「女だらけの戦艦大和」・野田のチェスト3<解決編>

必死に<野田のチェスト>からごみをかき出す前原水兵長、生方中尉はそれを見てはっとあることに気がついた――

 

「このチェストはおかしいぞ、皆気がつかないか!?」

生方中尉が顔色を変えて叫んだ。野田兵曹も松原兵曹も、厳場兵曹もぽかんとしている。デッキブラシを使っている前原水兵長がふと手元を見て「ああっ!」と声をあげた、そして、

「生方中尉、このチェスト本当におかしいであります!」

と叫んでその場から飛びのいた。チェストの中にデッキブラシを突っ込んだままで。

すると初めて皆が「あああ!」「おおっ!」と叫び声をあげた。生方中尉が「分かっただろう」と言いブラシを引っこ抜く。

松原兵曹が震える声で、

「中尉・・・このチェスト奥が深すぎます」

と言って生方中尉はうなずいた。そして

「わかったろう、このチェストの奥行きはせいぜい50センチあるかないかだ。そしてこのブラシの柄の長さは一メートルほどだ。その柄がほとんど入ってるということはこれは」

と言い皆を眺めまわす。野田兵曹が真っ青になって生方中尉の顔を見つめ「・・・これは?」とつぶやく。

生方中尉は、うんともう一度うなずいて「化け物チェストだ。ここだけ<底なし>の状態だな」と言って厳場兵曹は思わず身震いをした。そして、

「なんでここだけそがいなことになったんでしょう・・・」

と怖げな声で中尉に言った。中尉は野田兵曹をちらっと見てから、「こんなに汚くしてるから妙なことになるんじゃないのか?聞いた話だが幽霊妖怪の類は汚いところを好んで取りつくと言うぞ?さあ、おかしなものが出てこないうちに早くどうにかしてしまわないと」と言った。

前原水兵長が「ゆ、幽霊妖怪の類ですかあ!いやだあ、うちはそがいなもんと一緒に居るんはいやじゃあ!」とべそをかき始めた。前原水兵長は高角砲分隊でも有名な怖がりである。

生方中尉はその様子を見て(こんなことで分隊の士気が落ちては一大事だ。万が一艦内にこれが蔓延したら手の打ちようが無くなる。何とかしないと)と思って

「とりあえず中を確認だ」

というと防毒面を外してチェストの奥を覗き込んだ。他の連中も生方中尉の肩越しに覗き込む。

「なんだ・・・あれは」と生方中尉がうめいた。

チェストの奥の方にまるで真っ黒い煙とも何ともつかないものが渦巻いている。大変不気味でさすがの中尉も少し身を引いた。

と、その奥の方から何か飛び出してきたものがある。

「わあああ!」

と皆が一斉に飛びのいた。床に落ちたのは一匹の<泥鰌>。びちびちと跳ねている。

「どじょう・・・」と前原水兵長がつぶやいた。そして野田兵曹をびしっと指差すと、

「泥鰌、どじょうだ!野田兵曹、前のどじょうもここから飛び出して来たんと違いますか?それをうちらのせいにして!大体が兵曹がここをこげえに汚くしとるけえ、それが一番の原因じゃないですか?もうええ加減にしてくださいよ、あなたのせいでうちらがひっぱたかれるんはもういやじゃ!」

と絶叫した。生方中尉が野田兵曹を見返って「ひっぱたく、だと?」と低い声で言った。野田兵曹がぎょっとしてちょっと体を離した。野田は片手を顔の前で振ると「そんなこと・・・私はそげえなひどいことはしとりません」と必死で言ったが松原兵曹が小声で「嘘じゃ。この期に及んで嘘ついとるわ」と言ったのを生方中尉は聞き逃さなかった。野田兵曹の前に両手を組みたちはだかると、

「野田兵曹、私は貴様に何度も何度もここを掃除しろと言ったはずだが貴様は聞き入れるどころかほっぽりぱなしてそのうえに下級兵に泥鰌を投げ込んだと言いがかりをつけるなど言語道断だ。この責任をどうとるんだ!ええ?」

と怒鳴った。野田兵曹は困ってしまって涙目になってうつ向いている。

と。

チェストの奥からコオオオ・・・という音が響いてきた。厳場兵曹が顔色を変えて、「あっ、いけんで。あのへんな音じゃ!」と叫んで生方中尉はチェストの扉に飛びかかると閉めようとした。

が、何かものすごい風圧のようなものがチェストの奥から吹き出してきて閉めるに閉められない。松原兵曹たちも一緒になって閉めようとするが、出来ない。

「誰か、だれでもええから応援を呼んでこんか!」

厳場兵曹が叫んだとき、どこからすっ飛んできたのか副砲の大槻義子大尉が

「任せるんだ!」

と怒鳴って皆をつかんで退かした。そしてチェストの奥へ向かって何かを投げ込んだ。すると中から目もくらむような光が部屋いっぱいに溢れた・・・と次の瞬間にはもう何事もなかったかのように鎮まった。変な音もしなくなった。

生方中尉以下はその場に座り込んでぽかんとしてチェストを見つめている。やがて中尉は立ち上がって、

「大槻大尉、ありがとうございました。・・・ところで今何をなさったんですか」

と礼を言って尋ねてみた。

大槻大尉はメガネを片手でちょっと持ち上げてポジションを直してからエヘンと咳払いをした、そして「これはねえ、時空の歪みだと思うよ?ここの磁場かなんかがおかしくなってどこかとつながってしまったんじゃないかなあ?
だからちょっと磁場を変えてやろうと思って棒の磁石を投げてみたのさ。そしたら治まったみたいだから大丈夫だよもう」と言い笑って見せた。

前原水兵長が恐る恐る、「あの、大槻大尉」と話しかけた。大槻大尉はメガネの奥の瞳を前原水兵長にむけて「何かね?」と聞いてやった。前原水兵長は

「ほいじゃあ、幽霊妖怪の仕業ではないんでありますか」

と聞いた。大槻大尉は大きな声で笑い、「そんな非科学的なものじゃあないよう、そんなものこの世に存在しないって」と言ったので前原水兵長はほっとした。

生方中尉は「本当にありがとうございました、助かりました」と心から礼を言って、大槻大尉は手を振り去ってゆく。

「さて」と生方中尉は言って床を見た。その場には泥鰌を始めチェストから引き出されたごみがうずたかく積もっている。

「野田兵曹貴様はこれをすっかりきれいにしろ。そしてこれに懲りてもう二度とチェストを汚くしてはいけない、今度のことは汚くした貴様への天からの警告かもしれない。ときどき抜き打ちに私がチェックを入れるからきちんとしておけ、いいな!」

生方中尉は野田兵曹にそう宣言して、野田兵曹はひとりごみを片付けていた・・・

 

ところで。

そのゴミの中の「きのこの生えた褌」が塵取りから落ちて、それをマツコが拾ってしまった。マツコはトメキチに、「珍しいもの拾ったわよ~、これ何かしらねえ。見て!キノコが生えてるわ、アタシこれ大きくしてやろっと!」と防空指揮所まで持って帰ってきた。

だが、<野田のチェスト>の怖い話を聞いていた麻生分隊士に、

「ギャアア!こげえにきたねえもんをもっとったらいけんで!ハシビロ、貴様病気になるで!」

と取り上げられてしまった。見張兵曹や小泉兵曹も大騒ぎになる。トメキチは「臭いよう、マツコサン。捨ててよう」と鼻を押さえてうめく。

マツコは返して返してと分隊士にまとわっていたがそこへ松岡分隊長が来たので今度は松岡分隊長に助けを求めようとする。

分隊士は褌を丸めると、「分隊長これ。汚いけん捨ててくださいっ!」と叫んで分隊長にパス。分隊長は「もらったあ!」と叫んでラケットで撃った。が、折悪しく一陣の風が吹き付け褌はどこかへ落ちてしまった。

「あ~あ・・・」

とマツコ・麻生分隊士・松岡分隊長が落胆した。松岡分隊長はしかし、

「まあいいじゃないか、あんな汚いもの誰がどう見たって汚いんだから捨ててくれるよ。さて、掃除も終わったね。皆ご苦労」

と言って皆をねぎらった。

 

いずこかへ落ちて行ったきのこの生えた褌・・・

これが実は露天甲板を歩いていた梨賀艦長の頭にかぶさったのは誰も知らない。そして艦長が真っ赤になって怒って、「いったい誰!こんなに汚い褌をほっぱり出すなんて、しかも艦長が被ったなんて恥ずかしくって言えないじゃない!」と怒鳴りまくったが・・・野村副長と森上参謀長は手を叩いて笑うだけだったとさ。

そしてチェストをすっかりきれいにした野田兵曹、「今日から生まれ変わるぞ」と意欲満々だとか。

良かったんでないかい?

 

        ・・・・・・・・・・・・・・・・

野田兵曹のチェストの問題、何とか収束しましたね。普段から綺麗にしとけばいいんですがね。まあ今度汚くしたら生方中尉の制裁が待っています。

しかし、きのこの生えた褌・・・それが空から降ってきてかぶさったとなると梨賀艦長はお気の毒です。・・・考えたくもない・・・オエエ。
棒磁石
棒磁石。これを投げ込んだ…?(画像お借りしました)



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Comments 8

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見張り員  
酔漢さんへ

酔漢さんこんにちは!

うわあ…本当ですか!?
ってご本人が行っておられるのだから本当ですね。
しかし。雑巾にキノコが生える。
あり得ますね、ふんどしに生えるんですから。

かの松本零時先生が、お若いころ独り暮らしのアパートの押し入れに入れたままのパンツにキノコが生え「サルマタケ」と命名なさったという話は有名ですが雑巾に・・・!

きのこは菌性ですよね~そしたらその雑巾かあるいは棚の周辺にきのこ菌があったということになりましょうか。
う~~む、種類を知りたかったですね^^。
しかし食べられそうにはないのが残念…ですね^^。

第一発見者の酔漢さん、驚きが伝わります!

2012/09/02 (Sun) 11:09 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
酔漢です  
本当なんですぅぅぅ

「大和の話」をコメントには必ず入れるようにしておりましたが・・・今日ばかりは・・。
中学時、古い理科室の棚を掃除しておりました。
奥の方に棒をつっこんでかきだしたところ「巨大きのこ」が!
なんと、雑巾の上に生えていたのでした!
「先生!新種のきのこかもしれません!」
「うーーん。『雑巾茸』と命名しよう!」
写真を撮って文化祭で掲示。
反応や如何に?ですが、新種?だったかどうかは不明です。
おそるべし!茸!
昭和52年9月、仙台某中学校での話でした。棒でかきだした生徒は、酔漢でした。
第一発見者?

2012/09/02 (Sun) 10:00 | EDIT | REPLY |   
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見張り員  
まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんにちは!
今回さまざま盛り込んでみました、喜んでいただけてうれしいです。
全く政界もどうなることやら、自分たちだけのことしか眼中にない連中などこっちから見切りたいですね。怒り心頭です。時空の乱れの中に入ってしまえ!と思います(-_-;)

マツタケ、秋の味覚ですがうちの店でも最近あまり出ないですね。かつてはカナダ産とか中国産、果ては北朝鮮産も来ていましたが最近はほとんど・・・

え?「小さいのは分身みたい」ですか?まろにいさまは特大の・・だと思っていますが(ってとんでもないことを書いてしまった!!)。

今月もまた書きまくりたいと思っています、どうぞよろしくです^^!

2012/09/02 (Sun) 09:25 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
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見張り員  
いなばさんへ

いなばさんこんにちは!
「失われたチェスト」ww。こりゃあ逃げたくなりますね。
きのこの生えたふんどしってそんなものを押し込んどくなんざ、女の子がするこっちゃありませんって…(-_-;)

うちの冷蔵庫はどれも汚いです…(-_-;)もうあきらめの心境なんですが、新しいのを購入した際「きれいに使いましょう」と姑に宣言したはずですがあっという間に反故にされて…国内第一位の石油産出地になれる日が間時近いかも・・・です。

ちっとも嬉しくないです・・・ガックシ。

2012/09/02 (Sun) 09:06 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
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見張り員  
オスカーさんへ

オスカーさんこんにちは!
ドジョウならホント可愛いですよね、私は幼稚園くらいのころ隣の家の男の子からドジョウをもらって買っていたことがあります!

市の魚がナマズとは!
どうしてそうなったのか経緯を知りたいですね、うーん・・・最初の市長さんがナマズが好きだったとかナマズの住む沼や池があったとか??想像の域を出ませんが考えると楽しいですね。

地震に海外からの津波騒動、もうたくさんだと思う昨今です。
残暑厳しいですがお互い頑張りましょう、いつもありがとう!!

2012/09/02 (Sun) 08:52 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
まろゆーろ  

ドジョウと言い、大きくしてあげるとマツコさんが持ち去ったきのこの生えたフンドシと言い、
9月の1日から何やら結構な比喩加減でと喜んでいるのは私だけでしょうか。それとも大いなる思い込みでしょうか。
そう言えばここ数年、立派なカタチの松茸なんぞ食べておりません。小さいのを買って帰って家で大きくなれば良いのですが。まぁ、小さいのは分身みたいで可愛いですが(汗)
今月もますますお元気に、そして冴えわたる見張り員ワールドを期待しておりますぞ!!

2012/09/01 (Sat) 23:21 | EDIT | REPLY |   
いなば  

まさに、「失われたチェスト」ジョーンズ博士も逃げますね。でも、見張り員さんの冷蔵庫から、石油?!…。

2012/09/01 (Sat) 21:15 | EDIT | REPLY |   
オスカー  

こんにちは。海坊主でなくて良かった~!!ドジョウはまだカワイイですもん~「嬢ちゃん、一緒に遊びましょ!!」(笑)
今日、市の広報を見たら「市の魚」がナマズでした~知らなかった!! 日本でもどこでもおとなしくしていて欲しいです。昨日の地震はびっくりしましたもん。
9月になってもまだまだ暑いですね。お身体、本当に気をつけて大事にして下さい。また仲良く遊んで下さいね♪

2012/09/01 (Sat) 16:42 | EDIT | REPLY |   

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女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?
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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)