2017-10

「女だらけの戦艦大和」・さらばトレーラー - 2013.01.26 Sat

――のぞき見ではげしい行為を見せつけられた『海きゃん』一行はそのあと町中の遊郭へ行くとその晩は目いっぱい、とことんまで楽しんだのだった――

 

一行は次の日の朝一番のランチで『大和』に帰って来た。

そして梨賀艦長に宿の礼を言い、「おかげさまでいい取材が出来ました、そして大変お世話になりました。私たちは今日でここからおいとまいたします」と別れを告げた。

梨賀艦長も野村副長も、森上参謀長も少しさみしそうな顔になって、

「そうですか・・・なんだか寂しくなりますね。内地に帰られたらぜひいい本を作ってください。待っていますよ!」

と言い、それぞれと握手をした。

そのあと、『海きゃん』取材班は『大和』艦内をめぐって各分隊員たちに別れの挨拶をした。機関科では松本兵曹長が「おお、お名残惜しいですなあ。・・・でもはよう『海軍きゃんきゃん』の新刊を待っとりますけえね。内地に帰ってもお元気で」と言ってその大きな手で取材班一人一人に握手した。

主計科の烹炊所では、

「なんで~!?武田水兵長、ここで仕事するんじゃなかったのお!」

と武田水兵長は一等主計兵や上等主計兵、水兵長たちに叫ばれ、抱きつかれ、泣かれ・・・武田水兵長も大泣きする場面もあった。それを見て殘間中尉ももらい泣きしている。

大和の烹炊員たちは口々に、

「『海きゃん』が嫌になったら、首になったら、絶対ここに来てね!約束よ!」

と言い、武田水兵長は泣きながらも実に微妙な顔つきである。

 

医務科では日野原軍医長が「おお!もう帰っちゃうのか~、残念だなあ。じゃあ今度の『海きゃん』にはぜひわが大和の医務科が優秀であるってことも書いといてよね」と言って名残を惜しんだ。そして日野原軍医長は「役に立つといいが」と言って一人一人に頭痛薬「ノーテン」をひと箱くれたのだった。

そして一行は第一艦橋と防空指揮所に行くためラッタルを上がる。

第一艦橋ではその場の見張り員たちにあいさつし、海図に見入っていた樽美酒少尉に、

「おかげさまでいいグラビアが撮影出来ましたよ、『海きゃん』楽しみにしていてくださいね」

と言って樽美酒少尉はさわやかな笑顔で殘間中尉と握手して

「こちらこそありがとうございました、いい思い出ができました。またいつかお会いできるといいですね」

と言った。袴田兵曹が「樽美酒少尉・・・素敵だなあ」とつぶやく。そして「『海きゃん』専属モデルにしたいよなあ」。

艦橋を出てゆきながら写野兵曹が「あの人もいいが、私としてはやっぱりオトメチャンだなあ」とブツブツ言う。

そして防空指揮嬢に上がればそこではもう配置の皆が待ち構えていて一行を拍手で迎えてくれた。松岡分隊長が拍手しながら一歩前に進み出ると、

「やあ、『海軍きゃんきゃん』の取材班の皆さん!今までお疲れ様でした。そしてたくさんの思い出をありがとうございました!みなさんは仕事に熱くなっていて大変素晴らしいですよ。これからもその熱さを忘れないで頑張ってくれたまえ!

いいかい・・・熱くなれよ!今日からみんなも富士山だーっ!」

と叫んでラケットを振り上げた。写野兵曹が思わず「富士山ですか、景気いいなあ」と言って笑いだし、その場の皆が笑いだす。

その笑いを聞きつけてトップのトップにいたハッシー・デ・ラ・マツコとトメキチが降りて来た。トメキチはマツコの背中に乗っている。

マツコがふわりと一行の前に降り立つとトメキチがその背中から降りた。二匹は並んで立つと『海きゃん』一行に敬礼すると筑紫少尉がトメキチを抱きしめ、三谷兵曹がマツコを抱きかかえるようにした。

マツコは三谷兵曹に抱きしめられつつ「なんか寂しいわねえ、この連中がいなくなると」と言い三谷兵曹の頭をその大きなくちばしでくわえる。

トメキチも「本当にそうだね、マツコサン。僕もさみしい」と言って三谷兵曹のほほをなめ、次いで顔を寄せて来た小林兵曹の顔もなめる。

見張兵曹、小泉兵曹、石場兵曹、谷垣兵曹に石川水兵長に亀井一水たちもそれを見て何か胸の奥がじんとするものを感じている。

麻生分隊士もなんだか普段に似合わない殊勝な表情でいる。その分隊士にそっと近寄った筑紫少尉は

「麻生少尉、例のスポットありがとうございました。おかげでいい目の保養ができましたよ。・・・まさかあんなことが、ねえ」

と言って含み笑いをした。麻生分隊士も「あんなことやこんなこと・・・ありましたでしょう?フフフ」と含み笑いで答える。そして筑紫少尉の耳に自分の曲がった口を寄せると、

「で、例の写真集の件。よろしゅう願いますよ」

と囁いた。筑紫少尉は皆にわからないように麻生分隊士の背中をそっと叩いて「大丈夫ですって。忘れたりしません。綺麗に製本して、あなた宛てに送りますからご安心を」と言って安心させた。

筑紫少尉はそして見張兵曹を見て

「オトメチャン、今度来るときはあなたを『海軍きゃんきゃん』専属のモデルとして迎えに来ますよ」

と言って笑った。見張兵曹は困ったような顔つきで微笑んでいたが小泉兵曹が横から

「おお、ええのう!ほいじゃあ俺がオトメチャンの付き人になっちゃろう。ほいでもええですかね?」

と言うと石場兵曹が必死で、

「いや!オトメチャンの付き人はうちがするんじゃ。小泉みとうな男好きには任せられんで」

と小泉兵曹をけん制したのでその場の皆が声を立てて笑った。

そこに伝声管を通じて、通信科の兵曹から「そろそろランチが出ます、ご準備はええでしょうか」と言ってきた。それに麻生分隊士が「準備よし。今より三分後にランチに乗る」といい、『海きゃん』取材班は一列に並びなおすと

「お世話になりました!ご武運を祈ります」

と敬礼して松岡分隊長を先頭に下へ降りる。

 

露天甲板では梨賀艦長のほか副長、参謀長たちや各科の科長まで居並んで一行を見送る。殘間中尉は中尉らしいところを見せようと皆を整列させ

「『海軍きゃんきゃん取材班』殘間中尉以下七名、これより内地に帰還いたします。長い間お世話になりました!」

と号令をかけ取材班は一斉に敬礼。梨賀艦長はうなずいて一行の一人一人を見つめると

「長い間の取材活動ご苦労であった。無事に内地に着いた暁には『海軍きゃんきゃん』発行に励んでほしい、そして新刊を楽しみにしている。ではごきげんよう」

といい締めくくった。

そして取材班一行は舷門を降りて行った。

艦内では「『海軍きゃんきゃん』一行が帰還する。配置に置いて適宜見送れ」の放送が流れ、外の配置員たちが左舷側を向いて帽子を取ってそれを大きく振りながら

「元気でなー!」とか「また来いやー」「次は十四(うちん)分隊(がた)に取材に来いやー」「気ぃつけてなあー」と叫んで見送る。見送られる『海きゃん』一行はランチの中にあって涙を流して帽子を振り返す。

「ありがとうー!」「また来ます」「わたしたちを忘れないでくださーい」・・・

見送る者、見送られるものそれぞれの別れの言葉が、トレーラの海風にちぎれて舞った――

 

「行ってしまわれましたね」

防空指揮所で、持った帽子を振る手をやっと下に降ろした見張兵曹が誰に言うともなくつぶやいた。小泉兵曹と石場兵曹がその横にたたずんで

「ほうじゃな。・・・あっという間じゃったね。でもいろいろあって楽しかったわ」

と言った。石場兵曹が艦内帽をかぶりなおしてから「うちははよう、新しい『海きゃん』が読みたいわ。いったいどがいな感じに記事になるんじゃろうねえ?」と早くも心は新しい冊子に飛んでいるようだ。

小泉兵曹が

「うちも早う読みたいな。面白い記事満載で陸さんをうらやましがらしたらええねえ」

と言って皆は一斉に笑った。麻生分隊士は(オトメチャンの写真集、いつ出来るかのう。楽しみじゃ)ともう今から心待ちである。

 

トレーラーの海に、『海きゃん』取材班を乗せたランチは走り、やがて潜水艦や巡洋艦が彼女たちを内地へといざなうのである。

 

長い長い、『海軍きゃんきゃん』取材班の旅がそろそろ終わろうとしている。

その頃。

横須賀の『海軍きゃんきゃん』編集部では久しぶりにやってきた山本いそ聯合艦隊司令長官が、取材班が南方に行ったきりまだ帰ってこないというのを聞いてため息交じりに、

「南に行けば長くなる・・・ってだから言ったじゃないの!しょうがないなあ、みんな南方のゆったり時間にならされてしまって」

とぼやいていた――

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

長い長い、『海軍きゃんきゃん』の取材話をこれにて終わります。

さあいつ、新しい『海きゃん』発行になりましょうか、楽しみです^^。そして、『大和』に新しい話が。どんな話になりますかご期待下さい。

 

帽振れー!(画像お借りしました)
帽振れ!


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● COMMENT ●

酔漢さんへ

酔漢さんこんばんは!
お忙しかったのですね、お元気でよかった。

『海軍きゃんきゃん』取材班も内地に向けて帰還いたしました。横須賀に帰還した連中はきっと二日くらい寝たきりになるでしょうw。
刺激の多い取材でしたからね、疲れも出ることでしょうww。

ええ・・・!?揺れが半端じゃなかったんですか『防空指揮所』。まあ確かにあの高さですからねえ、高所恐怖症の私には不向きの職場かもしれませんガーン。
わ足しはいまだに東京タワーに上っていないので揺れるかどうかわからないんですが、武蔵のほうが揺れが少なかったなら・・・やはり大したものだ!日本の造船技術~~!

鍵コメさんへ

鍵コメさんこんばんは!
大丈夫ですよ^^鍵コメさんのご趣旨は理解しておりますから^^私も怒ったりして書いたのではないですからご理解いただければと思います(^_^;)。

ホント、でも苦労させられました学生時代は。
しかし今になるといい思い出です。でも私のことを覚えてるクラスメートが一体何人いるかと思うと・・・自信のない私です(-_-;)。

帽振れ

まめに拝読することが出来ずに申し訳ございませんでした。
実は、自身のブログで語ることはしておりましたが、その間に、面白い出来事がありまして・・・。
その中でも仕事が忙しかったり・・・。
充実した?生活を送っておりました(汗)
さてさて、長い取材が終わりましたね。
一向には「お疲れ様」と言葉をかけたいです。
あんなことやこんなことがあって・・・(どうコメントしようか・・・って・・)
大和の防空指揮所ですよね。揺れが半端じゃなかったと。
「東京タワーの一番上は揺れるそうだが、武蔵の一番上は案外揺れなかった」
日本の造船技術を物語る、古村さんのお話しでした。
(あの位置で、揺れずに指揮が取れる・・・思えば凄いですよね)
取り留めもなく・・・すみません。

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オスカーさんへ

オスカーさんおはようございます!
参りましたね、あの時間の地震!どうか早朝3時4時台継いでの5時台の地震はやめてほしいですね(怒)。そちらは大きかったんではないですか?
しかも目が覚めたら一面雪。空は晴れてはいますが寒いこと…泣けてきます。

「海きゃん」がトレーラーを去りました。なんだかわけのわからない事件ばっかりでした(^^ゞ。でもオスカーさんの
>まるで自分の体験のように感じています
のお言葉にとてもうれしく思っています。ありがとうございます^^。

このあともいろいろな事件や人が出てきます!またよろしくお願いします!!

おはようございます。地震に雪の月曜日、ため息がでますなぁ…お身体は少しはラクになりましたか?
♪さらば、トレーラーよ また来る日まで~…ですね。なんだかいろんなことがあったなぁ、とまるで自分の体験のように感じています。どこにいってもみんな元気で輝いていてほしいなぁ、と思いました。産みの親の見張り員さまはもっとその気持ちが強いでしょうね。これからも「羽ばたく我が子」をたくさん産んで下さいね(笑)

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
居候、はちょっと困りますが(自身の体験から(-_-;))、こうした珍客ならまだいいですね^^。しかしお客さんが帰ったあとのさみしさっていうのはなんだか嫌なものですね。
火が消えたような、というたとえがありますがまさにそれです。
私の娘たちが帰ったあと、母が「火が消えたようでさみしい、年寄り所帯は華が無い」とぼやくこと・・・。

さあこのあと『大和』どうなりますか、お楽しみに^^。

頭痛薬の『ノーシン』が戦前からあったというのを、遊就館で見て知った私です!結構今でもある薬には『大昔』からあるものも多いみたいですね。

いつもと変わらない生活の中に珍客がやって来るとなんだかとっても慌ただしくはなりますが、でも見送った後の寂しさって言いようがないですね。来なければそのままの日々が過ぎていたのに。起伏のある思い出ってそういうものかもしれません。
それにしても海きゃん騒動記、楽しませて頂きました。
これからはどんな話がまた生まれてくるのか楽しみにしています!! 騒動の連続であることには間違いがないようですね。
頭痛薬「ノーテン」!! よくもまぁ閃くもんだと、見張り員さんの命名にはもう脱帽です。いつまでも冴えていてほしいです。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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