2017-09

女だらけの戦艦大和・がっぺムカつく大海戦2 - 2013.04.13 Sat

「右四十度方向、不審船向かってくる!」という陸戦隊嬢の声が響き、陸戦隊嬢たちは戦闘状態に入った――

 

陸戦隊司令の糸 みつば大佐が双眼鏡でそれを検分している。と、糸大佐が「ちょっと待て、何か変ではないか?」とつぶやいた。その頃には不審船はラシガエ島の海岸線にあと少しの所まで来ていた。

多くの陸戦隊嬢がその船が妙なことに気がついて、銃を手にしたままで海岸に歩み寄ってきた。指揮官が「気をつけよ、どうもおかしい」

と言いながら先頭に立ってその不審船に寄っていく。やがてその船が砂浜にそのへさきをめり込ませて止まった。見ればその船は木造の粗末な船で小型漁船のようにもみえるがエンジンもなければオールすらない。船の上には操舵室のようなものがあるが中は空っぽ。

「いったい・・・何なんだろうこれは。敵の罠だろうか」

指揮官の竹野姫子中尉が波打ち際まで入っていってその船に手をかけた。

とその時、船の後ろからものすごい大きな水柱が上がり陸戦隊嬢たちは一瞬ひるんだ、が、気を取りなおし銃を構えなおした。誰かが「この船、バタ足で動かしてます!」と叫んだ。水柱が収まると誰かがバシャバシャと水をまるでふみならすように歩いてきた。そしてその人は陸戦隊嬢たちの前に姿を現した。誰かが「この船、バタ足で動かしてます!」と叫んだ。

無残に禿げ散らかした頭、やせ細った裸の体に下半身にはぴったりとフィットした黒い股引を穿いた人――そう、あのエガチャンなる人物。

「誰だ誰だ貴様らは!ひとの島に勝手に上がり込んで!」

エガチャンは浜に上がると、竹野中尉を指差して怒鳴った。竹野中尉は銃を構えたまま、

「ここはあなたの島か。勝手に上がり込んだのは申し訳ないが実はこの島とその周辺は数日中にも戦場になる公算が大きい。この島を守備するのが我々の任務である。・・・申し遅れたが私は帝国海軍陸戦隊トレーラー分遣隊の姫野中尉である。詳しいことは陸戦隊司令の糸大佐からお話があると思う」

と言って説明してやった。が、男性は薄い頭髪を乱しながら

「戦場だと!いったい誰の許しを得てやってんだよ、ええ!?ふざけたことしてるとこうだ!」

と怒鳴るなり、いきなりその場からジャンプすると竹野中尉に襲いかかり中尉をその場に押し倒した。

「ギャーー!」

という竹野中尉の叫び声に、皆は男性を中尉から引き剥がした。男性はひきはがされつつ、片手を黒い股引の中に突っ込んで「ドーン!ドーン!」と言いつつ突き上げる。品がない・・・陸戦隊嬢たちが困ってしまったその時「待ちなさい」と静かな声がして糸大佐がその場に来た。

「司令、この人が・・・」

とひとりの大尉が男を押さえたまま言うと、糸大佐はうなずいて男性に向かい、

「あなたの怒りは尤もである、留守に上がり込んであれこれした我々は罪びとだろう。・・・が、それは平時においての話であり今は日本と連合国は戦争の真っただ中である。しかもこの島は帝国の守りにとって大事な島である。であるから数日中にも起きる戦闘中、あなたの身柄は安全の為に我々陸戦隊司令部が確保する。良いな。・・連れて行きなさい」

というと、副官の椎野 たけ少佐が数名の隊員嬢を伴ってきて「こっちへきなさい」というとその痩せた腕をつかんで引き立てて行った。

男は「がっぺむかつく!この野郎、がっぺむかつく!」

と怒鳴っていたがやがてその声が小さくなっていった。彼は司令部壕の奥へとその身柄を拘束されたのだった。もっと時間があればトレーラーのどこかの島に送れたのだがもう時間がない。

「民間人を犠牲にしてはいけない。それにしてもこのようなところに日本人が住んでいたとは、それも一人で」

糸大佐は驚きを隠さずに言った、そして「あの男性の為にもこの島を守らねば。そして何より帝国の為に」と。

 

その頃、『大和』他の水上部隊は準備を済ませ、出撃のその時を待つだけとなった。その夜には副長から酒が許され軽い壮行会が各分隊で催された。酒保ひらけの号令とともに兵たちが酒保に走り酒を調達してくる。その酒を皆で酌み交わす、が出航時間までそれほど時間もないのでちょっと口をつける程度、あとは汁粉が烹炊所からふるまわれ皆は大喜び。

航海科では見張兵曹が麻生分隊士に、

「明日はどうぞよろしくお願いいたします」

とあいさつした。分隊士も「ああ、頑張ろうな」というとオトメチャンの背中を優しく撫でた。そして小泉や石場たちのいる場所へも行き発破をかける。小泉兵曹が汁粉で酔っ払ったようになって、「おおー!やったるで!分隊士、うちは絶対いの一番に敵を見つけますけえね。オトメチャンには負けんで!」と叫んで腕を天井に突き上げる。

そしてそのあとそれぞれの配置に就いたり当直時間まで仮眠をとって「その時」を待つ・・・

 

その間にもアメリカの空母を主軸の部隊が粛々とラシガエ島へとその進路を向けている。

 

翌朝〇四〇〇、『大和』他の<ラシガエ島作戦>従事の艦隊はトレーラー島を離れた。東の空に日の出の気配がし、『大和』でも『武蔵』でも皆がその方向にそっと手を合わせ作戦の成功を祈っている。空母部隊が戦艦部隊の先を行くような形になる。

『大和』艦上では皆決意の表れなのか、日の丸を染め抜いた鉢巻きや『必勝』の文字を染めた鉢巻きを締め、その上から戦闘帽、そして鉄かぶとをしっかりかぶる。松岡分隊長は今日は防空指揮所にいて

「さあ皆さん、今日か明日か敵に遭遇しますよ~。戦闘になりますからね、しっかり気構えを願いますよっ。きっちり尻の穴を締めてかかれば怖いものなんかないっ!いいですか、あきらめの心が敗戦を招くんですよ。いいか、あきらめんなよ!勝つと思うな思えば負けだ・・・って誰だこんなおかしなことを言う奴は!!勝つと思うと勝てるんです、皆さんしっかりやりましょう。バンブー!」

とちょっとよくわからない訓示をして、それでも皆「バンブー!」と叫んで腕を振り上げる。麻生分隊士も今回は一緒に叫んで士気をあげる。皆の顔に赤みがさして、戦いの女神のように美しい。

その大声を上の主砲射撃指揮所の村多大尉が聞きつけて「ほう、下は張りきっとるね。こちらも負けんようにせんとな」と言ってその場の皆はうなずいた。

 

戦闘というものは唐突に始まる。

その日の午後には『大和』『武蔵』の電探が敵機の編隊をとらえはじめた。それと同じころ機動部隊の偵察機が敵艦載機の編隊とそのはるか後方に空母がいるのを見つけた・・・

 

空母瑞鶴、翔鶴から戦闘機隊が発信していく。水谷豊子少佐は愛機の零戦・二一型の風防をトントンと叩いて「よろしく願いますよ、相棒」というと愛機を発進させていく。それに、僚機が続いて空に舞い上がっていく。

 

日本空母からの戦闘機隊第一陣はラシガエ島北方千キロあたりで敵艦載機を眼下に見た。そのはるか後方、小さな点のようなものが二つ三つ見えるのが敵の空母だろう。とすると、(そのもっと後ろには敵戦艦がいますね)水谷少佐は瑞鶴に敵発見の無電を打つと、僚機を率いて敵艦載機の編隊に突っ込んで行った。零戦隊は機銃をバリバリ鳴らして敵機に襲いかかる。あっという間に火を吹いて落ちてゆく敵機多数。しかし敵も黙ってやられているわけにはいかない、反撃をかましてくる。水谷少佐はそれをかわして敵意の後ろに食らいつくと思いきり機銃弾をたたき込む。

ふと見れば部下の亀山上等飛行兵曹が敵の飛行機に追いかけられているのが眼に入った。帝国海軍の飛行機には磁性塗料が塗られていてちょっとやそっとの敵の攻撃にはびくともしないがそれでも放ってはおけない。水谷少佐機は反転して敵の飛行機の下に入りこみ、その腹に機銃弾をたたきこんだ。

亀山上飛曹は手信号で「ありがとう隊長、助かりました」と送る。水谷少佐は片手を振ってそれにこたえる。

 

水上部隊は、ラシガエ島の北部に突き出た岬を挟むような形で布陣をした。東に『大和』と巡洋艦二隻駆逐艦四隻他。西に『武蔵』・巡洋艦二隻に駆逐艦四隻。海中にはすでに、伊号八〇〇潜水艦が潜んでいる。

森上参謀長は『大和』の艦橋にいて、参謀たちとともに北の水平線上を見つめている。通信参謀があわただしく入室してきて、電文を参謀長に差し出すと

「「瑞鶴飛行隊」から第一次攻撃成功の知らせが入りました。各空母攻撃隊はこれから順次発信して攻撃をします。ここから北東に二千キロに敵の本隊がいるもようです」

と報告。参謀長は電文をつかんで「わかった、指揮所に行く」というと駆け足で防空指揮所に上がった。梨賀艦長は指揮所にいて双眼鏡であちこち探っている。森上参謀長は「艦長、瑞鶴第一次攻撃は成功だ」と言って電文を手渡した。双眼鏡から眼を離し、電文に目を通した梨賀艦長は、

「さすがだね、瑞鶴飛行隊。真珠湾からの猛者が多いからなあ。・・・しかし油断は禁物だ。何処から敵が来るかわからないからね」

と言って再び双眼鏡を取り上げた。

 

ラシガエ島では海軍陸戦隊と陸軍部隊が島を守る。

陸戦隊司令部の中ではあの男性が「がっぺむかつく!お前ら出てけー!ここは俺の島だあー」と叫んでいる。彼を見張る隊員嬢は

「わかったがもう間もなく戦闘が始まるからおとなしくしてなさい。戦闘が終わったらあなたに島は返すから」

となだめた。が、男性――自称・エガチャン――は「がっぺむかつく」をぶつぶつと繰り返してはその場で跳ねまわっている。

 

そして、いよいよ水上部隊に戦闘の時が――!

(次回に続きます)

             ・・・・・・・・・・・

 

いよいよ戦闘のクライマックスがきます。

零戦部隊は、空母は戦艦は・・・どうなるのでしょう。そしてラシガエ島は守られるのでしょうか。

 

それにしても戦闘に至るシーンや戦闘シーンを書くのは難しいですね~、体験のないことをさも見て来たように書くという作業・・・難しいぞw。でも頑張って書きますね、現実の戦闘といろいろ違うじゃないか―って言わないでねえ~~。
作中の水谷豊子少佐、もうお分かりですね。この方をモデルにしました!(画像はお借りしました)
相棒


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まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんにちは!
正直言って今回の話は自分でも「うまくないんじゃないか」と悩みつつ書きましたのでそうおっしゃっていただくと大変うれしいです!!
戦艦などのハードの構造よりも、海戦時におけるソフト面、人の動きや心の面を見るほうが多いですね。その面ではいろいろな海戦や空戦を体験された人の手記が大変役に立ちます。

さあ…なんだか怪しい海戦になりそうですw。だって…出てくる人たちが変ですもん~~ww。

NoTitle

いやいや、さすがに見張り員さんです。
まるでそこに立たされて登場のみんなと同じような感覚に陥れてくれる文体。気持ちが良いですよ。やはり常日頃の勉強と造詣の深さ。そしてヤマトが大好きというゆるがせのない証拠に他ならないですね。

なんだか雲行きがとってもおかしくなってきましたね。さらに大波乱がある予感が滲んでいます。


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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