2017-10

「女だらけの戦艦大和」・怪談、毛布をふるう音3 - 2013.08.31 Sat

「ええっ、まさか・・・そんなこと」

トメキチはマツコの話を聞くなりそう言って絶句した――

 

皆さんは覚えておいでだろうか。以前にマツコが野田兵曹のこ汚い古ふんどしを咥えて持って行ったことを。そしてその褌にはなぜかキノコが生えていたのである。マツコはそれよりも前に野田兵曹のキノコノ生えた褌を手中にしたと思ったのだが、麻生分隊士と松岡分隊長によって捨てられてしまい残念がっていた。しかしまた今回新たに入手できたのだ。

マツコは「今度こそ絶対でっかくしてやろうっと」と思い、二度と捨てられないようにするため隠し場所を探していた。そして艦内のあちこちに目をつけて人が来ないか否かを探っていた。

そして探し当てた場所こそが、「長官室」、しかもその寝室のチェストの中であった。普段長官室は誰も使用しないのでマツコも夜陰に乗じてこっそり入ることができ、ふんどしキノコの生育状況を逐次確かめることができた。

ふんどしキノコは順調に生育しやがてチェストいっぱいに広がるほどになりマツコは、「これじゃあもっと大きくなれないじゃないの。いいわ、あたしもっといい場所を探してくるから。それまで待ってんのよ」とキノコに言い聞かせてあちこち探していた。

その矢先、ふんどしキノコは行方不明になったのだった・・・

 

「だからさあ、みんなが騒いでる毛布のお化けってあたしのきのこじゃないかしらと思うのよぉ」

マツコはそういうと深い息をついた。トメキチもこれまた深い息をつき、

「まさかと思うけど・・・おばさんが見失う前のきのこはどのくらいの大きさだったの?」

と尋ねる。するとマツコはかっとその金色の目を見開いて「また!オバサンじゃあないって言うのに。あたしはマ・ツ・コ!」と叱ってから

「そうねえ、長官寝室のチェストにもう一杯だったからねえ。アタシうんとうんと押し込んでたからどのくらいになったかよくわかんないわ」

という。トメキチはふーん、と唸ってから「それじゃあマツコサン、みんなが毛布のお化けって言ってるのはきっとそれよ。しかもあちこちで音がしてるってことはそのキノコがうんと大きくなって歩きまわってるんじゃないかしら?ねえ、マツコサン。早く探し出してどうにかしないと大変なことになるかもよ!」と言って立ち上がった。マツコも長い脚を伸ばして立ちあがり

「そうね、善は急げって言うから早いとこ探しに行きましょうよ。でも、見つけたにしてもアタシタチじゃ太刀打ちできないかもしれないわねえ」

と考え込む。が、トメキチは笑顔で「その時は皆を呼んで力を貸してもらえばいいのよ。大丈夫、『大和』の皆はそんな薄情じゃないわよ」と言ってマツコに微笑みかけた。マツコも金色の目を輝かせて微笑むと、「じゃあ、行くわよ!」

というと二人は駆け出していった・・・

 

二人は『大和』の皆に感づかれないように別々にきのこを探した。二人は時折長官室前に来ては、「どう?見つかった?」「ううん、見つからない」と言葉を交わしてはまた二手に分かれて探し始める。

トメキチはその小さな体を生かして烹炊所の中に潜入し、調理台の下を探したりラッタルの陰に潜り込んだりあるいは、各部屋のデスクの下などを探しまわる。

マツコはそれが出来ないので「いいわねえ、トメキチは。機動力のある奴が勝つ世界かもしれないわね」とひとりごちる。マツコはその飛行能力を生かし、『大和』の上空を飛んで上から監視。そして怪しいところがあれば下に降りて偵察する。

二人の捜索は、深夜に及んだ。

その晩も「じゅんけーーん!」の声とともに副長が衛兵伍長や甲板士官、そして各掌長たちと巡検に回りだした。各居住区や厠、烹炊所などを巡って何らかの問題がないか見て回る。

マツコは「じゅんけーん」の声にあわてて十二分隊の居住区の入り口に立って巡検を待つ班長の横に立って副長一行を待つ。(だってさあ、いくらアタシだって巡検中にうろうろしてたら罰直食らいそうでいやだもの)と思うマツコである。そう、巡検中は当直以外は寝床に入って静かにしていなければならないのだ。それをすっかり判っているマツコ。

やがて副長たちがやってきた。マツコの横にいた兵曹が「十二分隊異状なしっ!」と叫んで副長に敬礼。副長も返礼して先へ行く。その時副長はマツコの顔を見てちょっと微笑んだ。列の最後を行く花山掌航海長がマツコにアカンベエをして、マツコもくちばしを大きく広げて威嚇した。

「変な奴」

マツコはそう言ってからそっと歩きだす。まだ巡検中だから足音を忍ばせて。

しかしきのこは見つからない。

 

「巡検終わり。タバコ盆出せ」

副長の声が令達機から流れ、皆はごそごそと起き上がる。そしてタバコを吸うものや厠に行ってから眠るものなどさまざまである。今日も巡検終了の声を受けて見張兵曹たちも起き出してきた。

小泉兵曹が「おう、オトメチャンは今夜当直あったかね?」と聞いた。オトメチャンは事業服のズボンを持ちあげてから「いいや、うちは今夜は非番じゃ。・・ちいと厠に行って来るけえ」というと居住区を出た。小泉兵曹は「そうか。うちも今夜は非番じゃ。さ―てと、寝るまで何をしようかねえ」と言って他の航海科の連中を見回す。

と。

「キャーーー」

と絹を裂くような声が響いてきた。オトメチャンの声である。小泉兵曹、そしてベッドで就寝中だったはずの石場兵曹が「どうしたオトメチャン!」と叫んで廊下に駆けだす。叫び声を聞いて他の分隊からも大勢がすっ飛んで行った。

厠の外に、オトメチャンはへたり込んでいた。石場兵曹がへたりこんだオトメチャンを抱き起こし「どうしたんじゃ、オトメチャン?」と軽くゆすった。オトメチャンは少し震えていたが石場兵曹の顔を見るとほうっと安堵の息をついて、ごくっと喉を鳴らした。そして

「厠の中に、変な、えらい大きな毛布みとうなもんが居ってです。それがうちに襲いかかってきました」

というと石場兵曹にしがみついて「ああ、怖かった」と言って震えた。石場兵曹はもう、最高にうれしそうな表情でオトメチャンをしっかり抱きしめた。大勢の下士官や兵たちが集まってきていて

「また出たんじゃね。あのお化け。しかしそがいに大きかったんじゃうちらの手えに負えんのう」

とため息をついた。そして皆は、「そがいなもんがうろうろしとってじゃあぶのうていけんな。ほうじゃ、部屋の入口になんぞ音の出るもんをぶら下げておいたらええんじゃないか?そうじゃ誰か鈴をもっとらんか?もっとったらそれを下げて、お化けがそれに触れたらわかるようにしたらええ」と鈴を探し出し部屋の入口の上に下げた。

「これでええわ、安心して眠れるわ」

 

そんな騒ぎを知らない麻生分隊士と松岡分隊長の二人は、分隊士の私室で今後の訓練の予定を立てている。分隊士は「ほうですねえ。やはり対空見張りの訓練をしっかりせんといけんし・・・対潜見張りは分隊長から見てどがいです?」と言って分隊長を見る。

分隊長は「そうだねえ」と言って不意にひたと麻生分隊士を見つめた。分隊士は見つめられて気持ちが悪くなった、そして「分隊長、どうしました?」と尋ねた。すると松岡分隊長は

「麻生さん。麻生さんは綺麗だねえ。今までぼんやりしてたよ私は。すまなかったねえ麻生さん」

とくそまじめな顔で言い、麻生分隊士はたいへんびっくりして座っていた椅子から転げ落ちた。分隊士はしどろもどろになりつつ、

「ま、ま、松岡分隊長。何をゆうてるんです?あなたご自分のゆうてること、わかってますか?ええですかわたしにはもうオトメチャンというものが居ってですから、今になってあなた、自分のものになれ言うても・・・」

と後じさりを始めた。すると松岡分隊長は大笑いして

「そーんなわけないでしょう、麻生さーん。それにいつ私があなたとお付き合いしたいなんて言いました?あなたそういうのを思い上がりっていうんですよ。いやですねえ。わたしはちょっとふざけただけです。はいそんなことより訓練予定をきちんとしないと?」

といい、麻生分隊士はとても嫌な顔をして椅子に座りなおした。「ほいでもあがいな顔で見つめられたら誰じゃってそう思うけえ。いやなお人じゃなあ分隊長は」とブツブツ言いながら。

すると。

部屋のドアに何か、重いものがドン、と当たったような音がした。麻生分隊士が「誰だ?入りなさい」と言ったが誰も入る気配がない。仕方がないのう、といいつつ麻生分隊士は立ちあがってドアを開けた。そして麻生分隊士が見たものは――

開け放った部分いっぱいに・・・毛布状の何かが――押しつけられるようになっていたのだった。

麻生分隊士の絶叫が、部屋いっぱいに響き渡った――

  (次回に続きます)

 

           ・・・・・・・・・・・・・・・

マツコとトメキチにはあのお化けの正体がわかったようです。

が、なかなか尻尾をつかめません。が、麻生分隊士の部屋にとうとう出現。しかも松岡分隊長が一緒となると――。

次回をお楽しみに!!

 

毛布です(私の愛用のひざかけ毛布。昼寝の時に腹に掛けます)
DSCN1029.jpg

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● COMMENT ●

ウダモさんへ

ウダモさんこんばんは!
きのこ、ですよ~~ウフフフ。

しかもその生い立ちが普通じゃないですからこれは!!!

こういう発想は普段仕事中とかTV見ながらラジオ聴きながら…あらゆる場面で思いつきます。
結構妄想癖があるんじゃないかと自分でも思います。

結構やばいかも、私ww。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
ブログの不具合はちょっとへこみますよね、私もそういうことがあるたびやきもきします…(-_-;)

恐怖体験って実際どうなんでしょう、季節を問わないんでしょうか??

麻生分隊士。口はひんまがっていますが実はこれきれいな女性なのです。松岡分隊長好みだったらちょっと大変。またオトメチャンとの確執が・・・!?
さあ、この辺も含めてどうなりますか??

この膝掛けは今年の初め近所のスーパーで買いました。
季節を問わず私の半身になってくれています^^。

こんにちはw

きのこって…ええええwww

どこからそういう発想が出てくるのですか?w
見張り員さんの頭の中をのぞいてみたくなりましたw

まさか、きのこって(笑)

NoTitle

おはようございます。
ブログのメッセージが行き届かなくなってしまってるもので恐怖症に陥っています(笑)
季節はずれとも言えない大和の恐怖体験。さすがに女性たちですね。驚きも可愛らしさがあります。
それにしてもです。麻生さんってそんなに美しい人だったのですか。オトメチャンとふたり、大和随一の容姿端麗なのでしょうね。
麻生さん、なんだかイケイケのマツオカさんとちょっとだけ遊んでみるのも面白いかも。いやいやそれは悪いか。誰かほかの人とのマツオカの熱い濡れ場も見てみたいです。
いよいよ正体が明かされるようですね。

可愛らしいひざ掛けですね。これを身に掛けると落ち着けるんではないでしょうか。どことなく懐かしさのこもったご自身だけの心休まるひざ掛けですね。

matsuyama さんへ

matsuyama さんこんばんは!
残暑厳しき昨今ですから怪談を・・・w。ってあまり怖くないかもしれませんねw。

肝試し。
私はしたことがないのですが・・・matsuyama さんのなさった肝試しは想像すると怖いです~~(-_-;)。確かに昔の墓地は怖い雰囲気満載でしたよね。今みたいに綺麗な墓石でもないし、母の田舎では昔は土葬が一般的だったと聞いて余計怖い思いをしたことがあります。昼間でしたがねww。

さあ、麻生分隊士は何に絶叫したのでしょう。そして松岡分隊長はどうするでしょう?ご期待ください!

NoTitle

秋に入ったとはいえ、まだこの暑いなか怪談話はタイムリーですね。

子供の頃、肝試しというのがありましたよね。今の墓地と違って昔は朽ち果てたような墓石が多かったです。明るい時歩いてもひんやりとして寂しい感がしていました。
まして夜となると、野生の小動物が目の前を通り過ぎても、風で小枝が擦れる音を聞いてもハッとしましました。
結局お化けなど出ないんですけど、子供心には恐怖でした。怖いという気持ちがあると、何もかもが恐怖心を駆り立ててしまうんですよね。

滅多に絶叫することのない麻生分隊士の恐怖の一声。分隊士の見た毛布状の何かとは、一体何なのでしょう。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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