「女だらけの戦艦大和」・二航戦の人々<飛龍>3

女だらけの空母『飛龍』では上陸組の第一陣を見送ってから山口たも・二航戦司令官が艦を降りて行った――

 

それを見て「やったー、これでしばらくアレをしなくって済むぞ」と喜んだのは烹炊所員たち。彼女たちは正直、山口司令官の大食いにはマイっていたからだ・・・と言っても「え?山口たもさんは痩身に成功してから大食いはやめたんじゃないの?」と思われる向きもあると思う。

確かに「ご飯の」大食いはやめたのだ。軍医長からのアドバイスにも「炭水化物の取り過ぎはふとる元ですからそれはなるべくお控えください。その代わりにおかず、サラダなどを食べて下さいね」とあって司令官は米の飯は減らしたがその分、おかず類は普通の1・5倍ほど多くとることとなった。

それでも「よく噛んで、一口三十回!」という加来艦長からのアドバイスを守っているので米の飯が少なくても空腹感はない。

しかし。

「司令官のサラダの量、まるで馬の飼い葉みたいだよ。半端な量じゃあないよ。それにおかずだって他のより多めなんだから大変だよねえ」

ということで烹炊員泣かせのようである。そしてさらに、

「しかもだよ、揚げ物はだめ。焼いた肉でも油は極力控えて味噌汁の油揚げは油抜きして・・・だからこれ結構気を使うんだよねえ」

とため息つく始末。その司令官がしばらくの間、艦を降りてくれるときたら烹炊員たちは小躍りしたいほど嬉しいことである。

と言っても司令官そのものが嫌いとか鬱陶しいというのではない。「山口司令官は部下のことも考えてくれるし慈愛に満ちたお母さんみたいなおひとです」と尊敬している。

「大変と言えば大変ですけどね・・・でも司令官がしばらくいらっしゃらないとなるとこれはこれでまた寂しいものですよね」

と烹炊員は言って、在艦の将兵の為の食事作りにいそしむのであった。つまり、彼女らの言うアレとは山口司令官の食事の準備のこと。

そしてまたもう一人、「アレをしなくっていいのはいいけど、さみしいなあ」と言っている水兵嬢が一人。彼女は司令官従兵を仰せつかっている水兵長嬢だが

「アレッていえばアレだよ。司令官の服のアイロンがけとかベッドの塵を払ったりとか洗濯物をしたりとかよ。司令官はそれをした後とかに必ずおいしいお菓子をくれたりするのだけど・・・司令官がしばらくいらっしゃらないと楽は楽だけどお菓子がもらえないからつまんないな」

とのこと。

 

さて、件の山口たもさんは上陸場に上がってから海軍省から出迎えの自動車に乗って東京へと向かった。久々の日本の秋の風景に、たもの心は弾んだ。車窓を流れる風景にたもは、ふと四人の子供たちの顔を重ねていた。

(みんな元気だろうか?風邪などひいていないだろうか)

彼女の胸にほんのり温かいものが広がる。海軍省での仕事をさっさと済まして自宅に急いで帰りたいたもである。

そして、たもは海軍省での仕事を必要なだけ済ますと自宅へと向かった。この時も海軍省の自動車を使ってである。

どのくらい揺られたか、少しうたた寝したたもは運転手の「山口少将。ご自宅に到着しました」の声にハッと目を覚ました。そこには懐かしい自宅の門がある。たもはおもわず、「ああ!」と声をあげていた。一体この前帰ってきたのはいつだったろうか・・・

運転手がたもの座る側のドアを開け、たもは車から降り立った。すると玄関の扉ががらりと開くと一番下の子供が駆けだしてきた。次に三人の子供が、そしてたもの母親が。

たもはまず、運転手に礼を言うとやがて自動車は走り去り、そばにはたもの一家だけになった。嬉しげに、しかし久しぶりの再会にちょっとはにかんだような表情の子供たちをたもは数瞬の間見つめると、両手を広げて

「ただ今!」

と言った。とたんに「おかあさん!」「おかえりなさい」と叫んでその胸に飛び込んでゆく子供たち。たもの頭から軍帽が地面に落ちた。

その四人をしっかりその胸で受け止めたたもの頬に突然、滂沱として涙が流れだした。長女が「・・・お母さん、どうしたの?」と顔をあげて訪ね、三番目の娘が「痛かった?おかあさん?」と尋ねるのへたもは首を横に振って

「痛くない。平気だよ・・・みんながあんまり大きくなって賢くなっているからお母さんは嬉しくて」

といいさらに四人を抱きしめ、感涙にむせんだ。それを少し離れて見守るたもの母の瞳にも、あふれんばかりに涙がたたえられている。

 

 

横須賀の宿の離れでは、圓藤大尉と<旦那>の愛の行為が続いている。

圓藤大尉は旦那の願いを叶えんと、彼自身を手に取りそっと撫でまわした。旦那が大きく息をつく、それを聞いてから大尉はそれを自分の舌で包み込んだ。柔らかく、なぞるように。そして彼自身をくわえるとその根元を片手でしごきながら優しく、時に激しく吸い上げた。

いつも、訓練の際に若い予科練出身者たちに言って聞かせている「いいか、操縦桿を扱う時は男の<せがれ>をつかむように優しく扱え?」という自らの言葉が頭によみがえる。

その言葉の通りに大尉は彼のものを優しくつかんでしごく。

「ヤエさん・・・いい、いいよ素敵だよ・・・」

旦那の快感にうめく声を聞きながら圓藤大尉は至福の時を迎えていた――

 

一体何時間そんなことをしていたのだろうか、圓藤大尉と旦那はすっかり疲れ果てて二人抱き合うと深い眠りについていた。圓藤大尉の今までの緊張――大小、さまざまな航空戦――がこれで一気に解けて疲れがどっと出ていた。一緒にいると安心できる人との濃厚な逢瀬は大尉の心の堅くなったかさぶたをゆっくり解きほぐしてくれた。

 

 

自宅に戻った山口たもは、子供たちから「おかあさん」と呼ばれる嬉しさをかみしめていた。

(私は、やはり『お母さん』なんだな。当たり前なのにこんなにうれしい。ああ・・・この生活がずっと続いたらいいのに。・・・でももう少し頑張って、その日を一刻も早く!)

そう固く心に誓うたもであった。

 

そして。

司令官不在の『飛龍』艦内では加来艦長が一人飛行甲板を歩きつつ

(ああ、司令官がいないとつまらないなあ。艦内の兵も半分近く上陸だしなあ、これで休暇が入ったらもっと艦内寂しくなるなあ・・・私も早いところ休暇が欲しいよ)

と思っている。

その頬を、内地の初秋の風がそっと撫でて去っていった――

    (次回に続きます)

 

           ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

話があちこちすっ飛んでは帰ってくるような書き方でごめんなさい。

それぞれの心模様でした。内地の秋を堪能してほしいですね、圓藤大尉・山口司令官・加来艦長。

 

秋の夕日です。早く涼しくならないかなあ~。
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Comments 6

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見張り員  
matsuyama さんへ

matsuyama さんこんばんは!
たもさん、普段は厳しい司令官ですがおうちに帰ればよき母よき娘です^^。

昔――戦前の家庭では男親は本当に厳格だったようでそれは今は母や、祖母の話からもよくわかりました。厳格というのはただ単に厳しいというだけではなさそうですね。
けじめをいかにつけられるかという感じがします。
最近は男性にも女性にも「けじめ」のない人が多くなり躾が崩壊してしまった感が否めません。家庭をピリッと締める男性に厳格さが亡くなった結果が今の日本のような気がしますね。
困ったものです・・・タメイキ。

2013/10/12 (Sat) 22:13 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
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見張り員  
まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
アレ。
さまざまのあれでした^^。でも根底に流れるものは人を思いいつくしむ心です。

私本当にHシーンをかくの、苦手というか・・恥ずかしくってダメなんですよね(^^ゞ・・・一人のノートなら何でも書けるのですがブログだとちょっと控えてしまいます。
でもまろにいさまにそうおっしゃっていただけると嬉しいです、これからもこんな感じで行きますね^^。

たもさん。
本物の多聞さんも家族との別れがとてもお辛かったようです。当たり前ですが軍人さんは一度出て行ったらあとのことはわかりませんから・・・最後、ミッドウエー作戦に出る前の多聞さんのご様子は何か胸に迫るものがあります。
我が「たもさん」も次の任務が始まるまで思い切り「お母さん」として生きてほしいものですね。

2013/10/12 (Sat) 22:06 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
matsuyama  

鬼の司令官でもひとたび自宅に帰ると良きお母さんになるんですね。
子供の母親と司令官の二役。優しい母親でいられるのは職場の厳しさがあるからなのでしょうね。
昔の男親の場合、仕事は厳しかったうえ、自宅に帰ってからも厳格さはありました。子供が父親に寄り付かなかったのも分かります。
今はどうなんでしょう。父親の厳格さが無くなり、子供は友達感覚に思っているような気がします。躾ができなくなったために、子供は社会ルールを怠り、社会常識を逸脱してしまいがちです。
困った世の中になってきましたね。
あれっ、話が脱線してしまったようですね。

2013/10/12 (Sat) 20:47 | EDIT | REPLY |   
まろゆーろ  

あまざまな思惑のアレでしたね。留守して幸せな人、寂しがる人、それぞれの思いがあるから人は生きていられるのでしょうか。でもみんな心が美しい。

おぉ、燃えておりますね。
なんとも艶めかしい情景に思わず生唾を二度三度呑み込みました。でも不思議といやらしさがないのが見張り員さんの筆の良さ。褒めてつかわすね。

たも母さん。会えるのは一時の幸せ、でもまたすぐに任務に。生木を裂くような親子の別れほどつらいものはないですね。存分にお母さんをしてもらいたいです。

2013/10/12 (Sat) 17:34 | EDIT | REPLY |   
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見張り員  
オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
燃える秋・・・でございます。
まあ今回はちょっとかなり相当恥ずかしい描写もございましたが・・・(^_^;)まあ私のこれが性癖と思し召してw。

まあ昨日今日と暑かったですね。本当に体調の管理難しく、更年期のオバサンには辛い日々です(-_-;)。でも栗を食べたり梨をつまんだりして秋を楽しんでおります!
オスカーさんも御身大切になさってね^^。

2013/10/11 (Fri) 21:50 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
オスカー  
Re:

こんにちは。燃える秋・萌える秋ですね~木々の葉がいろんな色に染まっていくように、おとめ心も目の前の人たちやいない人たちを思って複雑でまた美しい心の錦絵を描くのですね~それを言葉にする見張り員さま!今回もサービスシーンをありがとうございます(笑)
夏のような日があったり秋らしい日があったり…体調管理が難しいですが、秋の味覚をお客さまだけでなく見張り員さまも楽しんで下さいね。たくさん栄養とって下さい!

2013/10/11 (Fri) 08:44 | EDIT | REPLY |   

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女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?
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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
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(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)