「女だらけの戦艦大和」・○○は止められない!

「伊号」4444潜水艦は、インド洋での通商破壊戦を終えてペナン基地へと帰投中である――

 

4444潜の艦長・板倉みつま大佐は上機嫌である。誰かれなく話しかけては鼻歌交じりで浮き浮きと艦内を歩き回る。

兵たちは

「艦長エライご機がいいねえ。まああれだけの大物を撃沈したんだから無理もないか」

と笑い合う。あれだけの大物とはイギリスの大型輸送船を三隻とその護衛艦を四隻沈めたからである。

日本海軍の潜水艦は、敵のソナーに引っかからない特殊な塗装を艦全体に施してあるのでかなりの至近まで寄っても浮上しない限り気づかれない。

が、用心に用心を重ねた板倉艦長は船団から15キロメートル離れた所から潜望鏡で敵の動向を観察したうえで、

「魚雷戦用意!」

を命じたのだった。艦内の兵たちが忙しく動き回り魚雷の装填がされる。艦長は潜望鏡で船団を追いながらその時を待つ。伊号潜水艦自身も静かに海中を走りながら。

そして、

「ぎょらーい・・・テーッ!」

の艦長の叫びとともに、日本海軍が最近開発した<散開魚雷>を発射した。この<散開魚雷>とはまず大きな魚雷が発射されそれが敵艦船の手前数キロ程度に至ると大きな魚雷――母体ともいうべき――から小さな魚雷が三十個ほど飛び出し、敵の艦船に襲いかかるというものである。もちろん大きな魚雷も敵に突進してゆく。

今回この<散開魚雷>で板倉艦長の「伊4444潜」は大戦果をあげたのだった。

魚雷が発射され、潜望鏡で見守る艦長の目に真っ赤な火柱がいくつも見えた。それはとりもなおさず敵の船団が撃沈されたという証拠の火柱。

艦内でかたずをのむ兵員たちはその瞬間、衝撃が艦を揺らしたのを感じ(やった、やったね)と確信したのだった。

水中聴音器で様子をうかがっていた兵はその時、「ピシイ!」と鋭い音をいくつも聞いた、これこそ散会した魚雷たちが敵の艦船にあたった瞬間の音である。

敵艦船はあるものは真っ二つになり、あるものは船底をえぐられて沈んでゆく。乗組員たちは、破壊された艦の一部などにつかまっていたがやがてやってきた日本の駆逐艦たちに引き上げられ捕虜となって収容所に送られるのであ

 

実はペナン出航前には、「伊号4444潜?四が四つもある不吉な潜水艦だからねえ、撃沈されなきゃ御の字だね~」などとかげ口を叩かれたりしたものだが、板倉艦長は

(何を言うか、見よこの戦果を。四が四つも重なって、これこそ<四合わせ(幸せ)>の艦じゃないか。くだらん迷信なんかこの戦争に持ち込むんじゃあ、ない。迷信があったとしても自分たちでうち破るのが海軍精神じゃないか?)

と思っている。

ともあれ、艦内は祝賀ムードになって艦長は主計長に、

「主計長、今夜はお祝いです。思いっきりごちそうを出して皆をねぎらってやってください」

と言い、主計長もうなずいて「はい、今夜は赤飯を出しますのでお楽しみに」と言って笑った。そしてその晩は皆が大喜びするほどのごちそう――と言っても数週間ほど潜航していた後のごちそうだからその辺は差し引いて考えてほしいが――で、赤飯にウナギ、コンビーフ缶、それにパイン缶。そしてビールも出され、小躍りして喜ぶ兵たちに班長は

「ビールを飲むのもよいが過ごしてはならんぞ。いいか、まだ基地に帰ったわけではないからな。気を引き締めるためのビールであるからそのつもりで。なおこのビールは板倉艦長から皆への褒美であることを忘れるなよ」

と戒める。兵員たちは「わかりました!」と言い、大事にビールをいただく。

 

さて、おとなしい兵員たちとは打って変わって艦長・水雷長・航海長・機関長たちが集まると大変な酒盛りが始まってしまった。

最初のうちこそ「いやあ、明日も明後日もあるから」「この後見張りの当直だしぃ?」とか、「ちょっとまだ緊張が解けないからあまり飲めないよ?」なんてしおらしいことを言っていた各長たちも酒が入るに従って大胆になってきた。

ビールからいつの間にか、日本酒に酒の種類も変わってきている。空き瓶が周囲にごろごろ転がり始める。

メートルも、上がり始めている。しかし皆「伊号潜水艦」の中でも酒豪と言われる連中の集まりだけに乱れもしない。

しかし・・・時がたってくると催して(・・・)くる(・・)もの(・・)がある。一人、また一人と厠に立っては戻ってくる。

板倉艦長はそんな科長たちを見ながらさらに飲む、飲む飲む・・・・

 

だが等々、板倉艦長にも催し物招待状がやってきてしまった。(ええ、めんどくせえなあ)と思いつつ「ちょっと外すよ・・」と席を立つ艦長。厠に行くと誰か先客がいて、艦長はもう我慢ならなくなった。大波が連続して押し寄せてくるではないか!?

(どうしよう・・・)と思うともうたまらない、腰が引けて妙な格好になっている自分に気がつくと(艦長たるものがこんなかっこでは皆に馬鹿にされる。ああでもどうしよう・・・だから潜水艦ってこういう時嫌なんだよな・・・ああもう!)と忌々しく思う。

と、艦長の頭に電光のように閃きが走る。

(そうだ、今は浮上航行中だ。周囲に敵はいない、月明かりも今夜はちょうどいい明るさのようだし、とくれば!)

艦長は司令塔のラッタルを目指した。途中出会った兵曹に、

「ちょっと私は外に出るが、絶対決して誰も上がってこないように見張っててくれるかな?お願い!」

と言うなりあっという間にラッタルを駆け上がり、そして艦の外に出て行った。

 

「おお~・・気持ちいい」

板倉艦長は、月明かりにキラキラと光る夜の海を見つめつつ大放尿中である。我慢した後の放尿はなんて気分がいいのだろうか。

艦長はやがて用を済ますと、立ちあがった。褌をしめなおし、ズボンを引き上げ防暑服の上着の裾を中に入れてベルトを締めた。その足元が少しふらつく。ありゃこれはいかんなあ、酒をやりすぎたかとひとりごちた板倉艦長、夜空を見上げて深呼吸――と思った次の瞬間!

 

ドボーン!

 

板倉艦長は大きく体のバランスを崩して艦上から海へと転落していたのだった。

「ギャッ!誰か・・・」

と叫ぶ艦長であったが艦が波を切る音にかき消される。艦長は、伊4444潜から引き離されて行く・・・。

 

先ほど声をかけられた兵曹嬢は(どうしたんだろう艦長。ハッ!もしかしたらご気分が悪いのかも、だとしたらこうしてはおれん)とその場を通りかかった上等水兵嬢にこれこれこうのようだ、と話すと二人は艦の外に出るためラッタルをあがってゆく。

「艦長大丈夫でしょうか、ご気分が悪いのならすぐに軍医長のところにお連れしましょうね」などと話しながら。

艦の外に出てあたりを見回した兵曹嬢が、急に海を指して「ああ、艦長が!」と叫んだ。そこには片手を大きく上げて流されて行く板倉艦長の姿が!

さあ、伊号4444潜は上を下への大騒ぎになり航海長や水雷長はじめ艦内総出で艦長を救出したのだった。

やがて艦に引き上げられ、ぬれ鼠になった板倉艦長は総員を前にして

「・・・と酒を過ごすとこういう目に遭うから皆はくれぐれも過ごさぬように。酒は飲んでも飲まれるな。ともかくも・・・迷惑をかけた、済まなかった、そしてありがとう」

と謝罪と訓示をしてそそくさと艦長室に帰って行ったのだった。とても気まずかった・・・

 

だが、伊号4444潜の誰も、誰一人として艦長が「放尿の為艦上に出て転落した」とは思っていないのが板倉艦長には救いであったとさ――。

 

       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

危ない危ない・・・

板倉艦長、いくらなんでも酒飲んで潜水艦の外でおしっことは(;一_)

でもアルコールを飲むとトイレが近くなりますね。あとコーヒーも、スイカも・・・。ともあれ皆さまも尿意を感じたらすぐに、トイレにゴー!ですぞ。

板倉光馬さん

板倉光馬少佐の実話をもとに創作いたしました・・・。板倉少佐は中尉になってから潜水艦に初めて乗り以来、潜水艦畑を歩んでこられた人です。戦争末期には回天指揮官になられたことでも有名。平成1710月、92歳で逝去。



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kazuさんへ

kazuさんこんばんは!

「散開魚雷」、イメージとしては焼夷弾のようにでかい筒から小さな筒が飛び出すという感じですね。

これは一応私のオリジナル発想ですが、これがもし出来ていたら海戦はもっと違っていたかもしれないなあ、なんて思いますね。

問題はまさに技術力ですが…(^_^;)

なるほど

散開魚雷ですか〜

開発構想は同時あったのでしょうか〜?

あっても、技術力では無理だったかな^^

オスカーさんへ

オスカーさんおはようございます!
本当に人間というものは煩悩・苦悩の塊だとつくづく思う昨今です・・・^^。

私もお酒を飲まないのですよ。
でも!オスカー様と同じに「痩せるお茶」という名のものは飲んだことがありましてやはり尿意に突き動かさされ落ち着きませんね、あれは!
仕事に差し支えるんですよね、私もこれで・・・やめましたwという感じですね。

このところすさまじき暑さですね、お互い気をつけましょう!
いつもありがとう❤

こんばんは。やめられないとまらない~いつの時代も人間は煩悩の塊~悶々と苦悩していますね!! 私はお酒は飲みませんが、痩せるお茶と言われる類のモノってトイレ、トイレ~で落ち着かない!!だから飲まなくなりました(爆)
今年の夏は昨年以上に暑くなりそう~お身体に気をつけて下さいね。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
まろにいさまも飲み会での激しい尿意に苦しまれたご経験者ですか!
結構いらっしゃいますね・・・利尿剤とのすさまじいコラボレーション・・お察しします(-_-;)

わが父親は最近までものすごい量のビールを飲んでいました。若いころそれが原因で痛風になったにもかかわらず懲りない男ですが、この父親がまたビールを飲みだすとちょこちょこ席を立ってトイレにGO!するんですよね~。
せわしいやら可笑しいやら。

板倉さんのほかにも平成の世まで御存命だったかつての軍人さん、結構いらっしゃいます。いつか調べ上げて記事にできるかもしれませんねw。

酒を飲むと……ねぇ。特にビールはテキメンですね。
ある時、利尿剤を飲んでいるのをとっくに忘れて飲み会。しばらくすると30分ごとが10分ごとのトイレになったことを思い出しました。あれはしんどかったし、「???」とみなさんの怪訝な顔が恥ずかしくてたまりませんでした。でも出したいものは出したい。恥も外聞もなく往復しました。飲みに行ったのかトイレに行ったのか分からない夜でした。

板倉さん、最近までご存命だったのですね。
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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