2017-10

「女だらけの戦艦大和」・落し物あれこれ2 - 2013.12.08 Sun

野村副長と藤村少尉がまるで気でもふれたかのようにけたたましく笑っているのを目撃した水兵たちは「いけんわ。内地に久しぶりに帰れる思うて副長たちがおかしゅうなっとるわ。えらいことじゃ」と震えている――

 

やっとこさっとこ笑いを収めた二人は互いにしかつめらしい顔をして見つめあった後「うむっ!」とわけもなくうなずき合って、又歩き出した。時折居住区や厠を覗き込んでは整理整頓が出来ているか否か見て回る。

兵員たちの間に(まずいで、昼間っから抜き打ち巡検じゃ。他に分隊にも知らせてやれえ)と暗黙の了承で、<伝令>がひそかに走る。それを聞いた兵たちはあわてて片付けをし始める。だから副長たちが来てもあわてることなくやり過ごすことが出来る。副長も甲板士官もそうとは知らないから

「ほう、さすがだね。航海中でもこれ程きちんとしているとは大戦艦の名に恥じないね!」

と上機嫌である。

途中、マツコとトメキチが廊下を歩いているのに出くわした副長たちは

「おお、ハシビロくんとトメキチ。今日も元気だね」

と声をかけて歩き続ける。その二人をなぜか緊張の面持ちで見送るトメキチとマツコ。二匹はそっと顔を見合わせて(大丈夫かしら?)(大丈夫だと思うけど?)と瞳を見かわして逃げるようにその場を去っていく。

 

副長と藤村少尉はさらに下甲板に歩を進める。

と、「あ、あれはなんでしょう」と藤村少尉が走り出した。副長が「あ?どうしたね、また落し物かね?」と呑気な声を出した。藤村少尉は3メートルほど先のラッタルの下に走り込み、その場にかがんで何かを拾い上げた。すると藤村少尉は

「ウギャッ!なんだこれは」

と大声を上げた。副長はその少尉のそばに寄って行きながら

「どうしたんだね藤村さん?そんなに大声出しちゃぁはしたないでしょう」

と言ったが藤村少尉の前に立ってその手にしたものを見た副長はぎょっとして立ちすくんだ。まっ茶色に煮しめた様な布きれで、しかもたいへん妙なにおいを放っている。藤村少尉は顔色を青くして

「ど・・・どうしましょう副長。わたしこんな変なもの触っちゃいました・・・」

と言ってこの世の終わりのような顔をして副長を見た。副長はごくっと唾を飲んで覚悟を決め

「藤村君。わたしに貸しなさい」

と言ってその布切れを藤村から受け取り、右手の指先でつまんで検分した。あまりに汚くあまりに臭うので胸がむかつく。副長も藤村少尉も「グゥ・・・オエエッ!」と吐き気を催しながらの検分。藤村少尉が

「ただの布でしょうか?それにしては汚いですねえ」

と言って後ろを向いて「グヘエ!」と吐きそうになった。副長も左腕で鼻を隠しながら

「グフッ・・・ウウ・・・雑巾だろうか?それにしてはちょっと薄っぺらいなあ」

と言ってそれこそ覚悟を決めて両方の手の指先でそれをソロっと広げてみた。長い布地である・・・しかもなんだこれ、端っこに紐みたいなものが――

「ふ、ふんどしじゃないかこれええ!!」

副長は我を忘れて叫んでいた。ほとんど絶叫である。藤村少尉が頬に手を当てて「ギャアアア!触ってしまいましたあああ!!」とこれも絶叫。そしてハッと自分の手を見ると

「いやあああ!顔触っちまったあ!」

と叫んでその場に転倒。野村副長は汚い褌をその場に投げ捨てて「藤村君、早く、早く顔を洗いに行け!!」と怒鳴った。が慌てふためきその場を独楽のように回るだけの藤村少尉に業を煮やしたか副長は自分の防暑服のズボンのバンドに下げてあったおろしたての手拭いを取って、藤村少尉の顔をごしごし拭いた。

やっと人心地ついたのか、はあはあと息をついてその場にへたりこんだ藤村少尉に副長は「ひどい目に遭ったね――大丈夫?」と言ってその肩を優しくたたいた。藤村少尉はありがとうございました、はい、もう平気ですと言ってその場にうち捨てられた褌を忌々しげに睨みつけて

「一体だれのものでしょうね?まさか――野田兵曹のものじゃあないでしょうね」

と言って立ち上がった。野村副長は「まさか。野田兵曹はチェストも綺麗にしていたじゃないか。他の誰かのものじゃないかねえ?しかしこれはちょっと落とし主を探し出さないといけないな」というと騒ぎを聞きつけて遠巻きにしていた数名の兵に

「誰か、チンケースを持ってきてくれないかな」

と声をかけ、一人の兵曹があわてて走り出しやがて一つのチンケースを持ってきた。副長は「すまないね」と言ってその中に汚い褌を落とした。そして藤村少尉はその兵たちに

「このふんどしを落としていったものを見なかったか?」

と尋ねたが皆一様に首を横に振った。野村副長は

「落としたというものがいたり心当たりを見つけたら藤村少尉に連絡しなさい」

と言って先を急ぐ。

 

藤村少尉は中甲板に行きながら前を歩く副長に

「副長。なんだか今日は妙な日ですね、おかしな手紙が落ちてたり褌が落ちてたり。この先まだ何かあるような気がして私、正直怖いです。このでかいチンケースいっぱいにおかしなものが入ってしまうようになったらどうしましょう?」

と弱音を漏らした。副長はクスッと笑って

「藤村さんは随分弱気なんだねえ。もう何もあるわきゃないよ、これ以上何かあったらもう私いやだからね」

という。

中甲板は無事に済んだ。副長は行きあう兵たちの敬礼に返礼しながら「こういうふうに何事もなく行くと気分がいいねえ」と上機嫌である。しかし藤村少尉は多少びくつきながら

「そうですねえ、そう願いたいですねえ。でも私もう一度くらいなにかあるような気がしてならんのです」

とチンケースを持って言う。副長は

「ほんとに藤村さんは心配性だねえ。そんなじゃ身が持たないよ?」

とまるで松岡分隊長みたいな言い方をする。藤村少尉は少しきまり悪げに、はあまあそうですが・・・とブツブツ言いながら歩く。その手に下がったチンケースの中から妙なにおいがまだしてくる。藤村少尉は、手紙くらいならまだよかった、しかしこんな汚い腐ったような褌を拾うなんて今日はなんて運の悪い日なんだろう、最低の日じゃないか。わたしが海軍に入ってから本当に最低最悪の日だよと閉口している。

「二度あることは三度ある」

藤村少尉が小声でつぶやいたその時。

「あれ、なんだろう」

と野村副長が言って廊下の隅に走って何かを拾い上げた。藤村少尉は(ほら来た!又何かとんでもないものを拾ってしまった)と恐怖におののいた。

しかし副長は

「ねえ見てよ藤村さん。これはなかなかいいものじゃない?誰がこんなところに落としたのかしら?」

と言ってそれを藤村少尉の前に突き出した。

それは――。

   (次回に続きます)

 

       ・・・・・・・・・・・・・・・

手紙のあとは褌と来ましたか・・・「女だらけの大和」では褌の登場回数が多いような気がしますね。それはひとえに筆者が好きだからです(麻生分隊士・談)。

そんなことはございませんが、腐った?褌はごめんですね。そして今度は何を拾ったのでしょう副長。いいもの、とは言いますが本当にいものなのでしょうか。次回をご期待下さい!

 

そして本日十二月八日は「日米開戦の日」、言わずと知れた真珠湾攻撃の日です。あれから七十二年です。戦争の是非はもう、言うまでもないですがあの戦争を懸命にアメリカという巨大国家と戦いそして散華して行った多くの将兵の皆さんに心をはせたいと思います。

この辺に関しては後ほど別記事を書きたいと思います。

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● COMMENT ●

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
そうでした三度目の正直ともいいましたね!!
こんなへんなものがあっちゃこっちゃに落ちている戦艦、正直大丈夫なんか??と思いますがそこは物語ですので・・・
でもあんまりなことをしでかすと副長と甲板士官の粛清が待っているかも・・・ゾーッ!!

今日は心地よい疲れです^^、このあとゆっくり風呂に入ってきます!

鍵コメさんへ

鍵コメさんこんばんは!

日本の現代史にとって特別な意味を持つ日だと思います。
この日も忘れないでほしいですね。

72年前の今日散華した英霊に合掌。

No title

二度あることは三度ある。三度目の正直とも言います。
奇妙な手紙とくさいフンドシ。落とし物にしては不用心な。大らかと言えば洵に大らかな大戦艦ですね。
さてこの続きが楽しみです。

今日は佳き日でしたか。余韻に浸りながらゆっくりと休んで下さいね。

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すっとこさんへ

すっとこさんこんばんは!
なんてことでしょうか!!申し訳ございません!!
さっそくテンプレを変更してみました、これでいかがでしょうか?

リトライしてみてくださいませ!!

まっくら闇で!

「お~~~~い」
画面右半分が真っ暗で
字が読めんのは わたしだけ?
わたしのPCの不具合?

どうにかしてちょーーーーだいっ!


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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