「女だらけの戦艦大和」・二航戦の人々<蒼龍>4

「女だらけの空母」・蒼龍も、飛龍と同じく横須賀にその身を休めている――

 

「やったあ、いよいよ内地だよ」

と大騒ぎしているのは『蒼龍』主計科烹炊員の二宮水兵長や櫻井水兵長である。彼女たちはもう、富士山が遠望でき始めた時から「内地内地!上陸上陸、休暇休暇~!」と騒いで班長に一発どやされたばかりである。班長の石島兵曹は怖い顔で腕を組んで彼女らをにらむと

「貴様ら、なにをそんなに浮足立つとる?まだまだ入渠してからやることもあるんだ、そんなにすぐには上陸はできないぞ。休暇だぁ?貴様らなんかにやる休暇はない!」

と怒鳴った。とたんに二宮・櫻井両水兵長の顔から生気が消え、班長にすがるようにして

「すみませんごめんなさい班長。わたしたちが間違っていました。そうですよね上陸だの休暇だのって浮かれちゃあいけませんよね、本当にすみません!!――ですから班長、休暇なしなんておっしゃらないでください~」

と訴えた。石島班長はあきれたような顔をした後で二人のすがる手を振り払うと

「わかったよ。だったらちゃんと態度で示せ。わかったか、ちゃんとできなきゃほんとに休暇なしだからな」

というと歩み去っていった。それをそばで見ていた城島兵曹が二人の頭を順にひっぱたくと

「バーカ。いい加減にしとけえ」

と言って笑ってこれも歩み去る。二人は「痛ーい・・・」と言ってはたかれた頭に手をやってうめくと「さあ、昼食の準備に行こう」と烹炊所へと歩く。

そして整備員の大野・相葉の両水兵長も97艦爆の整備をしながら「ああ早く上陸したいなあ、で、あそこに行きたいよね~」などと私語を交わしている。そこに艦爆の搭乗員の一人早宮大尉が三種軍装の姿で通りかかった。でも頭には飛行帽。彼女は艦内ではほとんど飛行帽をかぶっている。

この早宮大尉は普段から下士官であろうが兵隊であろうが階級に関係なく、分け隔てなく気さくに話しかけてくれる気のいい大尉である。その大尉が、

「え?あそこってどこよ?ねえ教えてよ~」

と言って二人にまとわりつく。閉口した大野水兵長が「はあ、横須賀の遊郭へ行くんです。なじみが待ってるんで・・・ヘヘヘ」と愛想笑いをすると早宮大尉はとてつもなくでかい声で

「ユーカク―!?君たちそんな金がよくあるねえ?私なんてさ、給料を家に仕送りしなきゃいけないから遊ぶ金もままならないってのにさあ~。いいなあ、君たちいいとこのお嬢ちゃんなんでしょう?そっか、だから家からおこづかいもらってその金で遊んでるなあ~?、いいなあ、でもね、君たち。たまには給料の一部でもいいから親御さんに『はいこれおこづかいです。好きに使ってくださいね』って渡しなさいよ~。お父さんもお母さんも泣いて喜ぶよ?ユーカクに行く金の半分でもそうしたらあ?」

と言い放ったので二人はとてもあわてた。周囲を見回して、大尉に飛びついて黙らせ「早宮大尉・・・『遊郭』なんてこんな場所でデカイ声をあげたらいけませんよ」とたしなめた。早宮大尉は首をかしげて

「え?なんで?どうしてユーカクがいけないのさあ?だって大概の人が行くんでしょう?ユーカク。そしていい思いをするんでしょう?君たちもそこの常連なら、何もいまさら隠さなくたっていいじゃなーい、フフフ!」

と最後は笑うと「じゃ、私の愛機の手入れをヨロチクねえ~」というと半長靴の足取りも軽く走ってゆく。スキップをしているようだ。

「・・なんなんだよあの人。いつもより気分が高まってるじゃねえの?」

相葉水兵長が言い、大野水兵長も「ああ・・・なんだかよくわかんない」と答える。そこに飯田房子中佐が三種軍装の姿でやってきて二人の前に来かかった。あわてて敬礼する整備水長二人に飯田中佐は返礼し、

早宮大尉が去っていった方をそっと指差すと

「あなたたちは知らなかった?早宮大尉は結婚が早かったから子供さんがいるんだよ。もう四つか五つじゃなかったかな?そのお子さんを御実家に預けての勤務だからね、給料はほとんどすべてお子さんの養育料として御実家に送っているらしいよ。大変だよねえ、子供さんがあってじゃ」

と教えてくれた。

「知らなかったであります。そうですか、それでは早宮大尉は早く休暇が欲しいでしょうね」

大野水兵長がポツリというと飯田中佐もうなずき「だからね、彼女みたいな子持ちの将兵は独身の人よりちょっと長く休暇をもらうんだよ。だってたまに内地に帰ったときくらい親として子供に接していたいものねえ」と言って少し湿った声になった。部下の身上を思いやっての飯田中佐の言葉である。こういうところがこの飯田中佐の良いところである。

いつも部下の様子――家庭環境などを含めて――を思いやってあれこれ心を砕いている。それを十分知っている大野水兵長や相葉水兵長は尊敬のまなざしで飯田中佐を見つめ、中佐は

「あなたたちも上陸や休暇に備えて体調を整えておきなさいね、具合が悪くなったらせっかくの上陸も休暇もつまらないものになるからね」

と優しく注意を促すと「では」と言って去ってゆく。その中佐に敬礼しながら二人は(かっこいい!飯田中佐、みんなのあこがれるのも当然だね)と思う。

そしてまた整備の手を動かすのであった。

 

飛行甲板上では、『蒼竜飛行隊』のメンバー数名が座り込んでおしゃべりに夢中である。

親方こと大島上飛曹が

「久々の内地!上陸や休暇も近いが、みんなは休暇中何をしたい・」

と聞いてきた。今日は皆、飛行甲板の掃除をしようと集まりそのあとなので事業服である。村上一

上飛曹がウーンと考えてから

「私はねえ、家に帰ってその周辺の写真を取って歩こうかなと思ってるよ。なかなか帰れないから写真に撮っておこうと思うの」

といい、大島上飛曹は「ああ、いいねえ。アルバムを開けばそこにはいつも故郷・・だねえ」とほほ笑み黒沢上飛曹は

「私は今までためておいた詩に曲をつけようかな。もうずいぶんたまってるから」

と言った。黒沢上飛曹の特技は作詞作曲であるが中でも即興曲は仲間内でたいへん面白がられ、何かというと「黒沢兵曹、歌を歌ってください!」と水を向けられる。そのたびに黒沢兵曹は「しょーがないなあ」とぼやいて見せるが実は内心とてもうれしがって即興曲を歌う。時には指揮官や隊長クラスまでが集まってきて手を叩いて大喜びするくらいである。

「あなたたちは?」と大島兵曹が井本一飛曹に尋ねると井本兵曹は

「私は山に登りたいですね。海は大好きですが時に山に無性に登りたくなるんです。・・・私戦争おわったら外国の高い山に登ろうかと思ってます」

と言ってその太い眉毛で笑った。

内村一飛曹は

「私は親戚一同集めて酒盛りですね。普段会えない親戚連中と集まってワイワイやりたいです!うちの親戚芸達者が多いので愉快ですよ」

と言う。大島兵曹は「ふーん、それは一度混ぜてもらいたいね。どんな芸が出て来るんだか」と興味があるようだ。そして宮川一飛曹は

「私は祭り!村の祭りは無論のこと、周囲の村の祭りにも行ってみたいですね!祭りはわたしの主成分、欠かせないですよ。外地ではああいう祭りがないのが寂しいですよ。どうしてか外地の祭りは火を吹いてみたり牛の背中に乗って走って順番を競ったり・・・とちょっと私には理解不能なものばっかですからね、日本の祭りを堪能して来ますよ」

と言って笑う。その場の皆も大きな声で笑った。

その声が艦橋内にいた柳本艦長・小原副長の耳まで届く。柳本柳子艦長は

「若いものはいいねえ、いつでも溌剌としているよ。横須賀に入ったらなるべく早めに上陸や休暇を許してあげようね。当分作戦行動もないようだから各自ゆっくりと休ませたいね。わたしも久しぶりに自宅に帰ろうかなと思うよ」

と言って小原副長はうなずいた、そして

「そうですね、今度は艦体に特殊塗料を塗って何やら飛行甲板に特別な装置をつけるようです。ですから今回の内地停泊は長いものになりますよ。

で?艦長はご自宅にお帰りになる時はまた例のことを?」

というといたずらっぽく微笑んで艦長を見つめた。

柳本柳子艦長はこれもいたずらぽく微笑むと

「もちろん!あれをやらなきゃ帰ってきた意味がないもんね」

といい、副長は

「やはり。でもくれぐれもお気をつけて下さいね」

といい、柳本艦長は平気平気、私は豪胆な海軍軍人だよと言って笑い、二人は主計長の運んできた熱い紅茶をすすったのだった。

 (次回に続きます)

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今回からは「女だらけの蒼龍」が舞台です。

久々の内地で心弾む『蒼龍』の乗組員です。行きたいところ、やりたいこと、見たいもの・・・たくさんありますね。たくさんの希望がかなうといいですね。

で、柳本艦長はいったい何をしようというのでしょうか?次回をお楽しみください。

「艦これ」蒼龍(画像お借りしました)。カワユス!

 蒼龍


そして今日母と日本橋に行きその帰りに東京駅で「駅弁」を購入しました。どれもおいしいですね^^。
DSCN1086.jpg

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Comments 6

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見張り員  
まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
意味深な会話ですがこれで大したことじゃなかったら怒り心頭~~ですねw。
それでもいろんな会話が飛び出して、まるで女学校のような空母蒼龍艦上です。さて、柳本艦長何をするのでしょうか??

母とはふた月ほど会っていませんでした。おかげさまで今のところは体調も落ち着いているようです。日本橋高島屋の中に「特別食堂」というのがあるのですがそこで食事をし、長い間話をしました。
来月には娘の成人式の写真の前撮りの着物の試着でまた会う予定です。

駅弁は全部で7つありました。
私はカキ飯を食べました。で、翌日残っていた牛飯を食べたので4個ではないものの2つは食べてしまいました!
でも家族には一つずつわたりました・・www!

2013/10/15 (Tue) 20:59 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
見張り員">
見張り員  
荒野鷹虎さんへ

荒野鷹虎さんこんばんは!
ブログ復活おめでとうございます。ますますのご活躍をお祈りいたしております。

今の社会もある意味において戦場ですね。
若い人はその気はあっても働く場もなく本当にかわいそうです。雇用対策をどうにかしないと日本の経済も何もかもだめになりそうな気がしております。外国人労働者を雇い入れるのもいいですがそれよりまず日本国民の雇用をしっかりと補償すべきですね。
高齢者には高齢者の不安があり・・・浜の真砂は尽きるとも、という言葉が頭をよぎります。

2013/10/15 (Tue) 20:50 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
まろゆーろ  

「例のことを??」
「あれをやらなきゃ帰ってきた意味がないもんね」
またまた意味深な会話が飛び出ていますね。
艦上でみんなが集まっては色々な話に花が咲いて穏やかできれいですね。ホント、さえずりですね。

お母さまとは随分会っていなかったのではないでしょうか。お母様の体調は如何ですか。日本橋デート。誰にも憚ることのないおふたりの街歩きが目に浮かびます。
心優しい見張り員さん。きっと存分な親孝行をなさったのではと思っています。
駅弁は4個とも全部召し上がったとか。そんな訳ないですよね。家に帰れば嫁、妻、母ですもん。

2013/10/15 (Tue) 08:54 | EDIT | REPLY |   
荒野鷹虎  
見張り員さんへ!!

お陰さまで最悪を免れ又ブログの復活を致しました。
今後ともよろしくお願いたします。

ノーベル賞が春樹さんにならなかったことを残念に思いますねー。

私はある意味で戦地にいるような心境です。戦争の辛さと悲惨を身にしみています。社会もまるで戦地にいる様なものですねー。若者の苦労を見ると本当に経済戦争の犠牲者だと思いますねー。渇≫高齢者も同じ運命の木気が致します。泣き)。

2013/10/14 (Mon) 21:22 | EDIT | REPLY |   
見張り員">
見張り員  
オスカーさんへ:

オスカーさんこんにちは!
このところ「アレ」「あれ」という語がしきりに出てくる「女だらけの海軍」でございます・・・(^_^;)。
女のこのさえずりは平和な感じでいいですね。
そして蒼龍艦長は一体何をあれしたいのでしょうか・・・

8月の休暇以来の母との再会でした。
一緒に肩を並べて歩いて「こんなに小さい人だったかな」と思うほど母は小さくなっていました。歳月人を待たずという言葉が身に染む昨今となりました。

駅弁美味しかったですよ~。東京駅構内の「駅弁 祭」というお店で買いました!東京駅にいらしたらぜひ。

2013/10/14 (Mon) 11:54 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
オスカー  
Re:

おはようございます。アレってナニナニ?と朝からあんなことやこんなことに想像を巡らせております。女の子たちのたわいのないおしゃべりっていいですよね。華がありますもん!
母上さまと日本橋にお出掛け、ステキな秋の1日でしたね~駅弁も美味しそう!
気温が下がりグッと秋めいてきました。ゆっくりのんびり過ごせますように。

2013/10/14 (Mon) 07:00 | EDIT | REPLY |   

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女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?
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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)