2017-10

「女だらけの戦艦大和」・手紙<6>返信<解決編> - 2013.03.01 Fri

「女だらけの戦艦大和」艦内は内地からの手紙で夜になっても湧いていた――

 

そんな中で家族からの手紙をもらえなかった見張兵曹は、防空指揮所で当直をこなしている。右舷には亀井一水がいて双眼鏡をのぞいている。その半ズボンのポケットからは家族の手紙が覗いている。それをちらっと見た見張兵曹は(ええのう・・・うらやましがってもどうなるもんでもないがやっぱり。うちの本当のお母さんが生きとったらうちに手紙をくれたんじゃろうなあ)と思って少し悲しくなった。でも、とすぐに思いなおした。

(うちにはたくさんの仲間が居るし、麻生分隊士が居る。うちはそれだけで幸せじゃ)

そう思った時不意に以前『海軍きゃんきゃん』の懸賞で手紙文を投稿し賞をもらったことを思い出した。あの時はあて名のない手紙だったが、(そうだ、今度は分隊士と松本兵曹長に書いてみよう)と思い立った。当直が明けたらどう書こうか考えて明日になったら書いてみよう、そう思うと心がほかほかと暖かくなるのを感じた兵曹である。

やがて交代の石川水兵長がやってきて「異常ナシ。・・後よろしく」と言って交代し、見張兵曹は急いで居住区に降りベッドにそっと潜り込んだ。周囲の下士官兵嬢たちは小さな寝息を立てている。見張兵曹は毛布を肩のあたりまで引き上げると、

(うーん、どう書いたらええかなあ?手紙いうてもこないだみとうなものとは違うけえ、書くんも緊張するわ。まず、麻生分隊士には・・・)

と考え始めた。が、睡魔に襲われものの数分もしないうちに夢の中に引き込まれたオトメチャンであった。

 

その翌日、午前中の課業が終わり昼飯も終わると午睡時間があった。今日の暑さは格別だったから乗組員は一様にほっとした。居住区に戻りケンパスを敷いた床にごろりと寝転んで午睡を取る。が、一部の兵たちはこっそり便せんを取り出してもらった手紙の返信を書き始める。

機銃分隊の増添兵曹は義姉に

>ねえさん、ねえさんの便り大変うれしく拝読いたしました。うちはまずねえさんに、母さんが今までしてきたことを母さんの娘として謝ります。その上で母さんの今までの大変な無礼もかかわらず快く許してくれたねえさんに感謝いたします。ねえさんはうちの自慢のねえさんです。うちはねえさんを、兄さんの嫁さんとしてではなく本当のねえさんと思って今まで来ました、そしてこれからもそう思って参ります。またこの次私が家に帰りましたら三人一緒に風呂に入り、四人で畑に行きましょう。うちはその日を心から待っております。

ねえさん、本当にありがたう。

と書いた。

 

長妻兵曹は、嫁いだ姉に

>姉ちゃん、このたびは手紙をありがたう。そして結婚写真をありがたう、みんなが『綺麗なお姉さんでええねえ』いうてとてもうらやましがっとります。うちは綺麗な姉ちゃんを持って鼻が高いです。そしてカッコイイ兄さんも持てて嬉しい。そしてさらに姉ちゃんはおかあさんになるという素晴らしいことが待ち構えて居って、うちはさらに羨ましい。

うちは秋ごろには叔母さんになるんじゃね、その日を楽しみにしとります。その頃内地に戻れればええんじゃが・・・もし赤ちゃんが生まれたころ内地に戻れたらいの一番に見に行きますけえそのせつはどうぞよろしゅう。

うちも軍務に精励しますけえ姉ちゃんも旦那さまを大事にして生まれいずる赤ちゃんを大事にしてくださいね。ほいではまた、逢える日まで。

と書いた。

 

石場兵曹は、慰問袋の礼を宮島の家族に

>皆様お元気ですか?じいちゃんは元気でおるでしょうか、気にしております。お父さんが亡くなってからいろいろ大変なことと思います、うちが家に居れたらえかったんですが・・・でもうちはここで頑張っとります、みんなも頑張ってください。

先日は慰問袋をありがたう。うちの好きなものやらお守り袋有難く受け取りました。内地の香り、宮島の空気を思ひ出し、しばし目を閉じて居りました。目の裏に、子供のころ遊んだ風景が浮かんできました。そしてお父さんの顔も。お父さんに恥じないような働きをしますから皆さん見ていてくださいね。茂子はきっとおおきな手柄を立ててみんなのもとにかへります。その日を首を長くして待っていてくださいね。慰問袋、また送ってくださいね。ではまた。

と書いた。

 

樽美酒少尉は、士官室でトメキチを膝に抱きながら、

>ひで。ひでが元気になって私は非常にうれしい。こんなうれしいことが他にあるだろうかというくらいだよ。この先もきちんと薬を飲み、医師の言うことをきちんと聞いて養生なさひね。そしたらうんとうんと元気になって、いつかねえさんが内地に帰る時も迎えに出られるようになります。

好き嫌いをしないこと、それがとても大事だよ。ねえさんの居る大きな艦の兵隊さんたちは誰も好き嫌いしないでたくさん食べて頼もしいよ!だからひでもたくさん食べてください。そして元気になったらねえさんの乗る艦にあんないしてあげやう。

前の手紙にも書いたトメキチという犬と、珍奇なハシビロと言う鳥にひでを合わせてあげやう。とても愉快な動物たちだからきっとひでの気に入ると思ふ。

その日をねえさんは心待ちにしているよ、それではまた書きます。ひで、お母様によろしく伝えてくださいね。

では今日はここまで。

と書いた。

 

小泉兵曹は父親あてに、

>うちは元気で軍務に励んでおります。ご安心ください、なかなか進次郎に会えませんがそのうちきっと会えると思ひます。そのときはいろいろ話をしたひと思ひます。

それから結婚の話でありますが、私はまだまだやるべきことややりたいことがたくさんありますのでもうちょっと待っていただきたいのです。でも結婚をしないというのではありませんからご安心を願ひます。見合い写真には興味はありますが、興味があると言うだけで結婚の意思はありませんからあしからず。

今日子ねえさんたちは元気でしょうか、また内地に帰ったら皆で会いませう。

ではまた。

と書いた。

 

さて、見張兵曹はどうしただろうか。彼女はケンパスの上で鉛筆を嘗め嘗め二人に宛てて書いた。

>麻生分隊士、松本兵曹長。

いつもいつも、お世話になっております。私はお二人が大好きであります。お二人の広い、まるで太平洋のやうなお心に包まれて、私は親のいない寂しさも忘れることが出来ております。どうかこれからもトメをお見捨てなきやうお願いいたします。トメも一所懸命がんばりますので、一緒に頑張りませう。

あまりうまい手紙ではありませんが私の心をありのままに書いてみました。今までのご厚情に感謝、そしてこれからもずっとずっと、よろしくお願いいたします。

見張トメより。

(うまい手紙じゃないが、これがうちの本心じゃ。偽らざる心のうちじゃ)

見張兵曹はほっとした息をつくとそれぞれの便せんをきちんと畳んで胸ポケットに入れた。松本兵曹長には、今夜の当直の前に渡そう。麻生分隊士には当直の後。そう思って見張兵曹はケンパスに顔をつっつけるようにして午睡に入った。

 

梨賀艦長、森上参謀長もそれぞれ便せんに文字を走らす。梨賀艦長は子供たち宛てに、

>元気でいることと思ひます。風邪などひかぬやう大事にしてください。内地はまだ寒いことでせう。温かくして眠ること、そして朝起きたら乾布摩擦をすると丈夫になります。

お母さんのいるところは毎日半そでの服で過ごします。お外は大変日差しがきつくて大変ですがたくさんのへいたいさんたちと一緒になって頑張っています。ですからあなたたちも頑張ってください。おばあ様の言ふ事をしっかり聞いて、日本人として恥ずかしいやうなことは決してしないやうに。

今度日本に戻る時はここの海の綺麗な貝をたくさん持って帰へりますから、楽しみにしていてくださいね。

ではまたね。

と書き、森上参謀長は(あいつに何を言っても無駄だな、姉さんに一筆)と、しょうもない姪っ子の母、つまり自分の姉に、

>姉さん。私は相変わらず元気でおります。

さてタエのことですがあれはどうしようもないですね、私に兵学校に裏口入学させてほしいやうなことを言ってきました。そういう根性の人間は絶対兵学校には入れませんし入れたくありません。ですからねえさんから良く言ひ聞かせて海兵団に入れてください。タエの様な性根の娘には海兵団もきついかもしれませんが人間修業にはいいかもしれません。それで何とかなればいいと思ひますが、先は私にもわかりません。

そういうわけでひとつよろしく。ではまた、取り急ぎご連絡まで。

と書いて「ふーっ!」と大きな息をついた。そして(ああいうちゃっかりしたと言うのか、性根の腐ったというのかわからんがそういう娘だけは持ちたくないな。姉さんも苦労してるんじゃないかな)と姉に心を馳せる参謀長である。

そして野村副長はというと――手紙の返信も書かずにベッドの上で熟睡中である。副長は、(いつもいつも結婚の話しか書いてこないなら返事なんか出さないからね!ふんだ!)とすねている。すねてるのは花山掌航海長もそうで、(勝手に引っ越した家族には無視するしかない。思い知らせてやる、私の怖さを。絶対新しい家には帰んないから)と思って返信はなし。

副砲の生方中尉は見合い写真を見るのに忙しく、当分返信は書けなさそうだ。「この人がいいか、それともこっちか?うーん、迷うわあ」と唸ってばかりいる。

 

そして岩井少尉は当然返信などしないが、心のうちで(今度こそ、今度内地に帰ったらきっちりカタをつけんといけん。うちはあの人のおもちゃじゃない言うことを思い知らさんといけん。あの人に思い知らしたらもしかしたらお母さんも改心してくれるかもしらん)と思う。松本兵曹長は、心酔している岩井少尉の為どうしたらいいかを仕事の合間や寝る前などに考え始めている。

 

そういえばあの熱い女中尉、松岡修子には手紙が来たのだろうか?その問いに松岡中尉はラケットをひと振りすると、

「私はね、家族に『手紙なんか出さなくっていいぞ。私は一人、熱くなっているから平気だ―』と言ってあるからね、来ません。ハイ残念でした。さあ、君の尻の穴をキチット締めて熱くなれよ!今日から君も富士山だ」と叫んで走っていってしまったという。

 

それぞれの思いを、便せんに乗せ封筒に詰め輸送船に託して内地のそれぞれに送る。それを受け取る内地の家族たちも、南の海で国を守るため日々精進している娘や姉、妹たちの思いをやがて受け取るのだ。

 

そして見張兵曹はまず松本兵曹長に手紙を渡した、兵曹長はことのほか感激して兵曹をがっと抱きしめると「ありがとうトメ!俺はこげえに心こもった手紙をもろうたことは今までない!嬉しいぞ!」と叫んだ。さらに麻生分隊士は、「オトメチャン、なんて可愛いんだ!」と叫んで・・・分隊士の私室にオトメチャンを引きこんだ。

それからあとはお定まりの・・・!

 

         ・・・・・・・・・・・・・・・

 

それぞれの手紙騒動でした。後を引きそうなのは岩井少尉、花山掌航海長、そして森上参謀長か?うーむ、野村副長あたりも意外と・・・!?

内地に帰ったらまたひと騒動ありそうですね。


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● COMMENT ●

荒野鷹虎さんへ

荒野さんこんばんは!
腱鞘炎は厄介ですね、私もよくやるのでその辛さはよーく分かります(泣)。どうぞお大事になさってくださいね。
あまりご無理なさいませんよう。
寒さも厳しいですね、御身大切になさってくださいね^^。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
手紙の時代、人は今より優しかった気がしてなりません。
手間をかけ、心を込める分相手と様々な感情を共有できました。Eメールではちょっと出来ないことかもしれませんね。

習字と言えば最近学校では習字に時間ってあるんでしょうか??私たちはしっかりありましたね、習字の道具を忘れると「お仕置き」がありました。中学の時、先生に顔に墨を塗ったくられました(-_-;)・・・

でも字がきれいだと確かに身を助けるときがありますね。字はきれいに書こうっと・・・。

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは。
そうだ、使用済み切手を集めて学校に持ってったりしましたね。50円切手、私もあれが一番印象に残っています。確か、どこかのお寺の鐘みたいな図案でしたね。今封書っていくらでしたっけ??80円??

そうそう、授業中に手紙まわしてましたね!中学とか高校のころ、それでその内容に笑ったりら笑わしたりして先生に見つかって取り上げられたり(-_-;)。懐かしいなあ!!!
『大和』のみなが手紙の回しっこ、いいですね、そんな平和が早く来ますよう^^。

見張り員さんへ!!

何時もご訪問応援有難う御座います。!他事ながら、腱鞘炎も中々思うように成りませんが、寂しくなり、更新してみましたが左手や右手一本の指での文字記入には苦労します。汗)何とかできるようになり、嬉しくなりコメントしました。宜しくお願いいたします。!☆!!

みんなそれぞれの思いを家族や愛する人に手紙にかえて伝える。
今に比べると手段はとてもまどろっこしいですが良い時代でした。心がこもっていますもんね。
樽美酒さんの妹さんに寄せる優しさと病気が回復しつつある喜び。そしてトメキチやマツコたちの活躍ぶりも妹さんをさらに元気づけるために書き添える。やっぱり手紙は素晴らしいです。なんだか久々に手紙を書いて送りたくなりました。でも彼女たちのように達筆ではないので自分が書いた字があとで読めないことも……。
やはり今の子たちにも言えますが習字って大切ですね。いつか必ず身を助けますもん。

こんにちは。色の変わってしまった手紙の束とかいいですよね。私は使用済切手を集めていたので、封筒から切手をチョキチョキ切り抜いてしまいましたが、切手も時代が現れていてまた…私が文通を始めた頃は封書は50円だった気がします。
あとオトメちゃんの手紙を読んで思い出しましたが、学生の頃、授業中に手紙を回したりしませんでしたか?大和のみんなが女子学生みたいに手紙をまわしたり交換日記したり…そんな平和な時代がきたらなぁ、と思いました。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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