「女だらけの戦艦大和」・内地の正月、○○決戦!8<解決編>

松岡中尉の「今日から君たちも富士山だーっ!」の掛け声を合図に内田みつ水兵長と見張トメ二等兵曹の頂上決戦がここに始まった――

 

幹部席から各科長、そして参謀長副長が見守る中羽子板を構えた内田水兵長はその鋭い目で見張兵曹をにらむと羽根を持った左手で見張兵曹を指して

「俺はあんたみてえなかわいっこぶりっこは正直好かん。前々から機会があればぶったおしてやろう思うとったんじゃ。それが今日堂々とやれる日が来たんじゃけえ、思いっきりさせてもらうで。恨まねえでくれよな。正々堂々と勝負じゃ!」

と吼えた。見張兵曹は羽子板を持ったまま唖然として内田水兵長が吠えまくるのを見つめる。見物席から

「内田!貴様こそ正々堂々やれや、卑怯な真似しよったら重営倉じゃ。ええなあ!」

「内田貴様上官に向かって何言うんじゃ、侮辱罪で銃殺じゃ!」

「内田貴様弾薬庫の係しよってなかなか見どころある思うてたが間違いじゃった。そげえなこと言う奴は係の仕事、解くで!」

などと憤激の声が飛ぶ。騒ぎ立てる皆を一瞥した内田水兵長はフンと鼻を鳴らすと羽子板を肩に担ぐようにして

「やかましいわい、だまっとれ!上官じゃと?こげえなガキの何処を上官じゃ思えばええんね?係を解くじゃと?そがいなんうちが負けたら飲んでやる、じゃがうちは勝つ、勝つけえそげえな話は飲まれんで」

と言って「さあ、行くでかわい子ちゃん。血祭りに上げたるで」と言うと艦内帽の廂を後ろに回しいよいよ羽根つき開始。最初はソフトな感じで当てていた内田水兵長であったが、それも十回のラリーを越えたころから打ち方が激しくなってきた。

羽子板に羽根があたる音が耳に痛いくらい響く。それでもオトメチャンは羽根を器用に拾ってうち返す。見物の皆は手に汗を握って声もない。副長がからからの喉で「オトメチャン・・・頑張れ」とつぶやくのが隣席の森上参謀長にも聞こえてきた。森上参謀長は思わず知らず、片手を伸ばして野村副長の手をつかんで握りしめている。副長は一瞬ハッとした顔で参謀長を見たがすぐにオトメチャンの方へ視線を戻した。

樽美酒少尉は石川水兵長を肩車しながらこれを見ているが胸の鼓動が押さえきれない。(オトメチャン頑張るんだよ、しっかり!)と心のうちで祈る。石川水兵長は樽美酒少尉の肩の上で両手を、まるで教会かどこかで祈る時のように組み合わせ(ああ、見張兵曹・・・あんな生意気な年増の水兵長になんか絶対負けないでつかあさい)とこれの必死で祈っている。

どのくらい時間が経っただろうか、どちらも息一つ乱すことなく羽子板を使っている。前甲板に風はなく、最高のコンディションを保っている。

さらに、三十分が経過したが状況に大きな変化がない――と皆が思っていた時、麻生分隊士と野村副長はある変化に気がついていた。

麻生分隊士は傍らの長妻兵曹をそっとつつくと

「見てみぃ、気がつかんか?内田水兵長はさっきから前後左右に振られ始めとってじゃ。ほいでもオトメチャンは自分の場所からほとんど動かん。水兵長の方がゆすぶられ始めとるで」

と言った。長妻兵曹が「・・・あ、ほんまじゃ。麻生少尉これはひょっとしたらひょっとするかもしれませんのう」と言って麻生少尉の顔を見た。麻生少尉は長妻兵曹にうなずいてさらにオトメチャンの様子に見入った。その頃には松岡中尉も気がついて(ほほ~う、これは特年兵君いい線いくかもしれないね!テニスも羽根つきも振り回されたらちょっと危ないよ。熱くなってるね特年兵君!)と思っているが静かに試合を見つめている。

幹部席では副長が森上参謀長に

「参謀長、オトメチャンが内田水兵長を振り回していますよ・・・これはもしかすると」

と囁いて森上参謀長は「ああ。面白くなりそうだぜ」と言って笑って見せる。その片手は未だ副長の片手をつかんだままである。

さらに二十分がたち、目に見えて内田水兵長が疲れて来た。マツコがその金色の瞳をぱっちり見開いて

「見なさいよトメキチ。あいつもうへとへとよ。相当疲れてきてるわね、もうこの勝負あったようなもんよ。小娘、あとひと押しよ!」

と言ってその大きな翼を広げてバサバサと羽ばたきをした。マツコの<応援>のスタイルである。トメキチが「ぼ、僕もう我慢できないよう」とその場をくるくる回ったと思った次の瞬間、うんちを落としていた。マツコがそれを見て「ギャッ!あんたなんてことすんのよう、あっちでしなさいよう」と言ったがトメキチは「ハラハラして胸がドキドキしてどうしようもない気持ちになったの、そしたら出ちゃったの。ごめんなさい」と謝った、がマツコは「もうそんなのどうでも、あとでいいわ!問題はあの小娘が勝つかどうかなんだから!」と言ってさらに翼を広げる。

 

 

疲れ切った内田水兵長は「この下士官やろう!いい加減に降参せんか!」と怒鳴って羽根を打った。このころにはすでに息が上がり始め額に汗がにじみ出している。しかしオトメチャンは顔色一つ変えないで羽根を撃ち返した。その羽根が――内田水兵長の思いもよらぬところへ飛んできた。

「あっ!」

内田水兵長は横っ跳びに羽根を追いかけたが・・・羽根は無情にも羽子板を大きくそれて地面に落ちた。

トン、とかすかな音を立てて落ちた羽根。内田水兵長もその場にどさっと音を立てて倒れた。しばらくの間、だれも――内田水兵長も見張兵曹も――身じろぎ一つしなかった。しんと静まり返った前甲板。

「やった、やったぜオトメチャン!」

静けさを一番先に破ったのは麻生少尉、彼女は兵隊嬢をかき分けて前に進み出ると「オトメチャン!」と言ってその身体を思いっきり抱きしめた。「分隊士・・・」とオトメチャンは嬉しそうに言うと分隊士の胸に顔をうずめた。

見物の皆からものすごい歓声が上がったのはその時になってからである。皆誰かれなく抱き合って「やった、やったよオトメチャン!えらいもんじゃ、大したもんじゃ、のう!」と言いながら大喜び。幹部席でも航海長や内務長、主計長に機関長砲術長たちが肩を組んで輪になって飛び跳ねている。

参謀長でさえも副長を思い切り抱きしめて喜ぶ。そして皆はかぶっていた軍帽や略帽、艦内帽を天高く投げあげて見張兵曹の勝利を喜んだのだった。

その場に伏したままの内田水兵長は悔しさと恥ずかしさで、身動きが出来ないまま。

 

羽根つき頂上決戦は、見張兵曹の優勝で幕を閉じたのだった。でもそのあとも「見張兵曹、羽根つきをしてつかあさい」とか「オトメチャーン、一緒にやろうよう」とあちこちからお声のかかるオトメチャンである。松岡中尉は

「いい試合だったねえみんな熱くなってて。そうだ小正月にまたやろうか。今度は特年兵君が勝てるとは限らないよ?そうだ今度こそ特年兵君に全員で総当たりだ。そしたら彼女の実力がわかろうってもんだね、よしみんな、尻の穴を締めろ!」と言って勇んでいる。

トメキチはうんちを藤村甲板士官に発見され「ごめんなさい、つい漏れちゃったの。片付けます」と謝ったが藤村少尉は

「仕方ないよね~あの状態じゃ。興奮しちゃったんだよね」

と至極機嫌よくうんちを片付けてくれた。皆心地よい興奮と疲れに浸った一日である。

内田水兵長は、上司から「見張兵曹に対する口のきき方は厳罰ものだ。貴様は弾薬庫見張りの任を解くからそう思え!」と言われ、生き甲斐の弾薬庫見張りの仕事を奪われる羽目に。

 

その晩、巡検を済ませた副長は前甲板へと歩いていた。夜風が頬に心地よい。昼間の喧騒がうそのような前甲板で一人、明かりのきらめく呉の街を遠望した。すうっと息を胸いっぱい吸い込んだ副長は(梨賀艦長、もう東京にお着きのころだろう。御無事についていればいいな。――そして早くお戻りになってほしい)とせつない思いに胸を締められた。かすかに景色がうるんだ。

一陣の風が副長の一種軍装の裾を翻して去った。副長は中に戻ろうと踵を返したその時、背後に誰か経っているのを見た。闇を透かして見れば森上参謀長である。参謀長は「よッ!」と片手をあげてから副長の前に立った。そして「今日はお疲れ様。いろいろあって楽しい一日だったね」と言った。副長が

「はい。羽根つき大会、艦長にもぜひお見せしたかった。――それにしても参謀長、お早いお戻りでよかった、ホッとしました」

というと森上参謀長はいきなり副長を抱きしめた。「参謀長?」と困惑している副長に参謀長は

「ああ、海兵団への用事だったからね、すぐ済んだ。俺のことより、――野村が梨賀のこと考えてるのは知ってるよ。梨賀とずっとまえからいいことしてたっていうのもね。だからこのところツッチは綺麗になったんだな。梨賀がうらやましいよ」

と言って副長の略帽をそっと取り、自分の略帽の廂を後ろへ回した。そして―ー参謀長は副長の唇を奪っていた。正月のつめたい風が、二人を包んで流れた。

「・・・いけない、森上大佐」

数瞬の後、副長は参謀長の胸をそっと押して離れた。森上参謀長は楽しむように副長を見て

「なにがいけないんだ?いいじゃないか、野村を一人占めなんて梨賀も悪い奴だよ。私もお前を抱いてみたくなったんでね、おいで」

というとその手を引っ張ってずんずん歩いてゆく。「森上さん、だめ。いやですほんとにやめて」と副長の声を無視して参謀長は艦内へと歩いてゆく。副長の長いまとめ髪が風に吹かれてなびいた。

その様子を、第一砲塔の上でみていた人影が二つ。医務科の日野原軍医長と部下の黒村軍医大尉。日野原軍医長は銘酒・万福を黒村大尉に注いでやりながら

「いいねえ、青春だよ。副長は艦長と良い仲なのかい?だとしたら参謀長は横恋慕ってことか?ヒャハハハ!やばいじゃーん、この艦内でも一、二を争う美人の武人だからね副長は!まあでもいいじゃないか若いうちはたくさん恋をしなさい、な!黒村君」

と言って夜空を見上げた。日野原軍医長はすっかり出来上がっているようだ。黒村大尉は酒をグッとあおってから「はい、いたします」と答え二人はつまみのするめを口に放りこんだ。奇妙な二人宴会はそのあとも続いた。

 

そして。

オトメチャンは麻生分隊士に<ご褒美>をいただいていた。分隊士は「今日はようやったね、褒美じゃ。受け取ってほしい」と言うとオトメチャンの素裸の胸に手を当てて優しく丹念に揉んだ。そしてそのあと、その先をさらに優しく吸いオトメチャンを十分喘がせてから――その秘部に手を当て激しく責め立てたのだった。

「久しぶりじゃ・・・オトメチャンの身体はええのう、やわらこうて。うちを夢中にする悪い子じゃ、オトメチャンは・・・」

そういいながらオトメチャンの体を攻める麻生分隊士である。

 

決戦は、夜になって場所を移しても続いている――。

 

            ・・・・・・・・・・・・・・・・

長い話でしたが○○決戦、羽根つき決戦でした^^。内田水兵長、見張兵曹への恫喝を責められての弾薬庫見張り役解任と相成りました。年上でも階級の差は歴然とある、それが軍隊というものですね。そして何処の世界にもあるけじめではないでしょうか。

 

さて森上参謀長、梨賀艦長の留守に野村副長に手を出す!?

まだまだいろんな事件の種がありそうな「女だらけの大和」です、次回以降も御期待下さい。

 

昨日購入した本です。『大和』の医務科で軍医をなさっていらした方の体験記。これからゆっくり読みます!
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すっとこさんへ

すっとこさんこんばんは!
全く平和です、でも平和が一番ですね。こんなことあんなことできるのですから^^。

本物の『大和』の黒田軍医長も、第二艦隊軍医長の寺門さんも戦死なさっています。軍医はほとんど戦死されたようです。
この祖父江さんは途中で大和を降りられて他で終戦を迎えられたようです。
さあ、今宵から読み込むぞ~~!

おお!
皆さん昼も夜もお忙しそうで!笑。

本物”大和”の軍医どのは生還しておられたのですか?
あるいは交代なさって上陸しておられたのでしょうか?
また読後感など教えてくださいね!

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
昼も激戦、そして夜も!!
ふ~む、スポーツのあとってそれで血が収まるってわけでもないんですか・・・却って騒いじゃう、キャッこれこそ青春だわ~~♡

森上の横恋慕、艦長に知れたらと思うと私もドキドキします。
どうなりますか・・・ご期待を願います!!

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
羽根つき大会の後は夜戦だぜ!--というわけであちこちで夜戦状態になってるみたいよ~もうどうしよう~w。

松岡中尉ではないですがもっと熱くなれよ~です。
青春の花咲く今この時を大事に笑って過ごそうよ・・そんな感じでしょうか^^。

夜は夜とて激戦で!!
なんだか若い頃を思い出してしまいました。スポーツのあとって血が騒ぐんですよね。血潮!!
横恋慕がとんでもないことにならないように祈っております。

夜戦ですな(^.^) どこに隠れて見張っていたらいいでしょうか~見回る場所が多くて困ります←おやぢ(爆)

みんなでアツくなるって青春していていいですね。どんな状況でも笑顔の花を咲かせることが出来る、乙女たちのチカラは素晴らしいです(*^^*)
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見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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