2017-09

「女だらけの戦艦大和」・内務科人事異動1 - 2013.12.21 Sat

「女だらけの大和」は内地を目指してまずはサイパン島を指して進む――

 

あと二日でサイパンという日、内務長の林田中佐は副長から「艦内人事異動だよ、内務長。呉に着き次第内務電機分隊士の猪瀬中尉は解任になる。そこで猪瀬中尉の後任に誰がいいか・・林田さんから特にこれという人はいないかね?」と言われていた。

林田内務長は「猪瀬が分隊士解任ですか、あれは兵隊からたたき上げで出来る方だと思ったんですが。なにかあったかな?」と首をひねった。

野村副長は「なにかねえ、あの子は軍人としてはアマチュアみたいでね。こうなんていうのかプロっぽさがないんだよねえ。まあそれも問題なんだけど一番は金銭にだらしがないらしいのね、『大和(ここ)』に来る前乗ってた巡洋艦で誰かにお金を借りたらしいんだけどそれを返したの返さないのってもめたらしいんだよね。で、その件がうやむやだからはっきりさせないといけないしそういう子を分隊士にしてるってのも変でしょう・・・だから呉に着いたら誰かの下に置いて再教育させようって思ってね」と一気に話した。

林田内務長は

「はあ・・・金銭の話は聞いては居りませんでしたが。そうですか、そういうことでしたら早速に人選にかかります」

というと自室に取って返した。その道々運内務長は

(誰がいいか?あの人かそれともあの子か?ゆっくり考えないとなあ、大事なことだから)

と思っている。自室のそばまで来た時内務長は岩井少尉に出くわした。岩井少尉は防暑服をきちんと着こなして崩れたところがなく内務長は好感を持って彼女の敬礼を受けた。

だが岩井少尉は何処となく元気がない。内務長は「岩井少尉、もうすぐ内地だよ。正月は内地で迎えられるね。休暇も長く出るだろうから楽しみだね」と言った。瞬間、岩井少尉も微笑んだように見えたがすぐにその微笑は深い憂鬱の表情の中に消えた。

(どうしたのだろう、あの子があのような表情をするとは)

岩井少尉の後ろ姿を見送った内務長は何か胸の奥にもやつくものを感じて落ち着かなくなった。少しの間腕組みをしてその場で考え込んでいた内務長であるがふと顔をあげると

「そうだ、彼女に聞いてみよう」

というなり走り出した。目的の場所まで行く前に林田運用長は<彼女>に出会えた。<彼女>は大きな体を揺すりながら下甲板から上がってきた。

「おお!松本兵曹長、ちょうどよいところで会えました!ちょっと一緒に来てくれるかな」

と林田運用長は叫んで松本兵曹長は緊張して敬礼した。その兵曹長に「まあそんなに硬くならないで。一緒に来てほしい」と言って運用長は兵曹長を自室に連れて行った。

二人は林田中佐の部屋に入り、中佐は従兵を呼ぶと「紅茶を二つお願いね」と頼みやがて従兵嬢が二つの紅茶のカップを運んできた。その一つを「さあ、飲みなさい」と松本兵曹長に勧めて自分も紅茶のカップを手に取った。

「はい・・・いただきます」

松本兵曹長は恐縮して紅茶をいただいた。紅茶をすすればそのふくいくたる香りが口中にいっぱいに広がった。ほう、と息をついて紅茶のカップを見つめる兵曹長に微笑んで運用長はいきなりのように切りだした。

「君は・・・うちの岩井少尉と仲が良いようだね」

その言葉にはっとしたように松本兵曹長は顔をあげた。少し頬がこわばっている。それを見てあわてて運用長は

「いやいや、とがめている訳ではないんだ。今日は君におりいって尋ねたいことがあるんだ。――最近の岩井少尉は何かに悩んだりしていまいかね?先ほど私が彼女に会ったときなんだが彼女妙に元気がなくてね。いや、元気がないというと違うなあ・・・そう・・・何か内地に着くのを怖がっているように感じたんだが?」

と言って松本兵曹長を見つめた。兵曹長は(あのことじゃな、あのことで岩井少尉は悩んで居られるんじゃ)と思ったが黙っていた。そのことは岩井少尉と兵曹長だけの秘密であったからだ。

(何やら秘密を持っているな)

と、林田運用長は見抜いてしまった。だからと言って見逃す手もない。可愛い大事な部下が悩んでいるのを見逃してはならない。猪瀬分隊士は、直属の部下である岩井少尉の変化を見ていないようだ、これでは職務怠慢も問われるだろう。

林田運用長は

「松本兵曹長は何か知っているね?知っていたら教えてほしい。おそらく・・二人だけの秘密なのだろうが大事なことだ。部下が悩んでいるのを見逃すわけにはいかないのだ。どうか教えてほしい。そして私がここで知り得たことは絶対他言はしない。それは天地神明に掛けて誓う。だから・・・教えてほしい」

と熱っぽく語り紅茶のカップをテーブルの上に置いて、兵曹長に語りかけた。

しかし松本兵曹長は苦しげな表情をして黙ったままである。運用長はその兵曹長を見つめている。

長い時間がたったようだ――兵曹長は顔をあげた。運用長はまっすぐ兵曹長の瞳を見つめている。兵曹長はグッと姿勢をただすと、防暑服の半ズボンから出た膝の上に置いた手を握った。そして

「運用長。私は運用長を信じ、お話しいたします・・・」

というと覚悟を決めて話しだした。

 

松本兵曹長の語る、岩井少尉の過去を聞いて運用長は絶句した。

「岩井少尉は・・・そんな思いをして来て、それでもあのように懸命に頑張っているのか」

運用長はそれだけ言うとしばらくの間頭を抱えてしまった。松本兵曹長は「はい」とだけ言って視線を下に落としたままである。運用長は

「それなのに、猪瀬は自分の部下の変化にも気がつかないとは。しかし、よく話してくれた松本君。私は絶対今の話は他言しないから安心したまえ。だが、岩井少尉は危うい橋を渡っているような気がしてならないな。君も危惧するように早まったことをしないよう気をつけねばならない。しかし彼女の決意は固そうだね?」

というと深いため息をついた。兵曹長は今度は運用長をしっかり見つめると

「はい。私は岩井少尉に『あなたは大和(ここ)には欠かせんおひとです、大事なお人ですけえ』言うたんですが・・・それが少尉のお心につたわっとるとええと思うんです。岩井少尉は部下からも、他分隊の人間からも尊敬され好かれとるお人ですけえ・・・うちは少尉を死なせとうないんです!」

と言ってその瞳いっぱいに涙を盛り上げた。そしてその涙は頬を伝い落ちた。

「それほど多くのものから慕われているのか、岩井少尉は」

運用長はそう言ってはたと言葉を切った。急に運用長の胸に何かが広がった。

「そうだ、松本兵曹長!それなら岩井少尉に責任ある立場を与えたらいいんだ、そうしたら彼女はもう妙なことを考えたりしないだろう。・・・兵曹長、私によい考えがあるんだ。さっそく岩井少尉に話してみるよ」

運用長はそういうと今度は嬉しげに笑って紅茶のカップを手に取り、紅茶をすすった。

松本兵曹長は今一つ何が何だか分からぬまま、ぽかんとしている――

     (次回に続きます)

 

           ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

内地へ向けて航海中の「女だらけの大和」、いろいろなことが起きています。

運用科の猪瀬分隊士、解任のようです。そしてその後任に、もしかしたら――!?

 

私の気に入りのご紹介です。

「飛龍」「加賀」甲板タオルマフラー。ギガントさん謹製、風合いがとてもよいタオルマフラーです^^。
DSCN1273.jpg DSCN1274.jpg

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● COMMENT ●

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
そうですよね、あの長さマフラーにするにぴったりですね!白いマフラー、というと飛行機の搭乗員の決意に漲った姿を思い出し、何とも言えないものがあります。
タオルマフはまさに内地の慰問品的味わいがありますよね♪最高のものだと思っています。
私もこれをまいて仕事しています!

『大和』のメンバー、さまざまな事情を抱えていますが…せっかくの内地帰還ですから笑顔で帰ってほしいですね!

寒いですがオスカーさん御身大切にお過ごしくださいね^^。

Re:

こんにちは。考えてみたら戦艦というか甲板ってタオルマフラーになるためのデザインではないかと(笑) 白いマフラーは粋で哀しいですが、タオルマフラーは温かく慰問袋や内地からの手紙のような…風邪は首からひくといいますからね。大変素晴らしい優れものです!
大和の面々にもいろんな事情がありますが、いつも温もりと笑顔にみちあふれていてほしいです。

すっとこさんへ

すっとこさんこんばんは!
こういう素晴らしいものを売っているんですよね~~^^もう嬉しいったらないんですよね!私はこういうものはすぐ!見つけてしまうのです!才能・・・(じゃねえよw)?

そうですね、いつの日かすっとこ姉さまとデートの暁にはこれを目印にいたしませう。
「今日は『飛龍』のマフラーね~!」
って感じで♪
ああその日が楽しみです。

ひゃー。

甲板マフラータオルぅぅぅぅ?
そげナブツがこのよに存在することすら知らなかった私。

いやぁ見張り員さん、ディープですわぁ!

いつか待ち合わせする時はこのマフラータオル、あ、
名前間違えてるわん、タオルマフラーでしたね。
このタオルマフラー首に巻いておいでくださいませ。
絶対他の人がしてるブツでないから見間違えようが
ないと思われます!


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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