2017-10

「女だらけの戦艦大和」・缶缶諤々2<解決編> - 2012.07.30 Mon

――巡洋艦の高橋艦長、「伊号4444潜」の北島こう航海長、そして『大和』の見張兵曹ほか五名が場所は違えどもほとんど同時刻に缶詰にナイフを突き立てようとしていた――

 

「女だらけの大和」

見張兵曹、小泉兵曹・石場兵曹・石川水兵長・そして酒井一水がえたいのしれない缶の上部に狙いを定める。

そのそばでハシビロコウのハッシー・デ・ラ・マツコが「サカナ、魚。魚のかんづ~め!」と歌いながら羽を広げて飛び回っている。その後ろをトメキチが「カンカラ欲しい、カンカラちょーだい、カンカンカンカラ、ちょーーだいっ!」と歌って二本足で飛び回る。

麻生分隊士がそんな二人に、

「こらハシビロにトメキチ、お前たちそんなに騒いだら狙いが外れるわ。ちいと静かにせんね」

と注意を与える。トメキチがペロッと舌を出して

「そうだね、静かにしないとね。おばさんも静かにしようよ」

と言いマツコを見た。マツコも今回は殊勝な顔つきになって、「そうね、万が一にも失敗して食べらんなくなったらアタシもう、やーよ」と言うとおとなしく羽をたたんだ。

松岡分隊長が、

「さあ、それでは世紀の一瞬!この五名による缶の穴開けだあ!熱くなれよ~、さあ、いよいよ破瓜の瞬間だー!」

となんだかとんでもないことを叫んで麻生分隊士は思わず分隊長の顔を見てしまう。

が、分隊長もみなも、期待と緊張でそんな言葉じりを気にしてはいない。松岡分隊長が、いつも持っている例のラケットを振り上げるとーーー

「テーーッ!」

とものすごい声を張り上げた。

そして五人の持ったナイフが一斉に五つの缶に向かって振りおろされた。

 

「某巡洋艦」「伊号4,444潜」「女だらけの大和」の艦内で

ブシューーーーーッ!!

と缶にナイフが突き立った。すると・・・

 

「ぎゃあああああ!!!なんだこれ!!オエエエエ!!!」

とすさまじい皆の叫び声が響いた。

「某巡洋艦」では高橋艦長以下が、「伊号4444潜」では北島こう航海長ほかが、そして「女だらけの大和」では航海科居住区にいた全員――マツコもトメキチも――があるものはその場に昏倒し、またあるものはうずくまり、またあるものは匍匐前進でその場を逃れようとしている。

修羅場が展開していた。

何が起こったのか、といえばそれぞれの艦で缶にナイフを突き立て穴が開いたその時、中身のものすごい臭気と汁が吹き出し、あっと言う間に皆の鼻腔をノックアウトしさらに艦内に怖ろしい勢いで広がって行ったのだ。

その正体――シュールストレミング。これは主にスウェーデンで食されるニシンの漬物のようなもので塩漬けにしたニシンを缶の中で発酵させるものでその匂いたるや、激烈である。

それが狭い潜水艦内や巡洋艦内に漂い出したのだ。

「伊号4444潜」ではあっという間にその匂いが艦内中に充満し、艦首の水中聴音機群をいじっていた兵はもとより、艦尾側の機関科倉庫にいた兵曹まで倒してしまった。

板倉艦長は白目をむいて昏倒している北島航海長と伊調水雷長、鈴木主計長、そして浜口兵曹をようようの思いで引きずって司令塔を目指した。

その間にも、あちこちで「ぐえええ!」「艦長いったい何事ですか」「なんで俺たちここにきて玉砕せにゃいかんのだ!」・・・等々、乗組員たちの悲痛な叫びが聞こえる。

艦長はもうろうとする頭を振りながら、遠ざかる意識を何とか励まして

「だれか、ハッチを開けろ!」

と怒鳴った。だが、それに応えるものは誰ひとりとしていない。

「伊号4444潜」ペナンを前にして遭難かーー?

 

そして「某巡洋艦」でも同様な悲惨な場面が展開されていた。

高橋なお艦長は艦長室からほうほうの体で二人の兵とともに脱出。瀬古副長は?と見れば彼女はその俊足を生かしてとっくのとうに逃げてしまった。高橋なお艦長は臭気にやられて涙をぼろぼろ、鼻水をだらだら流しながら

「瀬古ふくちょー!一人で逃げるなんてひどいよーう!待ってよ―う!」

と叫んで艦上へのラッタルを探す。が、どこのラッタルも臭気に追われて艦内中から逃げて来た将兵たちでいっぱい、艦長だからと言ってはいどうぞと譲ってくれるような余裕は誰にもなかった。

「は、はやくあがって~。く、苦しいよう」

「もう駄目だ。天皇陛下万歳!」

「おかあさーん」

ラッタルのたもとではまるで玉砕戦のような光景が展開されていた――

 

「女だらけの大和」、ここは他よりも悲惨な光景があった。

なぜならここでは一度に五つの缶が開けられていたのだ。たった一つでも地獄絵図だったというのに五つである。地獄が五つ分展開された。

まず航海科居住区がその震源地であるがここではまるで<総員戦死>の様相を呈している。松岡分隊長以下全員その場に倒れ伏し、マツコはかわいそうに顔面に缶づめの汁を浴びてしまい、白目をむいて仰向けに倒れ痙攣を起こしている。

トメキチもマツコのそばで鼻先を前足でおさえたままうつぶせでグンニャリと伸びてしまっている。

そして缶からは悪臭が放たれている。が、よく見れば五つあったはずの缶が三つしかない。どういうことだ、と言えばこれは缶に穴があき、すざまじい勢いで悪臭と汁が噴出したその瞬間、松岡分隊長が「なんだって言うんだよこれはーー!」と叫んで缶を二つほど、ラケットでひっぱたいて居住区の外にはたきだしたからに他ならない。

・・・そのさい、マツコの頭も少しひっぱたいたかもしれないが。

ともあれ、その悪臭はでかい『大和』艦内を縦横無尽に走り回り、ここでもラッタルやエレベーターに我先にと走り寄る乗組員の姿があった。

梨賀艦長はあまりのひどいにおいに防毒マスクをかぶって露天甲板に逃げ出そうとしたが廊下を血相変えて走ってきた副長・参謀長や士官連中に突き飛ばされてしまった。

艦長は

「ひどいよー!なんで艦長をないがしろにするの?それにこういう非常時に持ち場を離れるなんて、ちょっと第6潜水艇を見習ったらどうよ!ええ!?」

と泣きながら叫んでいたが誰も耳を貸すものはなかった。

 

ハッシー・デ・ラ・マツコはトップに鎮座して吐きそうになりながらも

「ああ、ひどい目に遭ったわね。あたしさあ、あれって魚が入ってるのかと思ったらなによ、毒ガスだったのね。いったいどこの国の仕業かしらね?そういうのを、なんていうんだっけ?・・・トメキチあんた知らない?」

とトメキチに話しかける。トメキチはマツコを見上げて鼻をこすりながら

「非人道的、とかいうのよ確か。でもあの中身はお魚だって聞いたけど・・・きっとあれは新しい兵器だね。僕まだお鼻が変で困るよう」

と訴える。マツコはなぜか軽く痛む後頭部を羽で撫でつけながら、

「最悪!あたしの愛する魚であんなひどい兵器を作るなんて人間じゃないわよ。まったく」

とブツブツ。

その下の防空指揮所では麻生分隊士が見張兵曹の肩を抱きながら「大丈夫か?本当に大丈夫か?」と気を遣っている。見張兵曹はけなげに「はい、平気です」というがなんだか顔色が悪い。あれから数時間がたったがほとんどの航海科員が再起不能状態である。

「全く変なものを作りやがって、どこの誰だ!アメ公か!?絶対許さねえぞ!」

麻生分隊士の怒りはそのまま「某巡洋艦」「伊号4444潜」の乗組員の怒りであるが、・・・ひとこと言うならこれはアメリカさんの作ったものではない。

でも・・・どうしてスウェーデンの缶詰を連合国軍の輸送艦が積んでいたのか。しかもインド洋上を行く艦で?という疑問は誰も思いつかない。

だってーーこれがスウェーデンのものだなんてだ―れも知らないんだから――

 

           ・・・・・・・・・・・・・

とうとう、秘密の缶詰がそのベールを脱ぎました・・・

この「シュールストレミング」その匂いたるやあの<くさや>の比ではないと言います。そういえばずいぶん前に、何かの番組で林家こぶ平さんが小さなビニールでできた小屋のようなものに押し込まれ、この缶を開けたところその匂いに悶絶されてその小屋のようなものをぶっ壊し、スタジオ中おおごとになっていたことがありましたっけ。

いやあ・・私はこれは欲しくないです。はい・・・

 
シュール

これがシュールストリーミングだ!!(画像お借りしました)

シュールくんについてはこちらを。



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● COMMENT ●

荒野鷹虎 さんへ

荒野鷹虎 さんこんばんは!

帝国海軍の大きな失敗が「大艦巨砲主義」への固執にあったとしか言いようがないほど、真珠湾以降、特にミッドウエー海戦は悲惨でしたね。
自ら航空機優勢時代を見せつけておきながら・・・でも『大和』「武蔵」の存在が無駄だったとは言えません。砲艦外交に使えばよかったのです。秘匿しないで・・・。

泉下のお兄さまはじめ英霊のみな様が安心して鎭もれる日本を再構築してゆかねばなりません。
まずは我々の世代から!

見張り員さんへ!!

大変的確なお返事ありがたく思います。巨大砲艦主義は大きな間違いであったと思いますねー。飛行機の時代と諜報戦が弱かったとおもいます。
次兄の冥福をお祈りいただき感謝致します。
見張り員さんの人柄には感動いたします。頑張ってください。!!

荒野鷹虎 さんへ

荒野鷹虎 さんこんばんは!
戦艦大和、そして同型艦の武蔵。これほど戦艦としての活躍がなかった艦もないと思うくらいです。武蔵もあんな形で沈んでしまい大変残念ですし、大和はなんだか思いつきで特攻させられた感が否めません。
ミッドウエー海戦ではもっと前進して敵を砲撃できたと思うのですが結局GFはこの戦艦を持てあましていたか、可愛いあまりに過保護にすぎたのかもしれないですね。
でもミッドウエーではこの際前進して敵を砲撃しそのあとミッドウエー島を砲撃したってよかったと思うのです。

お兄さまの御霊に心から哀悼の意をささげます。
ご遺族にとってはどんなに時がたとうとも亡き人はあの日のままで思い出されることでしょう。お国のため、故郷家族のために命をなげうって戦われた、その行為は崇高です。
でも今の日本はその事実をすっかり忘れ去って、あろうことか英霊たちは「侵略者」扱いされる始末です。

年ごとに巡りくる8月は、戦争・英霊を思ういい機会だと思います。私はこの「女だらけの~」であの戦争や戦って散った将兵のみなさんのことを語り継げたら、と思っています。

いつもありがとうございます!!

いなばさんへ

いなばさんこんばんは。

そうです・・・陳腐な結果でお恥ずかしい(-_-;)

拾い食いはだめですね、大変なことになります。っていまどきそんなことする人はいませんねw。

見張り員さんへ!!

このブログを開くといつも、海戦を思い出し戦艦ヤマトの活躍がなかったことへの悲運を思い起こします。ミッドウェイで前線に出て敵艦船を砲撃をできなかったのでしょうか?
次兄の敵潜水艦の攻撃に撃沈されたことを未だに悲しく思います。
まもなくまた終戦記念日が来ますが見張り員さんの世代がこうして語り継がれていることを感動を持って感激する次第です。!☆彡!

こんばんは。
今回、そう言う話だったんですね。(笑)
つまり、「拾った物は食べちゃいけません!。」的なことで。

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!!

そうです…恐怖の「あれ」だったんです…

あの汁がかかってしまったマツコ、どうなったでしょうか?その辺の後日譚を次回書きますね!
そして漂流物をやたら拾って、何でもかんでも開けない!という戦訓?が「女だらけの帝国海軍」には出来ました。

拾っていいのはまさに「人」だけですね^^。

酔漢さんへ

酔漢さんこんばんは!

ご祖父さまの貴重なお話をありがとうございます!
昭和8年ですか・・・まだ大戦の陰りもなくある意味帝国海軍にとっていい時だったかもしれないですね。
爆雷演習の理由が艦長が魚を食べたかったから…これには笑えました!
なんだか「女だらけの大和」の世界そのもののようで、梨賀艦長ならいいそうな話!!

みんながグルになって魚料理を楽しむ・・・なんだか帝国海軍ならではのちょっといい話ですね。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
私もこの<ブシューーっ!>を書きながらあの三人のでっかい女性を思い出していました!私の中ではあの三人は「松本兵曹長」「浜口大尉」「森兵曹」に変換されていますww!!

そうだったんですよ、この世でこれの右に出るものはないといわれるシュールくんでした!
まともに嗅いで気絶した人がいると聞きましたから相当なんですね…うっかり開けたくないものです。

暑さも佳境に入ってきました!
ま、あとひと月かそこらの暑さ、ガダルカナルの兵隊さんを思えばドってことないですね、クーラーがあるんですから!

でも熱中症には気をつけながら過ごしましょうね❤

こんにちは。やはり中身はアレでしたか~マツコの身体に臭いが染み付いてとれなかったらどうしよう~(笑)
海上の漂流物、やたらに拾ってはいけませんね。人間は助けて欲しいですが…。

魚と言えば

祖父が駆逐艦乗艦時。
急遽「爆雷演習」の実施。→理由「艦長が魚を食べたかったから」
祖父は、当時水雷にも熟知しておりましたから、演習を率先して行っております。
(術科は通信ですが)
その後「カッター出せ!」爆雷で浮いた魚を回収するわけです。
爆雷のショックで気絶している魚ですから、これは本当に生きているのと一緒。
主計長も当然グルでして・・・・。
夕食が豪華だった?
昭和8年の「キク」でした。

No title

ブシューーーーッ!!
このフレーズは連合軍の3人女が出ているキンチョール(?)のCMを思い出しました。
彼女たちは迫力満点ですね。

中身はコレでしたか。
非常に臭いらしいですね。世の中で一番臭いとか。
みんな七転八倒の大騒ぎが面白い!!

暑いですね。あと1ヶ月我慢しましょう。このニオイに比べたら耐えられそう。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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