「女だらけの戦艦大和」・子守唄<捕虜収容所編 1>

トレーラー島の東に、捕虜を多数収容する島がある――

 

その島には以前、クサイヘ島海戦で捕虜になって「こちょこちょ拷問」をされた捕虜も収容中である。

他にも連合国軍の捕虜となった女性兵士が大勢ここで生活している。彼女たちはもうすっかり厭戦気分に支配され、(早く国に帰りたい)とか(フィアンセに会いたい)(ママとパパに会いたい)と思っている。

彼女たちの脳裏には懐かしい故国の風景が描き出され、トレーラーの青い空を見るたび自分たちの境遇を悲しむ毎日である。

彼女たちの日課は主に作業、トレーラー諸島の東の守りの為に飛行場を作るのに駆り出されている。最初、「エエッ!日本はオクレテルカラ、作業も手デスルンジャないの!?イヤダワア、ソノウチ爪ガ、ハゲチャウンジャじゃナイカシラ?」とか「日本軍のヘイタイハ、鬼みたいな連中バカリダッテ聞イタワヨ。・・・決してサカラッチャダメヨ。コロサレル・・・」「ソレカラ、決して<ジャップ>はイッチャダメ。コレイッタラ絶対ヤキコロサレル!」と戦々恐々だった。

が、日本軍はアメリカ軍が放棄して行ったブルドーザーやユンボなどの機械を持っていたので手作業の心配こそなかったが、「鬼のような日本兵」には心配していた。(気にサワルコト、モシウッカリ言ったりシチャッタラ・・・きっとアナノナカニ埋められるンダワ・・コワイ!!)

最初の作業で「整列!」を言い渡され、連合国軍捕虜嬢たちはこの上ない緊張状態を強いられている。

強い日差しの下、捕虜嬢たちは日よけ帽子の下の目を前に立った海軍佐官に注いでいた。いったい何を言われるのか、されるのか。

捕虜嬢たちの喉がごくり、と鳴った。三種軍装の海軍佐官嬢は、左手に短剣をつかむと数段高くなった台の上に軽い身のこなしであがった。その洗練された身のこなしに捕虜嬢たちは一瞬見とれた。

佐官嬢は、捕虜嬢たちをズイッと見渡した。炯々たる視線に射すくめられ捕虜嬢たちは身がすくんだ。

佐官嬢は軽くうなずくと、流ちょうな英語で話し始めた。

「あなたたちは国の為に懸命に戦った。が、わが帝国海軍に捕虜となったことは無念であろう。ここでは不自由もあろうが一所懸命努めてほしい。さすればいつか国に送還される日も来よう。その日の為にも、心を一にして励んでほしい。以上!」

言い終えると佐官は台を降りて参謀らしき人と幕舎へ歩いて行った。その場に残ったのは数名の准士官と下士官嬢。

准士官たちは相変わらず緊張のままの捕虜嬢たちに、

「これから皆を作業班に分ける。それぞれ班長がつくからその指示に従え、いいな」

と言い、数十名からの捕虜嬢たちはいくつかの班に分けられた。そして各班長の下士官嬢に引率されて作業場に向かう捕虜嬢たち・・・彼女たちはスコップをふるったり、あるいは士官からブルドーザの使い方など教わりながら、なれない土木作業を恐る恐る始めた――

 

その作業にもずいぶん慣れたころ。

作業第5班の班長・三鷹上等兵曹はひとりの捕虜嬢があまりに元気がないのに気がついた。捕虜の健康管理にはまず班長が気を配らねばならない、その上で何か問題があれば直属の士官の分隊士、そして分隊長に話をつけねばならない。

三鷹上曹は、その捕虜嬢――ライネン・ノオ・カレンダー海軍上等兵――を休憩時間にそっと呼んだ。カレンダー上等兵は元気のない顔で「ハーイ、ミタカさん」と言って弱弱しく微笑むと三鷹上曹の横に座った。

三鷹上等兵曹はそっとカレンダー上等兵の額に手を当ててみた。熱はないようだ。カレンダー嬢は少しびっくりしたような顔をして上等兵曹を見た。

「ライネン上等兵。貴様最近元気がないなあ。どうしたんだ?どこか具合が悪いなら早く言いなさい。それとも何か問題でもあるのか?」

三鷹上等兵曹はそう言ってカレンダー嬢を見たが、彼女は相変わらず弱い微笑みを浮かべるとかぶりを振った。

「そうか・・・。しかし何か悩みがあるなら言いなさい。貴様たちは我々を鬼か蛇のように思ってるらしいがそうでもないぞ?悪くする前に言えよ?」

三鷹兵曹はそういうと、カレンダー嬢の肩をそっと叩くと立ち上がり別の捕虜嬢たちの群れに向かって歩いて行った。

カレンダー上等兵は、その後ろ姿を見送ってふーっと深いため息をついた。

その後もカレンダー上等兵の様子は何かおもわしくない。さすがに三鷹兵曹も、分隊士の国分寺少尉も「どこか体の具合が悪いのかもしれん。軍医長に診せた方がいい」となり、三鷹兵曹はある日の昼の休憩時間にカレンダー上等兵が一人樹の陰に座っているところへ歩いて行った。

「カレンダー上等兵。ちょっと軍医長のところへ行こう」

三鷹兵曹はそう言ってカレンダー上等兵を見た。カレンダー上等兵は何かを一心不乱に見つめていたが、あわててそれを隠そうとした。

「ん?なんだ、見せてみろ」

三鷹兵曹は上等兵が隠そうとしたものを持った手をつかんで、自分の目の前に持ってきた。

「・・・これは・・・!」

三鷹兵曹の声が上ずった――

        (次回に続きます)

 

         ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

捕虜収容所での<事件>のようです・・・いったいライネン・ノオ・カレンダー海軍上等兵はどうしたというのでしょうか?

次回をご期待下さい。
 
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まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
実は…中学時代には友人とクラスメートのあだ名をつけて喜んでいました。それが結構受けてました。
でも、外国人の名前って難しいですね^^。日本人ならなんとかなるのですが…もしもロシア人とか言った日にゃ私もうあきまへん・・・(^_^;)

御目の具合はいかがですか?
あまり酷使されませんように、くれぐれもお大事に。
私も目薬、寝る前に入れなきゃ!です(-_-;)

酔漢さんへ

酔漢さんこんばんは!
追伸分と合わせてお返事いたしますね。
「あきつしま」の読み方でよろしいのでしょうか?
これは私、浅学にしてあまり知りませんでした!!これから勉強します!


隠したものは何でしょう・・・?
こちょこちょ拷問につきましては、7月22日分の「捕虜来たる・解決編」をご覧ください。実にばかばかしいです…(-_-;)

鍵コメさんへ

鍵コメさんこんばんは!
今度は連合国軍捕虜嬢たちとの触れ合いになりました。先の戦争では捕虜の扱いがどこでも問題になりました。さて、「おんなだらけの~」ではいかに…!?

ご教示頂いたブログを拝見しました。
あの写真には正直息をのみました。残された人たちの慟哭が聞こえるような像、私は直視できるだろうかと考えました。
重い内容でした。でもいい記事でした、ありがとうございます。

どうもここのところの天候が良くないのか今一つはっきりしない体調ですが、ガンバっとります^^!でもそこそこの頑張りで^^。
お互い気をつけて長生きしましょうね!!

見張り員さんは面白い!!
もしかしたら昔からあだ名付けの名人だったりして??
目も喜んでおります。

誤記

先のコメント誤記(変換ミス)です。
「秋津州」です。
ここに訂正並びにお詫び申し上げます。
皆様。大変失礼いたしました。

名艦艇

水上機母艦「八州島」。(宮城県出身者がかなり乗艦しておりました)
この艦の顛末は人知れず歴史が詰まってます。

と、独り言です。

うーーん隠した物。
気になります。
「こちょこちょ拷問」
想像するだけで・・・・・。

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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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