2017-10

「女だらけの戦艦大和」・まさか!であってほしいのよ - 2013.09.29 Sun

「女だらけの帝国海軍軍人」の娘たちを持つ、ふた親の心配はいつの日も尽きることがない――

 

壱・於、「蒼龍飛行隊」飯田房子中佐の郷里

「蒼龍」飛行隊の「飯田中佐の実家では中佐の手紙を前にした父と母がため息をついている。母は父に湯呑を差し出しつつ

「困りましたねえお父さん。房子はまた、見合い話を蹴るつもりですよ」

と言ってもう一度深いため息をついた。中佐の父親は受け取った湯呑を両掌でくるむようにしてふーっと息をついた。そして

「そうだなあ、この文面からしたら<お断り>のようだな。房子のようにえらくなってあちこちで戦果もあげるような娘だからあちこちから見合いの話がかかってそれはいいんだが肝心の本人に全くその気がないというのは困ったものだ。それとも――房子には心に決めた誰かがいるのかね?母さん何か聞いてないかね?」

と妻を見た。中佐の母はかぶりを振って「いいえ、聞いてませんよ」と答えた。二人の前の座卓には、見合い写真が積まれている。それを見ながら父親は

「いったい房子な何が不満なんだろう、何が不満で見合いをしないのだろう・・・困った奴だ」

と言って茶をグイ、とあおった。母親は

「どんなに素敵だと思う方の写真を送っても『今は軍務に忙しい』とか『わたしの趣味ではないから』と言って断ってくるんですよ。それに房子の写真のなるべく新しいものを送って頂戴って言っても送ってこないし。もう私はどうしたらいいか、わかりませんよ」

と言って心底困った表情をした。父親は湯呑をトン、と音を点てて卓上に置くと咳払いを一回してから

「母さん、今度房のやつが帰ってきたら有無を言わさず見合いさせよう。帰ってきたらすぐ見合いの場に連れてゆけるようにしたらいい。一度見合いを経験したらまた違ってくるかもしれないからな」

と提案した。強引なやり方ではあるが、仕方がない。母も

「そうですねえお父さん。房さんだってそろそろ身を固めていいころですものねえ。そうしましょうか」

と賛成した。

「よし、じゃあ母さん。房が帰ってくるという連絡を受けたらまずこの人からにしよう・・・」

父親はそう言って一番上に積んである写真の男性を母親の前に置いた。はい、と母親が言ったそのあと、父親は数瞬の間考え込んだ。そして不意に妻を見るなり

「母さん。まさか房の奴――!」

 

弐・於、「蒼龍飛行隊」大島一飛曹の郷里

「蒼龍」飛行隊・大島一飛曹の実家でも同じような話が展開されている。

一飛曹の母親は畑仕事に精を出している、向こうでは夫がこれも畑にクワを入れて耕している。自分の少し後ろでは長男(一飛曹の兄)夫婦が土をならしている。

そろそろお昼だ。一飛曹の母親は「そろそろお昼にするかねえ」と声を投げ、長男の妻が「お母さん、それじゃ支度してきます」と言って家へと小走りに走り出す。そのあとを母親も追って行く。

皆が居間にそろい、「いただきます」と箸を取る。漬物に味噌汁、ごはんだけの質素な昼食ではあるが労働のあとでは大変に美味なものである。その昼食の最中、長男が唐突に言いだしたのだ。

「なあ、そういやあみゆきはどうしてるのかなあ」

母がご飯を飲み込んでから

「随分前だけど手紙が来たよ?見合いの話は断って下さい、ってそれだけだけど」

という。父親が「はあ?見合いを断わるって・・・前に帰って来た時は乗り気だったじゃないか?なんで急に断るんだね?」とわけがわからないと言った表情をした。兄の妻が

「みぃちゃんも難しいお年頃なんですよ・・・本当は嬉しいんでしょうけどそれを表に出すとお仲間さんに恥ずかしいと思うんじゃないでしょうかねえ」

と一飛曹の為にとりなすような形で口を挟んだ。母親が嫁の顔を見つめて「ああ、そういうこともあるかねえ」とつぶやいた。しかし父親は

「みゆきに限ってそんなことがあるはずがないぞ、あんな関取みたいな体しやがって恥ずかしいもへったくれもあるもんかい」

といい皆は大笑いしてしまった。「それでも、」と兄嫁が再び話し始める。「みぃちゃんは戦闘機のパイロットですもの、自分との釣り合いを考えてるんじゃないかしらねえ?みぃちゃんはなかなか考え深い子だから」

兄が妻の顔を見つめて

「あいつが考え深いかねえ?・・・まああいつももういっぱしの戦闘機乗りならちょっとやそっとの相手じゃ満足行かんかもしれないな」

といい二人はうなずき合う。

と、父親がひときわ大きな声で叫んだ。

「まさか・・・まさかみゆきの奴―ー!」

 

参・於、『大和』副長野村中佐の郷里

『大和』副長の野村中佐の実家では母親がたくさんの封筒に入ったものを吟味中である。

「これは・・・だめ。こっちは・・・まあ良し。これは・・・これならいいわ!これは最後の隠し玉」

などとひとり楽しげに作業中。何かと言えば「次子さんのお見合い相手ですよ」。副長は以前、見合いで手痛い目にあってから「見合いなんか金輪際しませんからね。写真なんかいくら送ってきても無駄ですから。わたしは見ませんからね、いいですね!?」と怖いくらい念を押して出かけて行ったのだった。が、母親として

「はいそうですか、とはいきませんものねえ」

と言ってホホホ、と高笑いしてあちこちに副長の写真を配りまくりそして男性側からも写真をもらいまくった。そして身上書を吟味し<軍服を着ていても違和感等感じない>男性に限って選択しているのだった。

「だって、また次子さんがショックを受けたらもう一生独身でいる、とか言い出すんじゃないかと思って。そんなこと私耐えられないわ、娘はやっぱりきれいなうちにお嫁に行かなきゃ!」

母親は使命感のようなものに支配されている感じさえ受ける。そんな妻を少しあきれたように見つめる夫は、

「まあ待て、お前がそんなムキになってどうするんだね?これは次子の問題だろうが。それに、もしかしたら次子はどこかに思う人がいるんじゃないのかね?そのへんも含めて今度、あの子が帰ってきたら聞いてみたらいいじゃないか、話はそれからでも遅くはないだろう?」

と言ってやった。しかし妻は「だって!」と頬を膨らませて夫を軽くにらんだ。

「あなたはいつだってそう、次子のことなんかあまり考えてらっしゃらないでしょう?もし、もし次子が嫁ぎ遅れてしまったらあなたいったい」

急に言葉が途切れ、夫が妻をよく見ればこれが涙にむせんでいるのだ。彼は驚き呆れつつも

「僕だって次子が、と思うと心中穏やかではないよ無論。その見合い写真の中からまずお前がいいと思う人を選んで僕に見せなさい。二人で選べば間違いなかろう」

と言って妻の選んだ写真と身上書を手に取った。

とその時副長の父親は不意に呟いた、

「まさか・・・まさか次子は――!」

 

 飯田中佐の父・大島一飛曹の父・野村中佐の父は同じことを叫んでいた。

「まさか、まさか、・・・まさか

         房子は

         みゆきは

         次子は

      !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

艦の中の女将兵に惚れてるんじゃないだろうなあーー!?

 

            ・・・・・・・・・・・・・・・

一つは――当たりです。

どうしても親というものは娘の結婚に関しては熱くなるものなのですね。最近でこそあまり結婚年齢にあれこれ言わなくなった世間ではありますがわたしたちのころ「女はクリスマスケーキ」と言われていました。つまり――二十四日までは皆我も我もと殺到して高くても売れますが二十六日まで売れ残れば投げ売りされると。

ひどい言われようですよね。わたしは二十五日のケーキでしたが「美味い」と言ってもらえた気はしていません。義弟の嫁は四十でこのうちに来ましたが皆が「美味い」と言ってくれて幸せなあと思います。ケーキはやはり鮮度よりまず見目形なのでしょうね。わたしはもっと、きれいな顔で生まれたかったよ~~だ。

 

さあ・・・飯田中佐も大島一飛曹も野村中佐も、帰国後大変そうですね。

 

結婚。やはりいろいろ大変だ。DSCN1083.jpg


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● COMMENT ●

matsuyama さんへ

matsuyama さんこんばんは!
そうそう、世話焼きばあさんww!
そういう人がいなくなった昨今本当に結婚年齢が上がってしまいましたね。女性でも40が初婚というのも珍しくなくなりました。
そしてそれに伴う少子化。
この先の日本が心配になりますよね・・・。

鍵コメさんへ

鍵コメさんこんばんは!
指輪、結婚して一年ほどで外してしまったんですよ、仕事に邪魔でw。婚約~のほうは友人やいとこの結婚式などにはしていますが・・・(^_^;).
ダイヤはいずれネックレスか何かにしちゃおうかいな、と思っています。

例の件、私も気にかかっています・・・ここのところいろいろあって、とどめのような気がしています。運命とはいえ・・・やはりどんなお気持ちかと思うと。

お互い身体には気をつけましょうね、また台風が来て明日は雨でしょうか・・・。

昔は結婚といえばお見合いでしたものね。田舎には甲斐甲斐しい世話役がいたもんです。年頃になると写真を持ち歩いて、結びつけようと躍起になってるようでした。だから昔の女性の結婚適齢期は若かったように思います。
ところが世話役がいなくなり、恋愛が自由になってきた今の時代は結婚適齢期が高いのなんの。適齢期どころか一生独身という女性すらいますからね。独身おばさんなんか大勢います。
少子高齢化もこんなところからしわ寄せが来るんでしょうね。困ったもんです。

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まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
そうなんです、これは私の婚約&結婚指輪です!
なんとまろにいさまがしてらしたものとそっくりとは!!奇遇ですねえ!
これは式場で購入したもので、デザインが気に入って買いました。あれから早、25年です。

女というものは「この年で結婚したい」という願望があるんですよね。高校の同級生なんか卒業アルバムに「21で結婚します」なんて書いてましたが、結局結婚したのは40でしたもんねえ(^_^;)。
こればっかりは御縁のものですからね、取らぬタヌキになりかねません。変な宣言はしない方がいいですよね。

『大和』他の艦艇・部隊の女将兵もお年頃です♡ 親の方が焦りまくっていますが本人たちは一向に・・のようです(^^ゞ

早いものでもう、10月。時の流れについてゆけませんww。
こちらこそいろいろありがとうございます、また今月もどうぞよろしくお願いします!

こっこの婚約指輪と結婚指輪は見張り員さんのものでしょうか。結婚指輪、僕がしていたのにそっくりで驚きました。離婚後指に食い込んでいたのでデパートの宝石売り場でペンチでぶち切ってもらいました。10数年ぶりに懐かしい思いがしています。

そう言えば元嫁も24歳で結婚したいと言っていました。叶えてやりましたとも。24歳と3ヶ月。

大和をはじめ皆さん適齢期ですね。親の焦りが堪える年頃ということでしょうか。

9月も今日で終わりですね。今月もさまざまに励まして下さってありがとうございました。10月も佳い月になりますように。


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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