐々に赤みを増して行く。平出大佐が

「副長・・・中佐の襟章つけてるねえ。海兵の何期?こんなきれいな子海兵にもいたんだねえ」

と感嘆の声を上げる。古村大佐が

「いいねえ、『大和』には美人が多くてさ。平出さんは知らないだろうが『大和』にはこの子にも劣らない綺麗なおぼこな下士官がいるんだよ。ね、梨賀」

と言って平出大佐は

「美人でおぼこ。ふーん、今時そんな子がねえ。いつか絶対『大和』を訪問してそのおぼこちゃんと副長をこの目で見てこよう、うん!」

と息まいている。兄部大佐が

「寒いから中に入ろうよ・・・で、梨賀はこの子を想いつつ夜空を見上げていたってわけか。ああ、恋する乙女だねえ~」

と部屋に皆を入れながら言ったので梨賀大佐も古村、平出たちも思わず大笑いになった。梨賀大佐は最後に部屋に入りながら小声で「恋する乙女・・・ね」と言ってもう一度小さく笑った。

 

その頃『大和』参謀長室。

酔いのまわったのがはっきりわかる顔つきの参謀長が、副長をとうとう捕まえてベッドに押し倒し着ているものを脱がし始めていた。副長はそれでも必死の抵抗をしながら

「やめて・・・!森上大佐どうなさったんです、こんなことをなさるなんか変です、やめて下さい」

と懇願する。参謀長に脱がされた一種軍装の上着で身体を隠しながら懸命に逃れるが参謀長の強い力で両手を押さえこまれた。参謀長はすでに下帯一つの裸になってもう素裸の副長の上にまたがった。

「好きだから」

参謀長は唐突に言った。「好きだからだ。俺はお前が好きだから梨賀にだけにさわらすのが癪だからだ。あいつがいないいい機会だからこうしたんだよ。・・・あいつとは違うことしてやるからさ、さあ」

そう言って参謀長は副長に身体を重ねた――

 

そして麻生分隊士と見張兵曹も分隊士の部屋で絡み合っていた。

「分隊士、もういけん。うちはもういけんです」と息も絶え絶えに言うオトメチャンに分隊士は

「まだまだじゃ、さっき始めたばかりじゃないねオトメチャン。こうしてゆっくり出来るんも内地に帰ったればじゃ。今まで出来んかったことゆっくりしてやるけえね。オトメチャン・・・」

と囁いてその胸の先を口に含んだのだった。

 

さて浮かれているものばかりではない。

冷たい風が吹きつける最上甲板の機銃座の中で何やらひそひそと話声が聞こえる。誰あろう機関科の松本兵曹長と、内務科・岩井しん特務少尉である。

松本兵曹長は

「岩井少尉、このたびは分隊士ご就任おめでとうございます」

と祝意を表した。岩井少尉は一月一日付で電機分隊の分隊士に就任していた。元旦の祝いの席で、百川分隊長から「今日付けで電機分隊・分隊士となった岩井少尉である」と紹介された岩井少尉は恥ずかしげに立ち上がり就任のあいさつをした。分隊員たちは盛大な拍手で「岩井分隊士、よろしく願います!」と言ってその就任を心から祝ったのだった。

「兵曹長。ありがとう、あなたのおかげだよ」

岩井少尉はそう言ってほほ笑んだ。つめたい風が機銃座に流れ込み、松本兵曹長は「岩井少尉・・・」と言って風から守るように抱きよせた。

「ほいで、岩井少尉。お話とは」

と松本兵曹長は言ったが(たぶんあの男のことじゃろう)と感づいていた。果たして岩井少尉は

「うちのもとの旦那のことじゃ・・・暮れにまたあん人から手紙が来てのう、七日に上陸できんかと来た。そん時に話し合いをしたい言うんじゃが・・・どうしたものかうちは迷うとってね。話し合い言うてまともにできるんじゃろうか、不安で」

と松本兵曹長の腕に抱えられながら言った。兵曹長はうーむと少し考え込んだが

「話し合いするにしても個室のようなところではいけませんな、向こうの思うつぼになりますけえね。こちらはもうちいと、作戦を練らんといけません。どうしたらええか、うちもずうっと考えては居りますがいかんせん相手も手ごわいですけん。相手の度肝を抜くようなことが出来たらええんじゃが・・・」

と言って夜空を見上げた。

星がキラキラとまたたき兵曹長はしばし見とれた。岩井少尉も空を見上げ、

「星空が、こげえに綺麗だったとはね。うちは今まで下ばかり見て歩いとったけえちいとびっくりじゃ。これから――ずうと上を見て歩きたいもんじゃのう」

と言った。その言葉に兵曹長はたまらなくなった。(岩井少尉は今までつらい日々を過ごしとったんじゃな。うちが少尉のつらさを忘れさせてあげんといけんな。ええ作戦を考えて・・)

そう思う兵曹長の腕に力がこもり、岩井少尉を思い切り抱きしめていた。少尉も松本兵曹長の広い胸に顔をうずめて抱かれている。

 

さまざまな思いを乗せた艦の上を、ひときわ強い風が吹きすぎて行く――

  (次回に続きます)

 

            ・・・・・・・・・・・・・・

それぞれの夜の「序」章ということで<序夜>としました。次回から第二夜。何が起きますでしょうか。一番の問題は、岩井少尉の件です。あのとんでもない元夫を撃退しなければ少尉はどうなってしまうのか?頑張れ松本兵曹長。

そしてまだ何も知らない梨賀艦長は、参謀長と副長のことを知ったらどうなっちゃうのでしょうか、これも気になるし。

麻生とオトメはいつものことですから放っておきましょうか。

 

乙女の祈り。


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matsuyama さんへ

matsuyamaさんこんばんは!
そうですね「姫始め」というには遅い始まりですね^^。
私とてもう浮いた話は遠い昔となりました(-_-;)、本当に若いというのはいいことだなあと思いますね、若さというのはなくしてから初めていいものだと気がつくような気がしてなりません。
私もせめてあと10年若かったらなあ~と思うことしきりですw。

置き手紙不具合が?
早く解決するといいですね、何だか気が気じゃないですよね。

これはこれは何処も遅い姫始めのようで、
浮いた話もなくなった年代に<序夜>は刺激的なことです。
若いっていいですね。自分もせめて後10年若返りたい(笑)。

置き手紙、不具合が生じてるみたいで開けません。
時々あるんですよね。解決したらもう一度チャレンジしてみます。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
副長と参謀長はこれもしかしたら「血ぃ見るど―」(懐かしいフレーズですね)になるかもしれない怖い事態になるかも・・・ガクガクブルブル・・・そうならないことを祈りますが(-_-;)。
麻生とオトメはもう楽~になさってご覧ください^^、いつものことですし、久々の内地ですから上陸してからまた一戦あるでしょう^^。
松本兵曹長は心砕かねばなりませんがそれもまた愛のため。
さまざまな「夜戦」が繰り広げられます。ご期待ください!

これはまた大変なことになっているではありませんか。
誰か副長の危機を救ってあげねば。と言いながらも誰もいないから興奮度が増す参謀長。これは困ったことですがきっと見張り員さんのこと上手く切り抜けさせてくれるでしょう。
そしてもう片方の麻生さんとオトメチャン。こちらは安心して覗き趣味に徹することができます。めくるめく快感の嵐。こちらはもっと奥深くまでやっちゃってくださいな。
人それぞれ。松本さんたちの夜もまた……。まさしくあっちこっちで満艦飾ですね。

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
そうですよ「好きだから」って理由で何でもされたらもう大ごとですよね。さらに「酔っていた」なんて言い訳にすんじゃない!
さあ緊迫の?次回へと進みます…(-_-;)

こんばんは。「好きだから何をしてもイイということはないですからねぇ…ふたりの関係にちょっとしたスパイスになるならいいですが……ああ、いけませんぜ、心配!!
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見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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