2017-10

「女だらけの戦艦大和」・怪談、毛布をふるう音2 - 2013.08.30 Fri

マツコは大変あわてていた――

 

「何処行っちゃったのかしら。アレ。あれがどこかに行っちゃったらアタシ困るわあ」

そんなふうに呟きながらマツコは深夜の艦内を走り回る。と言っても就寝中の兵隊嬢たちに「やかましいわこのハシビロ!静かにせんかい」と怒鳴られないようそっとつま先立って走る。

通信室の前を通りかかった時、中から妙な音が聞こえて来たのでそっとドアを開けて覗き込むと、中矢少尉と三山兵曹長が一心不乱に受信機の同調を合わせ、どこかの放送らしきものに聞き入っている。ハシビロはその懸命な姿にいたく感激し(頑張ってくださいね、皇国の興廃はあなた方の双肩にかかってるのよ)と心の中で励まし、さらに先を走る。

マツコは医務科の前を走りぬけようとしたがその並びのある部屋から妙な声が聞こえて来たのでぎょっとして立ちすくんだ。(何、あの声?なんか変なものがいるんじゃないかしら)

そう思って見上げる大きな扉は固く閉まって、扉の上には「婦人科診察室」と書かれた小さな板が掛けてある。が、マツコは人間の文字を読めないので(あれにはきっと、立ち入り禁止とか書いてあるのよ。何かよくないもの、見てはいけないものがこの中にいるのよ・・・おお、怖)と身震いして小走りに立ち去る。

が、中では例によって梨賀艦長と野村副長がいけない遊びをしているのだった。

「艦長、本当に誰か来たらわたしは困ります。ですからもう・・・この辺で・・・」

そう言って喘ぐ副長を、艦長は「何言ってるのツッチー。あなたがここに来ようって言ったんじゃない?まだ、だめだよ」と言って攻め続ける。副長は、診察台で声を殺して快感に耐える・・・

 

そんなころ。

小泉兵曹と見張兵曹は防空指揮所で当直に立っている。

「なあ、小泉兵曹。今夜はえらい静かじゃねえ」

と見張兵曹が双眼鏡に眼を当てたまま小泉に話しかける。小泉も双眼鏡から眼を離さないで「おうそうじゃのう。空には綺麗な星が光って、こうなんていうんかロマンチックじゃのう。・・・好きな人が一緒に居ったらどんなにえかったかなあ」という。見張兵曹は、

「ほりゃあすまんかったのう。うちみとうなもんが一緒で」

と言ってクスッと笑った。小泉兵曹もクスリと笑う。と、次の瞬間見張兵曹が双眼鏡から眼を離して

「今なんぞ聞こえんかったかね?妙な音がしよった」

と小泉兵曹を見返って言った。小泉兵曹はゆっくり双眼鏡からその身を離して「なにがね?何の音がした言うんね?」と見張兵曹を見た。見張兵曹は「しっ、しずかにせえ。よう耳をすませ・・・ほら聞こえるじゃろ」と唇の前に右手の人さし指を当てて鋭く言った。

小泉兵曹も聞き耳を立てた・・・すると何処からかボサッ、ボサッと毛布を振るうような音が聞こえてくる。小泉兵曹はそっと見張兵曹の横に移動するとその耳元で

「そういやあ、副砲の連中がなんぞ言うとった。何処でかよう知らんが毛布を振っとる様な音がする言うてな。ほいでもなんかの音の聞き違いじゃないか言うとったがねえ」

と囁いた。見張兵曹は「ほいでも・・・聞きちがい言うてあがいにはっきり聞こえるもんかねえ」と言ってから「それにしても、一体どこから聞こえてくるんかねえ」と指揮所の囲いから少し、乗り出して下を見た。

「はっ!!」

と息をのむ見張兵曹。そしてあわてて囲いの中に身をひそめ小泉兵曹の服を引っ張ってしゃがませた。小泉兵曹は「どうしたんじゃね。そげえにあわてて」と不審がった。その小泉に、見張兵曹は

「この下の方で・・・何やら動いた。・・・人と違うで、妙なもんじゃ。何やら大きな毛布みとうなもんがブワッと」

と真っ青な顔で言った。小泉兵曹は「まさか、そがいなん」と言ったが段々恐怖感に支配されてきた。二人は当直も忘れ、その場にへたりこんでしまった。それからしばらくして交替の石場兵曹と谷垣兵曹が来た時、小泉と見張の二人は左側の囲いの前にぴったり張り付いてしゃがんでいた。

「ありゃ・・・何しとるんじゃ。お前ら当直をなんじゃと思うとるんね?小泉貴様、オトメチャンに手え出そ思うてなんぞ悪いことしとってじゃないね?」見とがめた石場兵曹が、()()小泉兵曹(・・・・)()怒鳴りつけた。谷垣兵曹がそっと石場を見ると、石場は小泉兵曹には厳しい視線を送っているがオトメチャンには優しい視線を送る。谷垣兵曹は、苦笑した。

小泉兵曹は少し震える指先で外を指して

「あの、そうは言われますが・・あの妙な音がして、オトメチャンが下におかしなもんが居る言うんです」

と言った。石場兵曹が「なんじゃと?貴様オトメチャンのせいにしとったらいけんで?」と睨みつける。するとオトメチャンこと見張兵曹が

「石場兵曹、うち妙な音を聞いてほいでフッと下を見よったら下に毛布みとうなもんが見えたんです。ほいでなんか恐ろしゅうなって・・・ごめんなさい。どがいなお咎めでも受けます」

と言って謝った。すると石場兵曹の態度が艦隊進路百八十度くらい変わり、思いっきり優しい頬笑みをその大きな顔いっぱいに浮かべ、

「わかっていましたよ見張兵曹。君が嘘なんぞ言うわけがない。・・・で、その毛布みとうなもんは何処へ行ったかね?」

と尋ねた。オトメチャンは

「すみません、どこへ行ったかまでを詳しゅう見とらんのです。・・・こげえなことじゃあ、見張り員失格ですね」

とさらに謝る。すると小泉兵曹は「ほりゃみい、あん時しゃがまんかったらえかったのに」とオトメチャンを小突いた。

とたんに石場兵曹の形相が一変し、<暗黒の一重まぶた>が重々しく垂れて来た。谷垣兵曹が笑いながら「おお、出たで。暗黒の一重まぶた」と言った。ハッとした小泉兵曹が見れば、石場兵曹は暗黒の一重まぶたも重々しく白目をむきながら小泉兵曹の方をじっと見つめている。

そして、

「小泉さん、あなた何でもそうやって人のせいにするでしょう。いけませんねえ。自分の過ちでもあるんですよ、そんなこと言うならなぜあなたがその妙なもののあとを追わんかったんです?あなた、あとでちょっと私のところに来んさい」

といい、小泉兵曹は小さくなって「はい、すみません」と謝る羽目に。そこでそれぞれは当直を交代したのだった。

 

その翌日から艦内ではオトメチャンが見たという「毛布のような得体のしれないもの」の話で持ちきりだ。

「ほう、オトメチャンが見たんか。やっぱり毛布のお化けかのう・・あの音は絶対毛布を振るう音じゃもん。ほいでもなんで毛布のお化けなんぞ出るんかのう」

「誰か毛布を邪険に扱ったんと違うか?それともうんと古い毛布でもどこぞにあったんか?」

「つくもがみ、言う奴か!ほりゃあちいと厄介じゃね。誰かお祓いの出来る奴は居らんのか」

などと訓練中でも暇さえあればそんな話で盛り上がる兵たちに指揮官クラスは辟易している。機銃の平野少尉は

「もう、長妻兵曹も辻本一水もいいかげんにしてよ!そんなに気になるんならあんたたち不寝番でもしてそのお化けとやらを捕まえたらいいでしょうが、そんなことより訓練訓練!いつになったらアメリカ本土に日章旗あげられるのよ全く・・・」

と、ついに絶叫してしまった。長妻兵曹と辻本一水は肩をすくめて

「ほい、エンガワ少尉にお説教食らったら長いで。ここはハイハイ言うておけばいいわ。・・・はい平野少尉申し訳ございません。心入れ替えて頑張りますけえ堪忍してつかあさい」

と言って謝り、平野少尉は

「はじめっからきちんとしてたらいいんだよ。まったく」

といいつつも許してくれた。

 

その横をトメキチと一緒に歩いてきたハッシ―・デ・ラ・マツコはハッとして歩を止めた。

「毛布みたいな・・・お化け?えたいのしれない?・・・まさか、あれがそんなことになってたとしたら、ちょっとまずいじゃないの!」

立ちつくすマツコを見てトメキチは「どうしたのおばさん?」と不審げな表情でその顔を見上げた。マツコは

「おばさんじゃないわよアンタ、あたしはマ・ツ・コ!あんた誰にも言わないって約束できる?」

と言ってトメキチを見つめた。トメキチは真面目な顔になって

「うん、出来るよマツコサン。で、なーに?」

という。そのトメキチにマツコはそっと顔を寄せて何やら囁いた。

「ええっ!まさかそんなこと・・・」

トメキチは絶句した――

 

    (次回に続きます)

 

            ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

マツコはいったい何を思い当たったのでしょうか。トメキチも知っていることなのかしら?

緊迫の次回をお楽しみに。

 

今日は暑かったですね。ここのところ涼しかったからこの暑さは堪えました。

そんなわけで?涼しかった数日前の青空をお届けしましょう、早く涼しい秋が来ますように!
DSCN1024.jpg

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● COMMENT ●

ウダモさんへ

ウダモさんこんばんは!
そうそういますよね、そう思わせる人。
オトメチャンはもともとが素直ですので「女だらけの大和」のむくつけき女どももイチコロなんですね^^。こんな子・・・現実にはいないだろうなあ~~(^_^;)

マツコの秘密。
結構くだらない秘密だったりして…(-_-;)。

こんばんは☆彡

●●さんが言うなら、そうに違いない!
…という、無条件で人々を納得させてしまう人っていますよねw
オトメチャンがまさにコレかなとb
仁徳というかなんというか、やっぱ清楚なイメージでかわいい子って、同性でも納得してしまう不思議な力を持ってますよね(笑)

マツコの秘密が気になります!w

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんおはようございます。
酷い暑さの今月8月でしたね。
歴史的にさまざまのあった8月、来年は一体どんなふうに過ごすのかを思う時少しの緊張感を伴う時があります。日本がこれ以上どうしようもない国にならないよう願うばかりです。

さて。
ハッシー・デ・ラ・マツコさん、変わりました!最初はわが道をひたすら行くタイプだったのですが日本人の心意気を学んで下手な日本人より「らしく」なっています!
そして…彼女の心あたり。なんでしょう、お楽しみに!

イシバチャン、圧迫面接官みたいですねww。
でもやはり・・・綺麗な方がいい!というのは人間の本能かもしれませんよね。もちろん何でもかんでも顔で決めるのはよくないですが、往々にして心の中が顔に出ると言いますものねw。

こちらこそまたよろしくお願いいたします!
残暑の候御身大切になさってくださいね。

NoTitle

おはようございます。
暑さに苦しんだ8月も今日で終わりますね。そして日本の大きな再生の月でもある8月、今年も暮れようとしています。

なんとも賑やかしい大和ですが輪に馴染む、人の心は環境によって随分と変わるものだと感心した部分がこれでした・
>ハシビロはその懸命な姿にいたく感激し(頑張ってくださいね、皇国の興廃はあなた方の双肩にかかってるのよ)と心の中で励まし……
マツコさん、変わりましたね。すっかりと大和の一員以上、日本人の心の持ち主になcっちゃって。嬉しくなりました。そのマツコさんの心当たりとは。オチを楽しみにしています。
石場さんの大魔神のような表情のめまぐるしさ。やっぱり可愛がられるって得ですね。企業が顔で採用を決めるということで賛否両論ですが、そりゃ美しい方が良いと思うのが人間の本性ですもんね。差別にもなりそうで難しいことですが。

9月も宜しくね!!


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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