2017-09

「女だらけの戦艦大和」・怪談、毛布をふるう音4 - 2013.09.04 Wed

すさまじいまでの麻生分隊士の絶叫が部屋に響き渡った――

 

「どうした麻生さん!」と松岡分隊長が席を立って麻生分隊士を見やると、彼女は開け放ったドアの向こうに押し付けられている何かを見て顔色を変えてわなわな震える指でそれを指しながら、そして松岡分隊長を見た。

そして震える唇で

「ぶ、ぶ、ぶ、分隊長。あ、あ、あ、あれあれあれをみてつ、つ、つ、つかあさい・・・」

と言った。分隊長はラケットをひっ担いで開け放ったドアの前に立った。そこには毛布のような何かが押しつけられうごめいている。「なんだこれは?」と分隊長は言って、それに顔を近づけた。麻生分隊士が松岡中尉の防暑服の片方の袖を思いっきり引いて

「分隊長、危険です。気ぃつけてつかあさい」

と注意を促した。分隊長は麻生分隊士を見返って、「ありがとう麻生さーん!あなたは優しいねえ」というとラケットを構えて「で?これは一体何なんだ」というとラケットの先でそれをちょんちょんと突っついた。と、それはぐにょりとうごめいた。松岡分隊長がさらにラケットの先でぐりぐり押しながらよく見ると何やらそれには細かいひだ状のものが見える。

「これは。・・・ねえ、麻生さーん。よーく見てくれない?」

松岡分隊長がそういうと麻生分隊士の服を引っ張ってそれの前に押し出す。麻生分隊士は「いやじゃなあ、うちはこげえなもんをそばで見るんは」と言ったが見ざるを得ず、よく見つめた。

「はっ」と息をのむ分隊士。そして「分隊長、これよう見てつかあさい。これは・・・あれではないですか」と言って分隊長の顔を見つめた。すると松岡分隊長は満面の笑みで、

「そうですよ麻生さん。もうわかりましたね、これの正体は」

といい二人は正面から顔を見合すと「きのこ!」と言ったのだった。

松岡分隊長は勢いついて「いいですかこのキノコやろう!正体がわかったからにはもう麻生さんも貴様なんか怖くないと言っていますよ。ですから今ここで私が貴様を退治します!熱くなれよー」と叫ぶなり手にしたラケットでいきなりそれをひっぱたいた。

するとそれ――きのこ――はブワッとその身をひるがえすなりボハボハッ・・・という音を響かせつつあっという間にどこかへ走り去ってしまった。松岡分隊長はラケットを振りかざすと

「麻生さ~ん。追いかけますよ、さああなたも今日から富士山だーっ!」

と叫ぶなりそのあとを追い、麻生分隊士も「あのキノコ何処へ行きよるんじゃ・・・はいはい行きましょう―分隊長」と走り出した――

 

「こっちだ麻生さん、急いで!」

松岡分隊長は廊下をひた走る。麻生分隊士も懸命にそのあとを追う。もういったいどこをどう走っているのかわからないがそれでも走る。途中の居住区で寝ぼけ眼の兵員たちが「こげえな夜中に何をしとられるんです?」と出て来たので麻生分隊士は

「化けもんが出たんじゃ、うちらはそれを追うとる。誰かはよう副長に伝えてくれんか!」

と叫びつつ走り去ってゆく。兵員の一人が「えらいこっちゃ。分隊士に伝え、ほいで副長呼ばんと!」とわめいてさあいよいよ艦内大ごとになりつつある。

兵員からその話を伝え聞いた少尉は上司の分隊長、そして分隊長は科長に話を急ぎ持って行き科長――林田内務科長――はあわてて副長の部屋の前に走り込む。ドアをダダダダ・・・と連打して

「副長、野村副長!林田です・・・入りますっ!」

と叫んでドアを開けると。

「い、いない!?」

副長の部屋はもぬけのから。あちこち見たがやはりいない。林田中佐は「くそっ、こんな大事な時に何処行きやがった!」と思わず口汚く罵っていたが本人夢中なのでそれすらわからない。林田中佐は、副長の部屋のドアを思いっきりしめると今度は艦長の私室に向かう。

林田中佐は艦長室のドアもダダダダ・・・と叩いて

「艦長、林田です。入りますっ!」

と叫んでドアを開ける・・・がここもお留守。林田中佐、頭に血を登らせて

「どうなってんだこの艦は!艦長も副長も一体どこに行きやがったんだ、畜生め!」

と叫ぶと身をひるがえして他の科長や掌長を集めに走りだす。まったくなんでこんなことを私がせにゃあいけんのよ、と内心腹を立てながら。

そんな騒ぎを、マツコとトメキチは察知していた。マツコが金色の目を光らせて「トメキチ、行くわよアタシ。だってあの騒ぎアタシが原因だもの」と言って大きな翼をひと羽ばたきさせた。トメキチも立ち上がると、「マツコサン僕も一緒に行くよ。だから一緒にそれを退治しようよ」と言って二人はラッタルをかけ降りてゆく・・・・

 

さてそんな騒ぎを皆が始めているころ肝心の艦長と副長は何をしていたのだろうか。

その騒ぎが始まる少し前、巡検を終えた副長は「タバコ盆出せ」の号令を、令達機に向かって言いそのあと各科掌長と明日の簡単な打ち合わせをして解散した。副長は(そうだ、さっき航海長からもらった饅頭食べよっと!)と、浮き浮きして部屋に戻った。部屋のドアを開けると艦長が待っていて

「ツッチー、待ってたよ」

と例によって抱きしめられた。副長、艦長は大好きだが今夜は饅頭を食いたい気持ちでいっぱいなのでいきおい、艦長からのアクションにもいささかぞんざいになる。と、恋する者の嗅覚は妙に鋭く、梨賀艦長はちょっと副長からその身を離した。そして少し険しい目つきで副長を見つめると

「ツッチー。ツッチーは今夜少し変だね。・・・心ここにあらずだ、もしかして他の誰かのことを考えてるんじゃなくって?一体だれのこと思ってるの!?」

と問い詰めた。副長はあわてて艦長の防暑服の袖をつかんで「ち、ちがいます艦長。わたし他の誰かのことなんか考えていません」と言った。そう私が今考えてるのは饅頭のこと・・・とは言えないがわたしが他の誰に心奪われねばならないというの?

艦長は、副長の片手をつかむと「許さないよツッチー。お仕置きしましょう」というと副長の部屋を出てずんずん廊下を歩いてゆく。副長は「痛い・・・ねえ艦長いったいどこへ?」と泣きそうな声を出す。艦長はその声にさらにそそられて歩を早め、「何処って・・わかってるでしょう」とだけ言って向かったのが<婦人科診察室>。

「ギャッ、またここですか艦長」

副長は本当に泣きそうになって抵抗した。が、艦長は副長の手をひねりあげて「そう、またここです。お仕置きにはちょうどいいからね」という。しかし、と副長はひねりあげられた片手の痛みをこらえつつも「ここはそう勝手に入れないはずです、鍵は日野原軍医長が管理しているはずですから」

と言った。が、艦長はにやりと笑うと片手で自分の防暑服のポケットを探り一本のかぎを副長の前にぶら下げて見せてからこう言い放った。

「鍵なんていくらでも作れるもんね。スペアキーを工作科に頼んで作って貰っちゃった」

な、なんてこと。

副長の頭の中は真っ白になるほどの衝撃を受けていた。スペアキーを作るとは、この艦長やるときゃやるなあ。

そして副長は艦長に診察室に引きずり込まれた。艦長は「ここなら音が外に漏れないから平気だもんね。どんなにツッチーが悶えても・・ね」と言ってドアを閉め鍵を締めた。それから診察台の上にツッチーを乱暴に投げ出した。台の上に転がった副長の上に艦長は跨ると、その防暑服の襟の折り返しをつかんでちょっとツッチーを持ちあげるようにした。

そして「なにをあんなにぼんやりしてたのかな?ツッチーはいつも艦長にご奉仕しなきゃいけないのに。他の誰かのことを考えてぼうっとしてたらダメでしょう?いけないツッチーにはこうしてやりましょう」

と言うと普段の艦長からは思いもよらない力でツッチーの防暑服の前をつかんで開いた。何かが飛んで落ちたような音がしたがそれが何で何処に落ちたかわからない。

それに注意を払う間もなく、艦長は副長を攻め始めたのだった――

 

ハッシ―・デ・ラ・マツコはトメキチとともに艦内を走る。

すると行く手に麻生分隊士の後ろ姿が見え、その前をラケットを振り振り走る松岡分隊長の姿も見えた。ラケットが時々天井にむき出しの配管にあたって派手な音を立てている。そして気がつけば自分たちの後ろに大勢の兵・下士官・士官さえも血相変えて走ってくる。マツコは驚いて

「いったい何?こいつらもあれを追ってるのかしら」

と叫ぶ。トメキチがマツコの背中に飛び乗って、

「マツコサン、松岡さんの先を行かないと!飛んでちょうだいマツコサン」

と叫んで、マツコは「よし、見てなさい」というなりトメキチを背中に乗せて麻生分隊士と松岡分隊長を飛び越えて行った。

その先に――目指す化け物がまるで毛布のような体をくねらせて皆を待ちかまえていた。

「こんなになるなんて・・・」

マツコのつぶやきがトメキチの耳に聞こえて来た――

  (次回に続きます)

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

化け物の正体は、きのこ!?やはりキノコなのでしょうか。

緊迫の次回に続きます!!

 

最近空の雲を写真に撮るのに凝っています。これは二日ほど前、朝7時ちょっとすぎ洗濯物を干すとき撮影しました。
二枚目の左側に移ってる黒いもの、よく見ると鳥みたいですね。飛んでて翼を閉めたというかそんな感じですね。

DSCN1030.jpg DSCN1031.jpg

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● COMMENT ●

matsuyama さんへ

matsuyama さんこんばんは!
ホントに困った艦長と副長です(-_-;)。
でも女同志のやきもちって意外と本当に怖いです。しかしこの手のやきもちははっきり言って小学生レベルです(きっぱり)。
きのこの出方がわかりませんので怖いです・・・夢にきのこが出そうですw。


この日の大きな積乱雲(というものでしょうか、これは)綺麗ではありましたがちょっと怖い感じもしました。案の定、この日の午後は埼玉で竜巻が起きました!!

れい姉さんへ

れい姉さんこんばんは!
そういえば松本零児先生の漫画に「サルマタケ」というパンツに生えたキノコが出てきましたが…こっちはふんどしだい!と威張れないのが悲しいです。
とても気持ち悪いですね…(-_-;)

そうですね、あのなめこの巨大化したものをご想像いただければいいかと思うのですがなお一層気持ち悪くなりますのでお気をつけてくださいね~~(^_^;)!

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
ええ!あれって「おさわり探偵」・・なのですか!?ちょっと笑いが止まらなくなっています~~~!!
さあ、『大和』に出たキノコはなんというきのこなのでしょうか。こうご期待です^^。

このところ、咳がやたらと出て困っています。これも夏の疲れが出たというのでしょうか??
オスカーさんもどうぞ御身大切にお過ごしくださいね、いつもありがとう^^。

NoTitle

ま~、この大事件というか、珍事件勃発の時、艦長と副長は何をしてるのか。
女のやきもちは怖いです。というか女同士のやきもちは恐ろしいんでしょうね。
追い詰められたキノコの化け物、どう開き直るんでしょうか。

抜けるような清澄な青空を見てると秋を臭わす感じですけどね。
ぽっかりと浮かぶ白い雲が不気味さを漂わせてます。
このあとゲリラ豪雨に襲われませんでしたか。

こんにちは(=゜ω゜)ノ

ふんどしに生えたキノコ……スッゴイ嫌ですねwww。
イメージ的には、今巷で流行ってるなめこみたいなカンジを勝手に想像したのですが、
あのなめこも、よくよく冷静に見てみたら、結構キモチ悪い気がしてきました…ww。


Re:

こんばんは。おさわり探偵なめこが大好きな私にはキノコの種類いや正体が気になって仕方ないです(笑)
朝晩は涼しくなりましたね。風邪をひいたり不調な人たちがまわりに多くなってきました。健康管理、難しい時期ですが、見張り員さまもどうぞお気をつけ下さいませ。

ウダモさんへ

ウダモさんこんばんは!
艦長、工作科に目を付けましたww。
大和の工作科は敏腕ぞろいだったらしいですよ。けっこういろんなものを頼まれて作ったりして。慰問部隊が来たときは(その慰問部隊はボカ沈食らって着物も何も失っていたらしいです)着物やタキシードを作ってやったりしたらしいですよ。


私の両親のご心配をありがとうございます。父親は歩けるようになったのでもう、以前の通りビール三昧の生活となってしまい母ももう、「何も言わない。どうなっても知らない」と完全にあきらめています。
いつも励ましてくださってありがとう、何よりの支えになっています!!

こんばんは☆彡

むむむ、スペアキーを工作科に頼んで作ってもらうとは!
きのこも気になりますけど、こういう機転というかアイデアが面白くて途中読んでいても飽きないんですよね。
最後まで読ませちゃうから、やっぱ上手いなぁとb

ps:その後、お母様は元気にしてますか?お父様の介護で疲れていませんか?大変だと思いますけど、頑張ってくださいとしか言えないのが辛いです(>_<)

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんおはようございます!
この雲すごかったですよ!しばらく見入ってしまうほどの雄々しさと神秘さがありました。本当に自然の造形って素晴らしく、神の領域ではないかとさえ思いました。
ちなみに…この日の昼過ぎに越谷市などで竜巻があったんですよ。

怪談、のはずが何やらワイ談になりそうな感じさえしてきました「女だらけの大和」。
艦長と副長は一体この一大事に何をしてるんだか…(-_-;)
この先をお楽しみに!

れい姉さんへ

れい姉さんおはようございます!
ご訪問&コメントありがとうございます^^。

そうそう、ありますよね!山本五十六を女性にした物語。私はそういうのは読まないのですが(^_^;)、男女を反対にするのって意外と面白かったりしますね!

ちょっと毛色の変わったブログではありますがどうぞごゆるりと読んでくださいませ^^!

NoTitle

幾重にも重なっているように見える大きな雲。そして透明感のある光が。自然の造形美って人間には真似のできない崇高さがありますね。
たまに見かけるさまざまな空の表情に息を呑むことしばしばですが、最近は奇妙な感じが増えました。案の定異常気象の連続で……。

何だかあっちもこっちも混戦模様の大和ですね。
でも僕は艦長と副長のアレの方が気になります。どんな展開でどんなことをするのか。

はじめまして(=゜ω゜)ノ

あし@を辿って、お邪魔させて頂きました<(_ _)>。

そういえば、山本五十六が女になったという小説を、最近書店で見つけたなぁ…と思いつつ、拝見させて頂きましたw。

とても面白そうなお話でw、これからじっくり読ませて頂きますw。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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