日々雑感・池淵少佐のことなど

いろいろと書きたい話が山積しています。が、ちょっとここは頭の中を整理しないと話がまとまらないような感じなので、脳内整理の最中の今日は「日々雑感」でご勘弁願います。

 

「回天」の話はもう何回か書いてはいますがそれでもまだ書き足りておりません。

回天で戦死・殉職・自決なさった搭乗員総数は一〇六名。その出身県は以下の通りです。

樺太・1           埼玉・2        静岡・2       山口・5

北海道・10         千葉・1        愛知・2       徳島・1

青森・1           東京・9        三重・1       福岡・4 

岩手・4           新潟・4        京都・4       佐賀・2 

秋田・1           富山・1        大阪・4       長崎・1

山形・3           石川・1        兵庫・5       熊本・3

福島・3           山梨・2        和歌山・2      大分・1

茨城・5           長野・4        岡山・2       宮崎・2 

群馬・3           岐阜・2        広島・1       鹿児島・6

 

そのうち海軍兵学校出身が一九名、海軍機関学校出身が一二名、海軍水雷学校出身が九名、予備学生が二六名、甲種飛行予科練生が四〇名(甲飛予科練生は出身期一三期、この一三期はその殆どが「特攻作戦」で戦死した悲劇の期です)。

そして没時平均年齢は実に二〇・八歳。一番年上の方でも二七歳。最年少が一七歳。

そしてその中にお二人だけ、妻帯者がいました。菊水隊で戦死なさった佐藤章大尉 二六歳(没後階級)と、轟隊の池淵信夫少佐 二四歳(没後階級)。

その池淵少佐についてお話したいと思います。
DSCN1077.jpg

池淵少佐の奥さま、ユキコさんは少佐と同い年です。そしてこのお二人は血のつながりはないものの「きょうだい」として育った間柄です。ユキコさんのお母様はユキコさんを出産後亡くなり、池淵少佐のお父様も少佐が幼いころ亡くなりユキコさんのお父さんと少佐のお母さんが再婚しましたので「きょうだい」としてお育ちになりました。それでも結婚は自然の成り行きのように進み、少佐が昭和一九年十一月に休暇で帰省の折、親戚が集まった中で「盛り上がってしまい、突然結婚ということに」なったそうです。

もともとこのお二人の結婚は周囲が昔から決めていたことであまり先延ばしにしているとユキコさんが「年を取ってしまう」ということで急きょ決行されたようです。

それでもお母さんが式を楽しみにしてあつらえてくれていた着物をまとって式を挙げたお二人。しかしこのころすでに池淵少佐は大津島で回天搭乗員としての訓練を受けていました。

少佐は結婚の前にご両親に「結婚には異存はありませんがわたしにもしもの場合、ユキコさんが社会的にも法律的にも未亡人となることを思う時気の毒になる。・・しかしこの点を十分覚悟してくれればいつでも結婚します」ということをおっしゃっていらしたそうで、内心逡巡があったことをうかがわせます。

その後、なかなか会えない日々が続いた二人でしたが昭和二十年六月二日、光市の借家に呼ばれユキコさんは少佐が出撃する四日の朝まで水入らずの新婚生活を送ることになります。

たった、二日の新婚生活。

でもそれがお二人にとって最高の楽しい思い出に満ちた日々になったのです。

出撃前夜の池淵少佐は饒舌で、結婚写真が届いた時自分は訓練中で留守だったのだが仲間が勝手に封を開いて、「随分冷やかされたよ」と言ったり「結婚なんかすると万日の場合君が可哀そうだと思ったんだが俺の気持ちはどうしたわけかずっとおちついて来たよ。君は偉大なんだなあ。不思議にちっとも不安を感じないんだ」

そして「明日九時出航するから裏山の天神様から見送ってくれ」。

出撃のあさ、池淵少佐は「じゃあ、行ってくる」とだけ言って家を出られました。

ユキコさんは八時過ぎに裏山へ行くと見下ろす砂浜には小さな鯉のぼりや吹き流しが風にたなびき大勢の人影が忙しく立ち働いていた。やがて全炊艦が静かに出航。消えてゆきました。

その時のことをユキコさんは

「山には私だけ一人。地球はしばし回るのをやめ、ただ太陽だけが燦々と照りつけて、白夜が来たのかと思われるほど、あたりは静まり返っておりました」

ユキコさんは次の歌を詠まれました。

若人は 国を思いて出でゆけり

   海のかなたに白波のこして

翌日実家に戻ったユキ子さん、池淵少佐はすぐに戻ると思っていました。が、終戦の日を幾日か過ぎた日、池淵少佐と一緒に出撃しながら回天の不調で生還した隊員の訪問でその戦死を知ることになります。

悲しみに暮れたユキ子さんは、こーりゃんを石臼でただ、引くだけでした。涙が粉の上にぽたぽた落ちて・・その部分だけ色が変わるのを見ていた。それ以外のことは何も覚えていなかったといいます。戦死公報が届く一年後くらいまで何も覚えていらっしゃらないというくらいの衝撃でした。

戦後一年半ほど後、白木の遺骨箱――もちろん空っぽの――と遺品が届きます。ユキ子さんが夫に宛てて出した、封もきられていない手紙。

あの人は戦死したんだ、ということが実感になってユキ子さんに迫ります。

 

池淵少佐は生前、ユキ子さんに

今日の日をかねて覚悟で嫁ぎ来し

   君のこころぞ国の礎石

といいのこされていました。それに対して戦後ユキ子さんは

夢に見る君の姿はりりしくて

   年ふることのなきぞかなしき

とその思いを詠まれました。

戦後、ユキ子さんは再婚もせず編み物を習い教室を開いて生活をしてきたユキ子さん。きっと・・・池淵少佐は今日もユキ子さんを見守っていらっしゃることでしょう。

 

 

回天。わたしも思い入れのある兵器の一つであります。兵器に、というよりそれに乗って行った人たちに、というのが正解です。空の特攻と比するとあまり表に出てはこない印象のある「特攻」ですがこれを考案した黒木博司少佐・仁科関夫少佐はどんな思いでこれを考案し、そして自らこれに搭乗して一人は殉職し、一人はウルシーで戦死したのだろうか?

いろいろと考えると出口のない「回天」という兵器の深遠さに気がつきます。

 

        *******************

最近艦艇の擬人化、というのがよく目に着きますね。艦艇を美少女に見立てて可愛かったりちょっとエロい?イラストが人気です。イカロス出版から発行の雑誌「MCあくしず」がその最初かなあ?と思いますがどうなんでしょう?ちょっと過激な絵柄があるのでこっそり見るのがいいかも?

またこの頃では『艦艇これくしょん』というのもあってちょっと興味があります(これはゲームのようで、私はゲームはしないのでキャラクターだけ見ている状態です。やはり艦艇の擬人化で、可愛いんですがちょっとHな絵柄があって・・・目のやり場に困る時も!!)。

ただ・・・わたしがひそかに願うのは・・・「回天」だけは(いや、「桜花」もだけど)この先擬人化しないでほしいのです。 

あれほど悲しくも、崇高な若者の祈りの込められた兵器はないと思うからです。よく「回天」は海軍上層部が作って無理やり乗せて行かせた、という言い方をされるのですがあれはそういう性質の兵器ではなかったというのは生存の元隊員の方が皆おっしゃることです。その操作は大変難しく、下手をすれば事故の可能性さえあるものです。無理やり押し込めて行けるものではない、そうおっしゃいます。

そのへんに関しては私の下手な文章でお伝えするよりこの本「海の特攻 回天」(宮本雅史著 角川ソフィア文庫)を読んでいただけたらと思います。
DSCN1080.jpg

 

いつかいつの日か、山口県周南市の「回天記念館」を訪問するのが私の夢です。


(参考までに

MCあくしずHPhttp://www.ikaros.jp/mcaxis/index.html
艦艇これくしょんHPhttp://www.dmm.com/netgame/feature/kancolle.html)
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ウダモさんへ

ウダモさんこんばんは!
これほど悲しい兵器を私は知りません。
しかもこれが機関学校と兵学校出身者の血の出るような憂国の思いから自分たちが作って乗ってそして死んでいったという兵器なのですから・・・巷でよく言われているような「軍部が造って」「強制されて」「押し込められて」・・・という性格のものでは全くないということをしらない人は多いと思いますね。
回天という兵器について、それに登場して散華した若い人の話をもっと知ってほしいです。

しかし。
ご子息の高校の修学旅行、一体何ですかこれ!?
日本兵の悪行を謝罪する…て一体・・・!?
私も娘にそんな修学旅行には行かせたくないですね、なぜそんな謝罪行脚を高校生がせねばならないのでしょう?学校側の良識を疑ってしまいます。
行く必要はないと思いますね。
仮に百歩譲って「日本兵が悪事を働いて」いたのが事実であったとしてもそれを今の高校生が謝る必要は全くありません。
ましてやねつ造された歴史の中で「日本兵」が悪者にされるのは不公平です。戦争の本質を見誤ります。
・・・信じられませんね本当に!

今の教育では本当の愛国心など育つわけないですね、自虐ばかり上手になって。
本当の日本の「歴史」を教えられる教育再生こそ急務ですね。

おはようございます!その②w

知らなかったです。
またひとつ勉強になりました!

操作が難しい兵器??
…なんだかオスプレイを連想してしまったのですが、そういうものでしたか?
よくわからないので、また勉強してから出直してきます!

※先のコメントにもありましたが、私も今の荒廃した日本を恥ずかしく思います。

話は違うのですが、息子の通う高校で修学旅行にて日本兵がやってきた悪事を謝罪する…というスケジュールが組まれています。
息子にも言いましたが、修学旅行は行かせない方向で検討中です。
息子も、そんな事をしたくない!と強く言っておりますし、私も息子に謝罪なんてさせたくないです。

本当に教育からして日本はもうダメですね。終わりです。
こんな事をしているようじゃ、本当の歴史なんて伝えられないですよ!

頭にきてつい、余計な事まで書いてしまいましたw
すみませんm(__)m

すっとこさんへ

すっとこさんこんばんは!
初秋の周南市はいかがでしょうか?

「回天記念館」。
人間魚雷と呼ばれたあの兵器で戦没したみなさんの生きた証がそこにあるのですよね。特攻作戦はどれもあまりにも悲しくて切なくて・・・言葉が無いのですが、特に「回天」は同じ特攻でも扱いが地味で知る人があまり多くないかもしれません。そのうえかなりの誤解があるとして、元搭乗員の方たちは歯がゆい思いをされているようです。
回天にかかわった――戦没、生還の別を問わず――みなさんの思いを知るために、私は絶対回天記念館に行きたいのです。

ぜひその時はすっとこ姉さまとご一緒させてください。お願いします!

見張り員さん

”回天記念館”へ行った 現在周南氏の娘宅におるすっとこです。

あの時は胸が詰まりました。

そして今日池淵少佐とユキ子さんのお話を読んで
更に胸が締め付けられました。
たった2泊3日がおふたりには全生涯だったのですね!
きっと記念館にはこの池淵少佐のこともあったのでしょうが
不勉強で覚えてません。

いつか見張り員さんが回天記念館へいらしゃる時
是非お伴したいです!
それを将来の約束とさせてくださいませね。


まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
本当に知性と豊かな感性を感じられるお顔です。この回天で戦死・殉職・自決なさった人たちはみなりりしいお顔つきでかつての時代のよき部分を垣間見ることができます。
池淵少佐も、みな本当に惜しい命でした。
そして池淵少佐とのたった二日の新婚生活を胸に生きられました。時にはどんなにさみしかったか・・・それを思う時涙腺が緩みます。

そうしたすばらしい先人がいることを日本人は本来誇りと思って愛国の情に燃えるべきなのに、なんでしょう今のこの日本の体たらく。戦後教育の腐敗臭が蔓延し、英霊は肩身狭く靖国の奥で泣いておられます。
愛国心のない国は早晩滅びます。
しかし彼らがわれとわが命を以て守った日本ですから簡単に滅ぼしてはなりませんね!!

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
私もごく最近知りました。「艦これ」・・・なんこれ?みたいなw。
でもわりと絵柄可愛いのですよこれが。ちょっとエロっぽいのもたまにあるようですが・・(^^ゞ

池淵少佐に出された手紙、封を切る前に出撃してしまわれたのでしょうか。
あるいは隊に届いたときにはもう…だったのかもしれませんね、いずれにしてもあまりに悲しい。こういう夫婦もいたということを今の若い人たちには知ってほしいと思うのです。
沖縄戦のこともそう、思いを致すことが大事ですよね。
過去の日本は未来の日本につながっていますもの――

No title

凛々しくて美しい男性ですね。心に秘めた固い思いもうかがい知れる口元に知性も漂っています。
今の若者とは比べものにならないくらいに惜しい命の散華だと思います。
たった2日間の新婚生活。その2日間をよすがに遺されたユキ子さんは生を全うなさったのでしょうね。
終戦を境にして落とさずともよかった命であったはずなのに。

68年前にこうやって何もかもを犠牲にしてまでも国を護って亡くなっていった人々。バカげた若者が跋扈する日本の為に命を捧げた人々に申し訳が立ちません。今の日本の荒廃ぶりはやっぱり戦後教育の不十分さだと思います。愛国がまったく欠如されてしまったのですから。

Re:

こんにちは。艦コレ、文字はよく目にしますが、実際のキャラを見たことがありません。おやぢなワタクシにはめずらしいこどです(笑)
昨日、沖縄出身の詩人、山之口貘のさんのことを知りました。今年生誕110年だそうです。沖縄戦をうたったものもあり…私も私のできるやり方で亡くなられた方々、遺された方々の生き方に寄り添っていけたらと思います。
しかし…封のきられていない手紙は……悲しすぎますね。ただただせつないです。今回もすばらしい記事をありがとうございました。
朝晩ヒンヤリします。お身体に気をつけて下さいね。
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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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