「女だらけの戦艦大和」・副長の園1

「女だらけの戦艦大和」、同「武蔵」は今日もトレーラー環礁にその身を浮かべている――

 

ある日第一艦橋にいた野村副長は梨賀艦長から、

「聞いた?『間宮』の同型艦の三番艦が出来てこっちに向かってるらしいよ。もう数日うちには入港だそうだ」

と聞かされた。ほう、と声をあげて副長は艦長のそばに立った。艦長は胸に下げた双眼鏡を目に当てていたがそれを海図台に置いて副長を見て、

「『間宮』型が三艦あれば食糧の補給も楽だろうね。『間宮』と『伊良湖』だけじゃあ足りないんだよね。我が海軍は太平洋の海をほとんど凌駕しつつあるからね。・・・そう言えば『間宮』はインド洋に行っていると聞いたが・・・」

と言った。副長はうなずいて、

「聞きました『間宮』のこと。それに機動部隊の噂も。何でも『飛龍』がこの節分にすごいことやったそうですよ」

と言った。梨賀艦長は「すごいこと?」と言って興味をそそられたらしく副長を窓辺に誘った。そして「何すごいことって?」と先を急ぐ。

副長は、

「豆まきはまあ当たり前ですが、何でも<あほう巻き>とかいう長い、それはそれは長い巻きずしを飛行甲板に作って総員で食べたらしいんですよ。『間宮』からも食材を買って。それがまあ、おいしかったそうで・・・」

と言って最後はいかにも食べて来たようなおいしそうな顔つきになってその瞳は宙を見つめる。その副長を艦長は(この人ほんと、可愛いなあ)と思いながら見つめ、

「ふーん、しかし変な名前の巻きずしだねえ。<あほう巻き>なんて食べたらあほうにならないかね?」

と言って大きな声で笑った。副長も笑った。そこへ森上参謀長が入ってきて、

「なーにをでっかい声で笑ってるんだね」

というとタバコに火をつける。梨賀艦長がこれこれこうだ、と教えてやると参謀長はええ?と目をむいてから

「梨賀のほうが<あほう>だね。あれは<恵方巻き>って言うんだよ。そのくらい調べとけよ全く」

と言って笑い、タバコを吸った。タバコの先が赤く燃えた。

それを見て梨賀艦長も海図台の引き出しから<櫻>を取り出し、一本引きだすとその先に火をつけた。二人の煙突女は紫煙を吐き出して「んー、うまい」と唸っている。

副長は少しは吸うものの、それほどタバコは好きではないのでその場をさりげなく離れた。二人が盛んに煙をあげ梨賀艦長が次々に新しいタバコを箱から引き抜くのを見てから一人、防空指揮所に上がった。

(たまには指揮所の様子も見て置かなきゃいけないからねえ。副長の務めの一つよ)

と思いつつも本心は見張兵曹に会いたいからである。

副長は、南方の日差し厳しい指揮所に入った。すると、石場兵曹がいて「副長!」と言って敬礼した。それに優しいまなざしで返礼した副長は、ゆっくり指揮所の中を歩いた。

見張兵曹を探しに来たというのを気取られまいとわざと上を見たり、固定してある双眼鏡をのぞいてみたりして。

左舷には今は石川水兵長しかいない。

(つまんないなあ)と副長ががっかりしかけた時、「石川水兵長、交代の時間じゃ」という声がして見ればお目当ての見張兵曹が来ている。

見張兵曹は副長に気がつくと、敬礼をした。その顔を見て副長は(かわいいなあ、なんて可愛いんだろう。麻生少尉はいいな、こんなかわいい子をものに出来て)と思う。

見張兵曹は自分の配置の双眼鏡の前に立ってそのレンズをポケットから出した布で丹念に拭いた。その手つきさえも副長には可愛くそしてそそられるものである。

が、気取られてはならない。

なぜなら副長の後ろに麻生分隊士が立っているのに気がついたからである。麻生分隊士は見張兵曹の少しあとから指揮所に入ってきていた。

「副長」と言ってこれも敬礼した後、

「どうなさいましたか副長、何かここに不都合がありましたか?」

と少し心配げに言った。副長が来ることはほとんどないから麻生分隊士としては気が気ではない。それを悟って副長は、

「いやいや、不都合なんかないよ。たまにはここに上がってみたかっただけでね。ここは対空戦闘時の要だからね。きちんと見ておきたいだけだよ、心配しなくていい」

と言ってやった。麻生分隊士の瞳にほっと安堵の色が浮かんだ。副長はそれを見て、

「では、邪魔をしたね」

と言って微笑むと踵を返した。その場の皆が敬礼で見送る、麻生分隊士は(野村副長って時に可愛い表情するんじゃなあ。ほいでも!うちのオトメチャンの足元にも及ばんがのう)と思って最後はニヤニヤしている。

その顔を目ざとく見つけた石場兵曹が

「麻生分隊士、また何ぞいやらしいことをお考えですかのう?それともオトメチャンと副長を比べておったんですか?」

といい、麻生分隊士は

「そがいなん、考えとるわけなかろう!ほいでなんでうちが副長とオトメチャンを比べにゃあならんのじゃ!オトメチャンは誰とも比べもんにはならんのを貴様しっとろうが!」

と言ってその背中をどやした。石川水兵長が大きな声を立てて笑い、見張兵曹は困ったようにほほを染めてうつ向いた。

 

副長は下に降り、前甲板を歩いた。防暑服から出た腕や足を、トレーラーの日差しが焼くがいつものように「美白」クリームを塗っているから平気なのだ。

副長は前甲板の設備を点検しながら歩いた。

朝礼台に使っている通風口のあたりまで来た時、後ろから副長の従兵が「野村副長―!」と追いかけて来た。副長は

「どうしたね、何かあったのか」

と立ち止まって聞いた。従兵は礼をしてから一通の電報を差し出した、そして

「ただ今通信室から副長当てに」

と言った。ありがとう、と副長は言って電報を見た。そこには

>新型給糧艦入港後、トレーラー在泊艦艇の副長会を開催予定。詳細は後日。

とだけ書いてある。副長は従兵を見て、「これはどこから発信されたのだろうか・・・発信先がないな」と言ったが従兵も首をかしげて

「はい。通信室では新型給糧艦から発信されたのではないか、と言っていますが詳しい相手まではわからないそうであります」

と申し訳なさそうな顔で言った。副長は「そうか」というと従兵に「ありがとう、ご苦労だった」と言ってねぎらった。

従兵が立ち去って、その場に一人残った野村副長は改めて電報を見た。(トレーラー在泊艦艇の副長会、ねえ。一体だれがこのようなことを企画したんだろう)

 

それと同時刻、「女だらけの武蔵」でも加東副長が通信長から

「加東副長、先程このような電報が入りました」

と、『大和』の野村副長が受け取ったのと同じ電文の電報を渡された。「ありがとう通信長」と言って受け取った加東副長はその電文を読んで

(なんだ、これは?いったい誰がこんなことを企画したんだろう?)

と首をかしげる。

さらに同時刻、トレーラー在泊の巡洋艦・駆逐艦の副長あてに同じ電報が届いていた。一様に首をかしげ「いったいどういうことなんだろうか」と不思議がる副長たち。

 

トレーラー在泊艦艇の副長たちが首をかしげているその頃。

『間宮』三番艦「多羅湖(たらこ)」の艦橋では

(フフフ。もうすぐトレーラー!トレーラーに行ったらまた楽しいお遊びができそうね~)

とうれしげな人影が一つ――。

 (次回に続きます)

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

いったい何なんでしょう。副長たちに謎の電報が届きました。

そして『間宮』三番艦「多羅湖」の艦橋にいる人とこの電報は何やら関係ありそうであります!次回をご期待下さい!
『大和』。やっぱりカッコいい・・・(画像お借りしました)。
大和


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Comments 2

見張り員">
見張り員  
オスカーさんへ

オスカーさんこんにちは!
『副長』で検索かけると絶対新撰組の土方さんがヒットしますね。これはもうある意味当たり前の現象ですね^^。
新撰組のファンの方多いですよね、祖母の墓のある調布は新撰組のふるさと!みたいな感じで以前のぼり旗がたくさん立っていましたが今はどうかなあ?今度行って確かめてきましょう!

さあこの『副長会』、どんなものなのでしょうか。
じつは・・・ホホホ(マツコ風)。

2013/02/11 (Mon) 10:55 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
オスカー  

おはようございます。副長というと土方さんを思い出す新撰組ミーハーな私ですが(笑)各艦の副長は皆さま、くせモノであり苦労人でありそうです。バレンタインチョコをみんなでつくるのかなぁ?とか自分たちがチョコの銅像になるのか?なぜかアタマがチョコだらけな私です~何をするのかドキドキです!!

2013/02/11 (Mon) 08:42 | EDIT | REPLY |   

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女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?
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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)