2017-09

「女だらけの戦艦大和」・南方の大茶会1 - 2013.09.14 Sat

「女だらけの軍艦大和」とともにトレーラー泊地にその身を浮かべる「女だらけの軍艦武蔵」艦上では何やら始まりそうである――

 

猪田艦長は右舷甲板に天幕を張らせた。運用科の兵隊嬢や下士官嬢たちが手慣れた様子で張り巡らし、猪田艦長は「さすがだねえ。わが『武蔵』の乗組員たちは何事につけても手際がいい。何処に出しても恥ずかしくないね」と言ってうなずく。そのそばで加東副長も「そうですとも。猪田艦長がお育てになったわが『武蔵』乗組員ですもの、誇りにこそ思え恥に思うことなどありませんよ」と言って胸を張る。

猪田艦長は嬉しげに微笑んで隣に立った加東副長の手をそっと握った。副長は恥ずかしげに微笑んでうつむく。

そして加東副長はそっと顔をあげると

「艦長、ところでいったい何をなさるおつもりなんですか?」

と聞いた。天幕を張るとなるともしかしてGF(聯合艦隊)のお偉方でも来るのだろうか?そう思った副長に猪田艦長はふふっと笑うと

「ここでね、『お茶会』を開こうと思ってね。『大和』艦長副長、それに参謀長。それから『矢矧』の艦長副長それに水雷戦隊司令官をご招待しようと思ったのよ」

と言った。副長はほう、と声をあげ(なんと、いかにも艦長らしい思いつきだ。素晴らしい)と感激した。猪田艦長は天幕の下を歩きながら、

「畳も作って貰ってるんだよ、工作科に。それでね副長、今度のお茶会は堅苦しいことなしにしようと思ってね、作法とかうるさく言わないでお茶を楽しむというのを大事にしたいと思うのだけど・・・おかしいかしら」

といい、立ち止まって加東副長の瞳を見つめた。加東副長は猪田艦長の正面に立つと

「艦長とても素敵です。そうです、作法も大事かもしれませんが皆で和気あいあいと抹茶をいただくというのが素敵です。そして遠い日本をしのびましょう」

と言って嬉しそうにほほ笑んだ。猪田艦長は副長の両手を握ると

「良かった。そう言ってくれると本当にうれしい。当日が楽しみだね」

と言って加東副長のその方をそっと抱いた。加東副長は思わず艦長の背に手を回しそうになったが向こうに工作科の兵たちがいるのを見てあわてて手をひっこめた。その副長をほほ笑みで見て猪田艦長は「じゃあ、詳しい日取りを決めようじゃないか。それでみんなに連絡しないとね」と言って副長を促して艦長室へ向かった。

 

その話は二日後には『大和』、そして『矢矧』にもたらされた。『大和』艦長の梨賀大佐はその知らせを艦長室で受け取ると

「森上、『武蔵』から招待状だよ。・・・あれ、ツッチーはどうしたね」

と言って参謀長に尋ねた。森上参謀長はタバコを出してくわえながら「愛しのツッチーはもう来るよ。今運用科と何やら打ち合わせしてたからね」と言ってニヤリ、笑った。梨賀艦長のほほが真っ赤に染まり、

「バカ、森上のあほう。なにが愛しのツッチーだ。わたしはあんなもの愛しくないッ!」

と怒鳴った。これは全く正反対で本当は愛しくて愛しくてたまらないのだが、てれ隠しにそんなことを口走ったのだ。

が。

それを梨賀が怒鳴った時、折悪く艦長室のドアが開いて野村副長が立っていたのだ。「あんなもの愛しくないッ!」という言葉を副長はしっかり聞いてしまった。呆然として立ち尽くす野村副長に梨賀艦長はあわてて

「ツッチー、いや違う、ちがうんだ。これはね・・・」

と弁解しようとした。が、副長はその眼に涙を盛り上げるとくるりと後ろを向いて駆け去ってしまった。艦長は「ツッチー!」と叫んでそのあとを追う。その場に残された森上参謀長が悠然とタバコをくゆらしつつ

「あーあ。こりゃあ困ったねえ。し―らないっと」

と言って笑っている。

 

艦長は副長を追って走っている。副長は嗚咽を漏らしながら廊下を走ってゆく。(一体どこへ行くのだろう)と艦長は思っている、(まるで迷走だ、ツチー心を乱してしまったな)。

副長の背中で一つにゆわいた髪が左右に大きく揺れ、それがまるで副長の心の内を表しているように梨賀艦長には思えた。

副長は、艦内を迷走した挙句自室に戻ってきた。艦長があとをつけているのを知っているのでドアを開けた時「入ってこないでください、一人にして!」と叫んだ。そしてドアを閉めようとしたが艦長は一瞬早くその隙間に靴の先を入れていた。そして身体を押しこんだ。

後ろ手にドアを閉め鍵も掛けた。副長はその場に立ち尽くして涙をあふれさせている。そして絞り出すような声で、

「艦長、艦長はわたしがお嫌いだったんですね。・・・私は艦長が大好きなのに、・・・こんなに大好きなのに艦長はわたしをそれほど思ってらっしゃらなかったんですね。愛しくもないんですね・・そうですよね、『あんなもの』ですものね。わたしは艦長に遊ばれただけですか?そんなひどいことするなんて、私は、もう・・・」

というなり顔を両手で覆って号泣し始めた。今まで見たこともない副長が号泣する姿に艦長はいたたまれなくなって、思わず駆け寄ってその身体を抱きしめていた。思いっきりツッチーの身体を抱きしめてその耳元に

「ツッチ、本当にごめんね。わたしはツッチーがいないとだめなんだよ、本当だよ。さっきのあれは、森上にからかわれて、ツチーとのことを悟られたくなかったし、照れくさくって心にもないことを言ってしまったの。本当だよ、信じてツッチー。あなたの心を傷つけてしまったこと本当にごめんなさい。許してなんて言わない、言えないけど・・・これだけは言わせて?わたしはツッチーが大好き。わたしにはツッチーが必要なのよ!」

と言って艦長も泣き始めた。艦長の嗚咽と体の震えが副長に伝わった。

「艦長・・・」

と野村副長がまだ涙を十分含んだ声で言い、艦長はそっと身体を離して副長を見つめた。その頬を涙が流れては落ちる。副長は艦長の瞳を覗き込んだ、そして

「ごめんなさい艦長。わたしつい真に受けてしまって。ごめんなさい、恥ずかしいことをしてしまいました」

と謝った。梨賀艦長は「私もバカなこと言ってしまった。本当にすまない」と謝り、二人は涙の光るほほで笑いあったのだった。そして顔を洗ってから艦長室に戻る。中では森上参謀長が艦長のとっておきのせんべいをかじりつつ、

「遅ーい。いったいどこで何してたんだよう。で?『武蔵』がどうしたって?」

と話の続きをせっついた。梨賀艦長は「そうそう、じゃあ話を最初から。あのね」と『武蔵』の猪田艦長から来た「お茶会」の話を聞かせた。野村副長が、

「なんと、ここで日本のお抹茶を頂けるのですね?なんて素敵なんでしょう。しかもお作法無しの。わたしはあまり茶道をよく知らないから有難いですねえ」

と感激し、森上参謀長も「ふーん。猪田さん面白いこと考えついたねえ、いいんじゃない?」と興味を示し、艦長は

「じゃあ、『大和(うち)』はわたしとツチー、モッチの<艦艇―ズ>が参加しますと返事しよう」

と言って皆うなずき合った。

 

そんなころ『矢矧』でも古村水雷戦隊司令と原艦長が参加を表明。和田副長は「その日どうしても外せない用事があるので残念ですが」と不参加。

『武蔵』では皆の出欠を確認して猪田艦長自ら茶道具の用意を始めている。そのそばで『武蔵』のマスコット犬・ナナが「艦長さん。ぜひマツコさんとトメキチさんも呼んで?ねえお願い」と飛びついている。猪田艦長はそれを察して

「ああ、そうだねえ。ナナのお友達も一緒に連れて来てもらおうね。梨賀さんに連絡をしておこうね」

と言ってナナは狂喜してその場を跳ねまわる。それを見て加東副長が

「ほらほら、ナナ。そんなに暴れるとお茶器を壊したら困りますよ。さあ、あっちへ行って遊びなさい」

と優しく外へ送りだした。

 

南方のお茶会は、いよいよ明後日に迫っている――

  (次回に続きます)

 

           ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

なんだかどうしようもないスッタモンダもありましたが何とか収束、『武蔵』でのお茶会が楽しみなみんなです。ナナにマツコ、トメキチも参加の「お茶会」いったいどうなるのでしょうか。

 

むかし私も表千家の茶道を習っていたことがありますがもうずいぶんしていないので忘れてしまいました。でも、柄杓と茶せん、茶碗は持っています。

気に入りの茶碗はこれ、『大和ミュージアム開館記念』のものだそうです。
DSCN1055.jpg DSCN1053.jpg

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● COMMENT ●

荒野鷹虎 さんへ

荒野鷹虎さんこんばんは!
そうなんですよね、戦争は勝たなきゃ意味がないのですからそれを思えば職業軍人でない学徒兵の心中は複雑だったでしょう。
「お母さん」と呼びかける英霊の遺書をたくさん読みましたがそのたびに胸のつまる思いがします。

子供たちを異国で死なせないようにしないといけませんね。

見張り員 さんへ!!

見識を感じ嬉しいです、‼戦争は勝つためにするものですので。学徒の兵隊は苦しかったと思います。事実次兄の遺書も母さんとお言う言葉で。決して「天皇万歳」ではないのです。勝利と信じて戦ったのですね^^涙。(

散華と言う言葉は褒めすぎで、小田実さんは「難死」と言っています。含蓄のある言葉と思いました。
一言付け加えさせました。泣)
子供たちには、集団自衛権で他国にて戦死をする事は許されない気持ちなのです。‼ありがとうございました。☆!

荒野鷹虎 さんへ

荒野鷹虎さんこんばんは!
ウダモさんたちの考えのきそのゆるぎなきことは素晴らしいの一言ですね。私ももっと研さんを積まねばなりません!

『大和』以下一〇隻のいわゆる「海上特攻」と言われたあの最後の闘いは軍令部の暴走ではないかと思います。確かに大和を温存したまま戦争に敗れた時を考えた時さまざまな懸念があったとは思いますがだからと言って艦隊全部で数千の命を散らしてよかったものか。
学徒出身の士官と兵学校出身の士官の戦争に対する考えの違いはやはり「軍人のプロ」として育った兵学校生徒と普通の世間で育った学生の考えの違いが如実に出ていますね。
それでの最終的にはみな、「国(故郷や家族を含む)のために」と言って散華したのですし、下士官以下の兵たちも同じ思いで散ったわけですから、それらを総合すると軍令部の責任は軽いものではないと思います。

集団的自衛権。
友人がやられているのを見過ごすのはいけないとは思いますがあえて進んで争いの中に身を投じなくても?
まず、自国の防衛を優先すべきではないかと思います。

見張り員 さんへ!!

おばんです!
敬老の日に当たり素晴らしいコメントをいただき感激しております。!
最近ウダモさんやふわふわさんからコメントをいただきますが皆さん、
考え方、生き方が立派で感動しています。宜しく!

いまだに、戦艦大和の悲劇的出動には疑問を持っています。

学徒出身と兵学校出身との意見の違いにも戦争観の違いが出ています。
学徒出身は(死に対してある理論を持っています)兵学校出身は(国の為に命をささげるのだ・・)と・・・
国家全体主義は非人間性で、人の命を粗末にしています。

今また、集団自衛権を容認しようとしていますが、同じことにならなければと危惧しています。!

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんおはようございます。
台風、来ましたよ~~もう今(9:23)でかなりの雨風です。今日はごみの日なんですが飛ばされそうなので出していません。
ご心配をありがとうございます。

さて、『武蔵』での茶会。幹部ばっかりの茶会ですがどうなってゆくのでしょう、しかもマツコとトメキチ、ななという動物まで参加となると。
秀吉が開催したという北野大茶会、タイムスリップができたらのぞいてみたいですね。私、茶道の作法を忘れてしまったので「不作法」な茶会はウエルカム!ですw。

長い人生においては全く心にないことをあえて言わなきゃいけないこともあったりしますよね。そしてにいさまのおっしゃるように「相手の心を試したくなるような」・・・ことは結びつきを固めることにもなります。
試される方もそれがわかった時嬉しかったりしますよね。
この二人は身体も心もしっかりつながっています!
はあ・・・いいなあ・・・(^_^;)。

そちらのお天気はいかがでしょうか?涼しい秋の訪れでしょうか?
御身大切になさってくださいね^^。

NoTitle

作法にとらわれない大茶会。まるで秀吉の北野の大茶会のような解放感に溢れていますね。それに海上にある艦の上ですから尚一層、興が増しますね。大茶会の模様が楽しみです。
それになんとも勇ましい茶碗でしょうか!! これで一服頂くと腹の底から力がみなぎってきそうです。大切になさって下さい。

心とは裏腹なことを言わなきゃならない時もあるんです。照れ隠しだったり、カモフラージュだったり。でもそれはすぐに解けるウソなのですが、相手の心を確かめるような「敢えて逆を言う」ことほど誤解が深まり人格が疑われることはないですね。僕もたまにやってしまいますが……。相手を試したくなるんです(笑)
でも、肉体的な結びつきが深いとどんなことも跳ね返すだけの底力があるようにも思います。抜き差しならない仲とでもいうのでしょうか。羨ましいことです(涙)

台風は如何でしょうか。大事にならないように台風の後ろにある大分から祈っています。


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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