2017-10

「女だらけの戦艦大和」・戦場の年末年始 - 2013.12.30 Mon

年末年始の風景1<クリスマス>

――南太平洋上のとある島に、帝国海軍の捕虜となった連合国軍兵嬢たちが収容されている。ここは「戦場」である。

 

その収容所で12月に入って二週目ごろから不穏な空気が流れだした。捕虜嬢たちが、カレンダーを見つつ何やら特定の日を指差しては何やらひそひそと小声で話しをしている。

「いったいなんなんだ、もしかしてここに大規模な敵襲でもあるのか?この中にこっそり連合国軍と交信しているものがいないか、探し出せ」

と基地司令で収容所長の立川中佐は言って、捕虜嬢たちを広い庭に整列させた。常夏の島、強い日差しを受けて捕虜嬢たちもそれを見張る海軍将兵嬢たちも額に汗を浮かべている。

立川中佐は朝礼台の上に立ち

「この中に自国と通信をしているものが居らんか?居るなら今のうち名乗り出よ。貴様たちの不穏な行動はすでに我々が察知している。つまらぬことをすると命にかかわるぞ、早く名乗り出よ!」

と叫ぶようにいい、それを福生大尉が英語に翻訳して捕虜嬢たちに伝える。怖ろしい顔で皆を睥睨している立川中佐は

「わかったか、わかったら早く名乗り出よ!」

というと身体の前に立てていた軍刀をドン!と大きな音で朝礼台に突き立てた。その音に捕虜嬢たちは一斉にびくっとして身を固くした。

と。

「アノ・・・」

と手を挙げた兵が一人。立川中佐が目を向けるとそこにはライネン・ノオ・カレンダー上等兵がおずおずと手をあげている。一人の少尉嬢が「貴様かあ!国に内通してるのは!」と怒鳴ってカレンダー上等兵のもとへ走り、その胸ぐらをつかもうとした。

が、これも走ってきた三鷹兵曹が「待って下さい、彼女に話をさせてやってください」と叫んで、さらに走りよってきた国分寺少尉が「カレンダー上等兵、こっちへ来なさい」と立川中佐の方へ連れてゆく。他の捕虜嬢たちは(ドウナルノ、らいねん上等兵コロサレチャウ!ナニモシテないのに!!)とハラハラして見守る。

立川中佐はカレンダー上等兵の前に立つと

「いったい何をたくらんで居るのか?正直にいえ」

と重々しい声で言った。カレンダー上等兵はごくっと喉を鳴らすと

Christmas・・」

と言った。立川中佐は、「は?」と言ってカレンダー上等兵の顔を見つめる。カレンダー上等兵はもう一度「Christmas」という。立川中佐は

「なにを言ってるの?」

と自分のそばに立つ福生大尉に助けを求めた。福生大尉は基地司令にうなずいてカレンダー上等兵と何やら話をしていたが突然「ああ、そうか。そういうことだったのね!」と言って皆はちょっとびっくりした。

そして福生大尉は立川中佐に

「彼女ら、今月24日25日のクリスマスを祝えるかどうか気にしていたんです。だから暦を見てはあれこれ言ってたようですね。内通じゃない、そんなことをしていない出来ないと言ってますが」

と伝えた。立川中佐は「く、クリスマス?」と素っ頓狂な声を上げた「なんじゃそりゃ?」。

そして福生大尉は自分のアメリカ在住経験からの<クリスマス>の話を聞かせ、「クリスマスは彼女らキリスト教信徒にとって大事な祈りの日だそうです。これをさせてやらないと――問題になりますね、きっと」と言って立川中佐は考え込んだ。そしてしばらくして顔をあげると

「私はキリスト教信者でもなければアメリカ在住経験もない。第一そのクリ・・・スマスとやらがどのようなものかも皆目わからない。しかし、それが彼女らの大事な日だとするなら祝うな、というのは酷であるね。――よし、福生大尉と横田大尉。二人に万事任せるからそのクルシマスとやらをやってやりなさい」

といい、福生大尉はこれを捕虜嬢たちに伝えた。とたんに抱き合ったり手を取り合ったりして喜びあう連合国軍兵嬢たち。

帝国海軍嬢たちはあっけにとられてそれを見ている――

 

そして24日の晩。

立川中佐の計らいで、この晩は特別に「Christmas」のパーティーが開かれた。まず最初に、基地内に作られた小さな聖堂に皆で行き、牧師の娘のキャリー・バッグ上等兵曹嬢がミサをつかさどり祈りをささげた。

「ハヤク・・・この戦争がオワリ、みんなが愛するカゾクのモトヘ帰れるヒガ来ますヨウニ」

アーメン、の声もひそやかに、彼女たちの心の中に去来する思いはどんなものだったのだろう。ミサを外から見ていた三鷹兵曹は、カレンダー上等兵の祈る後ろ姿に(国に残してきた子供に会いたかろう)と思い涙腺の緩む思いがした。昨年の秋カレンダー上等兵が、国から中立国経由で収容所に届いた母親と子供たちからの手紙と写真に狂喜乱舞していたあの姿を思い出していた。

彼女はあの時三鷹兵曹に抱きついて「ミタカさーん、ほらこれ、私のムスメタチ!コンナニオオキクなって、ゲンキにしてる!私のママもゲンキ!ワタシ嬉しい!」と手紙と写真を見せてくれたのだった。

 

そして収容所内も今日は素敵に飾り付けられてクリスマスムードが盛り上がっている。

烹炊員たちが捕虜嬢に聞きながら一緒に作ったケーキや料理に歓声が上がった。牧師役のキャリー・バッグ上等兵曹嬢が皆を押さえて

「キョウ、このように盛大でスバラシイパーティが出来たのも・・・タチカワさんとみなさんのオカゲです。アリガトウ!みなさんと我々に、神のゴカゴヲ!」

と言ってパーティが始まった。嬉しそうに楽しそうにはしゃぐ連合国軍兵嬢の姿を見ながら福生大尉は立川中佐に

「良かったですね、さすが司令です。これで彼女らの心をわし掴みにしましたね」

と囁き、中佐は照れて「何言ってんだ、バーカ」と言うと手にしたジュースを飲みほしたのだった。その向こうでは、三鷹兵曹とカレンダー上等兵曹嬢が大勢の捕虜嬢たちと一緒に笑いあっている――。

 

年末年始の風景2<年越し>

ここはクサイヘ島にある帝国海軍捕虜収容所――

十二月三十日。ここでは捕虜嬢たちが建物の内外を大掃除している。

あるものは床を拭き、またあるものは窓ガラスを丁寧に拭く。その中の一人の捕虜嬢、ナン・ノコッチャネ陸軍上等兵は

「ニホンジンって綺麗好きね。私、年の終わりにコンナオオソウジ、したことないよ?」

と言って傍らのソンナ・コッタ陸軍上等兵を見返る。床を熱心に拭いていたソンナ・コッタ上等兵嬢は

「ソウネエ。私もキイタコトナイヨ。でもきれいにしてアタラシイ年を・・・ってイカニモ日本人らしいね。オモシロイ」

と言って身体を起こすと額の汗を拭いた。そこにヨソー・ガイダネエ一等兵が

「ホラホラ、いらないオシャベリしてると伊部サンにしかられるヨ!」

と軽く注意してバケツを運んで行った。そんな・コッタ上等兵とナン・ノコッチャ上等兵はあわてて周囲を見回して作業の手を進めた。

 

やがて掃除も終わり、終わったところで宮里大佐が部下を伴って皆の部署を巡回。そして各部屋の入口に「門松」を立てて行く。

連合国軍兵嬢たちは興味深げにそれを見つめそっと触れる。

「何かしらこれ!トガッタ葉っぱヨ!」

「マツ・・・って言ってたわ。パイン?パインのリーフ?」

「コレになにかイミガあるのカシラ?」

口々に何かまくしたてるのを尾崎上等兵曹は笑って見つめている、そして近寄って行くと下手な英語を精いっぱい使って門松の意味を教えてやった。

「ソウイウ意味が!トウヨウの神秘ネ」

うなずき合う捕虜嬢たち。

そして大晦日を迎え、捕虜嬢たちにも「年越し蕎麦」が出され、箸に苦戦しながらも捕虜嬢たちは食べる。その中でソンナ上等兵、ナン一等兵にヨソー一等兵は蕎麦の上に納豆を乗せるというとてもマニアックな食べ方をして見せ、ほかの捕虜嬢たちの度肝を抜いた。

それを笑いながら見ていた上川水兵長は

「明日は元日だから雑煮を食べるからね。餅、喉に詰まらすなよ」

と言ってそばを豪快にすする。その様子を隣で見て、マネしようとして咳きこむブロンドの兵隊嬢が続出。

「ハア、日本のタベモノムツカシイネエー!」

「明日のゾーニもどんなモノダカ?気をつけないとネ」

笑いがはじける。

 

・・・ここは戦場。戦場ではあるがそこで寝食を共にするものたちの間には「国」を超えた何かほのぼのとしたものが流れ通じ合っている。

 

いよいよ新しい年が来る。

誰のうえにも希望という大きな光はまんべんなく差し込む。たとえ今、囚われの身であろうが四季豊かな国を離れて常夏の島に勤務の身であろうが――希望の光は誰にでも差し込む。

だからほほ笑みを忘れないで生きて行こう、ほほ笑みのあるところ常に幸せはついて来るから――

 

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この一年「女だらけの戦艦大和」をお読みいただきましてありがとうございました、平成二十五年の「女だらけ~」は本日で終わります。たくさんの方の御訪問をいただきまして嬉しい一年でした。昔からのお友達、今年になってはじめて交流の出来たお友達、みんな大事な私の宝物です。

また来年も「女だらけの大和」は旅を続けます。どうぞよろしくお願いいたします。

そして皆さまにとって来る年がすばらしいものでありますよう心から祈念いたします。

 

明日は「日々雑感」をアップして本年の私のブログ納めとしたい・・・と思っております。


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● COMMENT ●

matsuyama さんへ

matsuyama さんこんばんは^^!
ごくありふれた日本語が、カタカナにした途端――アッと驚くタメゴロー!なんと外国人の名前に変身だ!
というわけで笑っていただけたようで安心しておりますw。
でも書いてるうち「あれ?」「ありゃ??」ということありますね・・・(^^ゞ

自分たちの尺度にあわぬからと他の国の習慣を頭から否定するのはよくないですよね。相容れないと思うことでも譲歩して少しでも近づけたらいいなあと思うことあります。

来年は午年、馬のように飛躍の年になればいいな^^
「女だらけの大和」のメンバーも木と大きく飛躍する年になると思います。

この一年間ありがとうございました、来る年もどうぞよろしくお願いいたします!

ライネン・ノオ・カレンダー上等兵、キャリー・バッグ上等兵曹、ナン・ノコッチャネ陸軍上等兵、ソンナ・コッタ陸軍上等兵、ハハハッ、いろいろ考えだされてますね。片仮名にするといかにも外国名のような気がしますよね。声を出して読んでみるとそのまま日本語で通じますけど。書いてるうちにこんがかりませんか。
国は違えど、その国の風習を無視することはできませんよね。クリスマスに続く日本の正月、その風習を理解するためにもお互い国を越えた協力が大切です。

日本の風習でもある干支。来年は午年です。脱兎のごとく跳躍し、停滞気味な社会を、大和の国の兵隊嬢たちが率先して乗り越えてほしいものです。
来年もどうぞよろしくお願いします。


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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