「女だらけの戦艦大和」・副長の園2

――『間宮』型給糧艦三番艦、「多羅湖」の艦橋で微笑む人こそ・・・

 

その人こそ、「多羅湖」の助平(すけひら、と読んでください)ゑ露須(えろす)艦長その人である。助平という苗字にピンと来たであろうか、そう彼女はいつだったかオトメチャンを思いのままにしようとした助平得露(すけひら えろ)参謀の妹である。

(ちなみに言えば助平得露女史は海軍を退職し、そのあとオトメチャンと麻生分隊士を軟禁し事件を起こした後、行方は知れないという・・・)

その助平艦長、艦橋に立って双眼鏡で行く手を検分している。

彼女はトレーラー入港を心待ちにしている。たくさんの在トレーラー艦艇の将兵が我が「多羅湖」の入港を今か今かと待っている。その心に応えたいという気持ちもたくさんあり過ぎるくらいあるのだが・・・

彼女の心待ちは、ほかにもあったのだった。

 

「女だらけの大和」では指揮所で見張り員たちが周囲を警戒している。そんな中で右舷の小泉兵曹が声を張り上げた。

「なあ、オトメチャンよ」

その声に左舷のオトメチャンも双眼鏡からは目を離さないままで「なんね、小泉兵曹」とこれも声を張り上げて答える。小泉兵曹は双眼鏡を右に五度水平に動かして

「なあ、いつになったら来るんじゃろ。『間宮』の三番艦とかいう艦」

と言った。『間宮』三番艦・「多羅湖」入港の話はすでにトレーラー在泊艦艇のすべてが知っていて誰もが心待ちにしている。『間宮』のように大量の羊羹、豆腐やもなか、まんじゅうやアイスクリームなど作っているのだろう、「はよう食べたいのう」というのがすべての将兵たちの思いである。

オトメチャンは上空を見ながら

「ほうじゃねえ、いつじゃろうか。松岡分隊長に聞いたんじゃが分隊長もようわからん、知らん言うとったねえ。航海長あたりがしっとりんさるんじゃないかねえ?いうても航海長もよう知らんかもわからんね」

と答えた。小泉兵曹は「ほうね。ほいじゃけえ艦長や副長たちはうちらに『よう見張れ、よう見張れ』いうてうるさいんじゃね。ちいとは自分たちでも見張ったらええのにねえ」と言ったが艦長や副長だって皆忙しいのだからそんな暇もあるまい。

そこに松岡分隊長がハッシー・デ・ラ・マツコやトメキチとともに上がってきて、

「いやあーみなさん!今日も熱くなってますねえ、その調子で一刻も早く『間宮』三番艦を見つけて報告してくださいね!・・・そうだ一番に見つけた人にはこの松岡から愛を込めた贈り物を進呈しようじゃないか!」

と言った。マツコがくちばしをガタガタ言わしながら、

「あら。マツオカの愛のこもった贈り物って何かしら?あたしがそれを欲しいわよ。アタシも頑張ってその何とかの三番とかを見つけようっと!」

と言ってホホホと笑った。トメキチがマツコを見上げて

「おばさん『間宮』三番艦わかるの?」

とたずねるとマツコはトメキチをジロりとみて、「あんたまたあたしをおばさんって言ってるじゃないの!」としかった後、

「アタシに不可能はないってことよ。三番艦でもサンバルカンでも来いっていうの!」

と言って翼を開いてバサバサ羽ばたいた。トメキチが「サンバルカン??」と首をひねるがマツコはトップに舞い上がると、

「なんだっていいじゃないの、語呂がいいから言っただけよ。ちょっとなんだかかっこよさそうな言葉だと思ってさ・・・いちいち突っ込み激しい犬ねえ、あんたも」

と言ってから遠近(おちこち)に視線を走らせる。トメキチは、「どこかの国の戦艦の名前みたいだね」と笑ってオトメチャンの隣に立っている。

青い海を伝わってきた風が指揮所を通りぬけてゆく・・・

 

その頃、所用で上陸していた野村副長は、『武蔵』の加東副長に出会っていた。

「お久しぶりです」とあいさつを交わしてのち、野村副長は切りだした。

「副長会とかいう電報を受け取りましたか?」

すると加東副長は深くうなずいて、「受け取りましたよ。いったいあれは何なんでしょうね・・・あ、もしかしたら三番艦に勤務の我々の同期の誰かが企画したものかもしれないですね。それとも誰かどこかの艦の、気のきく艦長が『副長たちの懇親会でも開いてやろうか』というような感じで企画したとか。それならいっそその時<副長倶楽部>とか結成しますかね。戦艦の操舵長たちは<舵長倶楽部(だちょうくらぶ)>とかいうのを作って時々上陸の時逢って飲み食いしてるらしいですからね」と言った。

野村副長は、

「だ、舵長倶楽部ですか」

と言って笑った。なかなかネーミングセンスがあると副長は思った。海軍の将兵は上から下までウイットに富んだ連中が多いね、さすがだよ。

「で、」と加東副長は笑いを収めた野村副長に言った、「れいの三番艦とやらいつ入港なんでしょうね。皆楽しみにしていて気もそぞろで困ったものです」。

「確かに」と野村副長は言った、「見張りを厳にさせて乗組員には見つけ次第全艦に報告するからと言ってはあるんですがね、何せ『間宮』は人気女優並みのモテようですからねえ」。

そう言って笑う野村副長はなんだかかわいい・・・加東副長は(この人なんだか最近とても可愛いなあ。恋してる!?まさかまさか、だれに?・・・ハッ、『大和』のおぼこ兵曹にか?でもあのおぼこ兵曹はライバルが多いと聞いたからなあ~、野村さんハードルの高い恋してるんだなあ。だとしたらおぼこちゃんの気を引くためにも素敵にならないと洟もひっかけてもらえないもんなあ。うーん、偉大なり恋の力!)と勝手に思って納得している。

その加東副長を見て野村副長は、(加東さんってなんだかとても清楚な感じでいいなあ。そう言えば加東さんは猪田艦長といい仲だって聞いたけど・・・。やはり恋の力ってすごいね。こんなに人を変えてしまうんだねえ)とこれも勝手に納得している。

確かに以前の加東副長は理屈っぽくてあまり融通の利く方ではなかった。兵員からの評判も今一つで「糞パッキン副長」と陰口をたたかれていた時もあった。

が、猪田艦長と心通わすようになってから人が変わったように柔和になり融通も利くようになったと野村副長は『武蔵』の同期から聞いていた。

(これは、その副長会とやらの時ぜひ突っ込んで聞いてみたいものだ)

野村副長は心に決めてその日は加東副長と別れたのだった。「副長会とやらを楽しみにしてようね」と言って。

 

そしてその日から五日ののちのこと・・・

「『間宮』型艦船入港、『間宮』型艦船入港―」

という見張兵曹の声が『大和』の艦上に響いたのだった――

 

           ・・・・・・・・・・・・・・

 

忙しい中でも副長は可愛げを忘れない。艦長の片腕として大変であるからこそ・・・!

それにしてもいったい助平さんとは何をお考えなんでしょうか。次回その考えがあらわになります。

サンバルカンってこれですね、マツコサン。 
(画像お借りしました)サンバルカン

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すっとこさんへ

すっとこさんこんばんは!

いつもありがとうございます、そして名前が大変ウケてうれしゅうございます~~殿ぉ!
私の頭の中は全く変でございまして、主成分は帝国海軍が70パーセント、陸軍が25パーセントという構成ですw。
あとは、ご想像を^^。

さあ、いったい何が起きるでしょうか今後をお楽しみに~~!!

NoTitle

タラコのスケベエ・・・・
あ、じゃなかったすけひらさんですね!

なんだか名前が可笑しゅうて仕方ありません。

まら様(あ、いけない、まろ様だった!)
もおっしゃってるように いったい見張り員さんの
頭の中はどげなことになっておらっしゃるのでしょうやら。

ますます混沌のエロスな展開!!あはは!!

オスカーさんへ

オスカーさんおはようございます。
サンバルカン、私の従弟が大好きでよく主題歌を歌っていましたがそれが子供らしい聞き違いが多くって今改めてきちんとしたのを聞くと大笑いになります。その従弟もこの春にはお父さんになりますから、歳月人を待たずとはよく言ったものだと…。

さて、助平さんが出てきたら物語は大ごとになる気配が濃厚です!!
次回をお楽しみに~~!!

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんおはようございます。
この「助平ゑ露須」、「舵長倶楽部」のネーミングは自分でも気に入っています^^。こういう名前を考えるのは時に悶絶しながらの作業ではありますが決していやではなくあれこれゴロを合わせたり感じの組み合わせを考えたりと楽しい作業であります!

さて、この「助平」さんが出てくるとたいがいろくなことが無いのが「女だらけの~」の通例です。今回も大ごとの気配が・・・!

昨日今日と東京は「冷たい」です…ブルブル…もしかしたら明日は雪かもと!?
いつもお心づかいをありがとうございます、にいさまも御身大切になさってくださいね。

こんばんは。サンバルカン、見ていました。黄色はやはり「カレーの人」でしたよね(笑)懐かしい~!物語はまだまだ謎のまま…うーん、気になる!!

NoTitle

いいなぁ、スケベにエロス!!
どこからそんなのが生まれてくるのやら見張り員さんの思考は抜群です。
舵長倶楽部も!!
なんだかワクワクしてきました。次から次に起こる珍事件や珍現象の数々。戦どころではありませんが、その方が安心して彼女たちを見ることが出来ています。ますますの大騒動を期待しています。

三寒四温のここのところです。お体をいたわってお過ごし下さい。
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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