「女だらけの戦艦大和」・『海軍きゃんきゃん』取材班来る!1

「女だらけの海軍」でひそやかな人気を誇る物と言えば――

 

「艦艇―ズ」でしょう、何いってんのようというのは「女だらけの軍艦大和」の梨賀・野村・森上だがそうではない。

ひそやかだが息の長い人気を誇る物と言えば「海軍きゃんきゃん」といういわば海軍内の広報誌の様な雑誌である。

発刊当初は一般にも発売されていたがいつのころからか一般向けは中止され海軍の将兵だけのものになった。大体一分隊に二、三冊の割で配布されるが酒保で買うこともできる。だから酒保で買って私物として持っている兵もいる。

そしてこれの何がそんなに人気があるのかと言えば内容と付録である。

これは影の編集長であるGF(聯合艦隊)司令長官・山本いその編集方針により「一般の将兵からの投書や、企画を取り入れる」ので、GFや海軍省にははらはらものの企画になることが多い。

今年の「海軍きゃんきゃん」正月号の付録・「GF福笑い」がそのいい例で、これは昨年の秋ごろ山本長官が旗艦・『長門』艦上の乗組員の、

「ああくそう!!あのパッキン少尉野郎腹が立つ!福笑いにしてめちゃくちゃ変な顔にしてやりたいわ!!

という言葉を耳にして、

「ほう!それならいっそ、GFだとか海軍省の連中を福笑いにしてやったら面白かろう」

となって『海きゃん』編集部に持ち込んだ企画。その企画を軍令部の伊藤整子次長や福留繫子参謀が聞いた時には、

「ちょっとちょっとやめてえ!なんで私たちが福笑いで皆の笑い物にならなきゃいけないのよ~、いやだあ」

と泣きわめいてどうしようもなかったが、山本いそ長官の「泣くことないじゃない?皆が笑って幸せな気分になって士気が上がればいいじゃない?私の顔ももちろん福笑いにするよ?だからいいでしょう」の一言で泣き寝入りとなった。

その顔写真を撮影に、『海きゃん』編集部員が軍令部に赴いた際、伊藤次長も福留参謀もまるで死にに行く寸前の様な悲痛な顔つきだった、と後で編集部員は大笑いをして山本長官に報告し長官も手を叩いて大笑いしたのだった。

この企画は当然のように大当たりで、内地はもちろん外地で正月を迎える海軍将兵の大変な娯楽になった。そして正月を過ぎた後でも、自由時間や巡検後のちょっとした楽しみとして活用されている。『大和』の三馬鹿、もとい、三賢人の梨賀艦長・野村副長・森上参謀長も愛用中。

それを伝え聞いた伊藤次長は複雑な顔つきで「・・・そう、そりゃよかったじゃない」とうつむき加減につぶやいたのだった。

 

さてこの『海きゃん』は内容が豊富である。連載物も多いし、占い・料理・もちろん(怪しい)戦術戦略ガイドもあるし、海軍将兵の投稿も盛んである。以前「大和」の見張兵曹が投稿し(麻生少尉の勧めで<あて名のない手紙>として投稿)、入選して賞金と賞状が頂けたということもあった。

そして同じく『大和』の小泉兵曹も普段の生活で目にした面白いことなどを投稿し、記念品の『海きゃん』ロゴ入り褌をもう何枚かもらっている。

「女だらけの海軍」内ではこの褌を何枚持っているかがステータスになっているというから馬鹿にはできない。

そして何より、将兵たちには「いつか『海きゃん』の表紙を飾りたい!」という大いなる野望がある。これはもう、敵撃滅と同じくらいの大きな願いである。

「海軍きゃんきゃん」は、階級にこだわらないで表紙に出ることができるため二等水兵からそれこそいい歳をした参謀クラスまでが「絶対いつかは!」と思うのだ。しかしこれも難しく、編集部員の審美眼が厳しすぎるのかなんなのか、なかなか表紙を飾る兵・下士官・士官・・・が出てこない。――というのは建前で、実は他に行ってみる時間も金もないというのが本当らしい。

ある日、影の編集長・山本いそ長官が、

「最近表紙のモデルがおんなじじゃない?米内さんや大西さんもかっこいいかもしれないが、あの二人の着せ替えには飽きたね。もっと広い目で見ようよ。そうだ、南方の基地に行っていい人材をたくさん撮ってきたらいい」

と進言、編集部員数名が呉から潜水艦と巡洋艦など乗り継いでラバウルやトレーラー方面に向かっているという。

 

さてトレーラーの「大和」では・・・

『海きゃん』の先月号をめくりながら、麻生分隊士が傍らに座る見張兵曹に

「面白い雑誌だよな、『海きゃん』。一体海軍内の何処で発行してるんだかなあ。・・・海軍広報部、て書いてあるがそがいな部署聞いたことないなあ」

と話しかける。

見張兵曹もうなずいて、

「ほうですねえ。ゆうてうちはあまり海軍の上の方はよう知りませんから何とも言えませんが。でもこの雑誌はようできてますねえ。読み物もグラビアも面白うて」

と言った。

麻生分隊士は本を下に置くといきなり兵曹の肩を抱きよせた、そしてその耳元に「このグラビアにいつかオトメチャンの水着姿が出たら・・・みんな大騒ぎじゃろうなあ」と言って息を吹きかけた。

うう、と身震いした見張兵曹は「そ、そがいなこと。うちはこの本に載るほどきれいじゃないですけえありえません」ともだえた。

麻生分隊士はそんなオトメチャンを正面から抱き締めると

「かわいいなあ。オトメチャンは・・・そういう謙虚なところが、俺は好きなんじゃ」

と言ってその紅い唇に、自分の曲がった唇をつけた――

   (次回に続きます)

 

            ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「海軍きゃんきゃん」

なんだそりゃですが、「女だらけの海軍」さんたちには大人気の雑誌だそうです(^_^;)

さて。

編集部取材チームが間もなくトレーラーに来るようです!何かが起きるのか、起きないのか・・・御期待下さい。
写真週報
「写真週報」、昭和13年から昭和20年7月まで刊行された国内向けの国策グラフ誌。価格は10銭でした。学研発行の「歴史群像シリーズ 決定版太平洋戦争」①~⑩に付録として復刻版がついています。なかなか当時の世相を知る上で貴重な資料になります。



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Comments 8

見張り員">
見張り員  
オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
こんな雑誌が本当にあったら面白いかな??と思って考えていました。
『海軍あん・あん』…う~~むなんだか興奮しちゃいそうだしww。おおぴらにページを開けない本じゃまずいですしねww。

いつか作ってみたいなあと思いますね、「女だらけの~」になったつもりで。

だいぶ体調も戻ってきたようです、いろいろとご心配をありがとうございます^^。
今年もあとひと月弱、お互いに健康で乗り切りましょうね!

2012/11/05 (Mon) 20:51 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
オスカー  

こんにちは。『海軍きゃんきゃん』平仮名なのがかわいい!!『海軍あん・あん』にしなかった見張り員さま、正解です!!『海軍のんの』とかも「のんの?(乗るの?)」みたいでおやぢな私には刺激的過ぎますから(爆)
冬コミとかで売られていたら楽しいかも!!
その後、体調はいかがですか?寒くなりましたよね~身も心もあたたかくして毎日のりきって下さいね。

2012/11/05 (Mon) 09:23 | EDIT | REPLY |   
見張り員">
見張り員  
ウダモさんへ

ウダモさんこんばんは!
もし書店で「歴史群像・決定版太平洋戦争」を見かけたらその巻末についていますから見てみてください。当時の兵士のことや一般生活が垣間見えますよ!

ご紹介の小説は読んだことが無いですね、軍隊ものですか、これは一度読んでみたいと思います。
ウダモさんの好きなテイストと知れば読みたいですし、私のつたないブログを面白いと言っていただけて本当にうれしいです。
書いている甲斐があります!

才能あるとおっしゃられると・・・うひゃああ~~と頭隠してもだえたいですぅ~~~!!

2012/11/04 (Sun) 22:02 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
見張り員">
見張り員  
matsuyama さんへ

matsuyama さんこんばんは!
『海軍きゃんきゃん』のようなものがあったらきっと外地の将兵のいい安らぎになったと思いますね^^。

雑誌や新聞広告ってとても金額が張るんだそうですね。私の父が出版社勤務でしたが新聞広告は「高い!」と言ってました。数百万から億の単位まででピンキリだと(-_-;)

「オトメチャン大解剖!」みたいな特集を組んだら面白そうですね。
でも麻生分隊士がまた口をひん曲げそうで・・・^^!

2012/11/04 (Sun) 21:58 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
ウダモ  
こんばんは~

復刻版、えらく惹かれます。
面白そう、読んでみたいですねー。

ところで、見張り員さんの書くものは、つい最後まで読んでしまう不思議な面白さがあるのですが、三千世界の鴉を殺し(津守時生)という小説をご存じでしょうか?
この物語も軍隊ものなんですけど、同じように面白いのです。
今日の記事を読んでみて、ああ!と思いました!
内容などまるきり違うのですけど、何ていうのかな、テイストみたいなものがすごく共通していて。
私の好きなテイストだぞ、と(笑)
だから面白いんだと思ったのです。
やはり才能ありますね!

2012/11/04 (Sun) 21:16 | EDIT | REPLY |   
matsuyama  

海軍きゃんきゃんなる広報誌が発売されてるとはしりませんでした。その流れを組むのでしょうか、CanCanが女性誌で大人気でしたね。
当時広報の仕事をしてましたので、女性向けの広告を出そうと料金を確認したら、とんでもないベラボーに高かった記憶があります。まっ、それだけの人気雑誌ならそれなりの料金設定になるんでしょうけどね。
同性に受ける同性向けの人気雑誌。それなりに同性が興味を持ってくれる企画が人気の証なんですよね。
人気のオトメちゃんを斬るっていうことで、オトメちゃんの全てを分析した特別企画を編集してみたらどうですかね。もっとも麻生分隊士が許さないでしょうけど(笑)。

2012/11/04 (Sun) 19:18 | EDIT | REPLY |   
見張り員  
まろゆーろさんへ

> まろゆーろさんこんにちは!
>
> 本当に『海軍きゃんきゃん』を作りたくなりましたw!昔若いころ、友人と雑誌(と言っても手作りのものです)を作った思い出がありますが楽しかったです。
> 結構企画段階であれこれと盛り上がれるのがうれしくもあり楽しくもありました。
>
> さて、「海きゃん」編集部どんな取材をしますかお楽しみに!
>
>
> すっかり秋ですね。つるべ落としにくれる陽に季節の移ろいを思います。
> そしていつもご心配をありがとうございます、どうもこのところ頭痛が激しくていけませんが服薬で何とかしております!
>
> まろにいさまも御身大切にこの季節を楽しんでくださいね^^。

2012/11/04 (Sun) 16:20 | EDIT | REPLY |   
まろゆーろ  

おはようございます!!

海きゃんきゃん、おもしろそうですね。そうやって盛り上がる雰囲気、好きだなぁ。表紙を飾るオトメチャン、みんなが待ち焦がれていたりして。
そのうち内地を護るイケメン特集も始まったりして……。

佳い季節ですね。まさしく菊薫るって感じです。
お体を大切にせんといけんですよ。

2012/11/04 (Sun) 11:23 | EDIT | REPLY |   

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女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?
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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)