「女だらけの戦艦大和」・トレーラーの奇人変人6

「女だらけの戦艦大和」は、穏やかな正月をトレーラーで迎えている――

 

正月とは思えないような真夏の日差しの露天甲板で、『海軍きゃんきゃん』取材班一行はこの先の取材予定を整理していた。

殘間中尉が今までの取材記事の詰まったカバンを持ち出して来て、原稿をあれこれ出しては仕舞う。それを見て武田水兵長が、

「殘間中尉、あれこれ引っ張り出してなくさないでくださいよ」

と半ば冗談・半ば本気で注意した。殘間中尉はハッとした顔つきであわてて原稿を仕舞った。筑紫少尉は

「さあ、もうこれだけ取材したら相当な厚さの本になるね。もしかしたら二号に分けて発行するようかもしれませんね。となると『海きゃん』初の試み!いいですねえ~、陸軍の連中がうらやましがるかもしれませんよ」

とうれしげな顔つきでいい、三谷兵曹が「陸さんにはこういう雑誌、ないんですかねえ?」と言った。それを受けて小林兵曹が、

「ああ、陸軍さんにもあるはあるらしいですがね?私の姉が陸軍なんで聞いたんですがあいまいな答えしかしないんですよ・・・どうしてかな?」

と答え、袴田兵曹はポンと膝を打つと

「それは一度検証する必要がある!小林兵曹、ぜひお姉さんに頼んでその雑誌を手に入れないといけない!」

といい一同その気になる。

「ともあれ、」と殘間中尉が口を挟んだ。「この先の予定を立てないと。あとどこを取材して終わろうか?」

ウーンと一どう考え込んだが武田水兵長が「そーだ!」と叫んで皆は武田水長の顔を見た。

水長はその場から立ち上がると、はるかトレーラー・水島を指差した。そして、

「あの島の奥の方へ行ってみましょうよ。まだまだあの島にはわれわれの知らないものがあるような気がします。たとえそれが凶暴な動物でも、変態人間でも我々はそれを取材して広く全海軍に知らしめるのが使命です」

と言ったので小林兵曹と三谷兵曹が拍手した。

殘間中尉は<凶暴な動物><変態人間>という語にいやな予感がしたがそれをおくびに出さないでうなずいて、

「よし。ではトレーラー・水島の奥地の取材でここトレーラーを終わろう」

といい、取材班は明日の皆の上陸に合わせて取材を敢行することにした。そうと決まれば、明日の準備。写野兵曹はカメラの点検と新しいフィルムの補填を急ぎ、三谷・小林・袴田兵曹は取材用の手帳の新しいのを用意し、武田水長はボールペンを準備し各人用の小さな<取材用袋>に入れてゆく。

筑紫少尉は明日の皆の簡単な食料――缶詰だとか羊羹だとか――を『大和』の酒保で購入。酒保の係の兵曹に「おお、『海きゃん』の士官さん!ここの酒保の事も書いといて下さいよ、品ぞろえがよくって主計科員一同張りきってますってね、いいですか書かなきゃだめだよ!」と言われ「はいはい、わかりました。書きますよ!」と約束する筑紫少尉。

全く『海きゃん』の士官たちは士官らしさを感じさせないのか、下士官から友達のように扱われているのが『大和』の士官たちには可笑しいやら気の毒やら。

 

そして翌日。

大勢の上陸員たちに交じって『海きゃん』取材班も短艇の上に。これがトレーラーでの最後の取材と思うと何かもの寂しいような気さえする。

短艇は真っ青な海を、波を蹴立てて進む・・・

 

短艇には見張兵曹や麻生少尉、小泉兵曹、松本兵曹長なども乗っていてにぎやかである。麻生少尉は筑紫少尉に「ほうですか、これでここの取材も終わりですか・・・さみしゅうなりますなあ」などと話をしている。

「ほいで」と麻生少尉は筑紫少尉の耳元にそっと、その少し曲がった口を寄せると「うちのオトメチャンのグラビア写真は、きれいに印刷してくれなきゃいやですよ。・・・ほいでもしできるなら、うちだけに特別に写真集を作ってくれるとええんですが」などととんでもない提案をしている。

筑紫少尉は「でも、あなただけに特別なことをするわけには・・・」と少し渋ったが、麻生少尉に「取引、言うわけではないんじゃが、もしうちの願いを聞いてくれるならこの島でのええのぞき見スポットを教えてあげてもええんじゃが」とこれまたとんでもない取引を申し出た。

「の、のぞき見スポット!?」

筑紫少尉の声が上ずり、麻生少尉はあわてて筑紫少尉を抑え込んだ。筑紫少尉はズレた軍帽をかぶりなおすと麻生少尉を見つめ、

「教えて下さるならあなたにだけ、オトメチャンの写真をきちんと製本して差し上げましょう。もちろんこれは私一人の胸に仕舞っておくことで誰にも言いません。約束します」

と言った。麻生少尉は筑紫少尉の瞳の奥をじっと見つめ、「女に二言はありませんじゃろうのう?」と念を押し、筑紫少尉は「無論です」といい二人はそっと指きりげんまをする。

麻生少尉は「あの島のこの辺のこのあたりの草むらに潜んでいれば『大和』や『武蔵』、そのほかの艦艇の連中の様々な痴態が見られる。嘘でない、うちはもう何度も見てそのたびに刺激されとる」と詳細を教えてやった。

筑紫少尉はもう鼻血を出しそうな真っ赤な顔になって「ふむ、なるほど。では早速行こう。時間は何時でも平気でしょうかねえ」といい、麻生少尉は「大概の時間平気です。ただあまり暗うなってからではよう見えませんからご注意を」といい二人は笑いあったのだった。

見張兵曹は、写野兵曹に付きまとわれて写真を撮られまくっている――

 

短艇は上陸場に到着してそれぞれ、思い思いの方向に散ってゆく。

麻生少尉は見張兵曹を伴って、「ほいじゃあ皆愉しめよー」と皆に言って手を振る。そして二人肩を並べて歩き出す。

それを見て松本兵曹長が、「あの二人はいつも一緒じゃなあ。絵になっとって、ほんとにええわ」と腕を組んで見とれている。その横に立った小泉兵曹が、

「ほうですねえ。いうか松本兵曹長、本当はオトメチャンに気があるんと違いますか?」

と余計なことを言って「あほか!」と兵曹長に背中をどやされる。「痛てえ」といいながらもうれし楽しい正月休みである。

 

そして『海きゃん』一行は、トレーラ・水島の奥深くへ向けて歩きだすのであった。

筑紫少尉は(のぞき見スポット、のぞき見スポットーー!これは誰にも言いたくないなあ・・・でも一人で言っても取材ができないよなあ、どうしよう・・・)とひとり悶々としているが。

他の連中は丸で遠足気分のようで浮き浮きとしてはしゃぎまくっている。殘間中尉一人が、

(ああいやだなあ。変な動物とか変な人とかたくさん出て来ちゃったらどうしよう。私もうこんな変なところいやだよ、早いところ取材して内地に帰りたい・・・)

と心細い思いをしている。

 

そんなそれぞれの思いを抱え、『海きゃん』取材班はいよいよトレーラー・水島の奥地へとその一歩を踏み込んだのであった。

 

歩くうちに、周囲の木々が深みを増してきた。草でさえ、その背丈を伸ばし始める。日差しが徐々に遮られはじめ(いかにも南方のジャングル風になって来たね。いい感じいい感じ!)と思う一行である。

どのくらい歩いたか・・・道なき道を進むうち不意に袴田兵曹が立ち止まった。

「どうした、」袴田兵曹、と言いかけた筑紫少尉の口を袴田兵曹は塞いだ、袴田兵曹は真っ青になってひくい声で鋭く言った。

 

「誰か・・・何かがものすごい勢いで走ってくる・・・!!

 

一同の間にすざまじい緊張が走った――

 

            ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

『海きゃん』トレーラー取材もいよいよ最後になったようです。

が!なんだかひと騒動起こりそうな予感。そして・・・麻生少尉の教えた<のぞき見スポット>とは一体・・!?

次回をお楽しみに^^。

ジャングル

ジャングル(画像お借りしました)。私はちょっと・・・苦手かも!?



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Comments 6

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見張り員  
オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
「のぞき見」というとどうしてか何故か胸のときめき?を感じますね~~って変態か?

そういえば「デバカメ」って言葉、あれはもう死語ですかねえ??
よく新宿中央公園は「デバカメ」がたくさんいる!という週刊誌のヨタ記事が昔はありましてこっそり読んだものですが(^_^;)

さて「海きゃん」一行は何を見るのでしょうか。ご期待を!

2013/01/13 (Sun) 18:50 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
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見張り員  
鍵コメさんへ

鍵コメさんこんばんは!
情報をありがとうございます。
この方のお名前は存じ上げませんでした(^^ゞ・・・さっそく本を購入してみますね。
あの当時の人たちの生き方や書き残したものにはかんがえさせられるものが多々ありますね。
今を生きる我々はそれをどう読み解くか・・・

今年も考えてみます!

2013/01/13 (Sun) 18:47 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
オスカー  

こんにちは。のぞき見スポット!!昭和感がたっぷりありますね(笑)障子紙に穴をあけたり、壁にコップの世界…なんか楽しい!しかし「何を」のぞき見できるのか?気になります!!

2013/01/13 (Sun) 11:55 | EDIT | REPLY |   
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2013/01/13 (Sun) 00:15 | EDIT | REPLY |   
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matsuyama さんへ

matsuyama さんこんばんは!
「女だらけの大和」にも正月休みはありますよ~~^^。

でも、南方の正月とかクリスマスって全くイメージ湧きませんね。特にクリスマスって「雪」のイメージが強いですからね(-_-;)
日本の正月は「冬」、冬に限りますね!

年末年始から酷い風邪、しかも高熱付きで寝込んでおりました。やっと目鼻がつき始めたらまた…という感じですw。

matsuyama さんも寒さ厳しい折からご自愛くださいませ。

2013/01/12 (Sat) 21:53 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
matsuyama  

「女だらけの戦艦大和」にも正月休みはあるんですね。
南の国の暑い正月って、正月らしさを感じないのは、冬の正月しか体験してない者の認識不足なんでしょうかね。クリスマスでもそうですが、汗をかきかきプレゼントを交換し合ったり、炎天下で餅を撞く姿はイメージが湧いてこないですね。
南半球に住んでる方々はそれが当たり前なんでしょうけどね。やっぱり日本の正月は寒い冬、ですよね。

見張り員さん正月体調崩してませんか。今年は特に寒さが行き渡っているようですから、お気をつけくださいね。

2013/01/12 (Sat) 16:45 | EDIT | REPLY |   

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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
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(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)