2017-10

「女だらけの戦艦大和」・トレーラーのお化け屋敷2<解決編> - 2013.08.10 Sat

一寸先も見えないようなまっ暗闇の中で、何かをこぼしたような音のあと・・・それは起きた――

 

二人の士官が野田兵曹を探しながら手探りであるいていたその上の方で――つまり天井で――誰かが歩いているような音がギシッ、ギシッとした。

生方中尉はどきっとして抱えた箱をさらに強く抱きしめた。そして「・・・名淵大尉。あれ、あの音なんでしょう?」と囁いた。名淵大尉は暗闇に目を凝らしつつ、

「なんだろうねえ?生方さん、この家って二階があるのかね?」

と聞いてきた。生方中尉は「二階ですか?さあ…ここに来た時はもう暗くてそこまでよくわからなかったですからねえ?でも二階に上るような階段、途中にあったかどうか私はちょっとわかりかねます」と答える。

名淵大尉は「ふう~ん。まあどうでもいいよね。まあこういう家だから二階もあるかもしれないね」とあまり先ほどの音には関心がないようだ。しかし生方中尉は内心怖くてたまらない。

するとまた、二人のいる直上でギシギシギシ・・・と誰かが床を踏んで歩いてゆくような音がした。生方中尉はそれこそ驚いて、

「だ、だ、だ・・・誰かいますよ!上に誰かが!!ねえ、名淵大尉、ここ出たほうがよかないですか?変なものがいて取り憑かれたらことですよ!?」

と言って持っていた箱で名淵大尉をぐいぐい押した。名淵大尉は押されながらも闇の中でくすくす笑って

「生方さんは怖がりなのぉ!?こんな面白い体験、艦の中じゃそうそうできないよ?もっと楽しみなよ?あ、思い出したあ~。そういえばさあ私のお婆さんがもう8年も前に亡くなったんだけどその通夜の晩ね・・・」

と話し始めたがそれをすごい勢いで生方中尉は「名淵大尉!」と遮った。しかし名淵大尉はどこ吹く風で

「うちのほうじゃね、家族親族に死んだものが出た晩には風呂に早く入って、入り終わったらすぐにお湯を落としちゃうんだよ。でないとさあ、死んだものが湯に入りに来るって言ってさあ。ねえ、そんなわけないと思うでしょ?どうしたら死んだ人が風呂に入りに来るってのよ?なのにみんな信じててさあ、びくびくしながら何人もであの狭い風呂に入ってるんだからねえ。笑っちゃうよ」

とあまり気味の良くない話をし始める。生方中尉は話をそらそうと、

「そいえば名淵大尉は手術の名手だと伺いましたが」

と必死に話しかける。が、名淵大尉はそんな話には一切興味を示さず

「でねえ、その通夜の晩さ。みんなで線香とか燈明が消えないようにしてんだけど、急に風が吹いて燈明が消えてさあ。みんな大騒ぎだよ、婆さんが化けて出るとか言っちゃって。そんなわけないじゃんね?風くらい吹くに決まってるでしょう?ほんとみんな非科学的でああいうのってよくないねえ、ね、そう思うでしょ生方さん?」

と一方的に話をする。生方中尉は背筋がぞーっとしてくる、そこで思い切って

♪しょ、しょ、しょうじょうじ。しょうじょうじの庭は・・・

と歌い出したが声が震えてもっと怖くなった。さらに追い打ちをかけるように名淵大尉が

「そんなふうに大騒ぎしてたらさあ、おりんがいきなりなるんだよねえこれが!・・・チーイイイン、ってさあ。笑っちゃうだろう?みんな真っ青になっちゃってさあ、可笑しいよねえ。叔父さんが、『婆さんが怒ってる!』とか言い出して。んなわけないでしょうに、もうお婆さん死んでるんだよ?で、私がそーっとおりんの中を見たらさあ、中にドングリが一つ入ってるんだよこれが!もう笑っちゃうだろう?」

と言って大尉は一人で笑い続ける。生方中尉は「な、なんでどうしてドングリが入るんです?」と聞いた。すると今まで笑い続けていた大尉がすっと静かになった。

「名淵大尉・・・?」

生方中尉が声をかけると名淵大尉は急に恐ろしい声音で

「そこが変なんだよ、君。婆さんが死んだのは春。しかも通夜は家の中も中。ドングリが落ちて来るとこなんか何処にもないんだからねえ・・・イヒヒヒヒー!!」

と最後の方は奇声を上げたので、生方中尉は持っていた手術道具の箱をほっぽり出して「ぎゃああ!!」と叫ぶなり暗闇を走りだそうとした。が、足元の何かにけっつまずいて倒れた。ガシャン、バリンとすごい音がして、何かが割れた。と、外の星明かりが二人の足元を照らした。

名淵大尉は「おう、生方さんのおかげで外から明かりが入ってきたよ。生方さんってほんと怖がりだね。そんなに怖かった?ドングリはねえ、実は私が投げ込んだのさ。ウフフ」と言って笑う。そして「おお、ここにガラス戸があるようだよ」というと手探りでガラス戸を繰り、その外にある雨戸も探り当てゴトゴト言わしてそれを開けた。

外の星明かりが差し込んできてやっと二人は互いの顔を見ることができた。名淵大尉は

「じゃあ、二階があるかどうか見に行こうよ。これだけ明るくなればもう怖くないでしょう?」

と言って、生方中尉はまだ息荒いままでうなずいた。何やらたくさん置いてある廊下を、元来た方へ戻ってゆくと二階への階段がある。その先はこれまた真っ暗。しかも何やら障害物が多そうである。名淵大尉は

「こりゃあちょっと危ないねえ。登って行ってもいいがもし落っこちたら大けがだよ?君子危うきに近寄らず、というしね。生方さん、今夜はここに待機だ、夜が明けたら一気に二階に上るよ。野田君の様子も気にはなるが、応答がないところをみると大したこたぁなさそうだし、平気だと思うよ。ほんとにまずい状態なら何らかの行動に出るでしょ?」

と提案。生方中尉は賛成したが、その夜は名淵大尉の語る「本当にあった怖い話?」を聞かされ、涙をこぼして耐えることになった。

そしてあと一時間で日の出という時、背後の階段の上のさらに奥の方から何やら不気味なうめき声がして来て、生方中尉は「なんだ?あの声」と名淵大尉にしがみつく。

名淵大尉は笑いながら、「まあもうすぐ日の出だからそれまで待とうじゃないか。・・・でね生方さんさっきの話の続きだけどさ、その墓場のそばを通るとね」とまだ怖い話?の続きをしている。

 

やがてトレーラーに新しい朝が来た。

昨晩開け放った廊下の窓から明るい日が差し込み始めた。二人の士官が周囲を見ればそこには乱雑にいろいろなものが置いてある。よくもこんな狭く足元の悪いところを通ってきたものだ、と感心するほど。

名淵大尉は「じゃあ、患者を診に行くかね」というと生方中尉を促して階段をのぼりはじめた。

二階には廊下の左右に部屋があるようで、ふすまが閉められている。名淵大尉は左右を等分に見ていたが、

「こっち!」

というと右側のふすまを開けた。と、ドドド・・・と中からいろんながらくたが飛び出してきて大尉は「あ、間違った」と言ってふすまを締めた。いくつかのがらくたが挟まった。そして大尉は「じゃあ、こっちだ」と言って左のふすまを開ける。

と、そこには。

さまざまなごみの山の中にうずくまる野田兵曹がうめいていたのだ・・・

異臭漂うその部屋の惨状に、きれい好きな生方中尉は「ううっ!」と吐き気を催したが部下をすくうため気力を振り絞って部屋に踏み込んだ。と、靴の下で何かがグニャッとつぶれた。

「ぐわっ!」

と叫ぶ中尉、その中尉を楽しげに見ながら名淵大尉は手術の箱を持ってごみの上に寝る野田兵曹によって行き、

「おーい、野田君。どうしたね。ちょっとあおむけになってみてよ」

とその身を仰向けさせた。そして唸る野田の腹をあれこれ探っていたが突然笑い出した。生方中尉が「どうしたんです!」とびっくりしてそちらを見ると、名淵大尉はこちらを見て

「残念だったね虫垂炎じゃあないよ、生方さん。野田君は食あたりだね。なんか悪いものでも食ったんだよ。そうか、昨夜の音は野田君が便所に行くんで歩いてた音か。で明け方のうめき声は野田君の痛みを堪える声、ってか。生方さん、そういうわけさ」

というとなお大きな声で笑った。生方中尉は<食あたり>と聞いた瞬間、怒りがむらむらと湧いて来たのを覚え次の瞬間

「野田きさまこの馬鹿野郎―」

と叫ぶなりごみの上の野田兵曹に蹴りを入れていた。野田兵曹は痛む腹を抱えつつ、「生方中尉・・・ひどい」と泣き声を上げたが生方中尉はいきなり野田の襟首をひっつかむとごみの山から引きずりおろした、そして彼女を階段からも引きずりおろすと、階下のがらくただらけの廊下に投げ出した。

「みろ貴様。貴様のチェストといいこの家といい、どうして貴様は整理整頓、片付けがこうまで出来ないんだ?しかもこの家はひと様から預かったものだろう?無責任な野郎め・・・貴様腹が痛いなんか100年早い、ここを片付けえ!」

そう怒鳴った。野田兵曹は

「す、すみません。でも本当に腹が痛いし、気持ち悪いんで治ったら絶対片付けます」

と約束した。そこに降りて来た名淵大尉も「ね、生方さん。野田君もそう言ってるからさ」と言ったので生方中尉は渋々了解した。

 

野田兵曹は不名誉な食あたりから数日後解放され、話を聞きつけて「面白い、野田の借りてる家はお化け屋敷じゃそうな。見に行こうで」と面白半分で集まった下士官たちと生方中尉とともに民家の清掃に行くことになった。今度は真昼間。

小泉兵曹、長妻兵曹、増添兵曹などが例の民家の玄関に入るなり

「うわ。聞きしに勝る不気味な家じゃ」

と騒いだ。が怖ろしいのはこの先で、生方中尉が何かをこぼすような、捲いたような音を聞いたという台所に入った時再びその音がした。生方中尉が

「あの音だっ!」

と叫び皆が振り向いたその先には・・・

わけのわからないごみの上を走り去るゴキブリの大群が居ったそうじゃ。

長妻兵曹はもう、泣き笑いの表情で「なんじゃあここは。お化け屋敷じゃのうてゴミ屋敷やないね」と言って、近くにいた野田兵曹を

「貴様ええかげんにせえや!」

と言って思いっきりひっぱたいたのだった。

 

それを伝え聞いた見張兵曹、麻生少尉に「お化け屋敷じゃのうて、ゴミ屋敷だったそうです。えらい数のゴキブリが出たんじゃそうです。うちは行かんで良かった」と笑った。それをそばで聞いていたマツコとトメキチは、

「ご、ゴキブリ・・・野田ってもしかしてゴキブリの総大将?あいつ隅に置けないわねえ」

と言って震えていた。

そして医務科では、日野原軍医長を前に名淵大尉が「いやあ、ゴミの山の中での緊急手術ってのも一回してみたかったんですがね~、食あたりで残念でしたよ」と顛末を話し、日野原軍医長は

「一体奴は何を食ったんだろう?ゴミの中からひっぱり出したものでも食ったかな?それよりさ、野田兵曹はどうしてそれほど片付けられんのだろうか?うーん、これは私のいい研究材料になりそうだね」

と不敵な笑いを浮かべている――

             

          ・・・・・・・・・・・・・・・・

なんだかどうしようもない話でした。野田と言えばゴミ、ゴミと言えば・・・。不名誉な連想をここで打ち切ってほしいものです野田兵曹。

しかしマツコとトメキチには<ゴキブリの総大将>として一目置かれるかもしれませんね。

ゴミ屋敷(WIKIより)

ゴミ屋敷
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● COMMENT ●

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
ゴミ屋敷だけはご勘弁の私です(-_-;)。
そうですかw、にいさま宅にも・・・ww我が家にもごみ部屋がありますよ!もういくら片付けろと言っても全く進捗なし。あきらめております。
え?誰の部屋かって?ご想像にお任せであります…(-_-;)


コメントの一部を削除させていただきました。
よかったですね。しかもあの日にとは素晴らしいお心です。英霊のご加護がありますよ!
ほっとなさいましたねにいさま!

Re: Re: NoTitle

> > そういうことでしたか。ゴミ屋敷はたまらんですね。
> > 我が家にもゴミ部屋が一室あります。息子のです。プリント類は紙吹雪のように散乱。ノートやテキストは空き巣が入った後のように裏や表にとひっくりかえったんま。どうやら受験生らしいので黙って看過しておりますが。
> > 脳味噌まで煮込まれそうな暑さ。もうしばらくは続きそうですがなんとかやり過ごしましょうね。
> >

オスカーさんへ

オスカーさんこんにちは!
これは最悪のシチュエーションですねw。不気味の上に悪臭、ごみ。仕上げはゴキブリ。
柔軟剤の香りと言えば先月実家に滞在中、母が「下の階の洗濯物のにおいがきつくて気分が悪い」と言うのでそんなひどい加齢臭が?と思っていたら「柔軟剤の甘いにおいが・・・」と言うのでちょっと驚きました。確かににおいに敏感な人には嫌かなあ、と。

オスカー様の携帯はシャープですか、私が今使ってるのもシャープのSH-04Aというものでもうずいぶん前に出た酢真帆もどきです。
その前はパナソニックでしたので使い勝手が違って戸惑いましたw。

オスカー様の山梨滞在がよいものでありますように。
くれぐれも暑さにはご注意くださいね、私も山梨行きが待ち遠しいです^^。

おはようございます。ゴミ屋敷での怪談、肉体的にも精神的にもキツい!ご本人からは何か臭ったりしないのか気になってきました!そういえば柔軟剤のニオイがひどくて車内で気持ち悪くなる人がいたとか…大和の艦内はどんなニオイなのか気になるなぁ(笑)
私のケータイは一応一番新しいというシャープの202SHというヤツです。今までずっとTOSHIBA、パナソニックだったし4年変更しなかったのでまだまだ苦戦しています。
14日から16日まで山梨です。見張り員さまと入れ違いですね。リフレッシュできますように!


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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