2017-10

「女だらけの戦艦大和」・阿鼻叫喚の慰労会1 - 2013.06.11 Tue

『大和』『武蔵』他トレーラー在泊艦艇による三日間にわたる大掛かりな外洋訓練は成功裡に終了した――

 

その帰途、梨賀艦長は第一艦橋において上機嫌でいた。その周囲には片山航海長や山口通信長たちもそろっている。森上参謀長は彼女らに「しかし何事もなく無事に済んでよかった」と話しかけた。

航海長は「本当に。天気も良かったですからね、これでいつ敵がやってこようとも、鎧袖一触ですね。ハハハ」と笑い、通信長も、「今回新しい電探を付けましたから通信科としてはそのテスト的な意味もあったんですが、出来は上々です。通信科員の腕もずいぶん上がりましたから安心です」と言って微笑む。

そこに副長が上がってきた。副長はその場の皆に一礼して「お疲れさまでした」と言った。

その顔を見ていた森上参謀長は、ふっと訓練に出る日の朝を思い出していた・・・

 

あの日の日出前、参謀長は第一艦橋に上がっていた。すでに艦長が三種軍装を身につけて艦橋にいた。当直の兵がいないと思ったその参謀長へ艦長は「今日明日と大変な訓練だから今朝はぎりぎりまで休めと言っておいたよ。指揮所には誰かいるようだがね」と言った。

森上参謀長はその顔を見て(なんだ?ずいぶんサッパリした顔をしてるじゃないか)と思った。しかし顔に出さずタバコをくわえて火をつけると「貴様もどうだ」とタバコの箱を差し出した。が、珍しく艦長は「いや、今は要らない」と断った。参謀長は(珍しいこともあるもんだ、良くない事の前触れじゃなかろうね)と思ったが言葉には出さない。

とそこに副長が入ってきた。参謀長の姿に少しハッとしたような表情をし手足を止めたがいつものように微笑むと「おはようございます。・・参謀長、随分早いじゃないですか?」と言って手にした訓練の概要を書きこんだ綴りを海図台の隅に置いた。副長も今日は三種軍装で、髪は一つに縛って垂らしている。帽子をかぶりなおしてちょっと髪に手をやった副長はなんだかいつもよりずっときれいな気がする。

その顔を見た参謀長、(こいつもなんかサッパリした顔してる!)とぎょっとした。(この二人がこんなサッパリした顔してるなんか見たことないのに・・・何があった?)

いぶかりながらも参謀長は「俺ちょっと部屋に戻る、訓練開始は0400からだったな」というと艦橋を出た。――いや正しくは出ようとした。

一旦その場を出た森上参謀長は入口の陰にそっと身を隠して中をうかがった。すると、

「ツッチー」

と梨賀艦長の声がして、衣擦れの音がした。(なんだ?)と森上参謀長はそっと覗きこむと、次の瞬間「はっ!」と息を飲んであわてて顔をひっこめた。

参謀長が見たのは、梨賀艦長が野村副長を海図台の上に乗せ、その体を抱きしめてそっと接吻していた場面だった。参謀長は好奇心に駆られてもう一度覗き込む。

「ツッチー、昨夜は良かったよ」

艦長が唇を離すとそういい、副長は顔を赤らめて「そんな、艦長・・・」と恥らっている。そして艦長の手が副長の服の胸を探り始める。上着のボタンをはずし、ネクタイを避け、その下のシャツのボタンをいくつか外した。そしてそのさらに奥へそっと手を入れた。

と、副長が小さく「あ!」と声を上げた。「いけない、艦長。もう誰か来るころです」そう言って艦長の手から逃げようとする副長を抱きしめ艦長は「まだ来ないよ。だからちょっとだけ、ね。昨夜の続きをしたいんだよ」と駄々っ子のように言う。

参謀長はそこまで見て顔をひっこめた。(そうかあ、あいつらそういうわけだったのね)と思うとひとりでに顔がニヤつきだして困った。と、指揮所から誰かが降りてくる気配がして参謀長はあわてた。

降りて来たのはオトメチャンで、参謀長は(これはまずい、見られたら困る)と思うといきなりオトメチャンの前に立ちふさがり、

「おお、見張兵曹。お疲れ様、仮眠をとらんでいいのかね」

というとその答えを聞かないうちにオトメチャンを抱きしめた。「さ、参謀長!?」とあわてるオトメチャンに参謀長はこれまたいきなり口づけをした。

(黙らせないと)

そういう思惑もあるが(やった。おかげでいい思いが出来た~)というスケベ心が真っ赤に広がっている。

ともあれ参謀長がオトメチャンに長い長いキッスをしている間に艦長と副長はその身を離し、副長は乱れた軍装を直している。

そしてオトメチャンをやっとこさ、参謀長は離した。オトメチャンは頬を真っ赤に染めて走り去ってしまった・・・

 

(な~んて事があったなあ)

と思う参謀長。こうして見ていると何か副長は華やいだ感じで体の奥にほんのり灯がともったそんな風情さえ感じさせる。

訓練中は副長は司令塔に入るためその様子はうかがえなかったが、艦長はしきりに副長を気にしていたのを参謀長は知っていた。

(まあ、いいんじゃないか?二人がどうあろうとこうあろうと。それで艦内の調和が保たれるならね)

参謀長がそう思った時、福島主計大尉が紅茶を皆の為に運んできた・・・

 

そんなころ医務科の日野原軍医長を、麻生分隊士に伴われた見張兵曹が訪れていた。

日野原軍医長は「おお、麻生少尉にオトメチャン。いったいどうしたね」と言って薬品棚へ瓶を戻しながら言った。麻生分隊士はオトメチャンを日野原軍医長の前にそっと押しだしながら、

「今回の訓練が終わった後オトメチャン・・いや見張兵曹が『眼が見えん』いうんです。いや、全く見えんいうんではないらしいんですが心配で」

と言った。日野原軍医長は「目が見えん?ちょっとここに座って」というと、「おい、黒川君。ちょっといいかね?」と奥へ声をかけた。奥から「はい!」と答えて小走りに来たのは眼科専門の黒川軍医大尉である。日野原軍医長は今麻生少尉から聞いたことを黒川大尉に伝えると、黒川大尉はうなずいて

「見張兵曹、こっちへ来なさい」

と診察椅子へオトメチャンを導いた。オトメチャンはおそるおそる椅子に座り麻生分隊士が心配げにそのそばに立つ。黒川大尉はオトメチャンの眼を調べていたがやがて

「麻生少尉、」

と言った。麻生分隊士は緊張しきって「はいいー!」と変な声をあげていた。黒川大尉はクスッと笑って、オトメチャンの肩をそっと叩くと、

「麻生少尉、オトメチャンは双眼鏡でじっと見つめすぎて眼が焼けた様な状態だね。帰港するまで眼に休息を与えた方がいい。・・・軍医長、見張兵曹を帰港まで入室させたいと思いますが」

と言った。日野原軍医長は「うむ、それがいいね。麻生少尉、松岡分隊長にその旨伝えてくれんか。あとから黒川大尉からも詳しいことを伝えさせる」といい、麻生少尉はほっとしながらも少しさみしげに

「わかりました・・・ではよろしくお願いします」

と言って見張兵曹の肩に手を置くとその瞳をじっと見つめた後医務科を出て行った。

黒川大尉は「じゃあ、オトメチャンはこっちへ来なさい」と言って診察室を出た。オトメチャンはあとに付いて病室に入り、そこで黒川大尉は

「帰港するまで眼を使わんようにこうしておこう・・・君は見張りのぴかイチだからね、なにかあったら困るんでね。ちょっと鬱陶しいかもしれんがちょっとの間我慢しなさい」

というと見張兵曹に点眼薬をさした後、その両眼を覆うように包帯をぐるぐる巻いた。見張兵曹はおとなしく「はい・・・ありがとうございます」といい、黒川大尉は「そこに寝なさい。安静にした方がいい」とベッドに兵曹を寝かせた。

 

オトメチャンの件は麻生分隊士から松岡分隊長へ、そして掌航海長から航海長、それから副長へと話が渡った。

副長は艦長室に梨賀艦長を訪ね、見張兵曹の事を話した。

梨賀艦長は話を聞くと「そうか・・・それはいけないね。他の見張り員たちにも同じような症状がないか各見張所指揮官に通達して把握させよう。他の分隊員たちも今回は張り切っていたから疲れたことだろう。・・うーん・・・」と唸って考え込んだ。

野村副長は「では私は」と部屋を出ようとしたが艦長が「ちょっと待って、ツッチー」と止めた。副長が「はい?」と艦長のもとへ歩み寄ると、やおら椅子から立ち上がった艦長は

「ツッチーもお疲れ様。ツッチーがそばに居なくてさみしかったよ・・・」

というなり抱きしめた。副長は「艦長、だめですったら・・・」といいつつも拒めない。

 

その後副長から各見張り指揮官へ連絡が行き、他にも数名見張所にいた兵員が「眼が焼けた」状態であることが判明、しかしいずれも軽症で点眼薬で治まった。

松岡分隊長は「すばらしい、特年兵君はいつも職務に一所懸命だからそんなふうになったんだね。いいですかみなさん、皆さんも特年兵君を見習って熱くなれよー!今日から特年兵君は富士山だー!」と叫んでマツコもトメキチも大騒ぎ。

が、ふと我に返ったトメキチは「トメさん、大丈夫かなあ?眼が見えなくなっちゃったらどうしよう?」と心配げにマツコに言った。マツコもその大きな羽を少し広げて、「そうねえ。あの小娘がもしもそうなっちゃったら『大和(ここ)』には居られなくなるってことじゃない?いやよアタシそんなの」とこれも心配そうに言う。その様子を見ていた麻生分隊士は二人を抱きよせると、

「二人とも心配してくれとるんか?オトメチャンは平気じゃ、ただちいと頑張りすぎただけじゃ。水島に帰ったらもう治るころじゃ、それまでそっとしといてやろうな」

と囁いて、マツコとトメキチは安心してうなずいたのだった。

 

その頃、梨賀艦長は「そうだ!今回のちからの入った訓練で疲れた乗組員たちに・・・!」と素敵な思いつきがひらめいていた――

    (次回に続きます)

 

               ・・・・・・・・・・・・・・

 

外洋訓練は無事終わったようでなによりです。艦長と副長も相変わらずだし。

そして心配なのはオトメチャンの眼の様子ですがこれも何とかなりそうですね。そして梨賀艦長、いったい何を考えているのでしょうか?

次回を御期待下さい。

三種軍装の有賀艦長(画像お借りしました<(_ _)>)。これは「男たちの大和」ですね。
有賀艦長


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● COMMENT ●

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
私もドライアイで、まあホントこれはつらいですよね~(-_-;)。
目の病気、特に手術を必要とする病気にはなりたくありませんね、私は気が小さいので目の手術と聞くと卒倒しそうになります・・・(^_^;)。

さすがまろにいさま、私すっかり読まれてますねww、そうです、ご想像通りのことが始まります!オトメチャンも、艦長も・・・いったいこいつらは何を考えてるんでしょう?というくらいにしようか出し惜しみしようか??

ともかくお楽しみに。そして、トレーラーに帰港後・・・!!!!ですよww。

No title

オトメチャン、可哀そうに。でも大事に至らなくて良かったですね。ドライアイの私も他人事には思えません。
包帯をグルグル巻かれている間によからぬ悪さをする人も出てくるのでは?? 見張り員さんのことです。何か策略(秘め事)がありそうな。

艦長たちも段々と手馴れてきてこちらもワクワクしております。色々な場所で愉しむなんて……、大好きなシチュエーションです。
見張り員さんの腕の見せ所が楽しみです!!

matsuyama さんへ

matsuyama さんこんばんは!
オトメチャンは真面目ですからこうなるんですよね~(・。・;ほどほどというものがない女です。
帯状疱疹ってストレスでも出るんですか!気をつけねば・・・(-_-;)身に覚えのあるストレスとそうでないストレスが人にはあるんでしょうね、仕事をしてるとたまるものですよね(-_-;)・・

何事もマイペースで行きたいものです!ブログもご自分のペースでなさったらいいと思いますよ、私も結構マイペースですからww。

この有賀さん、俳優の奥田瑛二さんです^^。奥田さんの「有賀さん」結構よかったんじゃないかなあ~と思いますよ^^!

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
新しい物語、実は事件の始まりだったりして!?

ともあれ、艦長と副長これで完全に目覚めてしまったですね~、今度は一体どこでするつもりでしょうか??
オトメチャンきっと大丈夫でしょう、でも麻生が・・・(-_-;)。

最近老眼とドライアイで目がかすみますねw、眼科からもらってくるヒアルロン酸入りの目薬が手放せません^^。
オスカーさんも御身大切になさってね!

NoTitle

オトメチャン、忠実な職務の遂行ですね。なんでもやりすぎはいけません。
度を超すとストレスが溜まって、身体上に弊害が出てきます。
自分も疲労とストレス過剰で、顔に帯状疱疹が出たことがあります。自分ではストレスに感じることは身に覚えがなかったんですが、身体内部では大分蓄積されてたんでしょうね。
それからはアクセク働くことはやめました。そのせいでしょうか、皆さんへのコメ返しも、ブログへの書き込みも遅れ遅れになってます。まっ、それは単なるコジづけなんですけどね(笑)。

有賀艦長のお写真、ご本人なんですか。苦み走ったいい男ですね。

こんばんは~新しい物語、また期待しちゃいます!! 海図台の上でなんて~♪女は海~(笑)残業して机に押し倒し~みたいな…今だったらオフィスラブ!? オトメちゃんの容態が気になりますが、麻生サンがあやしいプレイに目覚めないかとそれも心配です!! 見張り員さまもパソコンなどで目を酷使されているでしょうから、ドライアイなどなどお気をつけ下さいね。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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