「女だらけの戦艦大和」・『海軍きゃんきゃん』取材班来る!2

「海軍きゃんきゃん」編集部の選りすぐりの数名が、広島県は呉の潜水艦基地からそっと、南方にむけて出航した――

 

彼女たちはここから太平洋に出て東に進路を取って、小笠原諸島父島の基地に行きそこで巡洋艦でマリアナ諸島にいたりまず、グアム基地の陸戦隊を取材。そのあとトレーラー諸島に『大和』『武蔵』などの聯合艦隊期待の星を取材の後さらにニューブリテン島のラバウル航空隊の美鷲たちを取材して回る予定である。

しかし・・・

彼女たちは海軍軍人ではあるが一度も艦隊勤務に着いたことがないという連中ばかりなので、ある程度予想はできたものの――部員全員が船酔いするという事態に陥ってしまった。ただでさえ忙しい潜水艦の乗組員は彼女たちの世話にまで追われる羽目になり、伊号580潜水艦の橋本艦長は、

「山本長官の直々のお申し出だから受けたけど、こんなに手のかかる連中は正直嫌だ。どうせ乗せるなら伊号800潜みたくおめでたの下士官を乗せたかった・・・」

とくさった。が、もう艦は出航してしまったから致し方もない。不幸中の幸いは、この580潜が作戦行動に行くのではないということだけだ。何をしに行くかと言えば、伊号580潜は父島で同型艦の伊号582潜と交代して父島の基地にしばらくいることになるのである。

ともあれ。

出航後三日目の晩になってやっと船酔いに一段落ついた『海きゃん』編集部員は艦長に勧められて浮上航行中の潜水艦の上に出てみた。

橋本艦長は「どう?初めての潜水艦は。この航海の感想も乗せてほしいもんだねえ」と言って笑う。編集部員の一人、――殘間中尉――はうなずいて、

「もちろんですとも!私たち初めて海に出たものの船酔いの苦しみと其のあとの爽快感、そして潜水艦の乗員の皆さんのご苦労や活躍を書かせていただきますよ!」

と言い、別の編集部員――撮影班の写野兵曹――が艦上に見張りの為に出て来た兵員たちをカメラで撮りまくる。そのたび、見張りの兵が何気なくポーズをとるのが殘間中尉には可笑しくて仕方がなかったが。

写野兵曹は艦上を走り回ってはシャッターを切る。あまりにちょこちょこと走り回るので艦長から「海に落ちたらこの暗さだから探せない。死んでしまうよ」と脅され自重。それでも「いいシーンが撮れました」と殘間中尉に報告。

 

その夜も更けて消灯の時、編集部員は編集会議を終えて寝に着いた。そのさい小林兵曹長が、

「私は早くトレーラーに行って『大和』と『武蔵』を見たいですね。どれほど大きな艦なのか、まだ実際には見たことないですからね」

と言い、ほかの皆も「そうだそうだ。私は『長門』しか見たことないから『大和』型が見たい」と大騒ぎ。そこを潜水艦の航海士に、

「しーッ!静かに。もう消灯時間なんだから静かにしてっ!当直以外は寝てるんだからねっ!」

と怒られてしまった。

恐縮して寝台に体をうずめる『海きゃん』編集部員たち。機関の音を聞きながら眠りに着いたのだった・・・

 

その頃、広島県柱島泊地の『長門』艦内では、山本いそ聯合艦隊司令長官が舷窓から月を見上げながら

「上手くやってるかなあ。あの連中艦に慣れてないからそれが心配だが・・・まあ慣れるしかないな。そのうち慣れたらあちこち行ってもらおうっと!」

と言って笑いながら玉露をすする・・・。

 

そして彼女たちにとっては長い長い、つらいつらい潜水艦での旅は終わりを告げ巡洋艦に乗り小笠原父島を出港、太平洋の荒波にほんろうされ再び船酔いに苦しみつつ、やっと、ようやっとグアムに着いたのだった。

 

「ハアハア・・・殘間中尉。グアムですよ、やっと着いたんです」

編集部員の筑紫少尉が真っ青な顔にそれでも喜悦の色を浮かべて医務室の殘間中尉に報告に来た。殘間中尉はもう船酔いの極致に達しており父島出航後からほとんど食事を取っていない。かろうじて水分は取れていたものの脱水症状を呈していた。

殘間中尉は、医務室のベッドからそっと頭をあげた。顔色は筑紫少尉より青い。その顔に薄い微笑みを浮かべると

「グアム・・・。グアムに着いたんですね、本当に。筑紫少尉、本当ね?」

と何度も念を押し、そのたびに筑紫少尉は「そうですよ、グアムですよ」とうなずいた。

一行が間借りした巡洋艦・「無智」はグアム島の沖に投錨し、一行はようよう荷造りを終えるとその翌日ランチでグアムに降り立ったのだった。

 

殘間中尉他はやっと生気を取り戻した顔で巡洋艦「無智」の漕艇員にあいさつするとまずは「宿に行って余計な荷物は降ろそう」ということで、山本長官が取っておいてくれたというホテルを目指した。

殘間中尉はまぶたに青さを残してはいたが、ようやく人心地ついたようで青い空を見上げてふうっと大きな息をついた。

背後ではこれも青い海が陽光にきらめいている。

写野兵曹が、

「みなさん。せっかくですからここで海を背景に一枚撮りましょう」

と言って、一行は青いグアムの海を背にして並び写野兵曹の構えるカメラに収まったのだった。

 

ホテルに荷物を預けて、

「さあ、グアムの陸戦隊を取材に行きましょう」

となり、一行はぞろぞろとグアム陸戦隊司令部に歩きだしたのだった――

   (次回に続きます)

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・

大変な苦労をして『海軍きゃんきゃん』取材班がまずはグアムに上陸しました!

陸戦隊の取材ということですが何もないといいですね・・・。
海軍陸戦隊

「海軍陸戦隊」です(画像お借りしました)。陸で戦う海軍兵です。有名なのは上海特別陸戦隊があります。



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ウダモさんへ

ウダモさんおはようございます!
今やグアムって三時間圏内で国内を新幹線で逝くのと同じレベルになってしまいましたね~と言いつつまだ行ったことが無いですが(-_-;)

船旅。憧れますが…きつそうですw。

「海きゃん」一行のグアム取材、どうなりますか!?
そしてトレーラー取材も待っています。期待のあの人・・・来るかも!?

エガちゃん出没の予感……w

今ではグアムなんぞ飛行機で約3時間。
そっか~、船でいくとこうなるのか~orz
…と、そんな事を考えながら読ませて頂きました。

グアムの取材、楽しみにしてます(笑)
エガちゃry
⇑しつこいww

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
本当に苦労のない仕事ってないですよね。しかも評価を貰えない仕事もあるのが現実で、それはかなりつらいです。でもまじめにやればいつか芽の出るときも来る!ってか~~^^。

さて船酔いはマジできついです(-_-;)
車よいとどっちが!?という感じですよね。
そんなひでえ目にあった「海きゃん』突撃部隊(?)どんな取材が出来るでしょうか?
エガチャンにあわないよう祈っててやってください~~^^。

こんにちは。何の仕事にしても苦労はつきものですよね。それが必ずしも結果として表れ、まわりから評価されるとは限らないのですが…私たち読者は海きゃん編集部員の苦労を決して忘れませんぞ(笑)
しかし…船酔いはツラいですね。読んでいるコチラもつわりな気分に…陸上についてもしばらくはユラユラ~でしょう。よろけてへんなモノをつかまないように気をつけてほしいですね。神出鬼没のエガちゃんとか(爆)
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見張り員

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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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