2017-10

「女だらけの戦艦大和」・招かれざる大佐1 - 2013.06.27 Thu

「女だらけの帝国海軍」には、実は嫌われものの佐官がいる――

 

今日も常夏のトレーラー環礁は日差しが強く照っている。そんな中、『大和』の梨賀艦長はある知らせを受け取っていた。それをみた梨賀艦長はうかない顔をしている。

「どうしました、艦長?お顔の色が優れませんね」

そう話しかけたのは野村副長。彼女は主計兵が持ってきた紅茶のカップをそっと受け取ると艦長に差し出した。艦長は「ああ、ありがとう」と言ってカップを持った。

そして、

「いや・・来るんだよ」

という。副長は小首を傾げ「来る?来るとは・・・まさか敵ですか?」と言った。しかし敵が来るとしたらもっと戦意むき出しになるはず、艦長なら。

すると梨賀艦長は紅茶を一口すすってからはあ、と大きなため息をついて海図台にカップを置いた。そして副長を見つめると

「私と森上の同期の女でね。高飛車カクという大佐なんだが・・・それが三日ほど後ここに来るというんだよ」

と言ってさらに深いため息をつく。副長は紅茶を一口すすってから「ほう、江田島の同期ですか。なら久しぶりでいいじゃないですか?」と言って微笑んだが艦長の顔色はさえない。

それをいぶかしんでいる副長に艦長は

「高飛車にはね、よくない癖というか性癖があってね。自分より下のものに対して非常に馬鹿にしたり大きな態度ででるんだよ。江田島時代もそれで下級生との間に悶着起こしたし、艦隊勤務になってからも下士官兵とそりが合わない。いや、あわないというんじゃないな。敵対しているというのかな、もちろん下士官兵たちが悪いんじゃない。高飛車のやつが相手を平気で馬鹿にする。下士官兵ばかりじゃない、中佐でも少佐でもバカにしたり理不尽なことを言っていじめるんだからね。私ら海兵○○期の汚点になってるよ」

といい、窓の外を見つめた。副長は少し胸のあたりがじわじわと気持ちが悪くなるのを感じながら、

「で、その高飛車大佐が三日後に『大和』にいらっしゃるんですか?なにをなさりに?」

と尋ねた。艦長は副長に視線を戻すと、

「あいつ今度新型の『航空戦艦』の艦長を拝命したらしい。でその『航空戦艦』が訓練航海で練習艦隊を率いてトレーラーまで来るらしいんだ。で、『大和』に滞在して視察したいんだとさ」

と言った。副長は「新型の航空戦艦ですか・・・「伊勢」の同型艦かな?」とつぶやいてから、

「でも艦長、そんな人がここに来てそんな御振舞いをされたらちょっと困りますね」

と言って紅茶のカップを海図台に置いた。艦長は腕を組んで「そうなんだよ、だから総員にこういう人間が来るってことをそれとなく知らしといた方がよくはないかと思うんだが・・・ツッチーどう思うね?」というなり副長を抱きしめた。

副長はあわてて「艦長、昼間からいけません・・・」と言って身をよじる。艦長は「いいじゃない、今誰もいないんだし」と言ってその唇を奪おうとした。

その時、森上参謀長が「おーぅ、梨賀あ」と言って入ってきてしまい、副長は真っ赤になって艦橋を走り出てしまう。参謀長は副長が逃げてゆく姿を眼で追いつつ、

「悪かったなあ、お楽しみのところだったんだな」

と言って笑った。梨賀艦長はそのお楽しみを邪魔されてちょっとばかりふくれたが「そんなことない。何もしてない。森上は何か勘違いしてる!」と言った。副長との仲を悟られてはならない・・・と思ったのだが実はもう、とうに参謀長は梨賀艦長と野村副長の仲がどういうものか知ってしまっている。

「それより森上、高飛車が三日後に来るぞ」

艦長は表情を引き締めて言うと参謀長は「ええ!?あいつが?いやだなあ、あいつがいるとロクなことがない。ひとの艦に来て中をひっかきまわしていくつもりかね?」と言って困ったような表情を見せた。森上参謀長も「困った同期(コレス)」の来訪に戸惑っている。

 

「高飛車大佐」来訪の知らせはその晩までに総員に知らされた。

「聞いたか?怖い大佐が来るんじゃと」とあちこちでささやく声がする。

「高飛車カク大佐じゃと。へぼ将棋みとうじゃね」

と石川水兵長が居住区にいた仲間に話しかけると亀井一水も「聞きました聞きました!いやですのう、どがいに怖いんだか分りませんが、うちはえらいさんは正直鬱陶しゅうていやですな」とけたたましく叫ぶ。石川水兵長は耳を押さえて「やかましいわ貴様は。貴様のような奴が怖い大佐に因縁つけられるんじゃ、気いつけえ」と叱った。周囲から笑いが起きた。

そこに見張兵曹が当直から戻り、「どうしたんじゃね、えらいにぎやかじゃねえ」と言って床に座った。すると石川水兵長がそっと、「兵曹はきいとられませんでしたか?なんでも艦長のお友達でえろうおっかない大佐が来んさるんじゃというんです」と教えた。

見張兵曹は「ああ、そうね」と言ってからポケットから小さい裁縫道具を出すと、防暑服を脱ぎその襟のあたりを調べると縫い始める。「松岡裁縫塾」のおかげで随分上手になったオトメチャンである。その手つきに見とれつつ石川水兵長は「おっかない、言うても普通と違うんだそうです。何でも自分より階級の下のものには態度がでかいんじゃそうです」と言った。

見張兵曹は針を進めつつ、

「ほいでも、少佐だの中佐だの大佐だのゆうたら皆それなりに態度がでかいんじゃないかねえ。まあ『大和(ここ)』のえらいさんはそげえにえばらんけえ、うちらそういう免疫がないにはないのう。まあ気いつけてあたろうや」

と言った。石川水兵長は「はい、皆で気いつけてみたい思います」と言ってなお見張兵曹の手つきに見入る。それを見ながら谷垣兵曹が、

「ほうじゃねえ、うちらの艦長も副長も参謀長もみんな佐官じゃが変にえばったり意地悪せんもんな。うちらはそれともえらいさんに恵まれとるんかのう」

と、ひとりごちる。周囲の兵がうなずいている。

 

麻生分隊士はその話を松岡中尉から聞いて「なんですね、そりゃ」と曲がった口をさらにひん曲げた。松岡中尉はラケットを担ぎなおすと、

「そういうわけですから麻生さーん、あなた決して失礼のないよう願いますよ。あなたが一番心配ですからね」

といい、麻生分隊士は

「なんですと!私の何処がそげえに心配なんですか!私はあなたに心配されるような人間じゃあないですけえね!」

と腹を立てて叫んだ。すると松岡中尉はラケットで分隊士の肩をトントンと叩くと

「ほらほら、そういうふうにすぐかっと熱くなる。いいですか麻生さん、熱くなるのはいいですがあなたの熱くなり方はベクトルが違いますよ?まっすぐに熱くなるならよし、しかしあなたのは左15度ほど曲がっていますからね。それが私は心配だというんですよ。ともかく、そのなんたらいう大佐が来てもやたら熱くならんでちょうだいよ。これ修子のお願い!」

というと「尻の穴を締めろー!」と言ってどこかに行ってしまった。取り残された麻生少尉はやれやれ、という表情で両肩を大きく回し、両手を天に突き上げた。そして大きく伸びをした後

「そういう分隊長の方がうちは心配じゃ。『尻の穴を締めろ』なんかやかましい大佐に聞かれたら何言われるか・・・うちはそっちの方が怖いわ」

と言って私室に歩きだした。

 

医務科では、日野原軍医長がその話を聞いて「ほう~。そんな人がいるんだねえ、逢ってみたいもんだ。どんなに偉そうな態度を取るんだかねえ~」と笑っている。しかし畑軍医大尉や黒川軍医大尉、それに下士官兵たちは「いやだなあ。因縁つけられたら何処までも追っかけてきそうじゃない?なんで『大和(ここ)』に来るんだよ!」とげっそりしている。それに対して日野原軍医長は笑ったままで、

「まあそりゃ『大和』が見たいからに他ならんだろう?と言ってホテル代わりにされちゃあかなわんがねえ」

と言うと椅子から立ち上がり、本棚の医学事典を手に取る。

 

機関科では汗みずくになって働く松本兵曹長たちにもその話が及ぶ、が、兵曹長は汗を腕で拭きとって「なんだあ、偉い佐官だと?佐官言うたら中佐だの大佐だの・・・偉いにきまっとろう?そげえなことでいちいち大騒ぎしとるんかね?あほくさ」と全く意に介していない。

頼もしいというのか無神経というのかわからないが。

 

そして三日ののち、トレーラー環礁に見慣れない艦隊がやってきた。これこそ高飛車大佐の率いる練習艦隊、そして新型『航空戦艦』の初披露である。

「来たぞ」

梨賀艦長が緊張の面持ちで練習艦隊が沖の浮標に係留されるのを見つめて呟いた。その隣で野村副長が心なしか顔色も青ざめて立っている。さらにその横で森上参謀長がその副長を眺めて笑いをかみしめつつ立っている。

三者三様の心模様が展開中である――

  (次回に続きます)

   

     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

変な名前の人が来ます!

いったいどんな人なんでしょうか。またまた『大和』に嵐の予感がします。次回をお楽しみに。

 

ここ数日めまいがひどく昨日(二六日)は一日寝込んでいました。また始まった・・・と思われたかもしれませんがもう仕方がない、背に腹は代えられんと寝ていました。つらいめまいでした。でもずいぶん回復して来ました。

頑張ります~~!

 

さて今回はボーナス記事付!

ブロともさんのまろゆーろさんもお試しのこれ!「スパイラルグレープ」を娘が買ってきました!

コップに分け飲んでみましたが・・・まろにいさま、やはり「サ●ンパス」の味がしましたっ!!衝撃の味でした・・・刺激的~~ぃ!

DSCN0858.jpg DSCN0859.jpg
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● COMMENT ●

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
私が勤めていたときとある会社にはいましたね。
「あなたそれって人としてどうよ?」とか「何様のつもりだい!?」みたいな人が…(-_-;)
私の場合、髪には来ませんでしたがしっかり胃に来ました。胃潰瘍になり一ヶ月の休職を余儀なくされました。

さて高飛車大佐、どんな人でしょうか??

明後日から7月、早いですね~~(^_^;)。暑さが増してきます、お互い身体に気をつけましょうね、いつもありがとう!

2日はいよいよ父親の手術の時・・・私もしばらく実家に行くようになります。

こんばんは。職場で苦手というより「人としてどうよ!?」なタイプが上司でも同僚でも部下でもいたらツラいですよね…ストレスが髪にくるか胃にくるかいろいろでしょうけれど…本当にかかわり合いになりたくない!!高飛車サンがツンデレならまだいくらか救いがあるかも…と続きを楽しみにしております。
明後日はもう7月になりますね。お身体を大切にして下さいませ。

荒野鷹虎さんへ

荒野鷹虎さんこんばんは!
いつもお越しいただきありがとうございます^^。
帝国海軍の光栄を、後の世まで語り継ぎたいと思います。
こんな話の中でもかつての海軍をしのぶよすがになればと思います。

戦争「美化」は決していいことではありませんよね、「美化」したいのは戦争そのものではなくその中にありながら家族や郷土を守るため必死で命を的にして戦った人々の思いですね。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
いやはや、もう口中ばあさまだらけ・・ww!
すごい経験をいたしました!これは何かの罰ゲームに使えるのではないかとさえ思うのです、青汁にとって代わりそうな・・・?
私ももう今回だけで結構であります!

今回はめまいがしつこいですね、やはり気候と更年期のせいでしょうか(-_-;)。のんびりしたいところですがなかなか・・。
いつもご心配をありがとうございます、気長にやります^^。

高飛車大佐、いったいどんな振る舞いをするんでしょう、でも「女だらけの大和」の面々は・・・!

まろにいさまも御身大切になさってくださいね、そちらは大雨降っていませんか?
くれぐれもお気を付けてくださいね^^。



見張り員さんへ!!

ご無沙汰しております。
長期の連載に強い励ましと感動を覚えます。!
次兄が海軍航空隊にて戦死したこともあり、帝国海軍のことを皆様に知っていただきたいと念願しています。風化させないためにも、お体に気を付けられて頑張っていただきたく思います。
決して戦争美化ではなく、むしろ戦争反対の為になると信じています。!

No title

ふふふ。口中にバアサンが有象無象に出現したでしょう。
ふたつの素敵なカップも「一体全体この液体は何やろか!?」と驚いたんじゃないでしょうか。
「刺激的~~ぃ」と感じた見張り員さんはまだまだ世の中に付いて行けるくらいにお若い!! わたしゃ刺激も何もこの独特な味に白旗をあげました。

体調は戻りましたか。そのままの日々が続いていたのできっとお加減が悪いのではと案じていましたが無理は禁物ですよ。

大和にも緊張が走っていますね。高飛車大佐ですか。きっとこの大佐も大和の諸姉にタジタジになるのではと……。大和は全艦魅力的な人たちばかりですもんね。

お体を大切になさってお過ごし下さい。頼みましたよ。


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プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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