「女だらけの戦艦大和」・準士官以上人気投票1

どんな環境にいても、「目を引かれる人」「心惹かれる人」はいるものである――

 

さて「女だらけの大和」ほかの小艦隊はサイパンで小休止中である。

最上露天甲板で松岡中尉と樽美酒少尉がキャッチボールに興じている。松岡中尉といえば、テニスだが梨賀艦長から「露天甲板であのラケットを振ってボールを打つのは厳禁!」と厳命されているのでさすがにラケットは持てない。というわけで愛しのラケットはそばに置いてある。

二人の持つグローブに、バシッバシッと小気味いい音を立ててボールが吸い込まれる。二人はサイパンの空気を胸いっぱい吸い込みながらキャッチボールを楽しんでいる。松岡中尉の、「熱くなれよ!」とか「今日から樽くんも富士山だ!」と言う叫びがやかましい。

それにほほえむ樽美酒少尉の栗色の髪が、日差しにまぶしくきらめく。

 

それを機銃分隊の長妻兵曹と辻本一水が仕事をしながら見ている。

辻本一水がソーフ(雑巾)で砲身を磨きながら

「あの少尉、かっこええですねえ。髪の毛の色が、なんかこうアメリカさんみとうて綺麗ですねえ。ほいでも顔は日本人じゃけえ、ちいと面白いですね」

と言ってさらに樽美酒少尉を見つめる。

長妻兵曹が、機銃の砲身にブラシを突っ込んでごしごししながら、

「ほうじゃのう、樽美酒少尉は素敵じゃなあ。麻生少尉とか松岡中尉とか、浜口大尉なんかとはちごうて上品でええわあ。いかにもハイカラで海軍さんらしいわ。あの人はきっと、『大和』の中でも人気があるんと違うかのう」

と言って辻本一水を見た。辻本一水はしばらく考え込んでいたが、「おお、ほうじゃあ!」と大声を出したので長妻兵曹はびっくりした。ブラシを動かす手を止めて、

「いったいどうしたんじゃね」

と聞いた。辻本一水は砲身から離れると長妻兵曹の正面に来て、

「今思いついたんですが兵と下士官だけで秘密の『人気投票』をしたらどがいでしょうねえ」

と言った。その顔がニヤニヤしている。こんな辻本一水の顔は久しぶりじゃなあ、と長妻兵曹は思いながら

「『人気投票』かあ・・・ええねえ。準士官以上の人気投票をしたら面白いねえ。う~ん、ほうじゃ、善は急げいうけん準士官以上には秘密でやろうや。なあ辻本、増添兵曹や田中兵曹にいうてみい。乗ってきよるで、そしたら準備始めようや。ほかの分隊の連中にもいうてな」

とこれももうすっかり乗り気である。

辻本一水は「はい!」と大声で元気に返事をすると、ソーフを握りなおしてごしごしと砲身を磨いた。

「それが終わったら増添兵曹を探してこいや」

長妻兵曹はなんだかウキウキした声で辻本一水に声をかけた。辻本一水はもう一遍、「はい」と大きな声で返事をした。

 

さて、その一時間後からひそやかに兵や下士官の間に「準士官以上人気投票』の話が伝わっていったのだった。

「なんじゃって。『人気投票』?なんじゃねそりゃ」

「なんでも自分の好きじゃおもう準士官以上を投票するんじゃと」

「ほう、そりゃあ面白いわ。いつ投票じゃ?」

「まず予備投票をしてそれから決選投票じゃそうな。準備を機銃の長妻兵曹たちがするそうじゃからちいと手伝いに行こうかの」

「ほうじゃな、ほいでもこの話は兵曹長以上には絶対内緒じゃけえね。絶対言うたらいけんぞ」

「わかっとるて。うちは口が堅いんが取りえじゃけえね」

・・・・etc。

その話はとうとう航海科の面々の耳にも入ってきた。

小泉兵曹が、指揮所に上がってくるなりあたりをさっと見回した。そして分隊士や分隊長がいないのを確かめるとその場にいた見張兵曹や石川水兵長、亀井一水や石場兵曹たちを「ちいと集まれ」と集めた。

「なんじゃね」

と皆が集まるとその皆の肩をグイッと引き寄せて小泉兵曹はまず、にやりと笑ってから

「えらい面白いことが始まるで。あのなあ、機銃の長妻兵曹と辻本一水がな・・・」

と例の話を始めた。そして、「・・・だそうだ」と小泉兵曹が言い終わると見張・石場・石川・亀井の四人は一斉に「お、おもしれえ!」とうなった。小泉兵曹が、「ほいでもこのことは絶対分隊長や分隊士に言うたらいけんで。兵と下士官だけの投票じゃけえね。これがもしばれて、『ああ、うちは私は選ばれんかった―!』となったらその士官の名折れじゃし、名誉にかかわるけえね。オトメチャンも絶対分隊士に言うたらいけんで?寝物語にでも言うたら承知せんで」と言い、見張兵曹は

「そがいなこと、せんわ。なんじゃね、寝物語て?」

とたずねた。小泉兵曹は「知らんならええわ。わかったならそれでええよ。ほいで今夜、上甲板飛行機格納庫で話し合いじゃ、各分隊から一名づつ出ることになっとるけえ、航海科からは俺が出るが・・・ええか?谷垣兵曹たちにはもう了解を取ってあるが?」と言い皆は賛成した。

「ほいじゃ、どうなるか明日のお楽しみ~」

そういうと小泉兵曹は足取りも軽く下へ降りて行ったのだった。

 

「『人気投票』か、だれを投票するかねえ」

石場兵曹がこれも楽しげに言う。見張兵曹がその石場兵曹を見て、

「ほうですねえ・・準士官以上、いうてましたねえ」

と言うと石場兵曹は笑って「オトメチャンはもうきまっとろう?麻生分隊士に一票じゃろ?悩むこともなかるまいに」と言いその肩をどやした。

見張兵曹は「そんな・・・」と言うと恥ずかしげにうつむいた。

その見張兵曹を少しまぶしげに見つめた後石場兵曹は、サイパンの青い海に視線を移すとそっと溜息をひとつついた。

(準士官以上でなかったらうちは絶対オトメチャンに一票じゃ。それはいつまでも変わらん。うちはオトメチャンが好きじゃもん)

石場兵曹はそう思うとなんだかせつない気分が心の中に満ちてくるのを感じていた。

 

そしてその晩、二十数名が集まり『人気投票委員会』が中甲板飛行機格納庫で発足した――

 

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・

また変なことを始めた「女だらけの大和」の兵隊たちです。

どんな結果になるのか?お楽しみに!

松岡さん ダルくん日ハム
松岡さんとダル君です。いつもモデルになってくれてありがとー!!(画像お借りしました)



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Comments 4

見張り員">
見張り員  
オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
はじまりますよ人気投票!
一体誰が一位になるのでしょうか??
あの人か、この人か…

内緒のたくらみですが「女だらけの~」にはあぶなっかしいのがたくさんいますから、大ごとにならないといいんですが。

次回をご期待くださいませ^^。

2012/07/10 (Tue) 23:44 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
オスカー  

こんばんは。ワクワクしますね!コレは乙女の盛り上がりですよ~ナイショ!!にしていてもマツコあたりが余計なことをやらかしそうな予感(期待!?)もありますが…栄えある一位の方には何か贈り物があるのかしら?続きがたのしみ♪

2012/07/10 (Tue) 21:02 | EDIT | REPLY |   
見張り員">
見張り員  
まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
秘密の人気投票~~ワクワクしますねえ~、さていったいどうなるんでしょうか~~ワクテカ!
「女だらけの大和」の兵隊さんたち、だれに一票入れてどうなるのでしょうか、ご期待ください!!

そうなんですよ、最初に「樽美酒」少尉を出して数日したある日、夕刊にとあるアーテイストの中に「樽美酒」さんがいらしたのです!!ガーーーン!
しばし呆然…ぱくったと思われたらいやだなあと思いつつ、でも一回出してしまったのでええい!ママよ!とそのままにしています…(^_^;)

私はダル君、いいと思いますよ、頂点を極めようとする人は少々ふてぶてしいくらい出ないとだめかも知れないですね!!

2012/07/10 (Tue) 20:50 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
まろゆーろ  
No title

AKBの総選挙ならぬ艦上の人気投票、それもヒミツとはワクワクしますね。秘儀という言葉に殊のほかキュンキュンする年頃になりました。
早速、あれこれの情報や思惑も錯綜しはじめ面白い展開になりそう!!
見張り員さんの腕の見せ所に期待しておりますよ。

樽美酒……、勘違いでしたらごめんなさいですが。何やらのグループのアーティストにもいませんでしたでしょうか。
でも樽美酒といえばやっぱり野球のダルちゃん。よく頑張っていますね。根性が違うのでしょうか。それをふてぶてしいという人もおりますが(笑)

2012/07/10 (Tue) 08:44 | EDIT | REPLY |   

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女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?
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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
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(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)